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不動産相続の手続き|流れ・必要書類・登記義務化

不動産相続の手続き|流れ・必要書類・登記義務化

この記事で分かること

  • 不動産相続の手続きの全体的な流れ
  • 相続登記の義務化で変わったポイント
  • 相続登記に必要な書類と取得先
  • 登記費用や相続税の基本的な考え方
  • 相続した不動産の活用と処分の選択肢

親の土地や建物を相続したとき、何から始めればよいのか戸惑う方は多いものです。この記事では、遺言の確認から相続人の確定、遺産分割協議、相続登記までの全体の流れを示し、義務化された相続登記のルール、必要書類と取得先、登録免許税や相続税の考え方を整理します。さらに、相続した不動産を住む・貸す・売る・手放すという選択肢の比べ方や、共有名義を避けるべき理由まで、弁護士の視点でわかりやすくまとめました。

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親が亡くなって、実家の土地や建物を相続することになった。けれども、何から手をつければよいのか、どんな書類が必要なのか、お金はいくらかかるのか。考えるべきことが一度に押し寄せて、途方に暮れていませんか。不動産の相続は、預貯金の相続とくらべて手続きが複雑で、時間も手間もかかります。だからこそ、全体の流れを先につかんでおくことが、何よりの助けになります。地図を持って歩けば、道に迷いにくくなるのと同じことです。

この記事では、不動産を相続したときに、いつまでに何をすればよいのか、必要な書類はどこで取るのか、登記の義務化で何が変わったのか、そして相続したあとに住む・貸す・売る・手放すという選択肢をどう考えればよいのかを、弁護士の視点で順を追って整理していきます。それぞれに良い面と注意すべき面があり、どれが正解ということはありません。読み終えるころには、最初の一歩を踏み出す道筋が見えているはずです。

不動産の相続は、人生にそう何度もあることではありません。だからこそ、初めてで戸惑うのは当たり前です。難しい言葉はできるだけかみくだいて説明していきますので、不動産や法律にくわしくない方も、どうか肩の力を抜いて読み進めてください。一つずつ理解していけば、決して乗り越えられない手続きではありません。

不動産を相続した方が、まず知っておきたいこと

不動産の相続が、預貯金とちがって厄介なのには、いくつかの理由があります。まずは、その理由を知っておきましょう。なぜ大変なのかがわかれば、どこに注意すればよいかも見えてきます。

第一に、不動産は現金のように、きれいに分けることができません。土地や建物を相続人どうしで公平に分けようとすると、誰が引き継ぐのか、ほかの人の取り分をどう確保するのかという問題が必ず出てきます。第二に、名義を変える手続きが必要で、これには専門的な書類の準備が欠かせません。第三に、保有しているだけで固定資産税がかかり、活用しないまま放置すると、維持費だけがかさんでいきます。使っていない不動産ほど、もったいない出費が続くことになります。

くわえて、相続した不動産が遠方にあると、現地の管理そのものが負担になります。庭木の手入れや建物の点検のために、わざわざ足を運ばなければならない。遠ければ遠いほど、その負担は重くのしかかります。空き家を放置すれば、近隣に迷惑をかけたり、傷んで資産価値が下がったりもします。預貯金なら口座を解約すれば終わりですが、不動産はそうはいかない。この「持ち続けることの重さ」が、不動産相続の大きな特徴なのです。

だからこそ、相続した不動産を「とりあえず持っておく」という判断は、慎重にしたほうがよいのです。明確な活用の見込みがないまま保有を続けると、税金と管理の負担だけが積み重なっていきます。持っているだけで、毎年お金が出ていく状態になってしまいます。使うのか、貸すのか、売るのか。早い段階で方針を定めることが、結果としてあなたの負担を軽くします。決められないときは、専門家に相談しながら整理するのも一つの方法です。

