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生命保険金は相続財産になる?分割・税金・受取の基本

生命保険金は相続財産になる?分割・税金・受取の基本

この記事で分かること

  • 生命保険金が相続財産にあたらないとされる理由
  • 遺産分割の対象にならず受取人が単独で受け取れること
  • 相続放棄をしても保険金を受け取れる仕組み
  • 相続税の課税対象になる場合と非課税の枠の考え方
  • 受取人による税金の違いと遺留分との関係

この記事では、受取人が指定された生命保険金が相続財産にあたるのかという基本から、相続をめぐる扱いを弁護士の視点で解説します。生命保険金は受取人固有の財産にあたり、原則として遺産分割の対象にならず受取人が単独で受け取れること、相続放棄をしても受け取れることを押さえます。さらに、相続税の課税対象になる場合と非課税の枠の考え方、受取人による税金の違い、遺留分との関係、受取手続きまでを整理します。読み終えれば、生命保険金の扱いを落ち着いて判断できます。

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身近な方が亡くなり、生命保険金を受け取ることになったとき、「この保険金は遺産として分けなければいけないのだろうか」「相続税はどうなるのだろう」と不安になる方は少なくありません。生命保険金は、相続をめぐる場面でとても特別な扱いを受けるお金です。遺産分割の対象になるのか、相続放棄をしても受け取れるのか、遺留分との関係はどうなるのか。どれも結論を誤ると、思わぬトラブルや損につながりかねません。

この記事では、生命保険金が相続財産にあたるのかという根本的な問いから、税金や遺留分との関係、実際の受取手続きまでを、弁護士の視点でわかりやすく整理します。読み終えるころには、自分のケースで生命保険金をどう扱えばよいのか、落ち着いて見通せるようになっているはずです。

生命保険は、いざというときに残された家族の生活を支えるための備えです。だからこそ、いざ受け取る段になって扱いがわからず戸惑うのは、できれば避けたいところでしょう。基本の考え方さえつかんでおけば、保険金は心強い味方になります。難しく見える論点も、一つずつ順番に見ていけば決してわかりにくいものではありません。

生命保険金は相続財産になるのか

結論から言えば、受取人が指定されている生命保険金は、原則として相続財産にはあたりません。これは多くの方が意外に感じるところです。亡くなった方の財産なのだから当然に遺産になる、と考えてしまいがちですが、法律上の扱いは違います。

生命保険金は、保険契約にもとづいて、保険会社から受取人へと直接支払われるお金です。つまり、受取人が自分の固有の権利として受け取るものであって、いったん亡くなった方の財産になってから相続人に引き継がれるわけではありません。この「受取人固有の財産」という考え方が、生命保険金を理解するうえでのいちばんの土台になります。

たとえば、夫が亡くなり、妻が受取人に指定されていた場合を考えてみましょう。この保険金は妻が自分の権利として受け取るものですから、他の相続人と分け合う必要は原則としてありません。ここが、預貯金や不動産といった通常の遺産とは大きく異なる点です。

この違いは、たとえば兄弟姉妹の間で相続が起きたときにはっきりと表れます。預貯金であれば、原則として相続人みんなで分け方を決めなければなりません。ところが、特定の人が受取人に指定された生命保険金は、その人が単独で受け取れます。同じ「亡くなった方に関係するお金」でも、法律上の通り道がまったく違うのだと理解しておくと、後の話がすっと頭に入ってきます。

なお、ここでいう生命保険金とは、被保険者が亡くなったことで支払われる死亡保険金を指しています。入院や手術にともなって支払われる給付金などは、また別の扱いになります。自分が受け取るお金がどの種類にあたるのかを、まずは保険証券で確かめておくとよいでしょう。種類を取り違えると、税金や分け方の見通しも変わってきてしまいます。

もう一つ知っておきたいのは、生命保険金は遺言とも違う性質を持つということです。遺言は亡くなった方の遺産の分け方を指定するものですが、保険の受取人指定は、それとは別のしくみで特定の人にお金を渡します。遺言を書いていなくても、受取人さえ決めておけば、その人に確実に保険金を残せます。残したい相手がはっきりしている場合、保険は遺言を補う役割を果たしてくれるのです。

