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相続トラブルを解決する遺産分割調停とはどんなもの?

この記事で分かること

  • 遺産分割協議がまとまらない場合の遺産分割調停
  • 遺産分割調停の流れを把握~準備から家庭裁判所への申立て
  • 調停不成立の場合は審判へ移行

遺産分割がスムーズにできれば問題はないのですが、相続人同士で揉めてしまい、遺産相続争いになってしまうことがあります。うまく遺産分割協議がまとまらない場合は、裁判所で行う遺産分割調停を申し立て、解決を目指すことになります。

遺産分割協議と調停

遺産を各相続人に分けることを遺産分割といいます。遺産の分割は、遺言があればその指定(法定相続分)に従い、なければ法定相続分に従った割合で分割するのが原則です。

遺産分割協議で割合を決めることもできる

相続人全員の同意があれば、指定・法定相続分通りに遺産を分割しなくて問題ありません。例えば親の介護を最後までした息子とそうでない子どもの分割割合が同一であるのは、不公平感があります。そうした、ケースバイケースの事情を考慮して相続財産を分割するための話し合の場が遺産分割協議です。遺産分割協議には、次のような条件があります。

相続人全員の参加
相続人全員が一同に介するのが原則です。一人でも欠けたらその協議は無効となります。

遺産分割協議書を作成
話し合いでまとまったら遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書とは、「誰が何をどれだけ相続するか」を記したものです。

遺産分割協議がまとまらない場合

話し合いがすんなりまとまればよいのですが、結論がでないこともあります。まとまらないだけなく、感情的にこじれてしまい、仲がよかったはずの相続人同士が争いを始めるケースは少なくありません。例えば、親の看病や介護などをそれぞれが均等にできればよいのですが、特定の人に集中してしまうことがあります。そうなった場合、ずっと世話をしていた人とそうでない人が同じ額の遺産を相続することに、心理的な不平不満が溜まることはあり得ることです。このように、感情のもつれが生じるなどして、うまく協議がまとまらなくなったときは、遺産分割調停を利用することになります。

遺産分割調停

遺産分割調停とは、裁判所の調停手続きを利用して遺産相続を解決する方法のことです。相続人だけの話し合いでは拉致が開かなかったことも、裁判所の調停委員を交えて話し合うことで、視野が広がる可能性があります。第三者が進行してくれるため、冷静に話し合うことができます。

調停がまとまらない場合

遺産分割調停においても、話がうまくまとまらないことは往々にしてあります。その場合は、「遺産分割審判」に移行します。審判では調停での話し合いの内容を裁判官がまとめて、それぞれの相続分を強制的に決めて審判をくだします。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議では法定相続分の通りでなく自由に分割割合を決めることができますが、相続人全員の同意が必要です。話し合いがまとまらない場合は遺産分割調停を申立てることになります。

遺産分割調停の流れ

                            

遺産分割調停を利用する前には、相続人の数と相続財産の額を確定する必要があります。今さらと思われる方は多いと思いますが、意外にも相続人の数をきちんと把握できていないことはよくあることなのです。たとえば、被相続人に離婚歴があり、わかれた妻に子どもがいたとなれば、親族の誰も知らない相続人が存在していることもあるのです。

相続財産の調査

相続財産についても同様です。遺産分割協議の際、相続財産については把握しているはずですが、裁判所に提出する際、正確な相続財産額を報告しなければなりません。

「財産目録」を作成

裁判所に提出できるよう準備をします。書式に決まりはありません。

みなし相続財産を忘れない

被相続人の死亡保険金や死亡退職金なども忘れずに入れて計算しましょう。葬式にかかった費用などは、相続財産からマイナスすることができます。

家庭裁判所に申立をする

遺産分割調停を取り扱っているのは、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所であることに注意しましょう。たとえ相続人が遠方に住んでいるとしても、裁判所は被相続人の最後の住所地になるのです。まず、遺産分割調停の申立書を作成し、戸籍謄本と財産目録などを準備して申立します。

調停期日に出頭

遺産分割調停の申し立てると、裁判所から調停期日の指定の連絡がきます。原則的には、相続人全員が、その期日に集まることになります。裁判所では、調停委員という第三者が間に立って話し合いが進められます。調停では、まず遺産のすべてを把握し、遺産の評価や、相続人それぞれに特別受益や寄与分があったかどうかを確認します。それから、どのように相続を分割するかなどを、話し合っていくことになります。当事者同士では話にならなかったようなことも、調停では冷静に話し合うことができる場合があります。

