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相続した土地・不動産・家の手続き|必要書類と流れ

相続した土地・不動産・家の手続き|必要書類と流れ

この記事で分かること

  • 不動産相続の手続き全体の流れ(6ステップ)と各ステップの期限
  • 2024年4月施行の相続登記義務化のルール(3年以内・10万円以下の過料・2027年3月31日まで)と相続人申告登記の活用
  • 必要書類の取得方法、登録免許税(評価額×0.4%)・司法書士費用の現実的な目安
  • 動産の相続税評価方法と小規模宅地等の特例(330平米まで80%評価減)
  • 取得後の4つの選択肢(住む・貸す・売る・手放す)の判断軸と、相続土地国庫帰属制度の活用法

不動産相続の全体的な流れ(6ステップ)、2024年4月施行の相続登記義務化と過料を避けるための相続人申告登記、必要書類と登録免許税・司法書士費用、相続税評価と小規模宅地等の特例、取得後の選択肢(住む・貸す・売る・国庫帰属制度で手放す)、相続放棄と任意売却を含む相続したくない場合の対処法、司法書士・弁護士・税理士の使い分けまでを、実務情報として整理した解説です。

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不動産を相続することになった方が、最初に知っておくべきこと

親や配偶者が亡くなって、自宅や土地、賃貸物件などの不動産を相続することになった。何から始めればいいか、どんな書類が必要か、いくらかかるのか、自分でできるのか、相続税はかかるのか、そもそも引き継ぎたくない場合はどうすればいいのか。考えるべきことが一気に押し寄せます。

不動産の相続は、預貯金の相続と比べて、(1)手続きが複雑で時間がかかる、(2)費用負担(登録免許税、司法書士費用、相続税)が発生する、(3)2024年4月から相続登記が義務化され、放置すると過料の対象になる、(4)取得後の選択肢(住む・貸す・売る・手放す)で長期的な人生計画に影響する、という特徴があります。預貯金のように「分けて口座移管して終わり」というわけにはいきません。

本記事では、(1)不動産の相続手続き全体の流れ、(2)2024年4月施行の相続登記義務化のルールと過料を避けるための具体的な対応、(3)必要書類の取得方法と落とし穴、(4)登録免許税・司法書士費用の現実的な目安、(5)不動産の相続税評価と申告、(6)取得後の選択肢(居住・賃貸・売却)の判断軸、(7)2023年4月に始まった相続土地国庫帰属制度を含む「相続したくない場合」の対処法、までを解説します。

不動産相続は、家族の歴史と財産が交差する重要な局面です。手続きの遅れや判断ミスで、想定外の負担や家族間の対立を招くこともあります。実態をフラットに整理していきましょう。

不動産相続手続きの全体像|6つのステップで把握する

不動産相続の手続きを、大きく6つのステップに分けて整理します。各ステップで必要なこと、期限、注意点を順に見ていきます。

ステップ全体の流れ

ステップ 内容 期限の目安
1. 死亡届提出と相続人確定 死亡届(7日以内)、相続人の確定(戸籍収集) 死亡から1〜2か月
2. 相続財産の調査 不動産の所在・評価、預貯金、借金の確認 1〜3か月
3. 相続放棄の判断 マイナス財産があれば3か月以内に判断 死亡を知ってから3か月
4. 遺産分割協議 誰がどの不動産を取得するかの話し合い 3〜10か月
5. 相続税申告(必要な場合) 基礎控除を超える場合に税務署へ申告 死亡を知ってから10か月
6. 相続登記(義務) 法務局で不動産の名義変更 取得を知ってから3年

全体として、死亡から1年程度で主要な手続きが完了するのが標準的です。相続登記は3年以内が義務ですが、遺産分割協議が成立次第、早めに進めるのが望ましい流れになります。

最も重要なステップ|相続登記の義務化を理解する

6つのステップのうち、2024年4月の法改正で最も重要性が高まったのが「6. 相続登記」です。これまで任意だった相続登記が義務化され、違反すると過料の対象になります。

2024年4月施行|相続登記の義務化を正確に押さえる

2024年4月1日から、不動産登記法の改正により、相続登記が法律上の義務になりました。これは不動産相続の場面で必ず押さえるべきポイントです。

義務の内容

不動産の所有者が亡くなった場合、相続人は、不動産の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負います(不動産登記法76条の2)。

