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相続が発生!? 弁護士に相談するベストなタイミングは?
この記事で分かること
- 相続でもっとも多いトラブルは遺産分割に関するもの。人間関係が壊れるなど、金銭的なダメージを被ることも
- 遺産総額の多寡に関係なく、相続人同士で意見が異なったら弁護士に相談した方がよい
- 生前から弁護士に依頼することで、相続争いを回避できる
弁護士への相談は早ければ早いほうがよいと言えます。相続人同士で揉めてからではなく、相続が起きる前に相談しておくことで、争いを先回りして回避することが可能です。タイミングが遅くなると、弁護士が介入しても力を発揮できないこともあります。
目次[非表示]
相続で最も揉めるのは「遺産分割」のタイミング
遺産を相続するときに、最も揉めるのは「遺産の分け方」です。特に被相続人が遺言を残しておらず、「遺産分割協議」で決めなくてはならない場合は、まとまりがつかなくなることが多々あります。
遺産分割協議で揉める理由
遺産分割協議とは、遺産を相続する人全員が遺産分割について行う協議のことです。もし、被相続人の遺言書がなければ、必ず行う必要があり、相続がはじまった時点からいつでも開始することができます。そして、場合によってはこの遺産分割協議で遺産についてもめることになるのです。遺産を平等に分けることができれば、相続人全員が納得するのでしょうが、遺産の大半を不動産が占めるような場合は、不動産を売らない限り、家と土地を相続した人とそうでない人の金額に差が生まれてしまうため、もめることが多くなります。
遺産分割協議は早く始めた方がよい
遺産分割協議をするのに期限はありません。相続からであれば、いつでもはじめることができますが、できるだけ早く始めた方が無難です。そうしないと、被相続人の銀行口座が凍結されてしまったり、財産を隠されたりして問題がややこしくなるからです。また、マイナスの遺産の方が多く、相続放棄をしたい場合、被相続人が死亡してから(マイナスの遺産の存在を知ってからという解釈もある)3カ月以内が期限と法律では定められています。
相続で弁護士に依頼するタイミングが遅れ、損することも
遺産相続でもめてしまうと、争いが長期化しがちです。被相続人が亡くなってから10ヶ月以内に遺産分割協議がまとまらなければ、下記のような税制上の優遇制度を活用できなくなるので注意が必要です。
配偶者の税額軽減
被相続人の配偶者が遺産分割する場合、遺産1億6000万もしくは配偶者の法定相続分のうち、いずれかのうち比較した時の多い方の金額をとり、その金額までは相続税がかかりません。つまり、夫婦間の場合、1億6000万円までは課税しないというということです。しかし、相続税の申告期限までに配偶者に分割されていない財産は、税額軽減の対象とならなくなってしまいます。
小規模宅地等の特例
相続人が相続によって取得した被相続人等の事業に使用されていた宅地や、居住されていた宅地等のうち、要件を満たしたものは、限度面積まで一定の割合(8割)を減額できます。つまり、亡くなった人の宅地を2割の金額で相続してよいということになります。
しかし、相続税申告期限までに遺産が未分割だった場合、この特例を受けることはできません。
農地等の相続税の納税猶予
農業を営んでいた被相続人から農地を取得した場合、相続税で農業の経営が危うくなる可能性があります。そこで、10カ月の期限内に税務署で手続きすることで農地の相続税が猶予される制度のことをいいます。
この特例の適用を受けるには、申告期限までに農業経営を開始する必要があり、その後も、継続して農業経営を行うことや相続税の期限内申告書にこの特例の適用を受ける旨が記載されるなどの要件を満たす必要があります。期限があるので、できるだけ早く手続きをする必要があります。
非上場株式等の相続税の納税猶予
事業継承を支援するため、認定された中小企業者の株式などの一定の贈与や相続の贈与税や相続税を猶予する制度です。申告期限までに非上場株式等が分割されていなければ、この制度の適用外となります。
つまり遺産の分割が決まらないことにより、払わなくてもよい多額の相続税を納めなくてはいけなくなることがあるのです。弁護士に相続について早いタイミングで依頼していれば、こうした制度に乗り遅れないように、注意をしてくれます。知識がないために、損をすることがあるので、専門家のアドバイスは大切なのです。
相続で弁護士に相談するタイミング
遺産分割協議がまとまらないと相続税の優遇制度を適用できなくなるだけでなく、人間関係が破たんする方向に進んでしまい、いいことはありません。できるだけ早めに問題を解決するには、法律の専門家である弁護士に相談するのが最善の策です。
相続に関する専門家は弁護士に以外にも税理士や司法書士、行政書士などがいますが、手続きに関する知識はあっても人間同士のもめ事も絡む問題を解決することには適していません。やはり、遺産相続に関する問題は弁護士に依頼した方がよいでしょう。
相続人と意見が異なったら弁護士に依頼するタイミング
