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相続で弁護士への依頼を考え始めた方が、最初に知っておくべきこと
親が亡くなって相続手続きが始まったが、何から手をつければよいか分からない。兄弟との話し合いが進まず、感情的な対立が起きている。被相続人に借金があり、相続放棄を急ぐ必要がある。こうした場面で「弁護士に頼んだほうがよいのか」と考える方は多いです。
一方で、(1)弁護士費用が高そうで踏み切れない、(2)司法書士や税理士で済むのか分からない、(3)依頼するとかえって家族関係が悪化しないか不安、という迷いも生まれます。
本記事では、相続手続きを弁護士に依頼することの意味を、誠実にフラットに整理します。具体的には、(1)弁護士に依頼する5つの主なメリット、(2)逆に押さえるべきデメリットと注意点、(3)司法書士・税理士との役割の違いと使い分け、(4)案件別の費用相場、(5)依頼すべきケースと自分で進められるケースの判断軸、(6)早期相談が結果を左右する理由、(7)信頼できる弁護士を選ぶための具体的なポイント、までを解説します。
弁護士への依頼は、すべての相続事件で必要なわけではありません。ただし、依頼すべき場面で依頼しないことで結果として大きな損失を出すこともあれば、必要ない場面で依頼して費用負担だけが残ることもあります。自分のケースで「依頼すべきか、依頼するならどの専門家か」を判断するための材料を、本記事で揃えていきます。
相続手続きを弁護士に依頼する5つの主なメリット
弁護士に相続手続きを依頼することで得られる主なメリットを、5つに整理します。それぞれ、なぜそのメリットが生まれるのかという背景も含めて見ていきます。
メリット1|法的に有利な落としどころを戦略的に組み立てられる
最大のメリットは、法的な視点からの戦略立案です。相続事件は、(1)法定相続分、(2)特別受益、(3)寄与分、(4)遺留分、(5)遺産の評価、(6)期限のある手続き(相続放棄3か月、相続税申告10か月、遺留分1年など)、といった複数の論点が絡みます。
弁護士は、(1)自分の主張のうち通る部分と通らない部分の見極め、(2)相手方の主張への反論の組み立て、(3)感情的に許せない部分と法的に争うべき部分の切り分け、(4)落としどころの設計、を行います。これにより、感情だけで進めると失う可能性のある利益を確保できます。
具体例として、被相続人が長男に多額の生前贈与をしていたケース。本人だけで主張すると「生前贈与は不公平だ」と感情論になりがちですが、弁護士が関与すると、「特別受益として持ち戻しの対象になる金額」「贈与時期との関係」「黙示の持ち戻し免除の意思があったか」を法的に整理し、具体的な金額として主張に反映できます。
メリット2|交渉や裁判所での代理を引き受けてもらえる
弁護士は、(1)依頼者の代理人として相手方と直接交渉、(2)家庭裁判所での調停・審判・訴訟への出席、(3)書面の作成・提出、を引き受けます。
この「代理権」は、弁護士法72条により弁護士の独占業務(司法書士は140万円以下の簡裁事件と裁判外の和解、行政書士は書類作成のみ)になっています。本人で対応しなくても、弁護士が代わりに対応してくれるという点で、他の専門家と決定的に違います。
代理のメリットは、(1)精神的負担の軽減(相手方と直接やり取りしなくて済む)、(2)時間的負担の軽減(調停の月1回の期日に弁護士が出席)、(3)感情的になりがちな場面で冷静な対応が可能、(4)法的に有効な書面が作成される、です。
特に相続人間で対立が深刻化している場面では、本人同士の話し合いは進みません。弁護士が代理人として間に入ることで、感情を切り離した実務的な交渉が可能になります。
メリット3|期限のある手続きを確実に進められる
