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遺産分割協議とは?やり方と揉めないための注意点を解説

この記事で分かること

  • 遺産分割協議とは何か、なぜ必要なのか、その法的な役割
  • 遺産分割協議が必要なケースと不要なケースの違い
  • 遺産分割協議をしなかった場合に発生する具体的なデメリット
  • 遺産分割協議の正しい進め方と協議書の作成方法
  • 相続人に未成年者・認知症の方・行方不明者がいる場合の対応
  • 遺産分割協議で揉めないための予防策と、弁護士に相談すべきタイミング

遺産分割協議とは、相続人全員で遺産の分け方を話し合う手続きで、その結果をまとめた遺産分割協議書は相続の根拠となる重要な書類です。本記事では、協議が必要なケース、進め方の4つのステップ、必要な書類、揉めないためのポイントまで弁護士目線で詳しく解説します。相続人に未成年者や行方不明者がいる場合の対処法も分かります。

遺産分割協議とは?相続を進めるための重要な話し合い

身近な家族が亡くなり、相続が始まった。遺産があることは分かっているけれど、どうやって分ければいいのか分からない——。そんな悩みを抱えている方は決して少なくありません。

被相続人が亡くなった瞬間から、その方の財産は相続人のものとなります。しかし、誰が何を取得するかは決まっていません。相続人が自分の判断で勝手に財産を持ち出せば、それは法律上「窃盗」と評価されかねないのです。

遺産を公平に分け、相続人それぞれの利益を守る。そのために必要な手続きが、これからお話しする遺産分割協議です。

遺産分割協議の役割と法的な意味

遺産分割協議とは、相続人全員で集まり、亡くなった方の遺産をどのように分けるかを話し合う手続きのことです。話し合いがまとまれば、その内容を文書にまとめます。これが遺産分割協議書です。

民法では、相続が開始すると同時に、相続財産はいったん相続人全員の共有財産になると定めています。遺産分割協議は、この共有状態を解消し、それぞれの財産を個別の相続人のものにする作業といえます。

遺産分割協議書は相続の根拠となる重要書類

遺産分割協議の結果は、必ず遺産分割協議書という書面にまとめます。なぜ書面にする必要があるのでしょうか。

相続の場面では、後から「こんな約束はしていない」「言った・言わない」のトラブルが起きやすいからです。書面に残しておけば、言い逃れができません。さらに、不動産の名義変更や預貯金の解約手続きでは、ほぼ必ず遺産分割協議書の提出を求められます。協議書がないと、相続手続きが一歩も進まないのです。

裁判の証拠としても効力を持つ

遺産分割協議書は、裁判になったときの重要な証拠としても扱われます。後日、相続人の誰かが協議内容に不服を申し立てたとしても、適切に作成された協議書があれば、その内容に基づいて判断されるのが原則です。

つまり、遺産分割協議書は相続を法的に確定させる効力を持つ書類なのです。安易に作るのではなく、慎重に内容を検討する必要があります。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議書は、その後何十年にもわたって相続を証明する重要な書類です。一度作成すれば、相続人全員の同意なしに撤回することはできません。「とりあえず急いで作ろう」ではなく、内容を十分に検討してから作成することをおすすめします。不安があるなら、弁護士に内容のチェックを依頼するのも有効な手段です。

遺産分割協議が必要なケースと不要なケース

すべての相続で遺産分割協議が必要になるわけではありません。状況によって、必要な場合と不要な場合があります。

遺産分割協議が必要なケース

まずは、遺産分割協議が必要となるケースから見ていきましょう。

相続人が複数いる場合

遺産分割協議の最大の目的は、相続人同士で遺産を分けることです。当然ですが、相続人が複数いる場合に必要となります。

たとえば亡くなった父の相続人が長男・次男・長女の3人だとしましょう。父の遺産を3人で分けるためには、誰がどの財産を取得するかを話し合う必要があります。この話し合いが遺産分割協議です。

遺言書がない、または無効な場合

遺言書が残されている場合、原則としてその内容に従って遺産が分配されます。遺産分割協議は不要です。

しかし、遺言書がない場合や、遺言書があっても法的に無効と判断された場合は別です。遺言書がないのと同じ状態として、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。

