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秘密証書遺言とは?メリットと作成手順・注意点

秘密証書遺言とは?メリットと作成手順・注意点

この記事で分かること

  • 秘密証書遺言とはどんな方式かという基本
  • 内容を秘密にできるなどのメリット
  • 形式が確認されないなどのデメリットと注意点
  • 証人の立会いを含む作成手順
  • 三種類の遺言書の比較と秘密証書遺言が向いているケース

この記事では、秘密証書遺言とはどんな方式なのか、メリットとデメリット、作成手順までを弁護士の視点で解説します。秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま、遺言が存在することを公証役場で証明してもらう方式です。内容を知られずにすむ利点と、形式が確認されず不備で無効になりうるという弱点を押さえます。さらに、証人の立会いを含む作成手順、三種類の遺言書の比較、向いているケースまで整理します。読み終えれば、自分に合うかどうかを判断できます。

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遺言を残したいけれど、その内容は誰にも知られたくない。そんな思いに応えてくれるのが、秘密証書遺言という方式です。中身を秘密にしたまま、遺言が確かに存在することだけを公証役場で証明してもらえる、少し変わった仕組みです。あまり知られていませんが、特定の事情を抱える人にとっては、心強い選択肢になります。

この記事では、秘密証書遺言とはどんな方式なのか、どんなメリットとデメリットがあるのか、そして実際の作成手順までを、弁護士の視点でわかりやすく整理します。ほかの方式との違いも見ながら、自分に合うかどうかを判断できるようにしていきましょう。読み終えるころには、秘密証書遺言を選ぶべきかどうかが見えてくるはずです。

秘密証書遺言は、実際にはあまり多く使われていない方式です。しかし、使われる場面が限られているというだけで、価値がないわけではありません。むしろ、内容を秘密にしたいという切実な事情を抱える人にとっては、ほかに代えがたい役割を果たします。自分の状況がこの方式に合うかどうかを見極めることが、賢い遺言選びの第一歩になります。

遺言の方式は、優劣で選ぶものではありません。それぞれに役割があり、自分の事情にいちばん合うものを選ぶのが正解です。秘密証書遺言が珍しい方式だからといって、避ける必要はありません。逆に、流行や一般論にとらわれず、自分にとって何が大切かを基準に選ぶことが、後悔のない遺言につながります。まずは選択肢の一つとして、しっかり理解しておきましょう。

この記事を読んでいる方の中には、すでに自筆証書遺言や公正証書遺言を検討したうえで、それでも何か物足りなさを感じている方もいるかもしれません。秘密証書遺言は、そうした「内容は知られたくないが、存在は確かにしたい」という隙間の希望に応える方式です。ほかの方式で満たせない部分があるなら、検討する価値は十分にあります。

大切なのは、それぞれの方式の特徴を正しく理解したうえで比べることです。なんとなく手軽そうだから、なんとなく確実そうだから、という曖昧な理由で選ぶと、後で「思っていたのと違った」となりかねません。秘密証書遺言についても、メリットとデメリットを具体的に把握してから判断しましょう。理解を深めることが、納得のいく選択への近道です。

遺言は人生で何度も作るものではないからこそ、一つひとつの判断を丁寧に行いたいものです。急いで決める必要はありません。時間をかけて各方式を比べ、自分の事情に照らして考える。その丁寧さが、長く安心できる遺言を生みます。焦らず、じっくり向き合うことを大切にしてください。

秘密証書遺言とは何か

秘密証書遺言とは、遺言の内容を秘密にしたまま、その遺言が存在することを公証役場で証明してもらう方式です。自分で書いた遺言を封筒に入れて封をし、公証人と証人の前に差し出して、確かに自分の遺言であることを証明してもらいます。中身を見せる必要はありません。

つまり、公証人や証人は「この封書が、確かにこの人の遺言である」ことは証明しますが、その中に何が書かれているかは知りません。だからこそ、内容を完全に伏せたまま、存在だけを公的に確かなものにできるのです。秘密を守りながらも、後で「そんな遺言は知らない」と言われないようにする。この絶妙なバランスが、秘密証書遺言ならではの持ち味です。