ここで重要なのは、「取得を知った日」が起算点である点です。被相続人の死亡日からではなく、自分が相続人として不動産を取得することを認識した日(または認識すべき日)からカウントされます。具体的には、(1)被相続人の死亡を知り、かつ(2)自分が相続人で当該不動産を取得したことを知った日、が起算点です。

遺産分割協議で不動産の取得者が決まった場合は、協議成立から3年以内に登記する別途の義務もあります(同条第2項)。

2024年4月以前の相続も対象

注意すべきは、義務化の規定は2024年4月以前に発生した相続にも遡及的に適用される点です。

親の不動産を10年前に相続したが登記していない、というケースも、義務化の対象になります。この場合の期限は、2027年(令和9年)3月31日です。古い相続で登記未了の不動産がある方は、3年以内ではなく、この期限までに登記を完了する必要があります。

過料の内容

正当な理由なく相続登記の義務を怠った場合、10万円以下の過料の対象になります(不動産登記法164条1項)。

重要な点として、(1)これは行政罰であり、刑事罰ではない、(2)前科にはならない、(3)過料の額は10万円「以下」で、状況により減額もあり得る、(4)違反後すぐに過料が発生するわけではなく、法務局からの催告を経て裁判所が決定する手続きを経る、ことが押さえどころです。

過料の対象になる典型例は、(1)期限内に登記しなかった上で、催告にも応じない、(2)相続人申告登記もしない、(3)正当な理由(複雑な権利関係の調整中、相続人多数で連絡困難など)もない、というケースです。

相続人申告登記|遺産分割が長引く場合の救済措置

遺産分割協議が3年以内にまとまらない場合、相続人申告登記という暫定的な制度で過料を回避できます(不動産登記法76条の3)。

内容は、(1)相続人が法務局に対して、自分が相続人であることを申し出る、(2)申出は単独でも可能(他の相続人の同意不要)、(3)申出費用は無料、(4)この申出をすれば相続登記の義務を一時的に履行したものとみなされる、というものです。

注意点として、(1)これはあくまで暫定措置で、本来の相続登記の代わりではない、(2)遺産分割が成立したら、成立日から3年以内に正式な相続登記が改めて必要、(3)他の相続人の権利関係が登記簿に反映されない、というデメリットがあります。

遺産分割協議が長引く現実的なケースで、まず過料を回避するための「応急措置」として活用する制度です。

相続登記に必要な書類|何が必要で、どこで取るか

相続登記の申請には、複数の書類が必要です。書類の取得だけで1〜2か月かかることもあるため、早期着手が大切です。

基本的に必要な書類

すべての相続登記で共通して必要な書類は、次の通りです。

(1)被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(または除籍謄本、改製原戸籍謄本)、(2)被相続人の住民票除票または戸籍附票、(3)相続人全員の戸籍謄本、(4)不動産を取得する相続人の住民票、(5)不動産の登記事項証明書、(6)不動産の固定資産税評価証明書、(7)登記申請書、です。

さらに、遺産分割協議で取得者を決めた場合は、(8)遺産分割協議書(相続人全員の実印押印付き)、(9)相続人全員の印鑑証明書、が追加で必要になります。遺言書がある場合は、(10)遺言書(自筆証書遺言は検認済証明書、または法務局保管制度の遺言書情報証明書、公正証書遺言の正本または謄本)、が必要です。

書類の取得方法と落とし穴

戸籍類は、被相続人の本籍地と相続人全員の本籍地の市区町村役場で取得します。2024年3月から始まった戸籍の広域交付制度により、本籍地以外の市区町村でも戸籍を取得できるようになりました。ただし、(1)本人または直系尊属・卑属が請求する場合に限る、(2)兄弟姉妹の戸籍は広域交付の対象外、(3)コンピューター化されていない古い戸籍は対象外、という制限があります。

落とし穴として、被相続人の戸籍が複数の市区町村にまたがる場合(本籍地を3〜4回変更している場合など)、すべての戸籍を集めるのに郵送請求も含めて1〜2か月かかります。被相続人が高齢で本籍地を頻繁に変えていた場合は、覚悟して取り組む必要があります。