遺言書は形式が厳格に決まっており、些細なミスで無効になることがあります。日付の記載漏れ、押印の欠落、自筆ではない部分の混入——どれも無効事由になります。「遺言書があるから安心」と思っていたのに、いざ蓋を開けたら無効だった、というケースは実務でもよく見かけます。

遺言書に記載のない財産がある場合

遺言書はあるけれど、すべての財産を網羅していないケースもあります。たとえば、遺言書作成後に新たに購入した不動産や、忘れていた預金口座などです。

このような場合、遺言書に書かれていない財産についてのみ、遺産分割協議が必要になります。遺言書がカバーしている部分は遺言書のとおりに、それ以外の部分は協議で決める。やや複雑な処理ですが、実務ではよくある状況です。

遺産分割協議が不要なケース

逆に、遺産分割協議が不要なケースもあります。

相続人が一人しかいない場合

相続人が一人しかいなければ、そもそも分ける相手がいません。遺産分割協議は不要です。

ただし注意点があります。相続人が一人でも、不動産の相続登記や預貯金の名義変更、相続税の申告は必要です。「協議が不要だから何もしなくていい」というわけではありません。

他の相続人全員が相続放棄をした結果、最終的に相続人が一人になったケースも同様です。協議は不要ですが、各種手続きは速やかに進めましょう。

有効な遺言書がすべての遺産を網羅している場合

法的に有効な遺言書があり、しかもその遺言書がすべての遺産について分配方法を指定している場合も、遺産分割協議は不要です。

ただし、相続人全員が合意すれば、遺言書の内容と異なる遺産分割を行うことも可能です。これを遺言と異なる遺産分割といいます。遺言の内容が現実に合わなくなっている場合などに使われる方法です。

遺産分割協議をしないとどうなる?4つのデメリット

「遺産分割協議が面倒だから後回しにしたい」と考える方もいらっしゃるかもしれません。実は、遺産分割協議をしなくても法律上の罰則はありません。しかし、放置することで生じるデメリットは決して小さくないのです。

不動産や預金の名義変更ができない

遺産分割協議が成立していない間、相続財産は相続人全員の共有状態にあります。共有状態のままでは、不動産の登記名義を変更することも、預貯金口座を解約することもできません

たとえば被相続人の自宅を相続したつもりでも、登記が亡くなった方の名義のままでは、その家を売ることも担保にすることもできません。預金口座も凍結されたまま。葬儀費用を立て替えた相続人が、被相続人の口座からそのお金を回収しようとしても、引き出せないのです。

なお、2024年4月からは相続登記が義務化されました。相続を知ってから3年以内に登記を行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

遺産を勝手に処分されるリスクがある

遺産分割協議が完了していないと、相続財産が誰のものかが法的に確定していません。この状態で他の相続人が勝手に財産を処分してしまうと、取り返すのが非常に困難になります。

たとえば、被相続人の口座から他の相続人が預金を引き出してしまった場合。「自分の取り分のはずだ」と主張されても、遺産分割協議書がなければ、誰がいくら取得すべきだったのかを証明できません。

合意した内容を後から覆されることがある

「家族で話し合って合意したのだから、書面なんて要らない」と考えるのは危険です。

口頭の合意も法律上は契約として成立しますが、証拠がなければ後から「そんな約束はしていない」と覆されるリスクが残ります。家族関係が良好な間はいいのですが、関係がこじれたとき、書面がないと泥沼の争いに発展しかねません。

相続税が高額になる可能性がある

相続税の申告期限は、相続開始を知った日から10か月以内です。この期間内に遺産分割協議がまとまらないと、いったん法定相続分で分割したものとみなして相続税を計算することになります。

問題は、遺産分割協議が未了だと各種の特例が使えない点です。

特例の名称 主な内容 協議未了時の扱い
配偶者の税額軽減 配偶者は1億6,000万円または法定相続分まで非課税 適用不可(後から修正申告で適用可能な場合あり)
小規模宅地等の特例 自宅の土地評価を最大80%減額 適用不可(同上)
農地等の納税猶予 農地相続時の相続税納税を猶予 適用不可

