27,412view
相続放棄の手続き完全ガイド|期限・流れ・必要書類を解

この記事で分かること
- 相続放棄の手続きの全体的な流れと、5つのステップごとの具体的な進め方
- 相続放棄の期限である「3ヶ月」のルールと、期限を過ぎてしまった場合の対処法
- 相続放棄の申述に必要な書類と、立場別(配偶者・子・親・兄弟姉妹)の追加書類
- 相続放棄をするときに絶対やってはいけない行為と、その他の注意点
- 弁護士に相続放棄を依頼するメリット・デメリットと、費用の相場
- 相続放棄をすべきか、限定承認にすべきかの判断基準
相続放棄の手続きは、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。本記事では、相続放棄の流れを5つのステップに分けて解説し、必要書類、注意点、弁護士に依頼するメリット・デメリットまで弁護士目線で詳しく説明します。期限を過ぎてしまった場合の対応や、過払い金がある場合の判断基準も分かります。
目次[非表示]
相続放棄の手続きとは?まずは基本を理解しよう
身近な家族が亡くなり、いざ遺品を整理していたら、知らない借金が次々と出てきた——。そんな経験をされた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
両親や配偶者の正確な金銭事情を、生前にすべて把握しているケースは意外と少ないものです。表面的には余裕がありそうに見えても、実際は病気の治療費で貯金を使い果たし、借金まで残していた。こうした話は、相続の現場で珍しくありません。
相続では、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も引き継ぎます。借金が遺産を上回るような状況では、何もしなければ相続人が借金を肩代わりすることになるのです。そんな事態を回避する手段の一つが、これからお話しする相続放棄です。
相続放棄が必要になるケース
相続放棄を検討すべき典型的なケースは、次のような状況です。
- 被相続人に明らかに多額の借金があり、プラスの財産では返しきれない
- 連帯保証人になっていた可能性があり、保証債務の引継ぎを避けたい
- 事業を営んでいた被相続人で、事業に関する負債の全容が見えない
- 遠縁の親族の相続人になったが、関わりたくない
- 相続争いに巻き込まれたくない
「お金の問題」だけでなく、人間関係を理由に放棄を選ぶ方も少なくありません。どんな理由であれ、相続放棄は相続人に与えられた正当な権利です。
相続には3つの方法がある
相続放棄を理解するには、まず相続全体の選択肢を知ることが大切です。法律は相続人に対して、3つの方法を用意しています。
単純承認|原則的な相続方法
単純承認は、プラスの財産もマイナスの財産も、すべて条件なしで引き継ぐ方法です。何も手続きをしなければ、自動的に単純承認したものとみなされます。
最もシンプルな相続方法ですが、借金が遺産を上回る場合は、相続人が自分の財産でその差額を支払わなければなりません。
限定承認|プラスの範囲内でマイナスも引き継ぐ
限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ方法です。仮に借金が遺産を上回っても、相続した財産以上に支払う義務はありません。
「借金がいくらあるか分からない」「自宅だけは残したい」といった場合に検討する方法です。ただし、相続人全員の同意が必要で、財産目録の作成や家庭裁判所への申述など、手続きが煩雑になる点がネックです。
相続放棄|すべての財産を引き継がない
相続放棄は、プラスもマイナスもすべての財産を引き継がない方法です。借金は背負わずに済みますが、不動産や預貯金などのプラスの財産も一切受け取れません。
借金の方が明らかに多い場合は、相続放棄が最もシンプルで確実な選択肢になります。
相続放棄と限定承認の違い
相続放棄と限定承認は混同されがちですが、内容も手続きも大きく違います。
| 項目 | 相続放棄 | 限定承認 |
|---|---|---|
| 引き継ぐ財産 | プラスもマイナスも引き継がない | プラスの範囲内でマイナスを引き継ぐ |
| 相続人としての地位 | はじめから相続人でなかったとみなされる | 相続人としての地位は維持される |
| 申述する人 | 放棄したい相続人が単独で可能 | 相続人全員の同意が必要 |
| 手続きの複雑さ | 比較的シンプル | 財産目録の作成など煩雑 |
| 期限 | 相続を知ってから3ヶ月以内 | 相続を知ってから3ヶ月以内 |
相続放棄の手続きには3ヶ月の期限がある
相続放棄を検討するうえで、絶対に押さえておきたいのが期限です。