不動産関連の書類は、(1)登記事項証明書:全国の法務局窓口またはオンラインで取得、1通600円(オンラインは500円)、(2)固定資産税評価証明書:不動産所在地の市区町村役場で取得、1通300円程度、(3)名寄帳:同上の市区町村役場で取得、市区町村ごとに被相続人名義の全ての不動産がリストアップされる、です。

名寄帳の取得は重要なポイントです。固定資産税納税通知書だけでは把握できない私道、山林、地縁ある別の不動産が含まれている場合があります。被相続人の名前で名寄帳を取得すれば、その市区町村にある被相続人名義のすべての不動産がわかります。

書類の有効期限

戸籍・住民票・印鑑証明書には、相続登記での明確な有効期限はありませんが、実務上は3か月以内のものが望ましいとされます。古いものでも法務局が受理することはありますが、追加書類を求められるリスクを避けるため、新しいものを準備するのが安全です。

固定資産税評価証明書は、登録免許税の計算根拠になるため、申請年度のものが必要です。年度をまたぐ場合は、新しい年度のものを取り直す必要があります。

登録免許税と司法書士費用|現実的な負担額を把握する

相続登記には、登録免許税と(司法書士に依頼する場合は)司法書士報酬がかかります。実際の負担額を、不動産規模別に整理します。

登録免許税の計算

相続登記の登録免許税は、不動産の固定資産税評価額×0.4%(1000分の4)です。

具体例で見ます。固定資産税評価額が3,000万円の不動産なら、登録免許税は12万円。5,000万円なら20万円、1億円なら40万円です。固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書の「価格」欄、または市区町村で発行される固定資産税評価証明書で確認できます。

注意点として、固定資産税評価額は固定資産税の課税標準額(住宅用地特例で減額された後の額)とは異なります。登録免許税の計算には、減額前の「価格」を使うのが正しい計算です。

減免措置|相続登記の登録免許税の免税

2018年から、一定の条件で相続登記の登録免許税が免税される措置が導入されています(租税特別措置法84条の2の3)。

免税対象は、(1)被相続人が登記名義人になる前に死亡している場合(数次相続)、(2)不動産の価額が100万円以下の土地、です。これに該当する場合、登録免許税が免税(=0円)になります。

これらの免税措置は、長期間放置されてきた相続登記未了の不動産を解消する目的で導入されました。古い相続の登記を進める際は、自分の不動産が免税対象かどうかを法務局や司法書士に確認することが大切です。

司法書士に依頼する場合の費用

相続登記は本人申請も可能ですが、書類の収集や法的な判断が複雑なため、司法書士への依頼が一般的です。

司法書士費用の相場は、不動産1件の単独相続なら6万〜10万円、複数の不動産・複数の相続人なら10万〜15万円、複雑な事案(数次相続、相続人多数、相続人申告登記からの本登記など)なら15万〜30万円程度です。

これに加えて、登録免許税の実費が別途必要です。司法書士費用は、(1)書類収集の代行、(2)戸籍の読み解きと相続人の確定、(3)遺産分割協議書の作成、(4)登記申請、までを含むのが一般的です。

本人で申請する場合は、司法書士費用が不要になる代わりに、(1)時間(20〜40時間程度)、(2)書類の郵送費・取得費(1〜2万円程度)、(3)複雑な事案では受理されないリスク、を負うことになります。シンプルな事案(相続人1〜2人・不動産1件・遺産分割協議書なし)なら本人申請も現実的ですが、それ以外は司法書士への依頼が時間と費用の総合で合理的なケースが多いです。

不動産の相続税|評価方法と申告の要否

相続した不動産が、相続税の対象になるかどうか。なる場合、いくらの税負担になるか。不動産の相続税を整理します。

相続税の基礎控除と申告の要否

相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×法定相続人の数、です。配偶者と子2人なら4,800万円、配偶者と子3人なら5,400万円、子のみ2人なら4,200万円が基礎控除の水準になります。

相続財産の総額(不動産+預貯金+有価証券+その他)から借入金や葬式費用を差し引いた額が、基礎控除を超える場合、相続税の申告が必要です。期限は、被相続人の死亡を知った日の翌日から10か月以内。期限を過ぎると延滞税・無申告加算税のペナルティが課されます。