こうした特徴があるからこそ、不動産の相続は、早めに方針を固めて動き出すことが大切なのです。先延ばしにするほど、選べる手立てが狭まってしまうこともあります。

たとえば、空き家のまま放置していると、建物は傷み、資産としての価値も下がっていきます。固定資産税は毎年かかり続け、管理の手間も増えるばかりです。さらに、相続人の一人が亡くなれば次の相続が重なり、関係する人が増えて、話し合いがいっそう難しくなります。早く動くことには、それだけの理由があるのです。

ワンポイントアドバイス
不動産を相続したら、まず「この物件をどうしたいか」をざっくり決めておくと、その後の手続きがぶれません。住み続けるのか、貸すのか、売るのか、いらないのか。方針が定まっていると、必要な手続きや相談すべき相手もはっきりしてきます。迷ったままだと、手続きが宙ぶらりんになりがちです。

不動産相続の手続きの全体像

不動産の相続は、いくつかの段階を踏んで進みます。一つひとつは難しくなくても、順番を間違えると手戻りが生じます。たとえば、相続人を確定する前に話し合いを始めても、後から相続人が増えればやり直しになります。まずは全体の流れを、ステップで押さえておきましょう。

  1. 遺言があるかどうかを確認します。あれば、その内容にしたがって進めるのが基本です。
  2. 相続人が誰なのかを、戸籍をたどって確定します。ここを正確にやらないと、後の手続きが進みません。
  3. どんな不動産があるのかを調べ、評価額を把握します。固定資産税の通知書や登記の記録が手がかりになります。
  4. 相続人どうしで話し合い、誰がその不動産を引き継ぐかを決めます。これを遺産分割協議といいます。
  5. 合意の内容を遺産分割協議書にまとめ、相続登記によって名義を変更します。
  6. 相続税の申告が必要な場合は、期限内に申告と納税をすませます。不動産は評価額が大きくなりやすいため、早めの確認が肝心です。

大まかに言えば、この五つの流れになります。中でも要となるのが、四番目の話し合いと、五番目の登記です。この二つがうまくいけば、不動産の相続は山を越えたといってよいでしょう。とくに登記は、近年ルールが大きく変わったため、注意が必要になりました。うっかり見落とすと、思わぬ負担を招くこともあります。次の章でくわしく見ていきます。

なお、これらの手続きは、必ずしも一人ですべてを抱える必要はありません。戸籍集めや書類作成が負担なら司法書士に、もめそうなら弁護士に、相続税が心配なら税理士に、といったように、場面に応じて専門家の手を借りることもできます。自分でできる部分と任せる部分を切り分けて考えると、ぐっと進めやすくなります。

すべてを自分でやろうとして途中で力尽きるより、要所だけプロに頼って着実に進めるほうが、結果的に早く、確実に終わることも多いものです。費用はかかりますが、その分、時間と安心が手に入ります。何を自分でやり、何を任せるか。この見極めが、不動産相続をうまく乗り切るこつといえます。

判断に迷ったら、まずは一度、専門家に全体像を見てもらうとよいでしょう。話を聞いたうえで、どこを自分でやり、どこを任せるかを決めれば、進め方がはっきりします。

相続登記の義務化で変わったこと

これまで、不動産の名義変更である相続登記は、いつまでにしなければならないという決まりがありませんでした。そのため、名義を亡くなった方のままにして、何年も放置されるケースが少なくなかったのです。ところが、ルールが改められ、相続登記は期限内に行うことが義務づけられました。

この変更は、所有者のわからない土地が全国で増えすぎたことが背景にあります。名義が古いままだと、その土地を誰が管理しているのかわからず、災害復旧や公共事業の妨げにもなっていました。そうした社会的な問題を解消するために、名義をきちんと更新してもらう仕組みが整えられたのです。背景を知ると、義務化が決して理不尽なものではないとわかるはずです。私たち一人ひとりにとっても、名義を正しくしておくことは、自分の財産を守る基本といえます。

具体的には、不動産を相続したことを知ってから、定められた期間内に登記を申請しなければなりません。正当な理由なくこれを怠ると、過料という金銭的な負担を求められる可能性があります。つまり、放置し続けることに、はっきりとした不利益が生じるようになったということです。「うちは昔から名義をそのままにしている」という方も、この機会に手続きを進めておくことが望まれます。