まとまらなければ審判へ

調停は成立の見込みがある限り、特に回数に制限はありません。およそ1ヶ月おきに開かれるのが一般的です。もし、そこでうまく話し合いがまとまれば調停が成立します。もし、話し合いをしても、このままでは成立の見込みがないと裁判所が判断すれば、調停は不成立で終わり、次に審判へと移行します。審判に移行したくなくても、相続人のたった1人でも納得しなければ、調停は不成立になってしまいます。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議の調停を家庭裁判所へ申立をする際、正確な相続人と相続財産について報告する必要があります。調停では調停委員を介し相続人全員による話し合いが進められ、調停が不成立になった場合は審判へ移行します。

遺産分割調停を有利に進めるためには

                     
遺産分割調停を有利に進めるには、調停委員によい印象を与える必要があります。また弁護士に依頼したほうが、専門知識があるため有利に進められます。その詳細について解説します。

有利に進めるには調停委員への印象が重要

遺産分割調停を有利に進めるには調停委員への印象が重要となってきます。調停委員を味方につけるという表現は乱暴ですが、調停委員にとって心証をよくすれば、自身に有利な内容で他の相続人を説得してもらうことができる可能性はあります。相続人同士で話をするよりも、調停委員から説得される方が冷静に話が聞けるところがあるのは事実でしょう。もし、調停委員が説得することで、他の相続人全員が納得に至れば、自身にある程度有利な条件で遺産分割調停が成立こともあります。

無理な主張をしない

自身の主張を大事にしながらも、他の相続人に対して歩み寄る姿勢を見せるのも大切です。好き勝手に発言していると、不利な雰囲気になってしまうため、自分の発言には注意するようにしましょう。

嘘をつかない

調停を有利に進めたいばかりに、誇張して説明する方がいます。何かの拍子に嘘がバレてしまうと不利な状況に追い込まれてしまいます。

遺産分割調停に弁護士は必要なのか

弁護士に依頼することをお勧めします。少しでも有利に進めていきたい、といった希望をお持ちの方は、法律の専門家である弁護士に相談することをおすすめします。初回は無料で相談にのってくれる弁護士はいますが、実際の手続きには弁護士費用が発生します。依頼する際は、事前に費用の確認はしましょう。

弁護士に依頼したほうがよいのは、次の理由があるからです。

申立をサポートしてもらえる

申立に必要な書類の取得から作成までを任せることができます。申立てには煩わしい準備が必要なものです。弁護士に依頼することで時間も手間も省け、精神的な負担も軽くなります。申立後も代理人として関わってもらうことができ、調停にも同行してくれるため、安心できます。

調停委員を味方につけやすい

調停委員は法的な根拠のある主張に弱いため、弁護士の専門知識が加わると説得しやすくなります。調停委員の中には法律資格を有している人もいますが、一般的には、そうでない方が多く含まれます。弁護士の資格を持っている人はほとんどいないため、弁護士のような専門知識を持っていません。したがって弁護士を付けている人の方が有利に話が進む可能性があります。

審判手続きが有利になる

調停不成立になると、次の審判では裁判官が判断をくだすことになります。そういった場合は、弁護士がいた方が間違いなく有利に働いてくれます。裁判官は調停に参加することは少なく、調停後に調停委員から内容の報告などを受けて、それを踏まえて最終的に判断します。そのためにも、法的に正しい根拠を示すことはとても重要です。裁判上の法的な根拠については、素人ではなかなか分からないことです。

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議の調停を有利に進めるためには調停委員に良い印象を与えることが大事です。弁護士が代理人として調停に関わることにより、法的根拠のある主張ができるので調停委員や他の相続人を納得させやすくなります。さらに審判に移行した場合も有利です。

遺産分割調停のことで困ったら弁護士に相談!

遺産相続で親族同士が争うことは悲しいことです。しかし、大きなお金が絡んでくることですし、どうしも、争いを免れないことも出てきます。相続人同士の仲が決定的に崩れる前に、できるだけ早めに弁護士に依頼することはとても有意義なことです。できれば、遺産分割協議の段階から相続に強い弁護士に相談することをおすすめします。

遺産相続は弁護士に相談を
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
  • 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
  • 遺産分割協議で話がまとまらない
  • 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
  • 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
  • 相続について、どうしていいのか分からない
上記に当てはまるなら弁護士に相談