基礎控除以下なら、相続税の申告も納付も不要です。多くの家庭では、不動産があっても基礎控除以下に収まることが少なくありません。

不動産の相続税評価方法

不動産の相続税評価は、(1)土地、(2)建物、で計算方法が異なります。

土地の評価方法は、所在地により2つに分かれます。(1)路線価方式:市街地など路線価が設定されている地域では、土地の前面道路の路線価×面積×補正率で計算、(2)倍率方式:路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額×国税庁が定める倍率で計算、です。実務的に都市部の土地はほぼ路線価方式、郊外や農村部は倍率方式になります。

建物の評価方法は、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額になります。固定資産税評価額は、建築費の50〜70%程度が一般的な水準で、時価より低く評価される傾向があります。

これらの仕組みにより、不動産は現金より相続税評価額が低くなることが多く、結果として相続税対策の選択肢にもなります。

小規模宅地等の特例|被相続人の自宅は最大80%評価減

被相続人の自宅や事業用土地について、相続税評価額を大幅に減額できる「小規模宅地等の特例」があります(租税特別措置法69条の4)。

特定居住用宅地(被相続人が住んでいた自宅の土地)は、330平米まで80%評価減。例えば、評価額4,000万円の自宅土地(200平米)を、配偶者または同居の子が相続して要件を満たせば、評価額が800万円(4,000万円×20%)に圧縮されます。3,200万円の評価減で、相続税率30%なら960万円の節税効果が出ます。

特例の適用要件は、土地の種類により異なります。特定居住用宅地の場合、(1)配偶者が取得する(無条件で適用)、(2)同居していた親族が取得して引き続き居住・所有する、(3)別居でも一定の要件を満たす親族(いわゆる「家なき子」特例)が取得する、のいずれかが必要です。

注意点として、(1)相続税の申告期限(10か月)までに、原則として遺産分割が完了している必要がある、(2)特例適用後の相続税が0円になる場合でも申告自体は必要(申告しないと特例が適用されない)、(3)複数の土地がある場合は限度面積の調整計算が必要で、税理士の関与が事実上必須、です。

不動産の相続税申告で税理士に依頼すべきか

不動産の相続税申告は、(1)評価方法が複雑(路線価補正、特例適用、複数物件)、(2)申告ミスで追徴課税のリスクがある、(3)小規模宅地等の特例を見落とすと数百万円〜数千万円の損失、という性質があるため、税理士への依頼が現実的です。

税理士費用は、遺産総額の0.5〜1.0%が標準です。遺産総額5,000万円なら25万〜50万円、1億円なら50万〜100万円、3億円なら150万〜300万円程度。相続専門の税理士で、相続税申告の実績が豊富な事務所を選ぶことが、追徴課税のリスクを最小化します。

基礎控除以下で申告不要の場合は、税理士への依頼も不要です。ただし、基礎控除の判定だけは慎重に行う必要があります。判定に迷うなら、税理士の初回相談(無料〜1万円程度)で確認するのが安全です。

不動産を取得した後の選択肢|住む・貸す・売る・手放す

相続登記を済ませた後、その不動産をどう活用するか。4つの選択肢の判断軸を整理します。

選択肢1:自分または家族が住む

相続人またはその家族が、その不動産に住む選択肢です。

向いているケースは、(1)被相続人の自宅で、相続人が現在の住居から移れる、(2)同居していた相続人がそのまま住み続ける、(3)将来子世代に引き継ぎたい思い入れのある家、です。

メリットは、(1)住居費(家賃)の節約、(2)被相続人の思い出の継続、(3)将来の値上がりが見込めれば資産価値の確保、です。

注意点は、(1)古い家は修繕費・リフォーム費が大きくなりがち(築30年以上の戸建てなら200万〜500万円程度)、(2)固定資産税の継続負担、(3)将来売却する場合、長く住むと譲渡所得税の特例(マイホーム特例)の適用条件が複雑化する、です。

選択肢2:他人に賃貸する

相続した不動産を、第三者に貸して家賃収入を得る選択肢です。

向いているケースは、(1)立地条件が良く賃貸需要が見込める、(2)相続人が現金収入を増やしたい、(3)将来の処分は先送りしたい、です。

メリットは、(1)家賃収入(月額家賃の80〜90%が手取り目安)、(2)不動産を維持しつつ収入を得られる、(3)空き家のままの劣化を防ぐ、です。

注意点は、(1)賃貸経営のリスク(空室・修繕・テナントトラブル)、(2)管理会社への手数料(家賃の5〜10%程度)、(3)家賃収入に所得税・住民税がかかる、(4)古い物件は賃貸に出すための大規模リフォームが必要(300万〜1,000万円程度)、(5)賃貸中は売却時の自由度が下がる、です。

