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相続順位とは?遺産相続の優先順位を早見表で解説

この記事で分かること

  • 相続順位の基本ルール(配偶者は順位の外で常に相続人、血族は第1〜第3順位)と家族構成別の早見表
  • 配偶者の特別な扱い(法律婚のみ・内縁/離婚済みは対象外)と相続分の手厚さの理由
  • 第1順位の子(実子・養子・認知された婚外子・胎児)と代襲相続(孫・ひ孫まで何代でも)のルール
  • 第2順位(直系尊属・代襲なし)・第3順位(兄弟姉妹・全血と半血の差・甥姪まで代襲・遺留分なし)の詳細
  • 順位ごとの法定相続分の具体的な計算例(配偶者+子1/2:1/2、配偶者+親2/3:1/3、配偶者+兄弟姉妹3/4:1/4)
  • 相続放棄・相続欠格・廃除による順位移動のメカニズム(放棄では代襲なし、欠格・廃除では代襲あり)
  • 実務で迷いやすい境界事例(内縁・連れ子・婚外子・養子の二重相続・相続放棄の連鎖など)の具体的な判断

相続順位の基本ルール(配偶者は常に相続人、血族相続人は第1〜第3順位)と家族構成別の早見表、配偶者の地位(法律婚のみ・内縁は対象外)、第1順位の子(実子・養子・認知された婚外子・胎児)と代襲相続のルール、第2順位の直系尊属(代襲なし)、第3順位の兄弟姉妹(全血と半血で2:1・遺留分なし)、法定相続分の具体的な計算例、相続放棄・相続欠格・廃除による順位移動、実務で迷いやすい境界事例(内縁・連れ子・婚外子・養子の二重相続・相続放棄の連鎖)までを実務目線で整理した解説です。

相続順位を知ろうとする方が、最初に押さえるべきこと

親や配偶者が亡くなったとき、あるいは将来の相続を考え始めたとき、「自分は相続人になるのか」「兄弟や子はどの立場になるのか」が気になるのは自然なことです。インターネットで「相続順位」と検索すると、第1順位は子、第2順位は親、第3順位は兄弟姉妹、という早見表が出てきますが、実際の家族構成に当てはめると判断に迷うことが少なくありません。

相続順位は、民法887条〜890条で定められた、法定相続人を決めるルールです。配偶者は順位の外で常に相続人になり、それ以外の血族相続人は、第1順位(子・孫など)、第2順位(親・祖父母など)、第3順位(兄弟姉妹・甥姪)の順に決まります。先順位の相続人が1人でもいれば、後順位の人は相続人になりません。

本記事では、(1)相続順位の基本ルールと早見表、(2)配偶者の特別な扱い、(3)第1順位(子・代襲相続・養子)、(4)第2順位(親・祖父母)、(5)第3順位(兄弟姉妹・甥姪)、(6)順位ごとの法定相続分、(7)相続放棄や相続欠格による順位の移動、(8)実務で迷いやすい境界事例(内縁・元配偶者・連れ子・半血兄弟など)、までを、自分の家族構成で誰が相続人になるかを判断できるレベルで整理します。

相続順位を正しく理解することは、(1)自分が相続人になるかの判断、(2)遺産分割協議に誰を呼ぶかの判断、(3)遺言書を書くときの相続人と遺留分の検討、(4)相続放棄の影響範囲の理解、(5)生前贈与や保険受取人指定など相続対策の出発点、すべてに関わります。基礎的な内容ですが、応用は深いです。実態をフラットに整理していきます。