ワンポイントアドバイス
受取人が「特定の人」に指定されているかどうかが分かれ目です。受取人が亡くなった方自身になっていたり、「相続人」とだけ書かれていたりする場合は扱いが変わることがあります。保険証券で受取人の記載を必ず確認しておきましょう。

生命保険金が遺産分割の対象にならない理由

生命保険金が受取人固有の財産だということは、遺産分割の場面に直接かかわってきます。相続が起きると、相続人どうしで遺産の分け方を話し合う遺産分割協議をおこないますが、生命保険金は原則としてこの話し合いの対象になりません。

なぜなら、遺産分割協議で分けるのはあくまで「亡くなった方の遺産」であって、受取人が自分の権利として受け取る生命保険金は、その遺産には含まれないからです。受取人に指定された人は、他の相続人の同意を得なくても、自分一人で保険金を請求し、受け取ることができます。

このことは、相続人の関係が良好でないときにこそ大きな意味を持ちます。遺産分割の話し合いは、相続人全員の合意がないとまとまりません。一人でも反対する人がいれば、預貯金の払い戻し一つにも時間がかかります。その点、受取人が決まっている保険金は、他の相続人ともめていても受け取れます。当面の生活費や葬儀費用をまかなううえで、この性質はとても頼りになります。

実際の相続では、亡くなった直後に現金が必要になる場面が次々と訪れます。葬儀の費用、当面の生活費、場合によっては入院していた際の精算など、待ったなしの出費が重なります。預貯金は名義人が亡くなると一時的に動かしにくくなることがあり、いざというときに引き出せず困ることもあります。受取人が単独で受け取れる生命保険金は、こうした初期の資金繰りを支える大切な役割を担っています。

遺産分割協議の進め方そのものについて詳しく知りたい方は、あわせて確認しておくとよいでしょう。

ただし、注意してほしい例外もあります。相続人の間で受け取る保険金の額に大きな偏りが生じ、その不公平があまりにも大きいと評価される場合には、例外的に生命保険金が遺産分割で考慮されることがあります。これはあくまで特別な事情があるときの話ですが、「絶対に一切関係しない」と言い切れるわけではない、という点は頭の片隅に置いておいてください。

具体的には、相続財産がほとんどない一方で、一人の相続人だけが極端に大きな保険金を受け取っているようなケースが考えられます。こうした場面では、他の相続人との公平をどう図るかが問題になり、保険金を分割の話し合いで考慮すべきだと判断されることがあります。とはいえ、これはかなり例外的な状況です。通常の範囲の保険金であれば、遺産分割とは切り離して考えてよいのが原則だと押さえておきましょう。

相続放棄をしても生命保険金は受け取れる

借金などの理由で相続放棄を検討している方にとって、見逃せないのがこのポイントです。結論として、相続放棄をしても、受取人に指定されている生命保険金は受け取ることができます。

相続放棄をすると、亡くなった方の財産も借金もいっさい引き継がないことになります。それなら保険金も受け取れないのでは、と心配になるかもしれません。しかし、ここでも「生命保険金は受取人固有の財産」という考え方が効いてきます。保険金は遺産ではなく受取人自身のお金ですから、相続を放棄しても、保険金を受け取る権利には影響しないのです。

言い換えると、相続放棄は「亡くなった方の遺産を引き継ぐ立場」を手放す手続きであって、受取人としての立場まで失わせるものではありません。借金は引き継ぎたくないけれど、家族のための保険金は受け取りたい。この一見わがままに思える願いが、法律上はきちんと両立するわけです。多額の負債を残して亡くなったケースで、残された家族の生活を守る最後の支えになることも少なくありません。

たとえば、自営業を営んでいた方が事業の借入れを残して亡くなった場合を考えてみましょう。事業の負債まで引き継ぐのは避けたいけれど、遺された家族にはこれからの暮らしがあります。こうしたとき、相続放棄で負債を断ち切りつつ、受取人に指定されていた保険金で生活の立て直しを図る、という選択ができます。保険が家族の生活設計においてどれほど心強いかが、よくわかる場面だといえるでしょう。