自筆証書遺言だと、自宅にしまっておいた遺言書を「見たことがない」「偽物だ」と言われる心配がつきまといます。公的に存在を証明してもらえる秘密証書遺言なら、そうした疑いをかけられにくくなります。中身は秘密でも、確かにあるという事実は揺るがない。この安心感は、内容を伏せたい人にとって大きな価値を持ちます。

とくに、相続人の間に対立がありそうな家庭では、遺言の存在自体を否定されるリスクを減らせることが重要になります。存在が公的に証明されていれば、「そんな遺言はなかった」という主張は通りにくくなります。争いの火種をあらかじめ一つ消しておける。これは、もめごとが予想される相続ほど大きな意味を持つ備えです。

ただし、存在が証明されても、中身の有効性まで保証されるわけではない点は繰り返し意識しておきましょう。存在は確かでも、形式の不備で内容が無効になれば意味がありません。存在の証明と内容の有効性は別の話だと理解しておくことが、秘密証書遺言を使いこなすうえで欠かせません。ここを取り違えると、せっかくの備えが空振りになってしまいます。

そのため、封をする前の点検は何度行っても行いすぎることはありません。署名や押印はあるか、日付は正確か、財産は特定できるように書けているか。封をしてしまえばもう直せないという前提で、念入りに確認しましょう。この一手間が、存在の証明を本当に意味のあるものにしてくれます。

もし自分で点検するのが不安なら、封をする前の段階で専門家に内容を見てもらうのが確実です。封をする前であれば、形式の不備や内容のあいまいさを指摘してもらえます。秘密証書遺言の弱点である形式チェックの不在を、この方法で補えるのです。秘密性を保ちつつ確実性も高めたいなら、ぜひ取り入れたい工夫といえるでしょう。

専門家に相談する際は、内容そのものを見せることに抵抗があるかもしれません。しかし、専門家には守秘義務があり、相談内容が外に漏れる心配はありません。安心して中身を相談できる相手だからこそ、形式の確認を任せられます。秘密を守りながら確実さを得るための、現実的で頼れる方法だと考えてよいでしょう。

このように、工夫しだいで秘密証書遺言の弱点は十分に補えます。方式そのものの限界を理解したうえで、足りない部分を専門家の力で補う。その姿勢があれば、秘密証書遺言も安心して活用できる選択肢になります。

この方式の最大の特徴は、内容の秘密と存在の証明を両立できる点にあります。自分で書く自筆証書遺言は内容を秘密にできますが、本人が書いたという証明はありません。公証人が関与する公正証書遺言は確実ですが、内容を公証人や証人に知られます。秘密証書遺言は、この両者の中間に位置する方式だといえます。

整理すると、三つの方式は「内容の秘密」と「確実性」という二つの軸で位置づけられます。自筆証書遺言は秘密を守れるが確実性に欠け、公正証書遺言は確実だが内容を知られる。秘密証書遺言は、秘密を守りつつ存在の証明だけは得られる、という独自の立ち位置にあります。どの軸を重視するかで、選ぶべき方式が変わってくるのです。

言いかえれば、何を心配しているかを整理すると、自分に合う方式が見えてきます。形式の不備が心配なら公正証書遺言、内容を知られるのが心配なら自筆証書遺言か秘密証書遺言、存在を疑われるのが心配なら秘密証書遺言か公正証書遺言、という具合です。自分の不安の中心がどこにあるかを見つけることが、方式選びの近道になります。

不安は一つとは限りません。形式も心配だし内容も知られたくない、という人も多いでしょう。その場合は、専門家に内容を確認してもらったうえで秘密証書遺言にする、といった組み合わせが有効です。複数の不安があるなら、それぞれに手当てを考えればよいのです。一つの方式で全部を解決しようとせず、工夫で補う発想が役立ちます。

専門家に相談すれば、自分の不安や希望に応じて、どの方式が合うかを一緒に整理してもらえます。一人で悩んでいると、どの方式にも一長一短があって決めきれないこともあります。第三者の視点が入ることで、自分にとって何が優先かが見えやすくなります。判断に迷ったら、抱え込まずに相談してみることをおすすめします。