収益試算が重要です。家賃想定額と修繕費・税金・管理料を差し引いて、年間の手取りがいくらになるか。プラスの収益が見込めない場合、賃貸より売却が合理的になります。

選択肢3:売却する

相続した不動産を売却し、現金化する選択肢です。

向いているケースは、(1)複数の相続人で平等に分けたい(換価分割)、(2)相続税の納税資金が必要、(3)維持管理が困難(遠方居住、高齢など)、(4)賃貸需要が乏しく収益化が難しい、(5)相続人の誰も住む予定がない、です。

売却のメリットは、(1)現金化により分配・運用が容易、(2)固定資産税・維持費の負担から解放、(3)空き家のリスク(劣化・近隣トラブル)を回避、です。

注意点として、(1)譲渡所得税・住民税がかかる(相続から3年10か月以内の売却なら、相続税額の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」あり)、(2)被相続人の自宅の売却で要件を満たせば、3,000万円特別控除(空き家特例)の適用可能、(3)売却まで時間がかかる(平均3〜6か月、状況により1年以上)、(4)売却価格が想定より下がる可能性、です。

取得費加算の特例は重要です。相続発生から3年10か月以内に売却すれば、納付した相続税の一部を取得費に加算でき、譲渡所得税を軽減できます。これを過ぎると適用できないため、売却を検討するなら時期を意識します。

空き家特例(被相続人居住用財産の3,000万円特別控除)も、要件が合えば大きな節税効果があります。被相続人が単身で住んでいた古い戸建てを更地で売却するなど、一定の要件を満たせば、譲渡所得から3,000万円を控除できます。

選択肢4:相続土地国庫帰属制度で手放す

2023年4月27日施行の相続土地国庫帰属制度により、相続した不要な土地を国に引き渡す選択肢が生まれました。

制度の概要は、(1)相続または遺贈で取得した土地が対象(売買などで取得した土地は対象外)、(2)所定の要件を満たし、(3)審査手数料と負担金を支払えば、(4)土地の所有権を国に引き渡せる、というものです。

利用できる土地の要件は厳しく、(1)建物がない土地、(2)担保権や使用収益権の設定がない、(3)他人が利用する予定がない、(4)土壌汚染がない、(5)境界が明らかで所有権の争いがない、を全て満たす必要があります。これらに該当しない場合は申請が却下されます。

さらに、(6)崖などで管理に過分な費用がかかる土地、(7)管理を阻害する有体物(廃棄物等)が地上にある、(8)同じく地下にある、などの「不承認事由」もあります。

費用は、(1)申請審査手数料:1筆あたり14,000円(収入印紙で納付、不承認・取下げでも返還なし)、(2)負担金:原則1筆あたり20万円。ただし、市街化区域や用途地域内の宅地・農地・森林は面積比例で計算され、数十万〜数百万円になることもあります。

注意点として、(1)申請は本人(法定代理人を除く)が直接行う必要があり、弁護士・司法書士への代理依頼はできない、(2)審査に半年〜1年程度かかる、(3)承認後30日以内に負担金を納付しなければ承認が失効、(4)建物がある土地は建物を解体しないと申請できない、です。

活用が向いているのは、(1)売却しようとしても買い手がつかない、(2)管理コスト・固定資産税の負担が重い、(3)上記の要件を満たす(または満たすよう整備できる)、土地です。原野・遠隔地の土地で活用の見込みがない場合、最後の選択肢として現実的な制度になります。

共有名義での相続を避けるべき理由

不動産の相続で、特に避けるべきなのが、相続人複数で共有名義にする選択肢です。「全員で平等に共有」は一見公平に見えますが、長期的には大きな問題を生みます。

共有のデメリット

共有名義のデメリットは、(1)売却・賃貸に共有者全員の同意が必要(民法251条)、(2)修繕やリフォームも持分の過半数の同意が必要(民法252条)、(3)共有者の1人が認知症になると意思決定が事実上ストップ、(4)共有者の1人が死亡すると、その持分がさらに分割相続されて関係者が増える、(5)共有者間で意見対立すると共有物分割訴訟になり、強制的に売却・分割されることがある、(6)管理責任と固定資産税の負担割合で揉めやすい、です。