これらの特例が使えないと、本来支払う必要のない相続税を一時的に納めることになります。「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出すれば、後から特例適用も可能ですが、いずれにせよ手続きが煩雑になります。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議を後回しにすると、相続税の負担が重くなったり、不動産が活用できなかったりと、実害が次々と出てきます。「家族の話だから」と先送りせず、相続開始からなるべく早い時期に着手することが大切です。10か月後の相続税申告期限を一つの目安にして、計画的に進めましょう。

遺産分割協議の進め方|4つのステップ

それでは、実際に遺産分割協議をどう進めればよいのでしょうか。基本的な流れを4つのステップに分けて解説します。

  1. 相続財産を調査して財産目録を作る
  2. 戸籍を取り寄せて法定相続人を確定する
  3. 遺産の分け方を話し合う
  4. 遺産分割協議書を作成する

ステップ1:相続財産を調査して財産目録を作る

最初にやるべきことは、相続財産の全容を把握することです。

プラスの財産とマイナスの財産

相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産があります。両方をきちんと把握しないと、正しい判断ができません。

区分 具体例
プラスの財産 不動産(土地・建物)、預貯金、有価証券、自動車、貴金属、生命保険金(みなし相続財産)、貸付金
マイナスの財産 住宅ローン、消費者ローン、未払いの税金、未払いの医療費、保証債務

マイナスの財産がプラスの財産を上回る場合、相続放棄や限定承認を検討すべきです。財産調査が遅れると、3か月の熟慮期間内に放棄の判断ができなくなる恐れもあります。

財産調査の具体的な方法

財産調査の主な方法は次のとおりです。

  • 自宅の捜索:通帳、保険証券、不動産権利証、株券などを探す
  • 郵便物のチェック:金融機関、保険会社、証券会社からの通知
  • 金融機関への残高証明書請求:取引のある銀行に死亡日時点の残高を照会
  • 固定資産税の名寄帳:市町村役場で被相続人名義の不動産を一覧で確認
  • 信用情報機関への開示請求:借入の有無を調査

ステップ2:戸籍を取り寄せて法定相続人を確定する

次に、誰が相続人になるかを確定します。

被相続人の出生から死亡までの戸籍

法定相続人の特定には、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍が必要です。一通の戸籍だけでは判断できないことが多いのです。

転籍や婚姻、養子縁組などで戸籍が変わるたびに、新しい戸籍が作られます。古い戸籍にしか記載されていない子どもがいるかもしれません。本籍地を何度も移している場合、複数の市町村役場から戸籍を取り寄せる必要があります。

最近は戸籍の広域交付制度が始まり、本籍地以外の役所でも戸籍をまとめて取得できるようになりました。手続きの負担は以前よりかなり軽くなっています。

養子や前妻の子も相続人

戸籍を調査すると、思いがけない相続人が判明することがあります。よくあるのは次のようなケースです。

  • 被相続人が前の配偶者との間にもうけた子
  • 被相続人が認知した子(婚外子)
  • 被相続人が幼い頃に養子に出した、または受け入れた子

これらの方々も、現在の家族と同じく相続人です。「うちには関係ない」と決めつけず、必ず戸籍で確認することが大切です。

ステップ3:遺産の分け方を話し合う

財産と相続人が確定したら、いよいよ分け方の話し合いです。

分割方法の4つの種類

遺産分割には主に4つの方法があります。

分割方法 内容 適している場面
現物分割 不動産は長男、預金は次男など、財産を現物のまま分ける 遺産の種類や評価額が相続人数に応じて分けやすい場合
代償分割 一人が財産を取得し、他の相続人に代償金を支払う 分けにくい不動産がある場合
換価分割 遺産を売却して現金化し、その代金を分ける 誰も特定の財産を取得したがらない場合
共有分割 不動産などを相続人の共有名義にする 暫定的に共有としておきたい場合(後々のトラブルに注意)

実際の遺産分割では、これらを組み合わせることが多いです。たとえば「自宅は長男が現物で取得し、長男から次男に代償金300万円を支払う」というのは、現物分割と代償分割の組み合わせです。

全員集まらなくても協議は可能

「相続人全員の参加が必要」と聞くと、全員が一堂に会して話し合う必要があるように感じます。しかし実務上は、必ずしも対面で集まる必要はありません。

電話やメール、Web会議でやり取りしてもかまいません。最終的に協議書に全員の署名・押印が揃えば、遺産分割協議は成立します。遠方に住む相続人がいる場合は、書面を郵送で回す方法がよく使われています。