相続順位の早見表|全体像を一目で把握する

まず、相続順位の全体像を表で示します。家族構成ごとに、誰が相続人になるかを早見表で確認します。

基本の早見表

家族構成 相続人 法定相続分
配偶者+子 配偶者と子 配偶者1/2、子1/2(子が複数なら等分)
配偶者+親(子なし) 配偶者と親 配偶者2/3、親1/3(両親なら各1/6)
配偶者+兄弟姉妹(子も親もなし) 配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4(複数なら等分)
配偶者のみ(子・親・兄弟姉妹すべてなし) 配偶者のみ 配偶者がすべて取得
子のみ(配偶者なし) 子のみ 子がすべて取得(複数なら等分)
親のみ(配偶者・子なし) 親のみ 親がすべて取得(両親なら各1/2)
兄弟姉妹のみ(配偶者・子・親なし) 兄弟姉妹のみ 兄弟姉妹で等分

この表は、もっとも基本的なパターンです。実際の事案では、(1)子が先に死亡している(代襲相続)、(2)養子がいる、(3)相続人が相続放棄している、(4)親が片方だけ死亡している、などで、相続人の組み合わせが変わります。順を追って見ていきます。

配偶者の地位|常に相続人になる特別ルール

配偶者は、被相続人が亡くなった時点で婚姻関係にあれば、常に相続人になります。順位の外に位置するというのが正確な理解です(民法890条)。

配偶者がいる場合の組み合わせ

配偶者がいる場合、配偶者は他の順位の相続人と並んで相続します。具体的には、(1)子がいれば配偶者+子、(2)子がなく親がいれば配偶者+親、(3)子も親もなく兄弟姉妹がいれば配偶者+兄弟姉妹、(4)誰もいなければ配偶者のみ、です。

配偶者がいない場合は、第1順位から第3順位までの先順位の相続人がそのまま相続します。

配偶者でも相続人にならないケース

法律婚の配偶者だけが相続人になります。次のような関係の人は、たとえ事実上の夫婦同然の生活を送っていても、相続人にはなりません。

(1)内縁関係:婚姻届を出していない事実婚の配偶者は、相続人ではありません。長年連れ添って同居していても、被相続人の財産を相続する権利は法律上ありません。

(2)離婚した元配偶者:離婚届が受理されていれば、過去の婚姻関係は終了しており、相続人にはなりません。子は実子として相続人(第1順位)になります。

(3)離婚協議中・離婚調停中の配偶者:離婚届が受理されていない以上、被相続人の死亡時点で婚姻関係が継続しているため、配偶者として相続人になります。家庭内別居でも同じ扱いです。

(4)婚約者・予定の結婚相手:婚姻届の提出前は、相続人になりません。

内縁の配偶者の保護のためには、(1)遺言書による遺贈、(2)生前贈与、(3)生命保険の受取人指定、(4)死因贈与契約、などの対策が必要です。

配偶者の相続分が大きい理由

配偶者の法定相続分は、他の相続人と比べて手厚く設定されています。具体的には、(1)子と相続:1/2、(2)親と相続:2/3、(3)兄弟姉妹と相続:3/4、と、後順位の相続人と組むほど配偶者の取り分が大きくなります。

これは、(1)配偶者が被相続人と財産を共同で形成してきた、(2)配偶者の生活保障の必要性、(3)後順位の相続人ほど被相続人との関係が薄い、という考え方が背景にあります。

さらに、2020年の改正で、配偶者居住権という新しい制度も導入されました。配偶者が被相続人の自宅に住み続ける権利を、所有権とは別に保護する仕組みで、配偶者の生活基盤を守る趣旨です。

第1順位|子と代襲相続

子は、配偶者がいる場合もいない場合も、最優先の相続人になります(民法887条1項)。

子の範囲|実子・養子・非嫡出子

被相続人の「子」に該当するのは、次の4つのカテゴリです。

(1)嫡出子:法律婚の夫婦から生まれた子。最も典型的な子のカテゴリです。

(2)非嫡出子:法律婚をしていない男女の間に生まれた子。父が認知すれば、父の相続人になります。母との関係は出生により認知不要で相続人となります。2013年の最高裁判決と民法改正で、非嫡出子と嫡出子の法定相続分が同一になりました(以前は非嫡出子の相続分は嫡出子の1/2でした)。