これは実務でも非常に重要な場面です。たとえば、亡くなった方に多額の借金があり相続放棄をするけれども、残された家族の生活のために保険金は受け取りたい、というケースは珍しくありません。こうしたとき、相続放棄と保険金の受取は両立できます。相続放棄の手続きや期限について不安がある方は、先に基本を押さえておくと安心です。

ただし、順番には気をつけてください。相続放棄をするかどうかには家庭裁判所への手続きと期限があり、迷っているうちに期限を過ぎてしまうと、借金まで引き継ぐことになりかねません。保険金が受け取れるからと安心して放棄の判断を後回しにするのは禁物です。負債の有無や金額を早めに確認し、放棄すべきかどうかを冷静に見きわめることが大切です。判断に迷うときは、早い段階で専門家の力を借りるのが安全でしょう。

もう一点、見落としやすいのが税金の取り扱いです。相続放棄をしても保険金そのものは受け取れますが、放棄をした人は、相続税を計算するうえでの非課税の枠を使えなくなります。つまり、受け取れる金額は変わらなくても、税金の面では不利になることがあるわけです。放棄をするかどうかは、目の前の借金だけでなく、こうした税金への影響まで見比べて決めたいところです。判断材料が複雑に絡むため、自分だけで結論を出す前に専門家へ相談しておくと、後悔のない選択につながります。

注意
相続放棄をすると、生命保険金にかかる相続税の非課税の取り扱いが受けられなくなる点には気をつけてください。保険金そのものは受け取れますが、税金の計算上の優遇については扱いが変わります。受け取る前に専門家へ確認しておくと安心です。

生命保険金と相続税の関係

生命保険金は遺産分割の対象にはならない一方で、相続税の世界では少し違った扱いを受けます。税金の計算においては、生命保険金は相続によって取得したものとみなされ、課税の対象になることがあるのです。

「遺産じゃないのに税金はかかるの」と疑問に思うかもしれません。これは、税金の公平を保つための仕組みです。受取人固有の財産だからといって完全に税金の対象外にしてしまうと、保険を使えばいくらでも相続税を避けられることになってしまいます。そこで税法では、一定の生命保険金を相続税の課税対象として扱うことにしています。相続税の計算の全体像を知りたい方は、あわせて確認しておくとよいでしょう。

ここで大切なのは、「遺産分割の対象になるかどうか」と「相続税の対象になるかどうか」は別の問題だということです。生命保険金は、分け方の話し合いには出てこないけれど、税金の計算には出てくる。この二つの場面で扱いが違うことが、混乱のもとになりがちです。分割と課税は別ものだと整理しておくだけで、ぐっと見通しがよくなります。

この区別がついていないと、相続税の申告の場面で戸惑うことになります。「遺産分割協議書には保険金を載せていないのに、なぜ申告に出てくるのか」と疑問に思う方は実際に多くいます。これは、分割の対象ではないけれど課税の対象ではある、という保険金の二面性によるものです。申告にあたっては、分割した遺産とは別に、保険金の扱いを正しく反映させる必要があります。

ただし、生命保険金には相続税の負担を軽くするための非課税の枠が設けられています。これは、残された家族の生活を守るという保険の役割をふまえた配慮です。法定相続人の人数に応じて非課税となる範囲が決まる仕組みになっており、その枠の中におさまる保険金には相続税がかからない扱いになります。

具体的な金額は財産の状況や家族構成によって変わるため、ここでは「人数に応じた非課税の枠がある」という考え方を押さえておけば十分です。実際にいくらまでが非課税になるのかは、税理士など専門家に確認するのが確実でしょう。

たとえば、家族が複数いる世帯では、その人数に応じて非課税となる範囲が広がる仕組みになっています。残された家族が多いほど、生活を守るための配慮が手厚くなるイメージです。逆に、受取人が相続人でない場合には、この非課税の枠を使えないことがあります。誰を受取人にするかは、税金の面からも考えておきたいポイントだといえます。保険に入るときや見直すときには、この点を意識しておくと後悔が少なくなるでしょう。