確実性を最優先するなら、公証人が内容まで関与する公正証書遺言が安心です。秘密証書遺言は、あくまで内容を秘密にしたいという特別な希望があるときに選ばれる方式です。手続きや費用の考え方が気になる方は、公正証書遺言とあわせて比べておくとよいでしょう。

多くの人にとっては、確実性の高い公正証書遺言が第一の選択肢になります。秘密証書遺言を選ぶのは、それでもなお内容を知られたくないという明確な理由があるときです。まずは、自分が本当に内容の秘密を必要としているのかを問い直してみましょう。その答えがはっきりしてはじめて、秘密証書遺言という選択が意味を持ちます。

内容の秘密がそれほど重要でないなら、無理に秘密証書遺言を選ぶ必要はありません。手間をかけてまで秘密にする理由がなければ、より確実な方式を選ぶほうが安心だからです。自分の希望を正直に見つめ、本当に必要なものだけを選ぶ。そうした冷静な判断が、自分に合った遺言づくりにつながります。背伸びをせず、等身大で選びましょう。

遺言は、自分のために、そして家族のために残すものです。見栄や形式にとらわれる必要はありません。自分の財産と家族の状況に正直に向き合い、いちばん安心できる方法を選ぶ。それだけで十分です。秘密証書遺言が合うならそれを選び、合わないなら別の方式を選ぶ。その素直な判断こそが、最良の選択につながります。

遺言づくりにおいては、迷うこと自体は悪いことではありません。迷うのは、それだけ家族のことを真剣に考えている証拠だからです。大切なのは、迷ったまま立ち止まらず、一歩ずつ前に進むことです。情報を集め、必要なら相談し、自分なりの答えにたどり着く。その過程そのものが、よりよい遺言を生み出していきます。

ワンポイントアドバイス
秘密証書遺言は「内容は秘密、存在は証明」という独特の方式です。証明されるのはあくまで存在であって、中身が形式や法律のルールを満たしているかは確認されません。内容の正しさは自分で担保する必要がある点を、まず押さえておきましょう。

秘密証書遺言のメリット

秘密証書遺言には、ほかの方式にはない独自の利点があります。どんな場面で役立つのか、その魅力を見ていきましょう。

第一のメリットは、内容を誰にも知られずにすむことです。公証人や証人にも中身を見せないため、財産の分け方を完全に秘密にしておけます。第二に、遺言が存在することを公的に証明してもらえる点も大きな利点です。これにより、遺言の存在そのものを否定されたり、偽物だと疑われたりするおそれが減ります。第三に、本文をパソコンで作成できる点も、自筆証書遺言にはない特徴です。

本文をパソコンで作れることは、長い文章や複雑な内容を残したい人には大きな助けになります。手書きで長文を書くのは負担が大きく、書き間違いも起きやすいものです。パソコンなら、読みやすく整った形で作成でき、修正もしやすくなります。ただし、署名は自分の手で行う必要がある点は忘れないようにしましょう。

パソコンで作るときは、つい署名まで印字してしまわないよう注意してください。署名だけは必ず自筆でなければなりません。また、印字した内容に誤りがないか、印刷後によく確認することも大切です。手書きと違って一見きれいに仕上がるぶん、かえって誤字や記載もれを見落としやすいという落とし穴もあります。仕上がりの美しさに油断しないようにしましょう。

  • 内容を秘密にできる。公証人や証人にも中身を見せずにすむ。
  • 存在を証明できる。遺言があることを公的に確かめてもらえる。
  • 本文を手書きしなくてよい。パソコンでの作成も認められる。
  • 偽造されにくい。封をして証明するため改ざんの心配が小さい。

このように、秘密証書遺言は「内容は絶対に知られたくないが、存在は確実にしておきたい」という方に向いています。たとえば、特定の人にだけ多く残すことを他の家族に知られたくない場合などに、その良さが活きてきます。

ほかにも、再婚した家庭で前の家族への配慮を内密にしておきたい場合や、特定の相続人にだけ事情があって多めに残したい場合など、家族構成が複雑なときに秘密性が役立つことがあります。生前から分け方が知られると、家族の間に余計な緊張が生まれることもあります。秘密証書遺言は、そうした生前の波風を立てずに意思を残したい人にとって、静かな備えになるのです。