相続には、複数の期限があります。(1)相続放棄:3か月、(2)準確定申告:4か月、(3)相続税申告:10か月、(4)遺留分侵害額請求:1年(知ったときから)、(5)相続登記:3年(2024年4月義務化)、(6)取得費加算特例:3年10か月、というように、期限管理が複雑です。
弁護士に依頼すると、(1)各期限の正確な把握、(2)期限内の必要書類の準備、(3)期限超過時の対処法(熟慮期間伸長申立てなど)、(4)他の専門家(税理士・司法書士)との連携、を引き受けてくれます。
特に重要なのが相続放棄の3か月期限です。期限を超過すると原則として相続放棄ができなくなり、借金を含むすべての遺産を引き継ぐことになります。被相続人の借金が想定外に発見されたケース、相続人多数で連絡調整に時間がかかるケース、では弁護士の関与により期限内手続きが確実になります。
メリット4|相続人間のトラブル予防と早期解決
相続人間に対立がある場合、または対立の可能性がある場合、弁護士の早期関与はトラブルの拡大を防ぎます。
弁護士関与のトラブル予防効果は、(1)感情的な発言を法的な論点に整理することで対立の発火点を抑える、(2)各相続人の利害を客観的に整理することで合意の余地を見つける、(3)書面化により後日の言った言わない問題を防ぐ、(4)早期の相手方への文書送付により交渉の主導権を取る、で発揮されます。
具体例として、遺産の中に評価が分かれる不動産がある場合。本人同士の話し合いでは「いくらの価値か」で対立しがちですが、弁護士が関与すると、(1)固定資産税評価額、(2)路線価、(3)不動産業者の査定額、(4)鑑定評価額、の複数の評価方法を提示し、客観的な数字を基に話し合いを進められます。
メリット5|相続全体を見通した解決の組み立て
相続には、(1)遺産分割、(2)相続税申告、(3)不動産の登記・処分、(4)被相続人の負債処理、(5)生前贈与との関係、(6)将来の二次相続への影響、など複数の論点が絡みます。
弁護士は、(1)これらの論点を全体として俯瞰し、(2)税理士・司法書士・不動産業者などの他の専門家と連携し、(3)依頼者にとって最も有利な解決パッケージを組み立てる、ことができます。
具体例として、自宅不動産を長男が承継する遺産分割のケース。弁護士が関与すると、(1)小規模宅地等の特例(330平米まで80%評価減)の適用要件を考慮した分割案、(2)代償金支払いの分割計画、(3)二次相続(長男の妻側の親世代の相続)への影響、(4)生前贈与による事前対策の検討、までを一体で組み立てられます。
税理士は税負担の最適化、司法書士は登記の正確性、というように各専門家には強みがありますが、紛争予防と紛争解決の全体設計は弁護士の独自領域になります。
弁護士に依頼する前に押さえるべきデメリットと注意点
メリットの裏側で、弁護士への依頼には固有のデメリットもあります。誠実に整理します。
デメリット1|費用負担が大きい
最も大きなデメリットが、費用負担です。司法書士・行政書士と比較して、弁護士費用は2〜3倍程度かかるのが一般的です。
具体的には、(1)遺産分割協議の代理:着手金20万〜50万円+報酬金10〜15%(司法書士の遺産分割協議書作成は3万〜10万円程度)、(2)相続放棄:5万〜10万円(司法書士は3万〜7万円)、(3)遺言書作成支援:10万〜30万円(行政書士は3万〜10万円)、というように、弁護士費用は明らかに高くなります。
争いがない事案で弁護士に依頼するのは、費用対効果で見て合理的ではありません。「弁護士でなければできないこと(代理権を要する交渉・裁判所手続き)」が必要な場面に絞って依頼するのが、費用を最適化するうえで大切です。
デメリット2|家族関係への影響
相続人の1人が弁護士を立てると、他の相続人は「対決姿勢を取られた」と受け止めることがあります。
これは、(1)弁護士から内容証明郵便が届く、(2)直接の連絡を弁護士経由に変えるよう求められる、(3)書面でのやり取りが増える、ことで、相手方からの感情的反発が起きるケースがあるためです。
