2020/9/16 245view

みなし相続財産とは?節税効果と手続上の注意点も含めて解説!

この記事で分かること
  1. みなし相続財産とは、通常の相続財産ではないが、法律で相続財産とみなされるものを指す。
  2. 通常の相続財産と同様、みなし相続財産にも相続税が課税される。
  3. みなし相続財産である生命保険金と死亡退職金には、相続税の非課税枠がある。
  4. 相続放棄をしても、みなし相続財産を受け取った場合は相続税が課税される。
  5. みなし相続財産を含む相続対策は、まず弁護士に相談を。

相続手続を行う場合、通常の相続財産の他に、みなし相続財産というものがあることに注意しましょう。これは税金対策にも影響します。みなし相続財産とは何か。相続税はどうなるのか。法律に基づいた正確な理解が必要です。まずは法律の専門家である弁護士に相談しましょう。専門家のアドバイスをもらいながら、相続手続に取り組むことが大切です。

みなし相続財産とは?

みなし相続財産とは、民法が定める通常の相続財産ではないけれども、相続税法により相続財産とみなされ、相続税が課税される財産をいいます。

被相続人から受け継がれるのが通常の相続財産

相続財産とは、財産の持ち主であった故人から、それを受け継ぐ資格のある人へと受け継がれる財産をいいます。この場合の故人を被相続人、受け継ぐ資格のある人を相続人といいます。

受け継がれる根拠となるのは、民法の相続規定、または被相続人の遺言です。

みなし相続財産とは「実質的に」受け継がれる相続財産

被相続人の死亡により相続人が手にする財産の中には、被相続人から受け継いだとはいえない財産があります。
一見すると相続財産とはいえないものの、よくよく見ると、被相続人から相続人へと受け継がれていると考えられる財産があります。実質は相続財産といえる財産です。

通常の相続財産であれば、いやおうなく相続税が課税されます。その一方で、実質は相続財産なのに通常の相続財産でないという理由で課税を免れるのは、実質的な財産の動きを考えると不公平にあたります。

そこで相続税法は、課税の公平化を考えました。通常の相続財産ではないけれども実質は相続財産といえるのであれば、それを相続財産とみなし、相続税を課税する。これが、みなし相続財産です。

ワンポイントアドバイス
本来の相続財産は民法が、みなし相続財産は相続税法が、それぞれ定めています。民法は相続財産の受け継ぎ、相続税法は相続財産への課税が、それぞれの目的です。2つの法律が重なり合う場面です。一般の方には分かりずらいであろう内容です。みなし相続財産についての疑問は、税に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

主なみなし相続財産

みなし相続財産は、課税の公平化のため、課税対象を通常の相続財産より広げたものです。みなし相続財産に当たるか否かは、課税の有無に関わる重大問題です。区別の基準があいまいでは、相続人が相続税納税の判断に困ります。そこで、みなし相続財産は、相続税法によって具体的に決められています。

相続税法が定める中の代表的な6つのみなし相続財産について解説します。

生命保険金

生命保険金とは、生命保険契約に基づき、保険の対象となる人(被保険者)の死亡により、受取人が、保険会社から受け取るお金です。

被保険者が被相続人、受取人が相続人である場合について解説します。

生命保険金は通常の相続財産ではない

生命保険金は、被相続人の死亡を原因として、保険会社から、受取人である相続人に対して支払われるお金です。保険会社が保険金を支払う時、被相続人はすでに故人であり、いったん被相続人が手にした保険金が相続人に受け継がれることはありません。

支払いの根拠は、生命保険契約です。相続規定でも遺言でもありません。
生命保険金は、契約に基づいて支払われるお金であり、故人が生前保有していた財産ではないので、通常の相続財産にはあてはまりません。

生命保険金がみなし相続財産とされる理由

ほとんどの生命保険契約では、保険契約者が被保険者です。保険料は、保険契約者が支払います。

保険契約者であり被保険者でもある被相続人が、保険料を支払います。保険料が保険会社に蓄えられます。被相続人の死亡により、蓄えられた保険料の中から、相続人に保険金が支払われます。