「相続を知った日から3ヶ月」が原則
民法915条では、相続放棄の申述は「自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に行うべきと定めています。この3ヶ月の期間を「熟慮期間」と呼びます。
「相続を知った時」とは、ふつうは被相続人の死亡を知った日のことです。子や配偶者であれば、死亡日とほぼ同じになります。
ただし、後順位の相続人(先順位が放棄したことで自分が相続人になった場合など)では、起算点が異なることがあります。「自分が相続人になったことを知った日」がスタート地点です。
3ヶ月を過ぎると単純承認とみなされる
3ヶ月の熟慮期間内に何もアクションを起こさないと、単純承認したものとみなされます。これを「法定単純承認」といいます。
法定単純承認になってしまうと、後から借金が判明しても原則として放棄はできません。「知らなかった」では済まないのが、相続放棄の厳しいところなのです。
人が亡くなった直後は、葬儀の手配や役所の手続き、四十九日の法要など、心身ともに余裕がない時期です。「3ヶ月もある」と思っていても、実際にはあっという間に過ぎてしまいます。
熟慮期間の延長(伸長)が認められるケース
事情があって3ヶ月以内に判断できない場合、家庭裁判所に「熟慮期間の伸長」を申し立てることができます。延長期間は、通常さらに3ヶ月程度です。
伸長が認められやすいのは、次のような事情がある場合です。
- 相続財産の調査に時間がかかっている
- 被相続人の事業の状況把握が複雑
- 相続人が遠方や海外にいて、すぐに動けない
- 相続人同士で限定承認の協議をしている最中
伸長の申立ても、当然ながら3ヶ月以内に行う必要があります。「ぎりぎりまで悩んで、結局期限を過ぎてしまった」では遅いのです。
3ヶ月経過後でも相続放棄が認められた事例
「もう3ヶ月過ぎてしまった」と諦めるのは早いかもしれません。例外的に、3ヶ月経過後でも相続放棄が認められたケースが過去にあります。
最高裁は昭和59年の判決で、相続人が被相続人の死亡を知ってから3ヶ月以内に相続財産を調査することが期待できない事情があり、しかも相続人がそれを信じるに相当な理由があるときは、相続財産の存在を知った日から3ヶ月を起算すると判示しました。
つまり、「借金の存在を知ったとき」が起算点になり得るということです。具体例で言えば、こんなケースです。
- 被相続人とは長年疎遠で、財産があるとは思っていなかった
- 相続から半年後、突然債権者から請求書が届いた
- 調査したら、被相続人に多額の借金があったと判明した
このような場合、債権者からの請求を知った日から3ヶ月以内に申述すれば、相続放棄が認められる可能性があります。
ただし、これはあくまで例外的な扱いです。すべての3ヶ月経過後のケースで認められるわけではありません。事情を丁寧に説明する書面の準備が必要で、専門家のサポートなしで進めるのはかなり難しいでしょう。
相続放棄の手続きの流れ|5つのステップ
それでは、相続放棄の具体的な進め方を見ていきましょう。手続きは大きく5つのステップに分かれます。
ステップ1:相続財産の調査をする
相続放棄を選ぶかどうかを判断するには、まず相続財産の全体像を把握することが必要です。
プラスの財産・マイナスの財産の両方を確認
調査対象になるのは、プラスの財産とマイナスの財産の両方です。
| 区分 | 具体例 | 調査方法 |
|---|---|---|
| プラスの財産 | 不動産、預貯金、有価証券、自動車、貴金属 | 権利証、通帳、証券会社の取引報告書を確認 |
| マイナスの財産 | 住宅ローン、消費者ローン、税金未払い、保証債務 | 請求書、契約書、信用情報機関への照会 |
金融機関や信用情報機関への照会
借金の有無を確認する有力な手段が、信用情報機関への開示請求です。日本には主に3つの信用情報機関があります。
- CIC(割賦販売・クレジット会社系)
- JICC(消費者金融系)
- 全国銀行個人信用情報センター(銀行系)
3つすべてに開示請求すれば、被相続人がどこからいくら借りていたかが、ほぼ網羅的に判明します。一機関あたり数百円〜千円程度の手数料で、相続人としての立場で開示を受けられます。
調査に時間がかかりそうな場合は、先に熟慮期間の伸長を申し立てておくと安心です。
ステップ2:必要書類を準備する
放棄を決めたら、家庭裁判所に提出する書類を集めます。
すべての相続人に共通する書類
申述人の立場に関わらず、共通して必要な書類は次のとおりです。
- 相続放棄申述書
- 被相続人の住民票除票(または戸籍の附票)
- 申述人の戸籍謄本
- 収入印紙(800円分)
- 連絡用の郵便切手(家庭裁判所により金額が異なる)