ただし、これは依頼の仕方によりコントロール可能です。(1)初回の意思表示は柔らかい文面にする、(2)直接の話し合いの余地は残す、(3)弁護士の関与目的を丁寧に説明する、ことで、必要以上の対立を避けられます。優れた弁護士は、こうした感情面のケアも含めて対応してくれます。
逆に、相手方の対応次第では、弁護士関与により家族関係の修復が早まることもあります。本人同士で感情的に対立していた状態を、弁護士の冷静な仲介で実務的な合意に持ち込めた、というケースは少なくありません。
デメリット3|担当弁護士との相性
弁護士は人間であり、依頼者との相性が結果に影響します。
具体的には、(1)説明の分かりやすさ、(2)連絡頻度と返信スピード、(3)依頼者の意向の尊重と専門家としての助言のバランス、(4)交渉スタイル(強硬派・調和派)、で相性が分かれます。
契約後に「思っていた感じと違う」となっても、着手金は原則として返還されないため、契約前の見極めが大切です。複数の事務所で初回相談を受けて比較する、相性の確認に時間をかけることが、後悔の少ない選択につながります。
注意点|弁護士に依頼するか迷う場面でしてはいけないこと
弁護士に依頼するか迷う段階で、絶対に避けるべき行動があります。
(1)期限超過まで放置しない:相続放棄の3か月期限、遺留分の1年期限などは、迷っている間に経過すると権利を失います。
(2)相手方との感情的な書面を出さない:後日訴訟になった場合に証拠として使われ、自分の立場を不利にします。
(3)遺産を勝手に処分しない:法定単純承認(民法921条)に該当し、相続放棄ができなくなります。
(4)他の相続人に独断で口約束をしない:後日の合意形成で足かせになります。
迷う段階こそ、まず弁護士の初回相談(無料〜1万円程度)を受けて、当面の方針を整理することが大切です。
司法書士・税理士との役割の違いと使い分け
相続事件では、弁護士のほか司法書士・税理士・行政書士が関わります。それぞれの役割と、弁護士でなければできないことを整理します。
司法書士の役割|不動産登記が中心
司法書士は、不動産登記の専門家です。(1)相続登記の代理、(2)遺産分割協議書の作成、(3)相続放棄の書類作成(代理ではない)、(4)成年後見の申立てサポート、を行います。
費用は弁護士の半額〜3分の1程度。(1)相続登記:6万〜15万円、(2)遺産分割協議書作成:3万〜10万円、(3)相続放棄の書類作成:3万〜7万円、が標準的な水準です。
司法書士で対応できる事案は、(1)相続人間に争いがない、(2)不動産の名義変更が必要、(3)シンプルな相続放棄(期限内)、です。争いがない大半の事案では、司法書士で十分対応可能で、費用も抑えられます。
ただし、認定司法書士であっても代理権は、(1)140万円以下の民事事件・簡易裁判所の代理、(2)裁判外の和解、までに限られます。家庭裁判所の事件(遺産分割調停・審判、相続放棄の代理、遺留分請求の調停など)には代理権が及びません。
税理士の役割|相続税申告が中心
税理士は、相続税の申告で必要になります。(1)相続税の試算、(2)申告書類の作成と税務署への提出、(3)小規模宅地等の特例など節税対策の検討、(4)税務調査への対応、を行います。
費用は、遺産総額の0.5〜1.0%が標準的な水準です。遺産5,000万円なら25万〜50万円、1億円なら50万〜100万円、3億円なら150万〜300万円程度です。
遺産総額が相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人)を超える場合、税理士への依頼がほぼ必須です。基礎控除以下なら申告自体が不要なので、税理士の関与も不要になります。
税理士は、紛争の代理権はありません。相続人間の対立が絡む場面では、弁護士との連携が必要になります。
行政書士の役割|書類作成
行政書士は、(1)遺産分割協議書の作成、(2)相続関係説明図の作成、(3)自筆証書遺言の素案作成、を行います。代理権はなく、書類作成サポートが中心です。