相続人が受け取る保険金も、元をたどれば被相続人が支払う保険料に行き着きます。保険料の支払いから保険金の受け取りまでの流れを見ると、被相続人から相続人へと財産が受け継がれています。
こうしたお金の流れをふまえると、生命保険金も実質は相続財産であるということができるので、生命保険金は、みなし相続財産として相続税が課税されることになっています。

相続財産とみなされる生命保険金の範囲

相続人が受け取った保険金のうち、相続財産とみなされる範囲は、保険料を被相続人が負担していた割合によって異なります。

被相続人が保険料の全部を負担していた場合、受け取った保険金全額が相続財産とみなされます。

被相続人が保険料の一部を負担していた場合、相続財産とみなされる金額は、次の計算式による金額となります。

相続財産とみなされる金額         
= 受け取った保険金額 × 被相続人が負担した保険料の金額/被相続人の死亡時までに払い込まれた保険料の総額

死亡退職金

死亡退職金とは、在職中の公務員や企業の従業員が死亡したとき、国・地方公共団体・企業から、法律や就業規則によって決められた受取人に対して支払われる、死亡者の退職金です。

死亡者が被相続人、受取人が相続人である場合について解説します。

死亡退職金は通常の相続財産ではない

死亡退職金は、国・地方公共団体・企業から、受取人である相続人に支払われるお金です。
国・地方公共団体・企業が死亡退職金を支払う時、被相続人はすでに故人です。いったん被相続人が手にした退職金が相続人に受け継がれることはありません。

支払いの根拠は、法律や就業規則です。相続規定でも遺言でもありません。

死亡退職金は、通常の相続財産ではありません。

死亡退職金がみなし相続財産とされる理由

退職金を受け取る権利は、公務員や企業の従業員が在職中から持っている権利です。被相続人も在職中にこの権利を持っていました。

被相続人の死亡により、退職金を受け取る権利が相続人に移ります。相続人は、この権利に基づいて退職金を受け取ります。被相続人の死亡が原因の死亡退職であることから、死亡退職金という名前になります。

相続人が受け取る死亡退職金も、元をたどれば被相続人の退職金を受け取る権利に行き着きます。退職金を受け取る権利も財産です。退職金を受け取る権利の発生から死亡退職金の受け取りまでの流れを見ると、被相続人から相続人へと財産が受け継がれています。死亡退職金も、実質は相続財産ということができます。

死亡退職金は、死亡から3年以内に金額が確定した場合、みなし相続財産として、相続税が課税されます。死亡から3年以内の金額確定でよいとしたのは、企業の多くを占める株式会社の場合、死亡退職金の支給には年1回しか開かれない株主総会での決議が必要なことに配慮したものです。

定期金

定期的に(たとえば、「毎年6月30日に」というような決まった時期に)、一方が相手にお金を与える契約を、定期金給付契約といいます。この定期金給付契約に基づき、一方が相手に与えるお金を、定期金といいます。

個人年金が定期金の代表格

代表的な定期金として、生命保険会社と顧客との間の個人年金保険契約に基づき、生命保険会社が顧客に対し定期的に支払う年金を挙げることができます。以下、この個人年金保険を例に解説します。

個人年金保険契約では、契約者、年金受取人、保険料負担者が登場します。個人年金保険の場合、税金対策上、契約者が年金受取人となるパターンがほとんどです。また、個人年金保険契約に基づいて支払われる年金がみなし相続財産とされるのは、契約者と保険料負担者が別の場合です。

保険料負担者が被相続人、契約者かつ年金受取人が相続人である場合について解説します。

死亡給付金は通常の相続財産ではない

年金受取人である相続人が年金をもらう前に、保険料負担者である被相続人が死亡した場合、相続人は、被相続人がそれまでに負担してきた保険料に相当するお金を保険会社からもらいます。死亡給付金または死亡保険金と呼ばれます。