申述人の立場別に必要な書類
被相続人との関係によって、追加で必要な書類が変わります。
| 申述人の立場 | 追加で必要な書類 |
|---|---|
| 配偶者 | 被相続人の死亡記載のある戸籍(除籍)謄本 |
| 子(第一順位) | 被相続人の死亡記載のある戸籍(除籍)謄本 |
| 孫(代襲相続) | 本来の相続人(子)の死亡記載のある戸籍謄本 |
| 父母(第二順位) | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、被相続人の子(および代襲者)の死亡記載のある戸籍謄本 |
| 兄弟姉妹(第三順位) | 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、被相続人の父母の死亡記載のある戸籍謄本、被相続人の子(および代襲者)の死亡記載のある戸籍謄本 |
兄弟姉妹が放棄する場合、必要書類が一気に増えます。「先順位の相続人がいない、または全員放棄したこと」を戸籍で証明する必要があるためです。書類集めだけで数週間かかることも珍しくありません。
ステップ3:相続放棄申述書を作成する
相続放棄申述書は、家庭裁判所所定の書式があります。裁判所のウェブサイトからダウンロード可能です。
申述書には、次のような項目を記入します。
- 申述人の本籍、住所、氏名、生年月日
- 被相続人の本籍、最後の住所、氏名、死亡日
- 被相続人との関係
- 相続の開始を知った日
- 放棄の理由
- 相続財産の概要
「相続の開始を知った日」と「放棄の理由」は特に重要です。3ヶ月の起算点に直結する項目だからです。記載に迷う場合は、慎重に判断しましょう。
ステップ4:家庭裁判所に申述する
書類が揃ったら、家庭裁判所に提出します。
申述先の家庭裁判所
申述先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。申述人の住所地ではない点に注意してください。
提出方法は、窓口持参でも郵送でも構いません。郵送の場合は、書留など追跡できる方法を使うと安心です。
申述にかかる費用
家庭裁判所への申述自体にかかる費用は、それほど大きくありません。
- 収入印紙:800円(申述人1人あたり)
- 郵便切手:500円〜1,500円程度(裁判所による)
- 戸籍謄本などの取得費用:合計1,000円〜数千円
弁護士に依頼しなければ、実費は数千円で収まります。手続き自体のハードルは決して高くありません。
ステップ5:照会書への回答と受理通知書の受領
申述書を提出すると、家庭裁判所から照会書が送られてきます。これは、相続放棄の意思や財産処分の有無などを確認するための書面です。
照会書には、次のような質問が記載されています。
- 相続放棄の意思に変わりはないか
- 被相続人の財産を処分または隠匿していないか
- 相続の開始を知った経緯と日時
- 放棄を決めた理由
回答内容によっては、相続放棄が受理されないこともあります。慎重に記入することが大切です。
照会書を返送し、家庭裁判所が問題ないと判断すれば、相続放棄申述受理通知書が送られてきます。これで相続放棄の手続きは完了です。
債権者から請求が来た場合は、この受理通知書のコピーを送れば取り立てが止まります。さらに公的な証明が必要なときは、相続放棄申述受理証明書を別途取得することもできます(手数料1通150円)。
相続放棄の手続きで注意すべき5つのポイント
相続放棄は手続き自体はシンプルですが、ちょっとしたミスで取り返しのつかないことになる場合があります。とくに注意すべき5つのポイントを解説します。
遺産には絶対に手をつけない
相続放棄を考えているなら、遺産には一切手をつけてはいけません。
民法921条1号は、相続人が「相続財産の全部または一部を処分したとき」は、単純承認したものとみなすと定めています。これを法定単純承認といいます。
具体的に注意すべき行為は次のとおりです。
- 被相続人の預金を引き出して使う
- 被相続人名義の不動産を売却する
- 被相続人の自動車を譲渡または廃車にする
- 被相続人の借金を遺産から返済する
- 遺産分割協議に参加して合意する
「葬儀代に充てるため少し引き出した」だけでも、後で問題になることがあります。とくに、被相続人名義の家財や貴金属を持ち帰ったり処分したりすると、法定単純承認とみなされるリスクがあります。
ただし、ごく常識的な範囲の葬儀費用を遺産から支出することは、過去の判例で認められています。あくまで「常識的な範囲」が前提です。豪華な葬儀のために高額を引き出すと、財産処分とみなされかねません。
相続放棄は親族全体に影響する