ステップ4:遺産分割協議書を作成する

話し合いの内容を文書にまとめる作業です。書式に決まりはありませんが、必要な要素はしっかり押さえる必要があります。

協議書に記載すべき項目

遺産分割協議書には、次の項目を記載します。

  • 被相続人の氏名、生年月日、死亡日、最後の住所と本籍
  • 相続人全員の氏名と住所
  • 遺産分割の内容(誰がどの財産を取得するか)
  • 後日新たな財産が見つかった場合の取り扱い
  • 作成年月日
  • 相続人全員の署名と実印による押印

不動産については、登記簿謄本の記載どおりに正確に記載することが重要です。一文字でも違うと、登記が通らないことがあります。

預貯金は、金融機関名・支店名・預金種類・口座番号まで特定して記載しましょう。

署名・実印・印鑑証明書の添付

遺産分割協議書には、相続人全員の署名と実印による押印が必要です。さらに、各人の印鑑証明書を添付します。

実印と印鑑証明書がセットで揃ってこそ、法的に有効な遺産分割協議書として機能します。認め印では不動産登記や預金解約に使えません。

契印・割印で偽造を防ぐ

遺産分割協議書が複数ページにわたる場合、各ページの見開き部分に契印を押します。これは「ページの差し替えがないこと」を示すためです。

協議書は相続人の人数分作成し、それぞれが原本を保管するのが一般的です。複数の協議書をホチキス留めしてから、全部にまたがるように割印を押す方法もあります。これも偽造防止のためです。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議書は一度作ってしまえば、相続人全員の合意がない限り変更できません。不動産の表示や金融機関の口座情報は、登記簿謄本や通帳の記載を見ながら正確に転記してください。形式不備があると、いざ手続きをしようとしたときに金融機関や法務局で受け付けてもらえません。作成段階で弁護士のチェックを受けると、こうしたミスを防げます。

遺産分割協議に全員参加できないときの対処法

遺産分割協議は相続人全員の参加が原則ですが、実際には「全員参加」が難しいケースがあります。状況別に対処法を見ていきましょう。

相続人に未成年者がいる場合

未成年者は単独で法律行為ができません。遺産分割協議も例外ではなく、未成年者を代理する人が必要です。

通常は親権者が法定代理人になります。しかし、親と未成年の子が同じ相続の相続人になっている場合は注意が必要です。

たとえば、亡くなった父の相続で、母と未成年の子がともに相続人になっているケース。母が子の代理人として協議に参加すると、母自身の利益と子の利益が衝突します。これを利益相反といい、母は子の代理人になれません。

このような場合は、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。特別代理人は、未成年の子の利益を守る立場で協議に参加します。

相続人に認知症の方がいる場合

相続人の中に認知症で判断能力が低下した方がいる場合も、その方は遺産分割協議に有効に参加できません。代わって参加してくれる人として、成年後見人が必要になります。

成年後見人がいない場合は、家庭裁判所に成年後見人選任の申立てをします。成年後見人と被後見人の双方が同じ相続の相続人になっている場合は、未成年者のケースと同様に、特別代理人の選任が必要です。

相続人が行方不明の場合

相続人の一人と連絡が取れない場合、まずは戸籍の附票を取り寄せて住所を調査します。それでも見つからない場合は、次の2つの方法があります。

  • 不在者財産管理人選任の申立て:本人の生死不明の期間が短い、または生きている可能性が高い場合
  • 失踪宣告の申立て:7年以上の間、本人の生死が不明な場合

不在者財産管理人は、行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加します。失踪宣告がされると、本人は法律上死亡したものとみなされ、その相続人が代わって協議に参加することになります。

相続人が協議に応じてくれない場合

連絡は取れるけれど、協議に応じてくれない相続人がいることもあります。「自分の取り分が少ない」「他の相続人と顔を合わせたくない」など、理由はさまざまです。

このような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てる方法があります。調停では、調停委員が間に入って各相続人の意見を聞き、合意の方向を探ります。調停でもまとまらないときは審判に移行し、裁判官が分割内容を決定します。

遺産分割協議後に必要な手続き

遺産分割協議書ができあがれば、それで終わりではありません。協議書に基づいて、各種の名義変更や税務手続きを進める必要があります。

不動産の相続登記(名義変更)