家族の前では平穏を保ちながら、自分の本当の意思は確かに残しておく。秘密証書遺言は、そんな両立を可能にします。生前の人間関係を波立たせたくないという思いと、死後に意思を実現したいという思い。その両方を大切にできる点に、この方式の人間味があります。事情を抱える人ほど、その価値を実感できるでしょう。

もちろん、秘密にすることがすべてよいわけではありません。秘密にしていたために、家族が遺言の存在に気づかなかったり、相続後に思わぬ衝撃を受けたりすることもあります。秘密のメリットと、伝えないことのデメリットの両方を見たうえで、自分にとってのバランスを決めることが大切です。何を隠し、何を伝えるか。その判断こそが、遺言づくりの肝になります。

最後にもう一度整理しておきましょう。秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま存在を公的に証明できる、独自の価値を持つ方式です。確実性の面では公正証書遺言に及ばないため、内容の形式は自分で整える心構えが欠かせません。秘密を守りたいという明確な目的があるなら、心強い選択肢になります。自分の事情とよく照らし合わせて、後悔のない選択をしてください。

秘密証書遺言のデメリットと注意点

独自の利点を持つ秘密証書遺言ですが、無視できない弱点もあります。メリットとあわせてデメリットも知っておくことが、後悔しない選択につながります。

もっとも大きな弱点は、内容の形式が確認されないことです。公証役場で証明されるのは存在だけで、中身が法律のルールを満たしているかはチェックされません。そのため、書き方に不備があれば無効になるおそれがあります。次に、手続きに手間がかかる点もデメリットです。公証役場へ出向き、証人にも立ち会ってもらう必要があります。さらに、相続が起きたあとに家庭裁判所での確認手続きが必要になります。

これらのデメリットを並べると、秘密証書遺言は「手間はかかるのに、確実性は自筆証書遺言と同じ」という、やや中途半端な面があることがわかります。手間をかけるなら、内容まで確認してもらえる公正証書遺言のほうが確実だ、という考え方も成り立ちます。だからこそ、秘密証書遺言を選ぶには「内容を秘密にしたい」という明確な目的が必要なのです。目的がはっきりしていれば、手間に見合う価値があります。

逆に、目的があいまいなまま手間のかかる方式を選ぶと、「これなら公正証書でよかった」と後悔しかねません。方式を選ぶ前に、なぜその方式が必要なのかを自分の言葉で説明できるか試してみるとよいでしょう。理由をはっきり言えるなら、その選択は自分にとって正しいものです。目的の明確さが、納得のいく選択を支えます。

注意
秘密証書遺言は存在こそ証明されますが、中身の形式は確認されません。封をしてしまうと誰も中身を点検できないため、書き方に不備があってもそのまま無効になりかねません。封をする前に、形式を満たしているか自分で十分に確認することが欠かせません。

また、内容があいまいだったり、他の相続人の権利への配慮を欠いたりしていると、後で争いになることもあります。一定の相続人には法律で保障された最低限の取り分があるため、これを無視した内容にすると、その取り分をめぐってもめるおそれがあります。秘密にするからこそ、内容は一層慎重に整える必要があります。

たとえば、財産のすべてを一人に残すといった内容にすると、ほかの相続人が最低限の取り分を求めて争うことがあります。秘密にしていたぶん、相続が起きて中身が明らかになったときの衝撃も大きくなりがちです。秘密性を選ぶなら、なおさら他の相続人の権利に配慮し、争いになりにくい内容に整えておくことが大切です。秘密と配慮は、両立させてこそ意味があります。

配慮を欠いた秘密の遺言は、相続が起きてから家族に大きな衝撃と不信を残すことがあります。「なぜ黙っていたのか」「なぜこんな分け方なのか」という思いが、秘密だったぶん強く噴き出すのです。そうならないために、付言で理由を丁寧に説明したり、最低限の取り分に配慮したりしておくことが大切です。秘密にするからこそ、残される人への思いやりを忘れないようにしましょう。