自分が相続放棄をすると、それで終わりではありません。次順位の相続人に相続権が移るのが、相続放棄の重要なポイントです。
第二順位・第三順位への波及
相続の順位は、次のように決まっています。
| 順位 | 相続人 |
|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 |
| 第一順位 | 子(および代襲相続人としての孫) |
| 第二順位 | 父母(直系尊属) |
| 第三順位 | 兄弟姉妹(および代襲相続人としての甥姪) |
たとえば、配偶者と子が全員相続放棄すると、被相続人の父母に相続権が移ります。父母も全員放棄すれば、次は兄弟姉妹に。借金を負わせたくないからと放棄したのに、結果的に親や兄弟に借金が回ってしまうこともあるのです。
事前に親族へ伝えておく重要性
相続放棄の事実を、後順位の相続人に事前に知らせておくことが大切です。
「自分は放棄したから関係ない」では済まされません。後順位の相続人も、自分が相続人になったことを知ってから3ヶ月以内に放棄しなければ、借金を背負うことになります。
事前に連絡があれば、後順位の親族も対応する時間が確保できます。連絡なしに放棄してしまうと、突然債権者から請求書が届いて、慌てふためくことに。家族関係に大きな亀裂が入る原因にもなります。
一度受理された相続放棄は撤回できない
相続放棄が家庭裁判所に受理されると、原則として撤回できません。
「やっぱり相続したい」と気が変わっても、後戻りはできないのです。たとえば、放棄後に思いがけない高額の財産が判明したとしても、放棄の効力が覆ることはありません。
撤回が認められるのは、詐欺・強迫によって放棄させられた場合や、未成年者が法定代理人の同意なく放棄した場合など、ごく限られたケースだけです。慎重な判断が求められます。
相続放棄しても受け取れる財産がある
相続放棄をしても、すべての財産が受け取れなくなるわけではありません。例外的に、放棄しても受け取れる財産があります。
- 生命保険金:受取人が指定されているもの。受取人固有の権利として扱われる
- 死亡退職金:会社の規程で受取人が指定されているもの
- 遺族年金:受給権者固有の権利
- 香典:喪主への贈与とみなされる
- 祭祀財産:墓地や仏壇など(民法897条)
これらは法律上、相続財産とは別の扱いです。相続放棄をしても受け取れます。
ただし、生命保険金にはみなし相続財産として相続税が課税される場合があります。注意してください。
消費者金融からの借金は過払い金の可能性も
被相続人に消費者金融からの借金があると分かった瞬間、すぐに相続放棄を考える方もいるかもしれません。しかし、慌てるのは禁物です。
長期間にわたって消費者金融から借入をしていた場合、過払い金が発生している可能性があります。過去に違法な高金利(グレーゾーン金利)で支払っていた場合、本来支払う必要のなかった利息分を返還請求できるのです。
過払い金の請求は、借主が亡くなった後でも相続人が行使できる権利です。借金だと思っていたものが、実はプラスの財産だった、というケースは決して珍しくありません。
しかし、相続放棄をしてしまうと、過払い金の請求権も放棄したことになります。借金の額面だけを見て即座に放棄すると、損をするかもしれないのです。
被相続人に消費者金融からの長期の借入がある場合は、まず取引履歴を取り寄せ、過払い金の有無を確認することをおすすめします。
相続放棄の手続きを弁護士に依頼するメリット
相続放棄は自力で進めることもできます。それでも、弁護士に依頼するメリットは決して小さくありません。
3ヶ月の期限内に確実に手続きを完了できる
相続放棄の最大のハードルは、3ヶ月という時間的制約です。
被相続人が亡くなった直後の数ヶ月は、葬儀、四十九日、各種手続き、相続人の連絡など、やるべきことが山積みです。仕事を続けながら、平日の昼間に役所や家庭裁判所に通い、戸籍を集め、書類を作る——多くの方にとって、これは現実的に厳しい作業です。
弁護士に依頼すれば、書類の準備から提出まですべて代行してもらえます。期限切れで放棄ができなくなるリスクが、大幅に下がります。
必要書類の収集を任せられる
相続放棄の必要書類は、申述人の立場によって変わります。とくに兄弟姉妹が放棄する場合、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍が必要で、収集に時間と手間がかかります。
弁護士には職務上請求という制度があり、戸籍を効率的に取り寄せることができます。複数の本籍地を経由している被相続人の戸籍も、スムーズに揃えられます。
家庭裁判所からの照会にも適切に対応
家庭裁判所から送られてくる照会書への回答は、相続放棄が受理されるかどうかを左右する重要な手続きです。