義務化されたと聞くと、身構えてしまう方もいるかもしれません。けれども、見方を変えれば、これは「名義をきちんとしておきましょう」という、当たり前のことを後押しする仕組みでもあります。名義が亡くなった方のままだと、その不動産を売ることも、担保に入れることもできません。自分の代で整理しておけば、子どもの世代に面倒を残さずにすみます。

とくに注意したいのが、過去に相続した不動産も、この義務の対象になるという点です。何代も前の名義のまま放置されている土地などは、相続人がねずみ算式に増えていることがあり、いざ手続きしようとすると、たいへんな手間になります。心当たりがある場合は、早めに状況を確認しておきましょう。

確認の第一歩は、その不動産の登記の記録を取り寄せて、現在の名義がどうなっているかを調べることです。名義人がすでに亡くなっている方になっていれば、相続登記が必要だということです。どこから手をつければよいかわからない場合は、司法書士に相談すれば、現状の整理から手伝ってもらえます。複雑になっているほど、専門家の力が役に立ちます。

注意
名義を放置したまま年月が過ぎると、相続人の一部が亡くなって次の相続が重なり、関係する人がどんどん増えていきます。そうなると、全員の合意を取りつけるだけでも一苦労です。問題が小さいうちに登記をすませておくことが、将来の自分や子どもを守ることにつながります。

相続登記に必要な書類

では、相続登記には、どんな書類が必要なのでしょうか。集めるものは多いものの、一つずつたどっていけば、それほど難しくはありません。代表的なものを整理しておきます。

なお、ここに挙げたものは基本的な書類で、ケースによっては追加の書類が必要になることもあります。たとえば、遺言にもとづいて登記する場合と、話し合いで決めて登記する場合とでは、用意するものが少し変わります。何が必要かは、法務局の窓口や司法書士に確認すると確実です。やみくもに集める前に、自分のケースで必要なものを把握してから動くと、二度手間を防げます。

書類には、取得してから一定の期間内のものでないと使えない、というものもあります。早く集めすぎると、いざ申請するときに期限切れになってしまうこともあるため、注意が必要です。集める順番やタイミングも含めて段取りを立てておくと、無駄なく進められます。このあたりは、経験のある専門家に聞くと、こつを教えてもらえます。

書類 主な取得先
亡くなった方の戸籍一式 本籍地のある役所で、出生から死亡までを取り寄せます
相続人全員の戸籍 それぞれの本籍地のある役所で取得します
相続人の住民票 名義人になる方の住所地の役所で取得します
遺産分割協議書 相続人どうしの話し合いの結果をまとめて作成します
固定資産評価証明書 不動産のある市区町村の役所で取得します

このうち、もっとも手間がかかるのが、亡くなった方の戸籍を、生まれてから亡くなるまですべてそろえることです。引っ越しや結婚で本籍が移っていると、複数の役所をたどる必要が出てきます。人によっては、数か所、ときには十か所近くの役所に請求することもあります。郵送で取り寄せることもできますが、時間がかかるため、早めに動き出すとよいでしょう。

戸籍を読み解くのも、慣れていないと骨が折れる作業です。昔の戸籍は手書きで読みにくく、どこまでさかのぼれば足りるのかの判断も難しいものです。一通取り寄せたら、そこに書かれた前の本籍をたどって、さらに古いものを請求する。この繰り返しになります。手間に感じたら、この部分だけでも専門家に任せてしまうのも、賢い選択です。

登記にかかる費用と税金

不動産の名義変更には、いくつかの費用がかかります。あらかじめ知っておくと、いざというときに慌てずにすみます。主にかかるのは、次のようなものです。

  • 登録免許税 名義変更そのものにかかる税金で、不動産の評価額をもとに計算されます。
  • 専門家への報酬 司法書士などに手続きを依頼する場合にかかる費用です。
  • 書類の取得費用 戸籍や証明書を集めるためにかかる実費です。