秘密証書遺言の作成手順

秘密証書遺言を作るには、いくつかの段階を踏む必要があります。自筆証書遺言より手間はかかりますが、流れを知っておけば落ち着いて進められます。大まかな手順は次のとおりです。

  1. 遺言の本文を作成します。手書きでもパソコンでも構いませんが、署名は自分で行い、押印もします。
  2. 作成した遺言を封筒に入れ、本文に押したものと同じ印で封をします。
  3. 公証役場へ出向き、証人とともに公証人の前で、その封書が自分の遺言であることを申し述べます。
  4. 公証人が所定の手続きを行い、遺言の存在が証明されます。封書は自分で持ち帰り、保管します。

このように、秘密証書遺言には証人の立会いと公証役場での手続きが必要です。証人には、誰でもなれるわけではなく、一定の人はなれないという決まりがあります。手続きの段取りや証人の手配が気になる場合は、事前に専門家へ相談しておくとスムーズです。遺言に何を書けるのか全体像を知っておくと、内容づくりにも役立ちます。

証人を誰に頼むかは、意外と悩ましい問題です。内容は知られないとはいえ、遺言を作るという事実は証人に伝わります。信頼できる人に頼むのが基本ですが、適切な人が身近にいない場合は、専門家に証人を手配してもらう方法もあります。証人の要件を満たさない人が立ち会うと手続きが無効になりかねないため、ここは慎重に進めましょう。

証人を頼める人が思い当たらないときは、早めに専門家へ相談しておくと安心です。専門家に依頼すれば、要件を満たす証人を手配してもらえることもあります。直前になって証人が見つからず手続きが進められない、という事態は避けたいものです。段取りの中でも証人の確保はつまずきやすい点なので、余裕をもって準備しておきましょう。

三種類の遺言書をどう選ぶか

遺言には主に三つの方式があり、それぞれに長所と短所があります。秘密証書遺言が自分に合うかを判断するために、三つを並べて比べてみましょう。

方式 内容の秘密 確実性 手軽さ
自筆証書遺言 秘密にできる 形式不備に注意 もっとも手軽
公正証書遺言 公証人らに知られる もっとも確実 手間がかかる
秘密証書遺言 秘密にできる 形式不備に注意 手間がかかる

こうして並べると、秘密証書遺言の立ち位置がよくわかります。内容を秘密にしたいという点では自筆証書遺言と同じですが、存在を公的に証明できる点が違います。一方で、確実性の面では公正証書遺言に及びません。何を最も大切にしたいかで、選ぶべき方式は変わってきます。遺言がないまま相続が起きた場合の進め方を知っておくと、方式を選ぶ意味がより実感できます。

遺言がなければ、財産の分け方は相続人全員の話し合いに委ねられます。話し合いがまとまらなければ、調停や審判といった裁判所の手続きに進むこともあり、家族の負担は重くなります。どの方式であれ、遺言を残しておくこと自体が、こうした事態を避ける備えになります。方式選びに迷っても、まず遺言を残すという一歩を踏み出すことが大切です。

完璧な方式を求めて動けなくなるより、まずは何らかの形で意思を残すほうが、家族にとってはるかに助けになります。方式は後から変えることもできます。大切なのは、自分の意思を形にしておくこと。その一歩を踏み出せば、あとは状況に応じて整えていけばよいのです。迷いがあっても、まず動き出すことを大切にしましょう。

秘密証書遺言が向いているケース

秘密証書遺言は、どんな人に向いているのでしょうか。選ぶべき場面と、注意すべき場面を整理しておきましょう。

向いているのは、内容を絶対に知られたくないという強い希望がある人です。たとえば、特定の人に多く残すことを他の家族に知られたくない場合や、遺言の存在だけははっきりさせておきたい場合などです。自筆証書遺言では存在を証明できず、公正証書遺言では内容を知られてしまう。その隙間を埋めるのが、秘密証書遺言なのです。

たとえば、長年連れ添ったパートナーへ財産を残したいが、そのことを生前は伏せておきたい、といった事情を抱える人もいます。こうしたデリケートな希望を、波風を立てずに形にできるのが秘密証書遺言の強みです。誰にも言えない思いを、確かな形で未来へ託す。そんな静かな願いに寄り添える方式だといえるでしょう。