(3)養子:被相続人と養子縁組をした子。実子と全く同じ立場で相続人になります。普通養子・特別養子のいずれも相続人です。なお、普通養子の場合、養子は養親と実親の両方から相続できます(二重の相続権)。

(4)胎児:被相続人の死亡時点で胎児だった子は、生まれてくれば相続人になります(民法886条)。死産の場合は相続人になりません。

子の範囲で実務でよく問題になるケース

実務でしばしば問題になるのは、次のようなケースです。

配偶者の連れ子:再婚相手の連れ子は、被相続人(再婚した側)とは法律上の親子関係がなく、養子縁組をしていない限り相続人になりません。連れ子に財産を残したい場合は、養子縁組または遺言が必要です。

婚外子:被相続人が認知していれば相続人ですが、認知していなければ相続人にはなりません。被相続人の死亡後でも、3年以内なら認知の訴え(死後認知)が可能です。

養子縁組の取消し・離縁:養子縁組が解消(離縁)されていれば、養子は相続人ではなくなります。逆に、養子縁組が継続している限り、養親の実子と同じ扱いです。

代襲相続|子が先に亡くなっている場合

被相続人が亡くなる前に子が先に亡くなっている場合、その子(被相続人から見た孫)が代わりに相続人になります。これを代襲相続といいます(民法887条2項)。

代襲相続の発生事由は、(1)子が被相続人より先に死亡、(2)子が相続欠格、(3)子が廃除、の3つです。子が相続放棄した場合は代襲相続が発生しない点に注意が必要です。

代襲相続人(孫)も死亡している場合は、さらにその子(被相続人から見たひ孫)が再代襲します(民法887条3項)。第1順位では、何代でも下に降りていく形です。

具体例として、被相続人A、子B、孫Cがいて、Bが先に死亡したケース。AがBより先に死亡せず生存している状態でBが死亡し、その後Aが死亡した場合、CがBに代わって相続します。Cが受け取るのはBの相続分です。Bの相続分が1/2(子1人の場合)なら、Cがその1/2を受け取ります。

第2順位|親と祖父母(直系尊属)

被相続人に子も孫もいない場合(第1順位の相続人が誰もいない場合)に限り、第2順位の親が相続人になります(民法889条1項1号)。

直系尊属の範囲

第2順位の相続人は、被相続人の「直系尊属」、つまり親・祖父母・曾祖父母など、上の世代の血族です。

原則として、被相続人に近い世代が優先されます。具体的には、(1)被相続人の親が1人でも生きていれば、その親が相続人、(2)両親ともに死亡していれば、祖父母が相続人、(3)祖父母も死亡していれば、曾祖父母が相続人、です。

複数の直系尊属が同じ世代にいる場合は、その世代の全員が相続人になります。例えば、両親(父・母)がともに生存していれば、父と母が共同で相続人になり、それぞれ等分の相続分を持ちます。

親には実親と養親の両方が含まれます。普通養子の場合、養子から見て、実親と養親の両方が直系尊属になる点に注意が必要です。

直系尊属に代襲相続はない

第1順位とは異なり、第2順位では代襲相続は発生しません。世代を上にさかのぼる順序で次の直系尊属が相続するため、代襲相続の概念が当てはまらないからです。

親が両方とも死亡していれば、自動的に祖父母が相続人になり、これは代襲ではなく直接の相続です。

直系尊属が誰もいない場合は、第3順位の兄弟姉妹に相続権が移ります。

第2順位の実務的なポイント

親世代が相続人になるのは、被相続人が比較的若くして亡くなった場合や、子のいない夫婦の片方が亡くなった場合に多く見られます。

具体例として、結婚しているが子のいない夫婦のうち夫が亡くなり、夫の両親が健在のケース。相続人は妻と夫の両親になります。法定相続分は、妻2/3、両親で1/3(父と母が各1/6)です。

このケースで意外と多いのが、妻と夫の親との関係が良好でない場合のトラブルです。妻が「自分が全部相続する」と思っていたところ、夫の両親が相続権を主張して話し合いが難航することがあります。子のいない夫婦は、遺言書による事前対策が重要です。