では、いつ弁護士に相談すればいいのでしょうか?それはまず、相続人の間で意見の違いが出たときです。もともと相続人同士の仲が悪いのであれば、仕方がないかもしれませんが、ずっと仲がよかったはずなのに、思いがけずもめそうな予感がしたら、できるだけそのタイミングで弁護士へ依頼することを検討しましょう。自分の主張が妥当だと思っていても、お金のことになると、他の相続人にとっては妥当でない場合もあるのです。
互いに金銭的な取り分を争うつもりはなくても、遺産にあたる土地や家への思い入れがあれば、気持ちとは裏腹に揉め事に発展しかねません。そういう場合には、早めに弁護士に相談し、感情論での対立が泥沼化してしまわぬうちに、法に則って冷静に解決するほうがいいでしょう。冒頭でも触れましたが、弁護士に任せることを大仰だとためらう人は多くいます。しかし、親族間に亀裂を生じさせないためにも、法律のプロに委ねるのは得策です。タイミングが遅れれば、さらに遺産分割協議がまとまらないことによる不利益をこうむることがあります。
遺産が少なくても弁護士へ相談するのは恥ずかしくない
遺産が少ないからといって弁護士に相談できないということはなく、金額の大小に関わらず相談ができます。平成26年の家庭裁判所にて遺産分割の調停を受けた件数は約13,000件ですが、その7割以上が遺産金額5000万円以下です。つまり、資産家ではない一般家庭でも争いは起きているのです。「うちは遺産が少ないから弁護士に相談するほどではない」と気後れせずに、門をたたいてみましょう。
もちろん、弁護士に相談したからといって、依頼までしなければならないという義務はありません。最近では、一回目の相談を無料にしている法律事務所も少なくないので、正しい知識を教えてもらうためにもまずは相談してみるといいでしょう。相談した結果、自身の主張が一方的だったことに気づいたり、他の相続人との交渉がスムーズになったりするかもしれません。
相続の相談後も、弁護士に依頼するタイミング
弁護士に相談した後も、相続人同士の意見の差が埋まらないケースがあります。そんなときも弁護士に依頼するタイミングです。もし、ここに弁護士が入らずに、当事者だけで話しあいを続けてしまえば、話は平行線のままです。解決しないまま裁判手続きが進んでしまうと、最悪の場合、人間関係が壊れるだけではすみなくなります。争った結果、審判になり、そこで不動産の競売が命じられることもあります。そうなると、どの相続人にも土地や家が残らなくなってしまう可能性まであるのです。
相続人との交渉を弁護士にまかせるメリット
弁護士に依頼すれば交渉を代わりにしてもらえるので、他の相続人と思わぬ衝突をするおそれが軽減します。また、法的根拠にもとづいて解決法を見出してくれます。したがって、協議や調停といった話し合いで済み、裁判沙汰になってしまうという最悪のケースは免れるでしょう。
相続が発生する直前も弁護士に相談するタイミング
相続が発生する前、つまり被相続人が亡くなるのが予想された時点で弁護士に相談するのも有効な方法です。病気と同じで早ければ、早いほど対策をうてるからです。
生前から弁護士に依頼することのメリット
相続税の申告期限のぎりぎりに、弁護士事務所に駆け込んでも、弁護士が力になれる部分はかなり限定的なものとなってしまいます。相続前のタイミングであれば、弁護士が被相続人に働きかけて様々な働きかけをしてくれます。
遺言書の作成をすすめてくれる
遺言書が残されていれば、遺産の分割でもめることが少なくなります。生前のうちに、弁護士が被相続人に遺言書を作成するように促してくれます。
すべての財産を明らかにしてくれる
遺産相続でもめることのひとつに、相続財産の全貌が分からないことがあります。また、借金がある場合、それがどれくらい、どこにあるのかなども把握しなければなりません。不動産がある場合は、それをどのように相続するのかを決めなくてはいけなくなります。弁護士がいれば、被相続人に生前のうちから全ての相続財産の場所と数字を明確にさせたり、不動産の処理をどうするか決めたりと遺産分割で揉めそうな問題を先回りして回避できるような対策を練ってくれます。
遺産が多いはずの資産家は、さぞかし遺産相続でもめているのだろうと思われがちですが、実は、多くの場合、スムーズに済んでいます。それは、遺産が多いからこそ、生前から弁護士などに相談して、相続で争わないようにきちんと対策を考えているからだと言えます。亡くなった後の相続トラブルのことを考えれば、できるだけ早いタイミングで弁護士に依頼するのがベストでしょう。
相続でもめたら早いタイミングで弁護士に相談!
弁護士に相談した結果、「たいした問題じゃなかったな」「弁護士に依頼するほどのこともなかった」と思ったとしても、弁護士に依頼した意味は大いにあったといえます。どんなに良好な関係を築いている親族同士でも、お金が絡んでくる相続トラブルは絶対に起こらないとは言えないものです。人間関係に傷をつけたり、一生消えないしこりを作ったりしてしまう前に、相続について不安を覚えたタイミングで、弁護士に相談することをおすすめします。
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