費用は最も安く、(1)遺産分割協議書:3万〜10万円、(2)遺言書素案:3万〜10万円、(3)戸籍取得代行:5万〜10万円、が標準的です。
シンプルな事案で、コストを最大限抑えたい場合の選択肢になります。ただし、争いがある事案や交渉が必要な事案には対応できません。
弁護士でなければできないこと|交渉と裁判所での代理
他の専門家と決定的に違う、弁護士の独自領域は次の通りです。
(1)相続人間の交渉代理(140万円超を含むすべての金額帯)、(2)家庭裁判所での遺産分割調停・審判の代理、(3)遺留分侵害額請求の交渉・調停・訴訟、(4)遺言書の効力をめぐる訴訟、(5)相続回復請求訴訟、(6)寄与分・特別受益の争いを含む遺産分割訴訟、(7)相続放棄申述の代理(司法書士は書類作成のみ)、です。
相続人間に対立があり、本人同士で話し合いがまとまらないケースでは、弁護士でなければ実質的な解決ができません。
専門家の組み合わせの目安
事案の特性に応じた専門家の組み合わせの目安は、次の通りです。
シンプルな事案(自宅1件・相続人1〜2人・争いなし・基礎控除以下)→ 司法書士または行政書士のみで対応可能。総費用10万〜15万円程度。
中規模事案(複数財産・相続人3人前後・基礎控除超え)→ 司法書士+税理士。総費用50万〜100万円程度。
複雑事案(相続人間に争い・複数財産・遺留分の問題あり)→ 弁護士+税理士+司法書士のチーム。総費用200万〜500万円程度。
高度に複雑な事案(訴訟・事業承継・国際相続など)→ 同上のチームに必要に応じて鑑定士・公認会計士などが加わる。総費用500万円超もあり得る。
事案の特性に合わせて、必要な専門家を必要な範囲で活用するのが、費用最適化の基本です。
弁護士に依頼する場合の費用相場|案件別の現実的な目安
弁護士費用の案件別の相場を整理します。実際の依頼判断の参考にしてください。
案件1|遺産分割の交渉代理
他の相続人と協議で解決を目指す場合の費用相場は、(1)着手金:20万〜50万円、(2)報酬金:獲得経済的利益の10〜15%、です。
経済的利益1,500万円(取得する遺産の総額)なら、着手金30万〜50万円+報酬金150万〜225万円=合計180万〜275万円程度。経済的利益5,000万円なら、着手金40万〜70万円+報酬金500万〜750万円=合計540万〜820万円程度です。
案件2|遺産分割調停・審判の代理
家庭裁判所の調停・審判の代理は、(1)着手金:30万〜80万円、(2)報酬金:獲得経済的利益の10〜18%、です。
経済的利益2,000万円なら合計250万〜440万円程度、1億円なら合計1,070万〜1,900万円程度です。協議から調停に進む場合、調停移行時に追加着手金10万〜30万円が発生する事務所が多いです。
案件3|遺留分侵害額請求
遺言や生前贈与で遺留分を侵害された場合の請求は、(1)着手金:20万〜50万円(調停・訴訟は30万〜100万円)、(2)報酬金:獲得額の10〜16%、です。
請求額1,000万円・獲得額800万円なら合計110万〜180万円程度。請求額3,000万円・獲得額2,000万円なら合計250万〜400万円程度です。
案件4|相続放棄
被相続人の借金回避のための相続放棄は、(1)期限内(3か月以内):5万〜10万円、(2)期限超過の事案:10万〜30万円、です。
報酬金は発生しない事務所が多く、着手金のみで完結します。
案件5|遺言書作成支援
遺言書の作成サポートは、(1)シンプルな自筆証書遺言の素案作成:5万〜10万円、(2)公正証書遺言の作成支援:10万〜30万円、(3)遺言執行者就任(契約時に予約):無料〜数万円、(4)遺言執行業務(相続発生時):遺産総額の0.5〜3%、です。
費用以外にかかるもの