「相続の開始を知った日」「相続財産の処分の有無」など、回答内容によっては受理されないこともあります。弁護士に依頼していれば、回答案を一緒に検討してもらえるので安心です。
債権者からの取り立て対応を任せられる
被相続人に借金があれば、当然債権者から相続人に連絡が入ります。「いつ支払うのか」「分割でも構わないので返してほしい」——こうした連絡を受けるのは、精神的にも辛いものです。
弁護士に依頼していれば、債権者対応も窓口を一本化できます。「相続放棄の手続き中なので、すべて弁護士を通してほしい」と言うだけで、直接の取り立てが止まるのです。手続き完了後は、受理通知書を送付して債務の承継がないことを通知します。
3ヶ月経過後の難しいケースにも対応可能
3ヶ月の熟慮期間を過ぎてしまった場合、相続放棄が受理されるかは個別の事情次第です。前述のとおり、最高裁判例で例外的に認められるケースがあります。
ただ、こうした難しいケースで申述書を作成し、家庭裁判所を説得するには、相当な専門知識が必要です。判例の理解、事情説明書の作成、家庭裁判所からの照会への対応——これらをすべて自力でこなすのは、ほぼ不可能でしょう。
期限経過後の相続放棄こそ、弁護士に依頼すべき場面です。一発勝負の申述で確実に受理を勝ち取るために、専門家の力を借りる価値は十分にあります。
相続放棄の手続きを弁護士に依頼するデメリット
弁護士に依頼することの最大のデメリットは、やはり費用です。
費用が発生する
弁護士に依頼すると、いくつかの種類の費用が発生します。
相談料
最初に相談する際にかかる費用です。30分5,000円〜1万円程度が一般的ですが、最近は初回相談無料とする事務所も増えています。
複数の事務所で相談してから依頼先を決める方法もあります。話しやすさや説明の分かりやすさは、依頼後の満足度に直結する要素です。
着手金
正式に依頼するときに支払う費用です。手続きの結果に関わらず、業務開始の対価として支払います。
相続放棄の場合、着手金は5万円〜10万円程度が相場です。事務所によっては成功報酬込みの定額制を採用していることもあります。
実費
戸籍謄本の取得費用、郵便切手代、収入印紙代、家庭裁判所までの交通費など、手続きに必要な実費です。5,000円〜数万円程度になります。
報酬金
相続放棄が受理されたときに支払う成功報酬です。着手金込みのプランなら別途発生しないこともありますが、別建ての場合は5万円〜10万円程度が一般的です。
弁護士費用の相場
実際に弁護士に依頼した場合の費用感をまとめると、次のとおりです。
| 事案の難易度 | 費用の目安 | 該当するケース |
|---|---|---|
| 標準的な事案 | 5万円〜10万円程度 | 3ヶ月以内、書類が揃いやすい、配偶者・子の放棄 |
| やや複雑な事案 | 10万円〜15万円程度 | 兄弟姉妹の放棄、戸籍収集が複雑 |
| 難しい事案 | 15万円〜30万円程度 | 3ヶ月経過後の放棄、複数人の同時放棄 |
事務所によって料金体系は大きく異なります。事前の見積もりを必ず確認し、納得したうえで依頼することが大切です。
相続放棄をしないほうがよいケース
借金があるからといって、即座に相続放棄を選ぶのは早計です。放棄しないほうがよいケースもあります。
過払い金が発生している可能性がある場合
先ほども触れましたが、消費者金融からの長期の借入がある場合、過払い金が発生している可能性があります。
過払い金の有無は、消費者金融に取引履歴を開示請求して初めて分かります。借金額面だけを見て放棄すると、本来手にできた過払い金まで失うことになりかねません。
長期の借入の痕跡があれば、まず過払い金の調査を優先しましょう。
プラスの財産が借金を上回る場合
借金があっても、プラスの財産がそれを上回るなら、相続したほうが得です。
調査の結果、トータルでプラスになるなら単純承認でかまいません。借金の支払いを怠らずに済む計画を立てれば、相続放棄するより手元に残る財産が多くなります。
形見など特定の財産だけは残したい場合
「父の遺した時計だけは持っておきたい」「母の写真や思い出の品は手元に残したい」——こうした思いで相続を考える方もいらっしゃるでしょう。
ただし、相続放棄をするとすべての財産を受け取れなくなるのが原則です。特定の遺品だけを受け取ると、財産処分とみなされて法定単純承認になるリスクがあります。
このような場合は、限定承認を検討する、もしくは事前に弁護士に相談して、何をどこまで持っていいかを確認することをおすすめします。
相続放棄の手続きでよくある質問
最後に、相続放棄に関してよく寄せられる質問に答えていきます。
相続放棄をしたら次の順位の相続人はどうなる?