第3順位|兄弟姉妹と甥姪

被相続人に子・孫もなく、親・祖父母などの直系尊属もいない場合に限り、第3順位の兄弟姉妹が相続人になります(民法889条1項2号)。

兄弟姉妹の範囲

被相続人の「兄弟姉妹」には、(1)両親が同じ全血兄弟、(2)親の片方だけが同じ半血兄弟(異父兄弟・異母兄弟)、(3)親が再婚した相手の連れ子(被相続人と養子縁組している場合のみ、兄弟扱い)、が含まれます。

連れ子と被相続人が養子縁組をしていない場合、その連れ子は法律上の兄弟ではなく、相続人になりません。

半血兄弟の相続分は、全血兄弟の半分です(民法900条4号)。全血兄弟が1/4、半血兄弟が1/8、というように差がつきます。これは、第1順位での嫡出子・非嫡出子の差が2013年に解消されたのとは異なり、現在も維持されているルールです。

代襲相続|甥・姪まで(再代襲なし)

第3順位でも、第1順位と同様に代襲相続が発生します。被相続人より先に兄弟姉妹が亡くなっている場合、その子(被相続人から見た甥・姪)が代わりに相続人になります(民法889条2項)。

ただし、第3順位の代襲相続は、甥・姪までで止まります。甥・姪も亡くなっている場合、その子(甥・姪の子)には相続権が移りません。第1順位での再代襲とは異なる扱いです(民法889条2項が887条3項を準用しないため)。

具体例として、被相続人A、兄B(被相続人より先に死亡)、Bの子C(甥)、Cの子D(甥の子)がいるケース。Bが先に亡くなっていれば、CがBの代わりに相続人になります(代襲相続)。Cも亡くなっている場合、Dには相続権が移らず、相続人がいないという扱いになる可能性があります。

兄弟姉妹に遺留分はない

重要なポイントとして、兄弟姉妹(およびその代襲相続人である甥・姪)には遺留分がありません(民法1042条1項)。

これは、被相続人が遺言で「すべての財産を配偶者に遺贈する」と書いた場合、兄弟姉妹は遺留分侵害額請求ができないという意味です。被相続人が兄弟姉妹に財産を渡したくない場合、遺言書を書くことで、兄弟姉妹を相続から完全に排除できます。

子のいない夫婦で、配偶者にすべて相続させたい場合は、遺言書による対策が極めて有効になります。

第3順位の実務的なポイント

兄弟姉妹が相続人になるケースは、(1)被相続人が独身で子なし、両親も死亡、(2)子のいない夫婦のうち片方が亡くなった、(3)子も親も先立たれた高齢の被相続人、などに見られます。

注意点として、(1)兄弟姉妹は人数が多いことが多く、相続人の数が10人以上になることもある、(2)甥・姪まで含めると相続関係が複雑化し、戸籍収集だけで数か月かかる、(3)相続人間の関係性が薄く、面識のない相続人もいる、(4)遠方居住者が多く、連絡調整が困難、というケースが目立ちます。

こうした事案では、遺産分割協議に時間がかかり、相続放棄や遺産分割の合意形成が難しくなる傾向があります。被相続人が遺言書を残していれば、これらの問題を大きく軽減できます。

法定相続分|順位ごとの具体的な計算

ここまで見てきた相続順位を基に、具体的な家族構成での法定相続分の計算を整理します(民法900条)。

パターン1|配偶者と子のケース

配偶者+子1人:配偶者1/2、子1/2
配偶者+子2人:配偶者1/2、子各1/4
配偶者+子3人:配偶者1/2、子各1/6

具体例:被相続人の遺産6,000万円、配偶者と子3人が相続。配偶者が3,000万円、子3人で3,000万円(各1,000万円)を取得します。

パターン2|配偶者と親のケース(子なし)