弁護士費用以外にも、(1)実費(印紙代・郵便代・戸籍取得費・交通費など):数万円〜数十万円(財産規模による)、(2)日当(遠方の裁判所など、半日以上の出張):3万〜10万円/日、(3)消費税:上記すべてに10%加算、が必要になります。
契約前に、これらを含めた総額見込みを確認することが大切です。
弁護士に依頼すべきケースと自分で進められるケース|判断のフレーム
すべての相続事件で弁護士が必要なわけではありません。依頼すべきケースと、自分で進められるケースを判別するための基準を整理します。
弁護士に依頼すべきケース
次のいずれかに該当する場合、弁護士への依頼が現実的な選択肢になります。
(1)相続人間に対立がある:すでに意見が合わない、または将来の対立が予測される、というケース。弁護士の代理権が必要になります。
(2)遺産分割協議書の作成で意見が合わない:財産の評価方法、分割方法(現物・代償・換価)、特別受益・寄与分の判断で対立があるケース。
(3)遺言書の有効性に疑問がある:作成時の遺言能力、強要・偽造の疑い、形式不備、などで遺言の有効性を争うケース。
(4)遺留分が侵害されている:遺言や生前贈与で自分の遺留分を侵害されたケース。1年の時効があるため早期相談が必須です。
(5)相続放棄を急ぐ必要があり、複雑な要素がある:期限超過の可能性、被相続人の遺産を一部処分してしまった、債権者からの請求が既に来ている、というケース。
(6)被相続人に多額の借金や保証債務がある:相続放棄か限定承認か、相続後の任意売却か、の判断が複雑なケース。
(7)複数の不動産や非上場株式が絡む:評価と分割方法で論点が多いケース。
(8)相続人に行方不明者・認知症の方・海外居住者がいる:特別な手続きが必要になるケース。
(9)事業承継が絡む:中小企業の経営権承継、株式の評価、事業承継税制の活用、などが論点になるケース。
(10)相続税の申告で税理士と弁護士の連携が必要:遺産分割と税負担の最適化を一体で進めるケース。
これらに該当する事案は、弁護士不在で進めると重大な不利益を出すリスクが高いです。費用負担はかかりますが、結果として大きな利益確保につながります。
自分で進められる(または司法書士で十分な)ケース
逆に、次のような場合は弁護士不在でも進められます。
(1)相続人が1〜2人で、意見の対立がない、(2)遺産が自宅と預貯金のみで、評価が明確、(3)遺言書がない、または有効性に疑いがない、(4)被相続人に借金がない、または借金額が把握できている、(5)相続税の基礎控除以下で申告不要、(6)期限のある手続きを自分で進められる時間的余裕がある、というケースです。
こうした事案では、(1)不動産の名義変更は司法書士に、(2)複雑な書類作成は行政書士に、(3)時間と労力で済むことは自分で、という分担が合理的です。総費用も10万〜20万円程度に抑えられます。
判断に迷う場合
判断に迷う場合は、(1)弁護士・司法書士の初回相談(無料〜1万円程度)で方針だけ得る、(2)複数の専門家の意見を聞く、(3)期限がある場合は迷わずまず弁護士に相談、というアプローチが安全です。
特に期限のある手続き(相続放棄3か月、遺留分1年など)が絡む場合は、迷っているうちに権利を失うリスクがあります。早期相談で当面の方針だけ確定させることが大切です。
早期相談が結果を左右する理由
弁護士への相談は、早ければ早いほど結果に有利に働きます。理由を整理します。
理由1|期限のある手続きを取りこぼさない
前述の通り、相続には複数の期限があります。(1)相続放棄3か月、(2)準確定申告4か月、(3)相続税申告10か月、(4)遺留分1年、(5)相続登記3年、(6)取得費加算特例3年10か月、です。
期限超過の事案は、(1)権利自体を失う、(2)権利は残るが救済が難しくなる、(3)対応費用が大幅に増える、のいずれかになります。早期相談で各期限を把握し、計画的に進めることが、選択肢を狭めない出発点になります。
理由2|証拠の保全