このうち、登録免許税は、不動産の評価額に応じて決まります。評価額が高いほど負担も大きくなるため、おおよその金額は事前に把握しておきたいところです。思っていたより高額になって驚く、ということも起こり得ます。具体的な計算方法や軽減の制度については、状況によって変わってくるため、不安があれば専門家に確認してもらうのが確実です。

費用の負担は、決して小さくないこともあります。とくに評価額の高い不動産では、登録免許税だけでもまとまった額になります。あらかじめ見当をつけておかないと、いざ申請という段になって慌てることになりかねません。手続きを始める前に、おおよその費用感を把握しておくと、資金の準備もしやすくなります。

自分で手続きをすれば専門家への報酬は不要ですが、書類集めや申請に手間がかかります。仕事の合間に進めるのが難しい方は、司法書士に依頼するという選択肢もあります。どちらが自分に合っているかは、かけられる時間と手間を考えて決めるとよいでしょう。

一つの目安として、平日に役所へ行く時間が取りにくい方や、複数の不動産があって手続きが入り組んでいる方は、専門家に任せたほうが負担は小さくなります。本業を犠牲にしてまで自分でやる必要は、必ずしもありません。逆に、時間に余裕があり、対象の不動産も一つだけというような場合は、自分で挑戦してみてもよいでしょう。費用を抑えたい気持ちと、手間をかけたくない気持ち。どちらを優先するかで、答えは変わってきます。

不動産の相続税はかかるのか

不動産を相続すると、相続税がかかるのではないかと心配される方も多いものです。結論から言えば、相続税には基礎控除という非課税の枠があり、遺産の総額がその枠を超えなければ、相続税はかかりません。多くの家庭では、この枠の範囲に収まることも少なくありません。

基礎控除の枠は、相続人の数が多いほど大きくなる仕組みになっています。つまり、相続人が多ければ、それだけ非課税の範囲も広がるということです。自分の家のケースで、遺産の総額がこの枠に収まるのかどうかは、財産をひととおり洗い出してみないとわかりません。ざっくりとでも一度計算してみると、申告が必要かどうかの見当がつきます。

ただし、不動産は評価額が大きくなりやすく、預貯金などと合わせると枠を超えてしまうこともあります。その場合は、相続税の申告と納税が必要になります。申告には期限があるため、自分のケースで申告が必要かどうかは、早めに見当をつけておくことが大切です。

相続税の申告には、亡くなったことを知った日の翌日から一定の期間という期限があります。この期限は、思っているよりも短く感じられるものです。この期限を過ぎると、本来受けられたはずの軽減が使えなくなったり、余計な負担が生じたりすることもあります。期限はあっという間にやってきますから、申告が必要そうだと感じたら、できるだけ早く準備に取りかかることをおすすめします。

不動産の評価は、専門的で複雑な面があります。土地の形や立地、利用状況によって評価額が変わり、適用できる特例もさまざまです。同じ広さの土地でも、条件によって評価額が大きく違ってくることがあります。判断に迷うときは、税理士などの専門家に相談すると、正確な見通しが立てられます。自己流で進めて、あとから足りなかったとなるより、確実な方法をおすすめします。

相続したあとの選択肢

無事に名義を引き継いだら、次に考えるのが、その不動産をどう活用するかです。選択肢は、大きく分けて四つあります。それぞれの特徴を知っておくと、自分に合った道を選びやすくなります。

自分で住む

相続した家に、自分や家族が住むという選択です。住み慣れた実家に戻る、あるいは子ども世帯が住むといったかたちが考えられます。固定資産税などの維持費はかかりますが、家賃を払わずに暮らせるのは大きな利点です。毎月の住居費がかからないというのは、長い目で見れば相当な差になります。ただし、古い建物の場合は、修繕にお金がかかることも見込んでおく必要があります。

また、実家に戻って住む場合には、いまの生活との兼ね合いも考える必要があります。勤め先や子どもの学校との距離、近隣との関係など、暮らしやすさを左右する要素はさまざまです。感情的な思い入れだけで決めてしまうと、あとで負担に感じることもあります。住むという選択は、現実的な生活の見通しとあわせて考えるのがよいでしょう。