配偶者+両親:配偶者2/3、両親で1/3(父と母が各1/6)
配偶者+親1人:配偶者2/3、親1/3

具体例:被相続人の遺産6,000万円、配偶者と被相続人の両親が相続。配偶者が4,000万円、両親で2,000万円(父1,000万円・母1,000万円)を取得します。

パターン3|配偶者と兄弟姉妹のケース(子も親もなし)

配偶者+兄弟姉妹1人:配偶者3/4、兄弟姉妹1/4
配偶者+兄弟姉妹2人(両方とも全血):配偶者3/4、兄弟姉妹各1/8
配偶者+全血兄弟1人+半血兄弟1人:配偶者3/4、全血兄弟1/6、半血兄弟1/12(全血:半血=2:1の比率で残り1/4を分配)

具体例:被相続人の遺産6,000万円、配偶者と兄1人(全血)・妹1人(半血)が相続。配偶者が4,500万円、兄が1,000万円、妹が500万円を取得します。

パターン4|配偶者がいないケース

子のみ1人:子がすべて取得
子のみ2人:各1/2
親のみ(両親):各1/2
兄弟姉妹3人:各1/3

具体例:独身の被相続人で兄弟姉妹3人が相続。遺産6,000万円なら、各2,000万円を取得します。

パターン5|代襲相続が絡むケース

配偶者+子A+子Bの子(子Bは先に死亡)1人:配偶者1/2、子A 1/4、子Bの子1/4(子Bの相続分1/4をそのまま受け継ぐ)
配偶者+子A+子Bの子(子Bは先に死亡)2人:配偶者1/2、子A 1/4、子Bの子各1/8(子Bの相続分1/4を子Bの子2人で等分)

具体例:被相続人の遺産6,000万円、配偶者・子A・代襲相続人(子Bの子2人)が相続。配偶者が3,000万円、子Aが1,500万円、子Bの子2人で1,500万円(各750万円)を取得します。

法定相続分は遺産分割の起点

法定相続分は、遺産分割協議で合意できなかった場合の最終的な基準であり、相続税の計算でも基本として使われます。

ただし、相続人全員が合意すれば、法定相続分と異なる分け方が可能です。「自宅は配偶者がすべて取得し、預貯金は子で分ける」「介護を担った相続人に多めに渡す」など、柔軟な分割は遺産分割協議で実現できます。

法定相続分は、合意がない場合の「公平な基準」として理解するのが正確です。

相続放棄・相続欠格・廃除|順位が移動するメカニズム

相続人になるはずの人が、相続放棄・相続欠格・廃除のいずれかに該当すると、その人は「最初から相続人でなかった」ものとして扱われます。これにより、相続人の構成が変わることがあります。

相続放棄|相続人の意思による

相続放棄は、相続人が「相続したくない」と家庭裁判所に申述する手続きです(民法938条)。被相続人の死亡を知った日から3か月以内に申述する必要があります。

相続放棄をすると、その相続人は最初から相続人でなかったことになります。重要なのは、相続放棄では代襲相続が発生しないという点です。子が相続放棄をしても、孫には相続権が移りません。

具体例として、被相続人A、子B、孫Cがいて、Bが相続放棄したケース。Bは最初から相続人でなかった扱いになりますが、Cには相続権が移りません。Aに他の子がいなければ、第2順位の親、いなければ第3順位の兄弟姉妹、と順位が下がります。

これは、被相続人の借金を回避するため第1順位の相続人全員が相続放棄した場合、第2順位、第3順位と順番に相続権が移動することを意味します。第3順位の兄弟姉妹に思いがけず借金が回ってくる、というのが現実によくあるケースです。

相続放棄が連鎖する場合

被相続人に多額の借金があり、第1順位の子全員が相続放棄したケースを考えます。

順序は、(1)子全員が相続放棄→子はいない扱い、(2)親が生存していれば親が相続人になる、(3)親も相続放棄するなら兄弟姉妹に相続権が移動、(4)兄弟姉妹も相続放棄するなら甥・姪に代襲、というように、順次相続権が移動します。