受取人が誰かで変わる税金の扱い

生命保険金にかかる税金は、実は「誰が保険料を払い、誰が受け取るのか」という組み合わせによって、種類そのものが変わってきます。同じ保険金でも、契約の形によって相続税になったり、別の税金になったりするのです。ここを誤解していると、思っていた税金と違ったということになりかねません。

大まかに整理すると、次のような違いがあります。細かな条件は契約ごとに異なりますので、あくまで基本の考え方として捉えてください。

保険料を払った人 受け取る人 かかる税金の種類
亡くなった方 相続人など 相続税の対象になる
受け取る人自身 その本人 所得に対する税の対象になる
受け取る人以外の第三者 別の人 贈与に対する税の対象になる

たとえば、夫が保険料を払い、夫が亡くなったときに妻が受け取る場合は、相続税の枠組みで考えることになります。一方で、妻が自分で保険料を払っていて、夫の死亡をきっかけに妻自身が受け取る場合は、別の税の扱いになります。どの形にあたるのかは保険証券や契約内容を見ればわかりますので、心配なときは早めに確認しておきましょう。

この組み合わせを意識せずに保険に入ってしまうと、思っていたより重い税負担になってしまうことがあります。とくに、保険料を払う人と受け取る人と被保険者が、それぞれ別の人になっている契約には注意が必要です。よかれと思って親が子のために契約したつもりが、結果として贈与の扱いになり、想定外の税金がかかるといったケースもあります。契約の形は途中で見直すこともできますので、気になる場合は一度点検しておくと安心です。

すでに加入している保険についても、誰が保険料を負担しているのかを改めて確かめておく価値はあります。口座から保険料が引き落とされている名義と、実際にお金を出している人が違っていると、税務上の判断が変わることもあるからです。家族の保険をまとめて管理している場合は、この機会に契約内容を一覧にして整理しておくとよいでしょう。いざというときに慌てずにすみます。

契約を整理するときには、保険の種類、被保険者、受取人、保険料を払っている人の四つを書き出してみると、全体像がつかみやすくなります。複数の保険に入っていると、それぞれで受取人がばらばらになっていたり、昔のまま見直されていなかったりすることもあります。一覧にして眺めることで、思いがけない見落としに気づけることも少なくありません。家族で情報を共有しておけば、いざというときの手続きもぐっとスムーズになります。

生命保険金と遺留分の関係

もう一つ、相談の多いテーマが遺留分との関係です。遺留分とは、一定の相続人に法律で保障された最低限の取り分のことをいいます。特定の相続人だけに財産が偏ったとき、取り分を取り戻すために問題になるものです。

生命保険金は受取人固有の財産ですから、原則として遺留分の計算には含まれません。つまり、保険金を受け取ったからといって、それがそのまま遺留分の対象になるわけではないのが基本です。これは、保険を活用して特定の人に多くを残したい場合に意味を持ちます。

たとえば、事業を継ぐ子に多くの財産を残したいけれど、他の子の遺留分が気になる、という場面があります。こうしたとき、保険金という形であれば、原則として遺留分の枠の外で特定の人に資産を渡せる可能性があります。財産の分け方に偏りをつけたいとき、保険が一つの選択肢になるのはこのためです。生前の対策として保険が使われる理由の一つが、ここにあります。

ただし、こうした使い方をするときほど、他の相続人への配慮を忘れないことが大切です。法律上は遺留分の枠外であっても、受け取れる財産に大きな差がつけば、不満が生まれるのは自然なことです。なぜそのような分け方にしたのか、生前に家族へ思いを伝えておくだけでも、後の対立はずいぶん和らぎます。保険を対策に使うなら、お金のしくみと家族の気持ちの両面に目を配っておきたいところです。

もっとも、ここにも例外があります。保険金の額が他の相続財産と比べてあまりに大きく、相続人の間の公平を著しく欠くと評価されるような場合には、例外的に保険金が遺留分の計算で考慮されることがあります。遺留分そのものの考え方や請求の流れについては、あわせて押さえておくとよいでしょう。