不動産を相続した場合は、法務局で相続登記を行います。前述のとおり、2024年4月からは相続登記が義務化されており、原則として相続を知ってから3年以内に登記しなければなりません。

必要書類は次のとおりです。

  • 登記申請書
  • 遺産分割協議書(相続人全員の署名・実印あり)
  • 相続人全員の印鑑証明書
  • 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
  • 相続人全員の戸籍謄本
  • 不動産取得者の住民票
  • 固定資産評価証明書

預貯金・有価証券の名義変更

預貯金は、被相続人の死亡が金融機関に伝わると口座が凍結されます。凍結を解除して払い戻しを受けるには、各金融機関で相続手続きを行います。

金融機関ごとに必要書類が微妙に異なりますが、おおむね遺産分割協議書、相続人全員の戸籍と印鑑証明書、被相続人の戸籍などが必要です。手続きには金融機関ごとに数週間かかることもあるので、複数の口座がある場合は早めに動きましょう。

相続税の申告と納付

相続税の申告期限は、相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。この期限内に税務署に申告書を提出し、相続税を納付します。

相続税には基礎控除があり、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」を超える遺産がなければ申告自体が不要です。たとえば法定相続人が3人なら、4,800万円までは非課税です。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議が終わってからの手続きも、意外と時間とエネルギーを使います。とくに不動産の相続登記は、必要書類の準備だけでも一苦労です。手続きのプロである弁護士や司法書士に依頼すれば、書類の準備から法務局・金融機関とのやり取りまで一括して任せられます。費用はかかりますが、平日の昼間に動けない方には特に有効な選択肢です。

遺産分割協議で揉めないための4つのポイント

遺産分割協議の最大の難所は、手続きの煩雑さよりも相続人同士の人間関係です。仲の良かった家族が、相続をきっかけに絶縁状態になることも珍しくありません。揉めないために知っておきたいポイントをまとめます。

感情的な対立が相続争いの本質

「相続争いはお金持ちの話」と思っていませんか。実は、家庭裁判所で扱われる遺産分割事件のうち、遺産総額1,000万円以下のケースが約3割を占めます。5,000万円以下まで広げると、全体の約7割に達します。

なぜ財産規模に関わらず争いが起きるのか。それは、相続争いの本質が金額ではなく感情だからです。

「親の介護を一人で担ったのに、何ももらえないのか」「兄ばかり可愛がられていた、その不満が今ぶり返してきた」——こうした蓄積された感情が、相続をきっかけに噴き出します。「合理的な遺産分割」だけで解決できる問題ではないのです。

不動産は分けにくい財産だと心得る

相続トラブルの原因として特に多いのが、不動産の扱いです。

不動産は金額が大きく、しかも物理的に分けることが困難です。「実家を残したい長男」と「現金化したい次男」が対立すれば、解決は容易ではありません。共有名義にすればその場は収まりますが、将来売却や建て替えの場面で再び対立が再発する可能性があります。

被相続人が生前に対策をしておくのが理想です。不動産を生前に売却して現金化しておく、相続させたい相続人を遺言で指定しておく、生命保険を活用して代償金の原資を作っておく——いくつかの方法が考えられます。

遺言書を作っておくことが最善の予防策

遺産分割協議で揉めないための最も確実な方法は、被相続人が生前に遺言書を作成しておくことです。

有効な遺言書があれば、相続人は基本的にその内容に従います。協議の必要がないので、揉める余地が大幅に減ります。遺留分という最低限の権利は残りますが、遺言なしで全面的に争うよりはずっとマシです。

公正証書遺言なら無効になるリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため紛失の心配もありません。「まだ早い」と思わず、健康なうちに作成を検討することをおすすめします。

第三者として弁護士を立てる効果

すでに相続人同士の関係がこじれている場合は、第三者である弁護士を間に入れることで解決が進みやすくなります。

家族同士だと、過去の不満や感情が前面に出て、冷静な話し合いが難しくなります。弁護士が間に立つことで、論点が整理され、法的な観点から落としどころを探ることができます。「弁護士に言われたから仕方ない」という形で、納得しやすくなる効果もあります。