被相続人の借金を完全に回避するためには、第1順位から第3順位までの全相続人(さらにその代襲相続人も含む)が、それぞれ3か月以内に相続放棄をする必要があります。連絡調整に時間がかかるケースが多く、専門家の関与が望ましい場面です。

相続欠格|法律上自動的に資格喪失

相続欠格は、相続人が一定の不正行為(被相続人を殺害、遺言書を偽造・破棄など)をした場合に、法律上自動的に相続資格を失う仕組みです(民法891条)。家庭裁判所の手続きは不要で、要件に該当すれば自動的に発生します。

相続欠格の対象になる行為は、(1)被相続人または先順位・同順位の相続人を故意に死亡させ、または死亡させようとして刑に処された、(2)被相続人が殺害されたことを知りながら告訴・告発しなかった、(3)詐欺・強迫により被相続人の遺言を妨害、(4)遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿、です。

相続欠格になった場合、代襲相続は発生します。欠格者の子が代襲相続人として相続権を取得する仕組みです。

廃除|被相続人の意思による

廃除は、被相続人が「この相続人には相続させたくない」と家庭裁判所に申し立て、認められれば相続資格を失わせる手続きです(民法892条・893条)。

廃除の対象になるのは、(1)被相続人に対する虐待、(2)重大な侮辱、(3)その他の著しい非行、があった場合です。実務では、認められるハードルは高く、単なる親子喧嘩や疎遠な関係では認められません。

廃除が認められた場合も、相続欠格と同様に代襲相続が発生します。廃除された者の子が代襲相続人になります。

廃除は、配偶者・子・直系尊属(遺留分を持つ法定相続人)に対してのみ可能で、兄弟姉妹に対しては廃除の制度自体がありません(兄弟姉妹に遺留分がないため)。

実務で迷いやすい境界事例|具体例で整理

相続順位のルールは、シンプルなようで、実務では迷いやすい境界事例があります。代表的なケースを整理します。

ケース1|内縁の配偶者と前妻の子

被相続人Aには、戸籍上の配偶者(前妻B)との間に子C、戸籍上の配偶者ではない事実婚パートナーDがいる。Aが死亡した時、相続人は誰か。

答え:Cのみが相続人。Bは離婚していれば相続人にはならない。Dは内縁関係のため相続人ではない。

Dにも財産を残したい場合、生前に(1)遺言書による遺贈、(2)生命保険の受取人指定、(3)生前贈与、(4)死因贈与契約、などの対策が必要です。

ケース2|連れ子と養子縁組していない再婚配偶者

被相続人Aには再婚した配偶者B、Aの実子C(前妻との子)、Bの連れ子D(Aと養子縁組していない)がいる。Aが死亡した時、相続人は誰か。

答え:BとCが相続人。Dは養子縁組していないため相続人ではない。

Dに財産を残したい場合、(1)Aの生前に養子縁組をする、(2)Aが遺言書でDに遺贈する、のいずれかが必要です。

ケース3|認知された婚外子

被相続人Aには、戸籍上の配偶者Bとの間の子C、認知した婚外子Dがいる。Aが死亡した時、相続人は誰か。

答え:B、C、Dが相続人。法定相続分は、B 1/2、C 1/4、D 1/4(2013年改正で嫡出子と非嫡出子の差は解消されました)。

このパターンでは、遺産分割協議でBが「Dの存在を知らなかった」「認知された子の存在を受け入れたくない」となり、協議が難航するケースがあります。

ケース4|被相続人より先に親も子も亡くなっている独身者

被相続人Aは独身で、両親も子もすでに亡くなっている。兄Bと姉Cがいて、Cは先に亡くなっており、Cには子D(被相続人から見た姪)がいる。Aが死亡した時、相続人は誰か。