自分が相続放棄をすると、同順位の他の相続人と次順位の相続人に相続権が移ります。
たとえば、被相続人に配偶者と子が2人いたケース。子が2人とも放棄すると、配偶者と被相続人の父母(または兄弟姉妹)が相続人になります。
借金が多い場合、後順位の親族にも放棄を勧めるのが親切です。「自分が放棄すれば終わり」ではないことを忘れないでください。
相続放棄後に新たな借金が判明したら?
すでに相続放棄が受理されていれば、新たな借金が判明しても支払う義務はありません。受理通知書を見せれば、債権者は請求を断念せざるを得ません。
逆に、まだ放棄手続きをしていない段階で借金が判明し、3ヶ月の起算点をどう捉えるかが問題になるケースもあります。前述の3ヶ月経過後の相続放棄の論点です。
相続放棄をしても葬儀費用は出してよい?
葬儀費用については、過去の判例で「身分相応の葬儀費用」は遺産から支出しても財産処分にあたらないと判断されています。
ただし、「身分相応」の判断は事案によります。標準的な葬儀の費用であれば問題になりにくいですが、極端に豪華な葬儀の場合はリスクがあります。香典で賄える範囲なら、基本的に安全です。
迷う場合は、葬儀費用は相続人の自費で立て替え、後で香典から精算する形にしておくと安心です。
未成年者の相続放棄はどうすればいい?
未成年者は単独で相続放棄ができません。法定代理人(通常は親権者)が代理して申述します。
ただし、親権者と未成年の子が同じ相続の相続人になっており、親権者だけが放棄して子が放棄しない場合や、子だけが放棄して親権者が放棄しない場合は、利益相反になります。この場合は家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立てる必要があります。
親権者が子と一緒に相続放棄する場合は、利益相反にあたらないため、特別代理人は不要です。
まとめ:相続放棄の手続きは早めの対応と専門家への相談を
相続放棄の手続きは、相続を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。書類の準備、家庭裁判所への申述、照会書への回答——短期間にやるべきことは多く、独力で進めるとミスや遅延のリスクが避けられません。
注意すべきは、遺産に手をつけてしまうと法定単純承認になることや、自分の放棄が後順位の親族に借金を回すことになる点です。安易に放棄を決めず、財産の全体像を把握したうえで判断しましょう。
借金が判明したからといって、すぐに放棄するのが最善とは限りません。過払い金の可能性、生命保険金など放棄しても受け取れる財産、限定承認という選択肢——複数の角度から検討する必要があります。
相続放棄を検討しているなら、迷わず相続実務に詳しい弁護士に相談してください。3ヶ月の期限内に正しい判断をするために、早めの行動が肝心です。初回相談無料の事務所も多いので、まずは話を聞いてみるところから始めてみましょう。
あなたの相続税はいくら?無料診断
基礎控除額
4,200万円
課税対象額
800万円
相続税の総額(概算)
80万円
申告が必要です
※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
- 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
- 遺産分割協議で話がまとまらない
- 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
- 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
- 相続について、どうしていいのか分からない