遺産分割協議は弁護士に相談すべきケース

遺産分割協議は自分たちだけで進めることもできますが、次のようなケースでは弁護士への相談を検討すべきです。

相続人同士の関係が良くない場合

すでに相続人同士の関係に亀裂がある場合、自力で協議をまとめるのは至難の業です。話し合いをすればするほど感情がこじれ、修復不可能な対立に発展することも。

早めに弁護士に依頼すれば、相続人同士で直接やり取りせずに済みます。窓口を弁護士に一本化することで、感情的な摩擦を避けながら協議を進められます。

遺産に不動産や事業用資産が含まれる場合

不動産や事業用資産が含まれる相続は、評価方法が複雑で、分割方法の選択肢も多岐にわたります。

不動産の評価ひとつとっても、路線価による評価、固定資産税評価額、不動産業者の査定価格など、複数の指標があります。相続人によって主張する評価額が異なるとき、どう調整するか。事業用資産であれば、事業承継の問題も絡んできます。専門家のサポートなしに進めるのは、リスクが大きすぎます。

相続人の中に行方不明者・未成年者がいる場合

行方不明の相続人がいる場合は、不在者財産管理人選任や失踪宣告という家庭裁判所の手続きが必要です。未成年者がいれば特別代理人の選任が必要になることもあります。

これらはいずれも家事事件の専門知識が要求される手続きです。一般の方が手探りで進めると、書類不備で何度もやり直すことになります。家事事件に精通した弁護士に依頼するほうが、結果的に時間とコストの節約になります。

遺産分割協議に関するよくある質問

最後に、相談現場でよく寄せられる質問にお答えしておきましょう。

遺産分割協議に期限はある?

遺産分割協議そのものに期限はありません。相続開始から何年経っていても、協議自体は可能です。

ただし、関連する手続きには期限があります。

  • 相続放棄:相続を知ってから3か月以内
  • 相続税の申告:相続開始を知った日から10か月以内
  • 相続登記:相続を知ってから3年以内(2024年4月以降)
  • 遺留分侵害額請求:相続と侵害を知ってから1年以内

これらの期限を意識して、できるだけ早く協議を進めることが大切です。

遺産分割協議書は自分で作れる?

法律上は、相続人自身で作成することも可能です。書式に決まりはなく、必要事項さえ記載してあれば有効です。

ただし、一般の方が作成すると、不動産の表示が不正確だったり、後日のトラブル防止条項が抜けていたりすることがよくあります。せっかく作った協議書が、登記や金融機関の手続きで使えないというケースも見かけます。

簡単な内容なら自分で作成できますが、財産が複雑だったり相続人が多かったりする場合は、弁護士に依頼するほうが確実です。

後から財産が見つかったらどうする?

協議成立後に新たな財産が見つかることは、実務でもよくあります。対処法は、協議書に「後日発見された財産の取り扱い」を記載しておくかどうかで変わります。

協議書に「後日発見された遺産は、相続人〇〇が取得する」「後日発見された遺産については、別途協議する」などと書いてあれば、その規定に従います。記載がない場合は、新たに発見された財産について改めて遺産分割協議をやり直すことになります。

協議書を作成する段階で、こうしたトラブル防止の条項を入れておくことが肝心です。

まとめ:遺産分割協議は早めの着手と専門家への相談が鍵

遺産分割協議は、相続を法的に確定させるための重要なステップです。協議書がなければ、不動産の名義変更も預金の解約も進みません。相続税の特例も使えず、結果的に余計な税負担が発生することもあります。

協議の進め方は、財産調査、相続人の確定、話し合い、協議書作成という4つのステップ。一見シンプルですが、相続人の中に未成年者や認知症の方、行方不明者がいると、手続きは一気に複雑になります。

何より厄介なのが、相続人同士の感情的な対立です。財産の額に関わらず、長年積み重なった感情が相続をきっかけに噴き出します。「うちは仲が良いから大丈夫」と油断していると、思わぬ形でトラブルに発展することも。

遺産分割協議で迷ったら、相続実務に精通した弁護士に相談してみてください。第三者の専門家が間に入ることで、感情的な対立を避けながら、法的にも適切な解決策を見つけられます。早めの相談が、結果的に円満な相続への近道になります。

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5,000万円
2人

基礎控除額

4,200万円

課税対象額

800万円

相続税の総額(概算)

80万円

申告が必要です

※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。

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