答え:BとDが相続人。Bは生存している兄として、Dは代襲相続人として、それぞれ相続人になります。法定相続分は、B 1/2、D 1/2です。

ケース5|相続放棄で順位が回ってきた兄弟姉妹

被相続人Aには配偶者Bがいたが、Aには多額の借金があった。Aの両親はすでに亡くなっており、子もいない。Aの兄弟姉妹は3人。

状況1:Bが相続放棄。この場合、Aの兄弟姉妹3人が相続人になる(配偶者放棄により、他の相続人だけが残る形)。

状況2:Bが相続放棄、兄弟姉妹3人も全員相続放棄。被相続人に他の相続人がいなければ、相続財産清算人(2023年改正前は相続財産管理人)の選任手続きを経て、最終的に国庫帰属となる可能性があります。

状況3:Bが相続放棄、兄弟姉妹3人のうち1人(D)が先に亡くなっていてDに子E(甥)がいる。EがDに代わって代襲相続人になる。Eも相続放棄をする必要があります。

ケース6|養子の二重相続

被相続人Aが普通養子としてBの養子になっており、Aの実親はCである。Bが亡くなった時、AはBの相続人になる。Cが亡くなった時、AはCの相続人にもなる。

これは普通養子の特徴で、養親・実親の両方から相続できます。特別養子の場合は、実親との親子関係が完全に切れるため、実親からは相続できません。

相続人の調査方法|戸籍を確認する手順

自分が相続人かどうか、または被相続人にどんな相続人がいるかを確認するには、戸籍を取り寄せて確認します。

被相続人の戸籍を集める

被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍を集めます。これは、被相続人の子や認知された子、養子縁組の履歴をすべて把握するためです。

具体的には、(1)被相続人の最終本籍地の市区町村で「死亡時の戸籍謄本」を取得、(2)戸籍に記載されている前の本籍地で「除籍謄本」「改製原戸籍謄本」を取得、(3)さらに前の本籍地に遡って同様に取得、というように、出生まで遡ります。

本籍地を複数回変えている場合、5〜10通の戸籍を集めることもあります。郵送請求も含めて1〜2か月かかることもあるため、早期着手が大切です。

2024年3月から始まった戸籍の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村でも戸籍を取得できるようになりました。ただし、(1)本人または直系尊属・卑属が請求する場合に限る、(2)兄弟姉妹の戸籍は対象外、という制限があります。

相続人の戸籍を集める

被相続人の戸籍から相続人を特定したら、各相続人の現在の戸籍を取り寄せます。これは、相続人が生存しているか、現在の住所はどこか、を確認するためです。

住所を確認するためには、戸籍の附票(または住民票)も取得します。

相続関係説明図の作成

集めた戸籍を基に、「相続関係説明図」を作成します。これは、被相続人と相続人の関係を一目で分かるようにした図です。

相続関係説明図は、(1)相続登記の申請、(2)銀行口座の解約、(3)税務署への相続税申告、などの場面で必要になります。司法書士・弁護士に依頼すれば作成を代行してもらえますし、自分で作成することも可能です。

複雑な事案は専門家へ

相続人が多い、被相続人の婚姻関係が複雑、認知された子がいる、養子縁組の履歴が複数、などの事案では、戸籍の解読と相続人の特定が困難になります。

こうしたケースでは、(1)司法書士に戸籍収集と相続関係説明図作成を依頼(費用5万〜10万円)、(2)弁護士に相続全体の代理を依頼(費用は別途)、という選択肢があります。

読者へのまとめ|相続順位を踏まえた行動指針

本記事の最後に、相続順位を確認した方が次に取るべき行動を、目的別に整理します。

被相続人が亡くなって相続人かどうか確認したい場合

(1)自分が被相続人とどの関係にあるか確認、(2)早見表で自分の立場を判断、(3)他に先順位の相続人がいるか確認、(4)被相続人の戸籍を取り寄せて相続人の全体像を把握、(5)期限のある手続き(相続放棄3か月など)に注意、の順に進めます。