死亡給付金は、被相続人の死亡を原因として、保険会社から相続人に支払われるお金です。被相続人がいったん手にした給付金が相続人に受け継がれるのではありません。

支払いの根拠は、個人年金保険契約です。相続規定でも遺言でもありません。

死亡給付金は通常の相続財産ではありません。

死亡給付金がみなし相続財産とされる理由

保険料負担者である被相続人が、保険料を支払います。保険料が保険会社に蓄えられます。被相続人の死亡により、蓄えられた保険料の中から、死亡給付金が相続人に支払われます。

相続人が受け取る死亡給付金も、元をたどれば被相続人が支払う保険料に行き着きます。保険料の支払いから死亡給付金の受け取りまでの流れを見ると、被相続人から相続人へと財産が受け継がれています。死亡給付金も、実質は相続財産ということができます。

死亡給付金は、みなし相続財産として、相続税が課税されます。

遺贈により取得した財産

遺贈とは、遺言によって、自分の財産を相続人その他の人に与えることです。与える人を遺贈者、もらう人を受贈者といいます。

遺贈により受贈者がもらう財産の中には、みなし相続財産とされるものが3つあります。
それぞれについて解説します。

低額での譲渡

遺贈により、受贈者が時価よりかなり安い価格で財産を手にしたとき、時価と価格との差額がみなし相続財産とされます。遺言により、遺贈者から受贈者へ、差額分に相当する財産の受け継ぎがあったといえるからです。

たとえば、時価1億円の土地を価格3000万円で受贈者に売るようにとの遺言に基づき、遺言執行者がその通りに売った場合です。差額の7000万円がみなし相続財産とされ、受贈者に相続税が課税されます。

債務の免除

遺言者に対して債務を負っている人が、遺言により、タダで、またはかなり安い金額を支払うことで、債務を免除されたとき、免除された債務額がみなし相続財産とされます。

遺言によって債務が免除されると、債務者の債務が消えます。消えた債務の分、債務者の財産のプラス割合が増えます。遺言者から債務者へ、プラス割合に相当する財産が受け継がれたといえます。

たとえば、債権者に対して100万円の債務を負っている人に対して、債権者が、遺言により債務を免除した場合です。免除された100万円がみなし相続財産とされ、免除された人に相続税が課税されます。

信託受益権

自分の財産を、信頼できる人に与え、自分が決めた目的に従って管理・運用してもらうことを、信託といいます。信託した人を委託者、信託された人を受託者といいます。信託は、契約の他、遺言によっても行うことができます。

信託受益権は受益者の権利

受託者による財産の管理・運用によって利益が生まれます。たとえば、信託されたお金を貸し付けて得られた利息などです。この利益は、委託者が指定した人に与えられます。

利益を与えられる人を受益者といいます。受益者は、委託者自身、または第三者のいずれでもかまいません。受益者が受託者から利益をもらえる権利を、信託受益権といいます。

信託受益権がみなし相続財産とされる理由

信託が遺言によって行われた場合、受益者が手にする信託受益権は相続財産とみなされます。

信託受益権は、遺言者の財産を管理・運用することによって生まれた利益であり、元をたどれば遺言者の財産に行き着きます。遺言による信託から利益の受け取りまでの流れを見ると、遺言者から受益者へと財産が受け継がれています。信託受益権も、実質は相続財産ということができます。

信託受益権は、みなし相続財産として、相続税が課税されます。

ワンポイントアドバイス
本文の解説は、みなし相続財産についての一般的な解説です。手にした財産が実際にみなし相続財産に当たるか否かは、ケースごとに判断されます。専門知識が必要です。税に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

みなし相続財産の非課税枠

みなし相続財産の中に、相続税の非課税枠が設けられているものが2つあります。生命保険金と死亡退職金です。

生命保険金と死亡退職金それぞれの相続税非課税枠について解説します。

生命保険の活用は相続税対策としても有効

被相続人の死亡によって相続人が受け取る生命保険金は、みなし相続財産とされ、相続税が課税されます。その一方で、受け取る生命保険金の一定の金額について、相続税が非課税とされます。