相続事件では、過去の事実関係が論点になります。(1)生前贈与の金額・時期(特別受益の判定材料)、(2)被相続人への介護・経済的援助の事実(寄与分の判定材料)、(3)遺言書作成時の遺言能力(医療記録・周囲の証言)、(4)遺産の存在(預貯金の入出金履歴、保険契約、株式)、などは、時間の経過とともに証拠が散逸します。
早期に弁護士が関与すると、(1)必要な証拠の特定と収集、(2)第三者(銀行・保険会社・医療機関)への照会、(3)証拠の改ざんや隠滅の防止、を進められます。証拠が揃っていれば、後日の交渉や訴訟で有利な立場を確保できます。
理由3|相手方への先制
相続事件では、最初に動いた側が交渉の主導権を取れることが多いです。(1)弁護士名での文書送付により、相手方に「対応が必要」と認識させる、(2)期限を切った提案により、相手方の対応を急がせる、(3)書面でのやり取りに切り替えることで感情的な対立を抑える、ことが可能になります。
逆に、相手方が先に弁護士を立てた場合、こちら側は守勢に回らざるを得ません。早期相談により、自分側で主導権を取ることが、結果に大きく影響します。
理由4|選択肢の幅が広い段階で方針決定
時間の経過とともに、取れる選択肢は狭まります。(1)初期段階なら協議で解決できる事案も、対立が長期化すると調停・訴訟が避けられなくなる、(2)初期段階なら相続放棄も限定承認も可能だが、期限超過すると単純承認のみになる、というように、早期相談で選択肢の幅が広い段階で方針を決められます。
信頼できる弁護士を選ぶための6つのポイント
弁護士への依頼を決めた場合、どの事務所を選ぶかで結果が大きく変わります。信頼できる弁護士を見極めるための6つのポイントを整理します。
ポイント1|相続を専門としているか
相続事件は、(1)民法、(2)家事事件手続法、(3)税法、(4)不動産登記法、(5)信託法、など複数の法分野が交差します。経験の浅い弁護士では、論点の見落としや戦略の組み立てミスが起きやすくなります。
確認方法は、(1)事務所の取扱分野(ホームページで「相続」が前面に出ているか)、(2)年間の相続事件取扱件数(50件以上が望ましい)、(3)担当弁護士の相続事件経験年数(5年以上が望ましい)、(4)解決事例の公開状況、です。
弁護士の検索サイト(弁護士ドットコム、ベンナビ相続など)で、相続専門事務所を絞り込んで比較することも有効です。
ポイント2|費用の説明が明確か
費用説明が明確で、書面化されている事務所が信頼できます。逆に、口頭の説明だけで契約を急ぐ事務所は注意が必要です。
確認すべきは、(1)着手金・報酬金・実費・日当の各項目の金額または計算式、(2)経済的利益の定義、(3)追加費用が発生する条件(調停移行時など)、(4)解除時の処理、です。
契約書のドラフトを事前に見せてくれる、または契約書の各条項について質問に答えてくれる事務所を選ぶことが大切です。
ポイント3|連絡の取りやすさと返信スピード
事件処理中の連絡対応も、依頼者の満足度に直結します。
確認方法は、(1)初回相談予約時の電話・メール対応のスピード、(2)初回相談時に「連絡頻度」「連絡手段」を質問したときの回答、(3)担当弁護士の事件抱え件数(多すぎる弁護士は対応が遅れがち)、です。
「忙しくて連絡が遅れがち」を許容するのではなく、最初から「重要な連絡は何日以内に返信」「定期報告は月1回」など、合意できる連絡基準を持っている事務所が安心です。
ポイント4|依頼者の話を丁寧に聞く姿勢
初回相談で、依頼者の話を丁寧に聞き、感情面にも配慮してくれる弁護士が望ましいです。
逆に、(1)依頼者の話を遮って自分の見解を一方的に話す、(2)感情面を軽視して法的論点だけで処理しようとする、(3)費用の話を急いで進めようとする、という弁護士は、契約後も同じ姿勢になりがちです。
初回相談の30分〜1時間で、その弁護士のスタイルがおおむね分かります。複数事務所の比較で見極めることが大切です。
ポイント5|他の専門家との連携体制