特に厄介なのが「世代を超えた共有」です。親から子3人が共有で相続し、子の世代でさらに孫世代に分割相続されると、十数人の共有関係になる事案も珍しくありません。こうなると現実的に処分は困難で、所有者不明土地化のリスクが高まります。

共有を避ける現実的な方法

共有を避けるには、遺産分割協議で(1)代償分割(1人が現物を取得し他の相続人に代償金を支払う)、(2)換価分割(売却して現金で分ける)、のいずれかを選びます。

代償分割は、自宅などを特定の相続人が承継したい場合に有効ですが、代償金を支払う側の現金準備が課題になります。換価分割は、現金化により公平な分配が可能ですが、思い入れのある不動産を手放すことになります。

どちらが望ましいかは、(1)財産の中で不動産が占める割合、(2)代償金支払能力、(3)相続人間の関係、(4)被相続人の意向、で決まります。専門家に相談して、長期的に問題のない分割方法を選ぶことが大切です。

不動産を相続したくない場合の選択肢

プラスの財産より借金が多い、地方の山林・原野で活用の見込みがなく管理負担だけが残る、など、不動産を相続したくない場合の選択肢を整理します。

選択肢1:相続放棄

最も基本的な選択肢が、相続放棄です。被相続人の死亡を知った日から3か月以内に、家庭裁判所に相続放棄の申述を行うことで、相続人としての地位を放棄します(民法915条1項・938条)。

相続放棄のメリットは、(1)被相続人の借金を含めた一切の財産を引き継がない、(2)他の相続人との関係から離れられる、(3)費用が比較的安い(本人申述で3,000円程度、弁護士・司法書士依頼で3万〜10万円)、です。

注意点として、(1)相続放棄するとプラスの財産(預貯金・不動産)も含めて一切相続できない、(2)特定の不動産だけ放棄、というのは法律上できない(相続するか放棄するかは全か無か)、(3)期限(3か月)を過ぎると原則として放棄できない、(4)財産を処分(売却・廃棄・貸付など)してしまうと、法定単純承認に該当して放棄できなくなる、(5)後順位の相続人(兄弟姉妹など)に債務が回る、です。

特定の不動産だけが負債の原因(担保物件など)で、他の預貯金や不動産は引き継ぎたい、というケースには相続放棄は使えません。この場合は、相続後の任意売却や差し押さえ対応など、別の手段で対応することになります。

選択肢2:相続後の売却(マイナスでない場合)

被相続人の財産全体としてはプラスだが、特定の不動産だけが処分に困る、というケースでは、相続したうえで売却するのが現実的です。

処分が難しい不動産の典型は、(1)地方の老朽化した戸建て、(2)山林・原野、(3)私道、(4)権利関係が複雑な土地、です。これらは買い手がつきにくく、不動産業者に持ち込んでも売却を断られることもあります。

売却の選択肢として、(1)地元の不動産業者への売却依頼、(2)買取専門業者への売却(価格は市場の50〜70%だが、即時現金化が可能)、(3)隣地所有者への打診(隣地と一体化することで価値が上がるケースが多い)、(4)空き家バンクへの登録(自治体が運営する空き家情報サイト)、などがあります。

売却価格が低くても、(1)維持管理費(固定資産税・草刈り・修繕)から解放される、(2)将来の所有者不明土地化を防ぐ、(3)相続人の心理的負担が消える、というメリットがあります。

選択肢3:相続土地国庫帰属制度(先述)

売却もできず、相続放棄も難しい場合の最後の選択肢として、相続土地国庫帰属制度があります。前述の通り、要件は厳しく、負担金もかかりますが、活用の余地のない土地を最終的に手放す手段として機能します。

ただし、(1)土地のみ対象で建物がある場合は解体が必要、(2)申請から承認まで半年〜1年、(3)負担金が想定外に高くなることもある、というハードルがあります。事前に法務局に相談し、自分の土地が制度の対象になるか確認することから始めます。

選択肢4:任意売却(借金がある場合)

被相続人に住宅ローンや事業性借入があり、不動産に担保(抵当権)が設定されている場合、(1)相続放棄、(2)相続後の競売、(3)任意売却、の3つの選択肢があります。