非課税となる生命保険金額は、次の式によって計算されます。

非課税となる生命保険金額 = 500万円 × 法定相続人の数

この非課税枠を使えるのは、相続人に限られます。相続人でない人が生命保険金を受け取った場合、非課税枠は使えません。生命保険金の非課税枠は、被相続人亡き後の相続人の生活安定を図るために設けられたものだからです。

「法定相続人の数」には、相続放棄をした人の数も含まれます。「法定相続人の数」が多いほど、非課税金額も増えます。

支払われる生命保険金がかなりの高額でない限り、高い節税効果が期待できます。生命保険金の金額によっては、相続税ゼロというケースもあり得ます。生命保険金の非課税枠を、相続税対策として、有効に活用しましょう。

死亡退職金にも非課税枠あり

被相続人の死亡によって相続人が受け取る死亡退職金は、みなし相続財産とされ、相続税が課税されます。その一方で、死亡退職金の一定の金額について、相続税が非課税とされます。

非課税金額の計算式、非課税枠を使える人、および非課税枠を設けた理由については、生命保険金の場合と同じです。

死亡退職金の非課税枠についても、高い節税効果が期待できます。相続税対策として、有効に活用しましょう。

ワンポイントアドバイス
みなし相続財産の非課税枠は、相続人の生活安定のために役立つ制度です。有効活用を図りたいものです。非課税枠の使い方に迷ったら、税に詳しい弁護士に相談しましょう。

みなし相続財産と通常の相続財産の違い

みなし相続財産は、民法上の通常の相続財産とはいえない財産を、公平な相続税課税のため、相続税法に基づいて、いわゆるフィクションとして相続財産とみなすシステムです。みなし相続財産と通常の相続財産は、基本的に異なるものであり、いくつかの違いがあります。

相続手続において特に注意すべき2つの違いについて解説します。

相続放棄の場合は注意が必要

1つ目の違いは、相続放棄の対象になるか否かの違いです。
通常の相続財産は、相続放棄の対象になります。相続放棄をすれば、通常の相続財産を手にすることはできなくなります。その代わり、相続税を課税されることはありません。

みなし相続財産は相続放棄の対象外

一方、みなし相続財産は、相続放棄の対象になりません。相続放棄をしても、みなし相続財産を手にすることができます。たとえば自分が、被相続人を被保険者とする生命保険の保険金受取人になっていた場合、相続放棄をしても、生命保険金を受け取ることができます。

その代わり、受け取った生命保険金はみなし相続財産であるため、相続税が課税されます。「相続放棄をしたから、生命保険金に相続税は課税されない」と誤解しないよう、注意しましょう。

みなし相続財産は遺産分割の対象外

2つ目の違いは、遺産分割の対象になるか否かの違いです。

遺産分割の対象となるのは、通常の相続財産です。みなし相続財産は、通常の相続財産ではないものを、相続税課税の公平化のため、フィクションとして相続財産としたものです。遺産分割の対象にはなりません。

相続人の間で遺産分割の話がまとまり、遺産分割協議書を作ることになった場合、遺産目録の中にみなし相続財産を書くことがないよう、注意しましょう。

相続人の間で遺産分割について揉めて、家庭裁判所に遺産分割の調停または審判を申し立てることになった場合、申立書に添付する遺産目録の中にみなし相続財産を書くことがないよう、注意しましょう。

ワンポイントアドバイス
相続財産が、みなし相続財産か通常の相続財産かは、相続放棄、相続税の課税、遺産分割に関わる重要なポイントです。判断を誤ると、思わぬ損をこうむるおそれがあります。判断に迷ったら、税に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

みなし相続財産を含めた相続対策は弁護士に相談を

相続税の公平化を目指して設けられたみなし相続財産のシステムですが、通常の相続財産との区別を誤ると、思わぬ損をこうむるおそれがあります。素人判断は禁物です。みなし相続財産を含めた相続対策は、まず税に詳しい弁護士に相談しましょう。

遺産相続は弁護士に相談を
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
相続人のひとりが弁護士を連れてきた
遺産分割協議で話がまとまらない
遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
相続について、どうしていいのか分からない
上記に当てはまるなら弁護士に相談