自分が相続人になりそうなら、被相続人の財産と負債の確認に進みます。

将来の相続を準備したい場合

(1)自分の財産を相続することになる相続人を確認、(2)相続人の構成で問題が起きそうな点(子のいない夫婦の配偶者の地位、再婚相手の連れ子、不仲な兄弟姉妹など)を整理、(3)必要に応じて遺言書を作成、(4)生命保険の受取人指定を確認、(5)生前贈与の検討、の順に進めます。

特に、子のいない夫婦で兄弟姉妹に相続権が移る可能性がある場合、遺言書による対策が極めて有効です。兄弟姉妹には遺留分がないため、遺言で「すべての財産を配偶者に」と書くことで、配偶者だけに相続させることが可能です。

相続放棄を検討する場合

被相続人に借金がある場合は、第1順位の相続人が相続放棄をすると、第2順位、第3順位と順位が移動し、思いがけず他の親族に借金が回ることがあります。

相続放棄を進める前に、(1)後順位の相続人にも事前に連絡、(2)全員で相続放棄の手続きを取るか調整、(3)期限管理を徹底、(4)複雑な事案は弁護士に依頼、の手順で進めます。

専門家の活用

相続順位の判断は基本的なルールですが、実際の家族構成では、(1)代襲相続の有無、(2)養子縁組の履歴、(3)認知された子の存在、(4)半血兄弟、(5)相続放棄の連鎖、などで複雑化します。

判断に迷う場合は、相続専門の弁護士・司法書士の初回相談(無料〜1万円程度)で確認するのが安全です。複数の専門家の意見を聞いて比較することで、誤った理解で進めるリスクを避けられます。

相続順位の理解は、相続手続きの出発点です。基本ルールを正確に押さえつつ、自分の家族構成に当てはめて誰が相続人になるかを確認することが、トラブルを避けて納得感のある相続を進めるための土台になります。本記事の内容を参考に、自分のケースで適切な判断を下すことが大切です。

ワンポイントアドバイス
相続順位を考える際に押さえるべき要点は、「配偶者は常に相続人」「血族相続人は第1〜第3順位の順番」「先順位の相続人が1人でもいれば後順位は相続できない」の3点です。配偶者は順位の外で常に相続人(法律婚のみ、内縁・離婚済みは対象外)。第1順位は子(実子・養子・認知された婚外子・胎児)、子が先に死亡なら孫・ひ孫まで何代でも代襲相続。第2順位は親・祖父母などの直系尊属(代襲相続なし、世代の近い方から)、第3順位は兄弟姉妹(全血と半血で相続分が2:1、代襲は甥・姪まで・再代襲なし、遺留分なし)。法定相続分は、配偶者+子なら1/2:1/2、配偶者+親なら2/3:1/3、配偶者+兄弟姉妹なら3/4:1/4。具体例で、遺産6,000万円・配偶者+子3人なら配偶者3,000万円・子各1,000万円、遺産6,000万円・配偶者+両親なら配偶者4,000万円・両親各1,000万円、遺産6,000万円・配偶者+兄弟2人(全血)なら配偶者4,500万円・兄弟各750万円、というのが基準です。実務で迷いやすいのは、(a)内縁配偶者・連れ子(原則として相続人ではない、対策は遺言・養子縁組)、(b)認知された婚外子(嫡出子と同じ相続分、2013年改正後)、(c)養子の二重相続(普通養子は実親と養親の両方から相続可能)、(d)半血兄弟(全血の半分の相続分)、(e)相続放棄の連鎖(第1順位全員放棄→第2→第3と順位移動、兄弟姉妹まで借金が回るリスク)、です。子のいない夫婦は、配偶者にすべて相続させたい場合、兄弟姉妹に遺留分がないため遺言書による対策が極めて有効です。相続人の調査は、被相続人の出生から死亡までの戸籍をすべて取り寄せて確認します(2024年3月から戸籍広域交付制度開始、ただし兄弟姉妹の戸籍は対象外)。複雑な事案は司法書士(戸籍収集5万〜10万円)・弁護士(相続全体の代理)に依頼するのが安全な進め方になります。

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※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。

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