人に貸す

誰も住まないなら、賃貸に出して家賃収入を得るという方法もあります。空き家にしておくよりは、収入が生まれる分、有効活用といえます。一方で、入居者を探す手間や、建物の管理、修繕の負担も伴います。貸す以上は、大家としての責任もついてまわります。立地や建物の状態によっては、借り手がつきにくいこともあるため、見込みを冷静に立てることが大切です。

賃貸に出す前には、ある程度のリフォームが必要になることも多いものです。その費用を回収できるだけの家賃が見込めるか、事前に試算しておくと安心です。管理を自分でするのが難しければ、管理会社に委託する方法もありますが、その分の費用もかかります。手間と収入のバランスを見ながら、無理のない範囲で進めることをおすすめします。

売却する

使う予定がないなら、売って現金に換えるのも、すっきりした選択です。複数の相続人で分ける場合にも、現金にしてしまえば公平に分けやすくなります。一円単位できれいに分けられるのは、現金ならではの強みです。売却には時間がかかることもあり、譲渡所得税などの税金がかかる場合もありますが、維持の負担から解放されるという安心感は小さくありません。空き家を抱え続ける不安から解き放たれるだけでも、売る意味は十分にあります。

ただし、思い出の詰まった実家を手放すことには、心理的な抵抗を感じる方も多いものです。きょうだいの間でも、売りたい人と残したい人で意見が割れることがあります。売却を選ぶなら、こうした気持ちの面にも配慮しながら、全員が納得できるよう丁寧に話を進めることが大切です。お金の問題であると同時に、家族の問題でもあるのです。

売却を考えるなら、まずは複数の不動産会社に査定を依頼して、相場感をつかむとよいでしょう。一社だけの提示額をうのみにすると、適正な価格を見誤ることがあります。また、相続した不動産の売却には、一定の条件のもとで税負担が軽くなる特例が用意されている場合もあります。こうした制度を活用できるかどうかでも、手元に残る額は変わってきます。

相続放棄で手放す

借金のほうが多い、あるいは管理しきれない不動産であれば、そもそも相続しないという選択もあります。これを相続放棄といい、亡くなったことを知ってから一定の期間内に手続きをする必要があります。ただし、放棄するとプラスの財産も含めて、いっさい受け継がないことになるため、慎重な判断が求められます。

たとえば、いらない土地だけを放棄して、価値のある預貯金だけを受け取る、といった都合のよい選び方はできません。放棄するなら、すべてを手放すことになります。だからこそ、本当に放棄すべきかは、財産の全体像をきちんと把握したうえで判断する必要があります。借金の有無や金額がはっきりしないうちは、安易に決めてしまわないことが大切です。

共有名義での相続は避けたほうがよい

不動産を、複数の相続人の共有名義にするという方法もあります。一見、公平に思えるこのやり方ですが、弁護士の立場からは、できるだけ避けることをおすすめしています。なぜそこまで言うのか、その理由を具体的にお伝えします。なぜなら、後々のトラブルの種になりやすいからです。

その場では、誰か一人に決めるのが難しく、とりあえず全員の共有にしておこう、という流れになりがちです。気持ちはよくわかります。けれども、その「とりあえず」が、後々の大きな火種になることを、ぜひ知っておいてください。決断を先送りにしたツケが、何年も先にまわってくるのです。

いまのあなたが少し踏ん張って結論を出しておくことが、将来の家族を守ることになります。逆に、ここで決めきれずに共有のままにしておくと、子どもや孫の世代が、もっと複雑になった状態で頭を悩ませることになりかねません。世代をまたいで負担を残さないためにも、できるだけ自分の代で整理しておきたいところです。

共有名義にすると、その不動産を売ったり、大きく改修したりする際に、共有者全員の同意が必要になります。一人でも反対すれば、話が前に進みません。全員の足並みがそろわなければ、その不動産は身動きが取れなくなってしまいます。さらに、共有者の誰かが亡くなると、その持分がまた相続され、関係する人がどんどん増えていきます。世代を重ねるうちに、見ず知らずの親族と共有しているという状態になりかねないのです。