一方で、注意したいのは、内容の正しさを自分で担保しなければならない点です。封をしてしまえば誰も中身を確認できないため、書き方の不備がそのまま残ってしまいます。確実性を重視するなら、内容まで関与してもらえる公正証書遺言のほうが安心です。秘密にしたいという希望と、確実に実現したいという希望のどちらを優先するか、よく考えて選びましょう。専門家に相談しながら決めると、判断の助けになります。

一つの考え方として、まず公正証書遺言で確実な備えをしておき、どうしても秘密にしたい部分だけを別に検討する、という方法もあります。あるいは、内容を専門家にだけ確認してもらってから秘密証書遺言にすれば、形式の不備という弱点をある程度カバーできます。秘密性と確実性は対立しがちですが、工夫しだいで両方に近づけることもできるのです。自分にとって最適な組み合わせを探してみましょう。

秘密証書遺言を安心して活かすために

ここまで見てきたように、秘密証書遺言は内容の秘密と存在の証明を両立できる、独自の価値を持つ方式です。その良さを活かすには、内容の形式は自分で確実に整える、という心構えが欠かせません。証明されるのは存在だけだということを、つねに意識しておきましょう。

書き方に不備はないか、内容は明確か、他の相続人の権利に配慮できているか。これらを一人で判断するのが不安なときは、無理をせず専門家の力を借りてください。秘密証書遺言を選ぶべきか迷うことがあれば、相続にくわしい弁護士に相談することで、安心して進められます。

秘密証書遺言についてよくある質問

最後に、秘密証書遺言について、よく寄せられる質問にお答えします。

秘密証書遺言の本文はパソコンで作ってもよいですか

はい、秘密証書遺言の本文はパソコンで作成しても構いません。これは、本文の手書きが原則とされる自筆証書遺言との大きな違いです。ただし、署名は自分の手で行う必要があります。パソコンで作れる手軽さはありますが、署名や封の仕方など守るべきルールはありますので、形式をきちんと確認したうえで作成することが大切です。

秘密証書遺言は誰でも証人になってもらえますか

証人には、誰でもなれるわけではありません。一定の関係にある人は証人になれないという決まりがあります。これは、遺言の公正さを保つための仕組みです。誰に証人を頼めばよいか迷う場合は、事前に確認しておくと安心です。適切な証人を立てられないと手続きが進められないため、早めに手配しておくことをおすすめします。

秘密証書遺言が無効になることはありますか

はい、書き方に不備があれば無効になることがあります。秘密証書遺言は存在こそ証明されますが、中身の形式は確認されないため、署名や押印の抜け、内容のあいまいさなどがあると効力が認められないおそれがあります。封をする前に形式を十分に点検すること、不安があれば専門家に確認することが、無効を防ぐうえで重要です。

秘密証書遺言は相続後すぐに使えますか

秘密証書遺言は、相続が起きたあとに家庭裁判所での確認手続きを経る必要があります。封をした遺言書をいきなり開けて使えるわけではありません。この手続きには申し立てや相続人への通知が必要で、一定の時間がかかります。残された家族の負担も考えると、手続きの流れをあらかじめ家族に伝えておくと、いざというときに慌てずにすみます。

秘密証書遺言の保管はどうすればよいですか

秘密証書遺言は、公証役場で存在を証明してもらったあと、封書を自分で持ち帰って保管します。公証役場が現物を預かってくれるわけではない点に注意が必要です。そのため、紛失や、相続人に見つけてもらえないリスクは残ります。信頼できる場所に保管し、遺言があることと保管場所を信頼できる人に伝えておくと、確実に役立てられます。

秘密証書遺言が形式を欠いた場合はどうなりますか

秘密証書遺言として必要な要件を欠いていても、自分で書いた本文が自筆証書遺言の要件を満たしていれば、自筆証書遺言として効力が認められる場合があります。ただし、本文をパソコンで作っていた場合などはこの救済が使えません。当てにしすぎず、最初からきちんと要件を満たして作ることが何より大切です。不安があれば専門家に確認しておきましょう。

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