任意売却は、抵当権者(金融機関)と協議のうえ、競売より高い価格で売却し、債務の一部または全部を返済する方法です。競売よりも(1)売却価格が高くなりやすい、(2)残債務が少なくなる、(3)プライバシーが保たれる、というメリットがあります。

ただし、任意売却は専門的な手続きで、弁護士・司法書士・任意売却専門業者の関与が必要です。費用は売却価格の3〜5%程度。複雑な事案では専門家への早期相談が大切です。

専門家に依頼するかの判断と費用相場

不動産相続は、複数の専門家が関わる場面があります。誰にいつ依頼すべきか、整理します。

司法書士|相続登記の代理が中心

司法書士は、不動産登記の専門家です。相続登記の代理が独占業務に近い領域で、不動産相続では最も関与頻度が高い専門家になります。

依頼すべきケースは、(1)不動産の名義変更だけ必要、(2)相続人間に争いがない、(3)シンプルな相続放棄を本人手続きで行いたいが書類作成だけ専門家に頼みたい、(4)費用を抑えたい、です。

費用相場は、相続登記が6万〜15万円、相続放棄の書類作成が3万〜7万円、遺産分割協議書の作成が3万〜10万円程度。シンプルな事案であれば、弁護士の半額〜3分の1で済みます。

弁護士|争いがある・複雑な事案で関与

弁護士は、相続事案全般を扱える専門家で、特に相続人間に対立がある場合、または複合的な事案で関与します。

依頼すべきケースは、(1)相続人間で不動産の取得者で意見対立、(2)遺言書の有効性に争いがある、(3)遺留分侵害の問題がある、(4)被相続人に多額の借金があり相続放棄の判断が複雑、(5)複数の不動産・複数の相続人で論点が複雑、です。

費用相場は、遺産分割協議の代理で着手金20万〜50万円+報酬金10〜15%、調停・訴訟で着手金50万〜100万円+報酬金10〜20%。財産規模5,000万円の遺産分割で総額150万〜300万円程度。

税理士|相続税申告で必要

税理士は、相続税の申告で必要になります。遺産総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超える場合、税理士への依頼がほぼ必須です。

費用相場は、相続税申告で遺産総額の0.5〜1.0%。遺産総額5,000万円なら25万〜50万円、1億円なら50万〜100万円。小規模宅地等の特例の適用判定など、不動産が絡む事案では税理士の専門性が大きく効きます。

不動産業者|売却・賃貸の実務

不動産を売却または賃貸する場合は、不動産業者(売買仲介・賃貸仲介)が窓口になります。

売却の場合、媒介契約を結んで売却活動を依頼します。仲介手数料の上限は、(売却価格×3%+6万円)×消費税(売却価格400万円超の場合)。例えば3,000万円で売却するなら、仲介手数料は最大105.6万円(税込)です。

複数の業者から査定を取り、(1)査定価格の根拠、(2)販売戦略、(3)担当者の信頼性、を比較して選びます。1社だけで決めると、相場より大きく低い価格で売却するリスクがあります。

専門家の組み合わせの目安

不動産相続で、典型的な専門家の組み合わせは次の通りです。

シンプルな事案(自宅1件・相続人1〜2人・争いなし・基礎控除以下)なら、司法書士1人で対応可能。費用総額10万〜15万円程度。

中規模事案(複数不動産・相続人3人・基礎控除超え)なら、司法書士+税理士の組み合わせ。費用総額50万〜100万円程度。

複雑事案(相続人間に争い・遺留分の問題あり・複数不動産)なら、弁護士+税理士+司法書士のチーム。費用総額200万〜500万円程度。

読者へのまとめ|不動産相続を進める行動指針

本記事の最後に、不動産を相続することになった方が、今すぐ取るべき行動を、優先順位順に整理します。

今日中にすべきこと|不動産の全体像を把握する

まずは、被相続人が所有していた不動産の概略を把握します。(1)固定資産税納税通知書を探す(被相続人の自宅に届いている)、(2)市区町村の名寄帳を取得して、被相続人名義の全ての不動産を確認、(3)登記事項証明書を取得して、所有者・担保権の有無を確認、(4)固定資産税評価証明書で評価額を確認、です。