保険を相続対策として使う場合、この遺留分との関係を意識しておくことはとても大切です。「保険金なら遺留分と無関係だから安心」と単純に考えてしまうと、後で他の相続人との間で争いになることもあります。バランスを欠いた設計になっていないか、専門家の目で確認してもらうと安心でしょう。

実際、財産のほとんどを保険金に振り向けて一人の相続人だけに受け取らせた結果、他の相続人との間で深刻な対立に発展した例もあります。「法律上は問題ないはず」という理屈だけで進めると、家族の感情面でしこりが残ることも少なくありません。対策としての保険は、税金や遺留分だけでなく、家族の納得感まで含めて設計することが大切です。気になる点があれば、契約を見直す前に専門家へ相談しておきましょう。

生命保険金を受け取るための手続き

では、実際に生命保険金を受け取るには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。手続きそのものは難しくありませんが、必要な書類をそろえることと、期限に気をつけることがポイントになります。大まかな流れは次のとおりです。

  1. 保険会社に連絡し、被保険者が亡くなったことを伝えます。契約番号がわかる保険証券を手元に用意しておくとスムーズです。
  2. 保険会社から請求に必要な書類が案内されます。死亡を証明する書類や、受取人であることを確認する書類などが求められます。
  3. 必要書類をそろえて保険会社に提出します。記入もれや書類の不足があると支払いが遅れるため、丁寧に確認しましょう。
  4. 保険会社の確認を経て、指定の口座に保険金が支払われます。内容に不明な点があれば、支払いの前に問い合わせておくと安心です。

ここで気をつけたいのが、請求には期限があるという点です。保険金を請求できる権利は、一定の期間が過ぎると行使できなくなってしまうことがあります。「いつかやればいい」と先延ばしにせず、落ち着いたら早めに手続きを進めておきましょう。受け取った後の相続財産の整理や名義変更について不安があれば、財産の種類ごとの扱いもあわせて確認しておくと役立ちます。

請求に必要な書類は、保険会社や契約の内容によって少しずつ異なります。一般的には、亡くなったことを示す書類や、受取人本人であることを確認できる書類、保険証券などが求められます。あらかじめどの書類が必要かを保険会社に問い合わせ、もれなくそろえておくと、やり取りの往復を減らせます。役所で取り寄せる書類には発行までに時間がかかるものもあるため、早めに動き始めるのがコツです。

また、受け取った保険金は、その後の相続税の申告にも関係してくることを忘れないでください。保険金を受け取って一段落したつもりでいると、申告の期限が思いのほか早く迫ってきます。相続税には申告と納付の期限があり、それを過ぎると余計な負担が生じることもあります。保険金を受け取ったら、それで終わりにせず、相続全体の手続きの中での位置づけを確認しておきましょう。何から手をつければよいか迷うときは、専門家に道筋を示してもらうのが安心です。

なお、保険金の請求にあたって、相続人どうしの関係がこじれていると、必要書類の取得に手間取ることもあります。受取人本人の請求は単独でできるのが原則ですが、戸籍など他の書類の収集で協力が必要になる場面もあります。手続きが滞りそうなときは、早い段階で専門家に相談しておくと、無用なトラブルを避けられます。相続税や評価に関する基本もあわせて確認しておくと、全体像がつかみやすくなるでしょう。

生命保険金にまつわるよくある誤解

最後に、生命保険金についてよく見られる誤解を整理しておきます。思い込みのまま手続きを進めると、後で「そんなはずではなかった」となりかねません。代表的なものを確認しておきましょう。

  • 保険金も遺産だから全員で分ける、という誤解。受取人が指定されていれば、原則として遺産分割の対象にはならず、受取人が単独で受け取れます。
  • 相続放棄をしたら保険金も受け取れない、という誤解。受取人固有の財産なので、相続放棄をしても保険金は受け取れます。
  • 遺産じゃないなら税金もかからない、という誤解。相続税の計算上は課税対象になりうるため、税金とは無関係とは言い切れません。
  • 保険金なら遺留分と完全に無関係、という誤解。原則は対象外ですが、額が大きく不公平が著しい場合には考慮されることがあります。