相続事件は、税理士・司法書士・不動産業者などの他の専門家との連携が必要です。
確認方法は、(1)提携している税理士・司法書士の有無、(2)他の専門家との連携実績、(3)税務・登記の論点について基本的な理解があるか、です。
1つの事務所ですべてを完結させようとせず、必要な専門家とのチームで動ける事務所が、複雑な事案では有利になります。
ポイント6|デメリットや見通しの厳しさを率直に伝えるか
優れた弁護士は、(1)依頼者にとって不利な要素も率直に伝える、(2)勝てる見込みの厳しい主張は「難しい」と明示する、(3)取れる金額の現実的な範囲を提示する、ことができます。
逆に、(1)「絶対に勝てる」と断言する、(2)依頼者の希望を否定せずに全て肯定する、(3)取れる金額を過大に期待させる、という弁護士は、信頼度が低下します。
誠実な見通しを伝えてくれる弁護士のほうが、結果として依頼者の利益を守れます。
読者へのまとめ|相続手続きの弁護士依頼を判断するための行動指針
本記事の最後に、相続手続きで弁護士への依頼を考え始めた方が、今すぐ取るべき行動を、優先順位順に整理します。
今日中にすべきこと|事案の整理と期限の確認
自分の事案について、(1)被相続人の死亡日と相続発生からの経過期間、(2)期限のある手続きの確認(相続放棄3か月、相続税申告10か月、遺留分1年など)、(3)相続人の構成、(4)遺産の概略、(5)対立の有無と相手方の状況、をメモに整理します。
特に、相続放棄や遺留分の期限が迫っている場合は、今日中に弁護士の初回相談を予約することが大切です。
1週間以内にすべきこと|2〜3か所での初回相談
相続専門の弁護士事務所2〜3か所で初回相談(無料〜1万円程度)を受けます。比較のポイントは、(1)費用見積もり、(2)解決方針、(3)担当弁護士との相性、(4)他の専門家との連携体制、(5)誠実な見通しの提示の有無、です。
1か月以内に判断する|依頼するかしないかを決定
比較結果を踏まえて、(1)弁護士に正式依頼、(2)司法書士・行政書士に依頼、(3)本人で進める(必要に応じて弁護士の単発相談を活用)、(4)現時点では依頼せず状況を見守る、のいずれかを決定します。
判断基準は、(1)費用対効果(争う金額と費用の比較)、(2)事案の複雑さと自分の対応能力、(3)精神的負担との兼ね合い、(4)期限の有無、です。
依頼後|定期的なコミュニケーション
依頼を決めたら、(1)月1回程度の定期報告を要望、(2)重要な進展時の即時連絡を要望、(3)疑問点はその都度質問、を心がけます。
弁護士に任せきりにせず、依頼者として主体的に関わることで、事件処理の質が高まります。
費用負担が困難な場合|法テラスへの相談
弁護士費用の負担が困難な場合は、法テラスの民事法律扶助制度(東京特別区など生活保護一級地の単身世帯で月収200,200円以下、4人家族で299,200円以下、資産単身180万円・4人家族250万円が基準)で立替・分割払いを利用できます。要件を満たすかどうか、法テラスまたは弁護士事務所で確認します。
費用面の不安だけで専門家相談を諦めないこと、これが結果として大きな利益を確保するための基本になります。
相続手続きを弁護士に依頼することは、すべての事案で必要なわけではありません。ただし、依頼すべき場面で依頼することで、(1)期限の取りこぼし防止、(2)感情的対立の収束、(3)法的に有利な落としどころの確保、(4)相続全体を見通した解決、を実現できます。本記事の内容を参考に、自分のケースで最適な専門家活用を判断することが、納得感のある相続解決への第一歩になります。
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基礎控除額
4,200万円
課税対象額
800万円
相続税の総額(概算)
80万円
申告が必要です
※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。