実際に、何十年も前に共有のまま相続された土地が、いまや数十人の共有になっていて、誰の同意を取ればよいのかもわからない。そんな手のつけられない状態になっている事例は、決して珍しくありません。こうなると、売ることも活用することもできず、ただ固定資産税を払い続けるだけの負の財産になってしまいます。最初の選択が、何十年も先に影響するのです。

もちろん、事情によっては共有を選ばざるを得ないこともあります。けれども、可能であれば、誰か一人が引き継いでほかの相続人に金銭で清算する方法や、売却して分ける方法を検討するほうが、将来の負担を避けられます。目先の公平さよりも、長い目で見た解決を考えることが大切です。

もし、すでに共有名義になってしまっている不動産でお困りなら、共有を解消する方法もあります。共有者どうしで話し合って一人にまとめる、持分を買い取る、あるいは裁判所の手続きを使って分割する、といった選択肢です。こじれている場合には、弁護士に相談することで、解決の糸口が見つかることもあります。あきらめる前に、一度専門家に状況を見てもらうとよいでしょう。

不動産の相続に関するよくある質問

相続登記は自分でできますか

できます。書類をそろえて法務局に申請すれば、専門家に頼まなくても手続きは可能です。ただし、戸籍の収集や書類の作成には手間がかかり、内容に不備があるとやり直しになることもあります。時間が取れない方や、権利関係が複雑な場合は、司法書士に依頼するほうが確実です。自分の状況に合わせて選ぶとよいでしょう。

目安として、相続人が少なく、遺言や協議の内容もはっきりしているなら、自分で挑戦してみる価値はあります。一方で、相続人が多い、何代も前の名義が残っている、書類の取得先が各地に散らばっているといった場合は、無理をせず専門家に任せたほうが、結果的に早く確実に終わることが多いものです。かけられる時間と手間を考えて、判断してください。

遠方にある実家の不動産でも手続きできますか

できます。登記の申請は、その不動産を管轄する法務局に対して行いますが、郵送やオンラインでの申請にも対応しています。書類の取り寄せも郵送で可能なので、現地に何度も足を運ぶ必要はありません。遠くに住んでいることを理由に、手続きをあきらめる必要はないのです。

とはいえ、遠方の不動産は、手続きが終わったあとの管理が課題として残ります。誰も住まない家をどうするのか、定期的な見回りをどうするのか。こうした点まで含めて、相続したあとの方針を考えておくと安心です。手続きをすませることがゴールではなく、その先の活用や処分まで見通しておくことが、本当の意味での解決につながります。

もめそうなときは誰に相談すればよいですか

相続人どうしで意見が対立しそうなときや、すでにもめているときは、弁護士に相談するのが適しています。不動産の分け方は、感情が絡んで折り合いがつきにくい代表的な場面です。第三者である弁護士が間に入ることで、冷静な話し合いがしやすくなります。一人で抱え込まず、早めに専門家の力を借りることを考えてみてください。手続きと交渉の両面から、解決の道筋を一緒に探してもらえます。

不動産がからむ相続は、感情と財産、そして手続きが複雑に絡み合います。だからこそ、一人で全部を背負おうとすると、どこかで行き詰まりがちです。困ったときに頼れる相手がいると知っておくだけでも、心の支えになります。わからないことを一つずつ聞ける相手がいるのは、想像以上に心強いものです。手続きの一つひとつは、決して特別なものではありません。順番にこなしていけば、必ず前に進めます。焦らず、一歩ずつ進めていきましょう。

大切な家族を亡くした直後に、慣れない不動産の手続きに向き合うのは、本当に骨の折れることです。だからこそ、すべてを完璧にこなそうと気負わず、できることから少しずつ進めれば十分です。わからないところは人に頼ってよいのだと、どうか忘れないでください。あなたが前を向いて進めることを、心から願っています。

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