被相続人が複数の市区町村に不動産を持っていた場合は、それぞれの市区町村で名寄帳を取る必要があります。隠れた不動産がないか、慎重に確認します。

1か月以内にすべきこと|相続放棄の判断と相続税の試算

被相続人の借金や保証債務がある可能性がある場合、3か月以内に相続放棄を判断する必要があります。借金の有無を確認するために、(1)被相続人の自宅の郵便物(督促状)、(2)信用情報機関(JICC、CIC、KSC)への開示請求、(3)被相続人の取引銀行への照会、を実施します。

同時に、相続税の試算を始めます。遺産総額(不動産評価額+預貯金+その他)が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超えそうなら、税理士の初回相談を予約します。10か月の申告期限を考えると、早期着手が必要です。

3か月以内にすべきこと|相続放棄の決定と遺産分割協議の開始

3か月の期限内に相続放棄の判断を確定します。相続放棄しないなら、相続人全員で遺産分割協議を開始します。

不動産の取得者をどう決めるかは、(1)被相続人の自宅は配偶者または同居の子が取得する、(2)代償分割または換価分割で公平な分配を実現する、(3)将来の管理・処分計画も含めて検討、という方針で進めます。

共有名義は将来のトラブルの種になるため、できる限り避けます。

10か月以内にすべきこと|相続税申告(必要な場合)

基礎控除を超える場合は、10か月以内に相続税を申告・納付します。税理士に依頼するなら、申告期限の3か月前(=死亡から7か月後)までには依頼が完了している必要があります。

小規模宅地等の特例を適用するなら、申告期限までに遺産分割が完了していることが原則です。間に合わなければ、未分割のまま申告して、後日修正申告で特例を適用する形になります。

3年以内にすべきこと|相続登記の完了

取得を知ってから3年以内に、相続登記を完了します。司法書士に依頼するなら、(1)遺産分割協議書の作成、(2)必要書類の収集、(3)登記申請、までを2〜3か月で進めることが可能です。

2024年4月以前の古い相続で登記未了の不動産がある場合は、2027年3月31日が期限です。古い相続の登記は、戸籍の収集に時間がかかることがあるため、早期着手が大切です。

取得後の方針決定|住む・貸す・売る・手放す

相続登記が完了したら、その不動産の長期的な活用方針を決めます。(1)住む、(2)貸す、(3)売る、(4)国庫帰属制度などで手放す、の4つの選択肢から、立地・状態・家族の意向・経済状況で判断します。

判断に迷う場合は、不動産業者の査定(複数社)、税理士の税負担試算、家族との話し合いを重ねて、納得のいく結論を出します。

不動産相続は、家族の歴史と財産が交差する重要な局面です。手続きは複雑で時間もかかりますが、一つひとつのステップを着実に進めることで、自分と家族にとって最善の結論を出せます。本記事の内容を参考に、専門家の力も借りながら、納得感のある手続きを進めることが、後悔のない相続のための基本になります。

ワンポイントアドバイス
不動産相続で最も大切なのは、「2024年4月施行の相続登記義務化への対応」「不動産の評価と分割方法の決定」「取得後の長期的な活用方針」の3点です。相続登記は2024年4月から義務化され、(1)取得を知ってから3年以内、(2)2024年4月以前の相続も対象で2027年3月31日までに完了、(3)違反すると10万円以下の過料(刑事罰ではなく行政罰、前科にならない)、というルールが適用されます。遺産分割協議が長引く場合は、相続人申告登記(無料・単独申出可)で過料を回避できます。費用面では、登録免許税が固定資産税評価額×0.4%、司法書士費用が6万〜15万円が標準的な範囲です。相続税は、遺産総額が基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超える場合に申告が必要で、被相続人の自宅は小規模宅地等の特例(330平米まで80%評価減)で大きく軽減できる可能性があります。取得後の選択肢は、(a)住む、(b)貸す、(c)売る、(d)2023年4月施行の相続土地国庫帰属制度で手放す、の4つ。共有名義は将来のトラブルの種になるため、代償分割か換価分割で単独所有を実現するのが望ましい方針です。借金が多い場合は3か月以内の相続放棄、活用の見込みがない土地は国庫帰属制度(審査手数料1筆14,000円・負担金原則20万円)、という選択肢があります。事案の複雑さに応じて、司法書士(登記が中心)、税理士(相続税申告)、弁護士(争いがある場合)を組み合わせて、長期的に問題のない不動産相続を実現することが、家族の安心につながります。

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基礎控除額

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課税対象額

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相続税の総額(概算)

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※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。

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