このように、生命保険金は「遺産ではないが、相続の場面では特別な扱いを受けるお金」という、少し複雑な性格を持っています。受取人固有の財産という基本を押さえたうえで、税金や遺留分との関係を一つずつ確認していけば、迷うことは少なくなるはずです。判断に悩む場面が出てきたら、自己流で進める前に、相続にくわしい専門家へ相談してみてください。

こうした誤解の多くは、「遺産」と「受取人固有の財産」がごちゃ混ぜになっていることから生まれます。生命保険金は遺産ではない、でも相続の場面ではいろいろな顔を見せる。この二つを切り分けて考えるだけで、たいていの疑問は整理できます。読者の中には、すでに保険金を受け取って手続きの最中だという方もいるかもしれません。そうしたときも、一つひとつの論点を落ち着いて確認していけば、必要な判断はきっとできるはずです。

生命保険金と相続に関するよくある質問

ここでは、生命保険金と相続について、特に多く寄せられる質問にお答えします。

受取人が先に亡くなっていた場合、保険金は誰のものになりますか

受取人として指定されていた人が被保険者より先に亡くなっている場合、その受取人の相続人が保険金を受け取ることになるのが一般的です。ただし、契約の内容によって扱いが変わることもあります。受取人の変更手続きがされていないまま時間が経っているようなときは、トラブルを避けるためにも、保険会社に確認したうえで必要なら受取人を見直しておくと安心です。

受取人が「相続人」とだけ指定されている場合はどうなりますか

受取人が特定の個人ではなく「相続人」とだけ指定されている場合でも、原則としては受取人固有の財産として扱われ、相続人がそれぞれの割合に応じて受け取ると考えられています。とはいえ、具体的な分け方をめぐって相続人の間で認識が食い違うこともあります。気になる場合は、保険会社や専門家に確認しておくとよいでしょう。

生命保険金を受け取ったことは他の相続人に知られますか

受取人が単独で請求して受け取る以上、手続きそのものを他の相続人に逐一報告する義務はありません。ただし、相続税の申告が必要になる場合には、申告の過程で保険金の存在が明らかになることがあります。受け取った保険金が税金とどう関係するのかは、申告の前にきちんと整理しておくことをおすすめします。

保険金で相続税を払うことはできますか

受け取った生命保険金を相続税の納税資金にあてることは可能です。むしろ、すぐに現金として受け取れる生命保険金は、不動産など分けにくい財産が多いケースで納税資金を準備する手段として活用されることがあります。納税まで見据えてどう備えるかは、相続全体の設計にかかわる問題ですので、専門家と一緒に考えておくと安心です。

離婚した元配偶者が受取人のままだとどうなりますか

受取人の変更手続きをしないまま離婚してしまうと、元配偶者が受取人として保険金を受け取ることになりかねません。保険の受取人は、離婚によって自動的に変わるわけではないからです。家族構成や人間関係が変わったときは、受取人の指定が今の意向に合っているかを必ず見直しておきましょう。思わぬ相手にお金が渡ってしまってから気づいても、取り返すのは簡単ではありません。

受け取った保険金の使い道に制限はありますか

受取人が自分の固有の財産として受け取る以上、その使い道に法律上の制限は原則としてありません。生活費にあてても、納税資金にあてても、受取人の自由です。ただし、相続放棄をした人が保険金を受け取る場合には、亡くなった方の借金の支払いにそのお金を使うと、放棄したはずの相続を承認したとみなされてしまうおそれがあります。放棄を予定しているなら、お金の使い方には慎重になってください。

保険金をめぐって相続人どうしでもめたら誰に相談すればよいですか

保険金が遺産分割や遺留分に関係するかどうかは、状況によって判断が分かれる難しい問題です。当事者だけで話し合っても折り合いがつかないことは珍しくありません。そうしたときは、相続をあつかう弁護士に早めに相談するのが近道です。法律上の整理を示してもらえば、無用な対立を避け、それぞれが納得できる落としどころを探りやすくなります。こじれてからより、こじれる前の相談がおすすめです。

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