掲載弁護士・法律事務所 2,000以上件/全国対応

生前贈与が特別受益にあたるケース|遺留分への影響

生前贈与が特別受益にあたるケース|遺留分への影響

この記事で分かること

  • 特別受益と持ち戻しの基本的な考え方
  • 生前贈与が特別受益にあたる典型的なケース
  • 持ち戻し計算が進む順序と免除の意思表示
  • 特別受益が遺留分の計算に与える影響
  • 争いを防ぐために生前からできる備え

生前贈与が特別受益にあたると、その分をいったん相続財産に持ち戻したうえで各相続人の取り分を計算し、すでに受け取っている人からはその分を差し引いて調整します。さらに一定の贈与は遺留分の計算にも取り込まれるため、生前に渡したつもりの財産が、ほかの相続人からの思わぬ請求につながることもあります。どの贈与が特別受益の対象になるか、持ち戻し免除や近年の改正による扱いの違い、そして争いを防ぐための記録の残し方まで、弁護士の視点で整理しました。

相続に強い弁護士を探す

特別受益とは何か

「亡くなった父は、生前に長男にだけまとまった資金を渡していた」「自分は何ももらっていないのに、妹は結婚のときに多額の援助を受けていた」――いざ相続が始まると、過去の生前贈与をめぐってこうした不満が噴き出すことは珍しくありません。生前にもらった分を一切無視して、亡くなった時点の財産だけを単純に分けてしまうと、すでに多くを受け取っていた人がさらに得をして、不公平な結果になってしまいます。

この不公平を調整するために民法が用意しているのが、特別受益という考え方です。本記事では、どのような生前贈与が特別受益にあたるのか、その分をどう計算に取り込むのか、そして特別受益が遺留分にどう影響するのかまでを、弁護士の視点でていねいに整理していきます。読み終えるころには、自分のケースで何を主張でき、何に注意すべきかの全体像がつかめるはずです。

特別受益は、言葉だけを聞くと難しそうに感じるかもしれません。しかし、根っこにあるのは「前にもらった分は計算に入れて、みんなで公平に分けよう」という、ごく素朴な発想です。この発想さえつかんでおけば、細かい場面ごとの扱いも理解しやすくなります。難しい用語が出てきても、まずはこの公平のための調整なのだという軸を忘れずに読み進めてください。

ワンポイントアドバイス
特別受益は、生前贈与の事実そのものよりも、その贈与をどう評価し、計算に取り込むかでもめやすい論点です。心当たりがある場合は、当時の通帳や契約書など、贈与を裏づける資料を早めに探しておくことをおすすめします。

特別受益の意味

特別受益とは、ある相続人が被相続人から特別に受けた利益のことをいいます。具体的には、遺言による遺贈や、婚姻・養子縁組のための贈与、そして生計の資本としての贈与がこれにあたります。日々の生活費の援助のような少額のものではなく、その相続人だけが受けた、相続分の前渡しと評価できるようなまとまった利益が対象だと考えてください。

たとえば、ある親が長男には住宅の購入資金を援助し、次男には何も渡していなかったとします。このまま亡くなった時点の財産だけを兄弟で等分すると、長男は住宅資金という前渡しを受けたうえに、残った財産も等しく受け取ることになります。これでは公平とはいえません。特別受益は、こうした前渡し分を相続分の計算に組み込み、結果として全体のバランスをとるための仕組みなのです。

なぜ持ち戻しという調整が必要なのか

特別受益を計算に取り込むことを、持ち戻しといいます。やや耳慣れない言葉ですが、考え方はそれほど難しくありません。生前に渡した分を、いったん相続財産に足し戻したうえで各人の取り分を計算し、すでにもらっている人からはその分を差し引く、という調整のことです。

なぜこのような調整が必要なのでしょうか。それは、被相続人が生前に行った贈与の多くが、本来は相続で渡すはずだった財産を、生きているうちに前倒しで渡したものと見ることができるからです。前渡しを受けた人とそうでない人を同じ条件で分けてしまえば、前渡しを受けた人だけが二重に得をすることになります。持ち戻しは、この二重取りを防ぎ、相続人どうしの実質的な公平を保つための調整だと理解しておきましょう。

もっとも、すべての援助を細かく計算に取り込もうとすると、かえって家族の関係を壊しかねません。日常的な小さな援助まで持ち戻しの対象にしていては、きりがないからです。だからこそ、特別受益として扱われるのは、相続分の前渡しといえるほどのまとまった利益に限られています。どこまでが通常の援助で、どこからが特別受益なのか、その線引きこそが実務での最大の論点になります。次の章で、具体的なケースを見ながらこの線引きを確認していきましょう。

生前贈与が特別受益にあたる典型的なケース

では、どのような生前贈与が特別受益として扱われるのでしょうか。すべての贈与が対象になるわけではありません。ここでは、実務で特別受益と評価されやすい典型的な場面を見ていきます。自分や家族の状況と照らし合わせながら読み進めてみてください。

結婚や養子縁組のための贈与

婚姻や養子縁組にあたって、被相続人がまとまった資金や財産を渡していた場合、それは特別受益にあたる可能性が高いといえます。たとえば、結婚に際して新生活のための資金や、嫁入り道具にあたる財産を一方の子にだけ渡していたようなケースです。

ただし、結婚式の費用を親が出したというだけで、ただちに特別受益になるとは限りません。一般的な範囲の支度や、親としての通常の支援にとどまるものは、特別受益とまではいえないと判断されることもあります。金額の大きさや、ほかの相続人との均衡をふまえて、個別に判断されることになります。

判断のうえで意識しておきたいのは、ほかのきょうだいが同じような場面でどの程度の援助を受けたか、という比較の視点です。一人だけが突出して手厚い援助を受けていれば特別受益が問題になりやすく、みなが同程度の支度を受けていたのであれば争いにはなりにくい傾向があります。自分の受けた援助が特別なものだったのかどうかを考えるときは、家族全体の中での位置づけを思い浮かべてみると見当をつけやすくなります。

生計の資本としての贈与

生計の資本としての贈与とは、その人が独立して生活していくための元手として渡された財産のことです。住宅を購入するための資金援助、事業を始めるための開業資金、独立した子への不動産の贈与などが代表的な例です。これらは金額も大きくなりやすく、特別受益として持ち戻しの対象になる典型といえます。

読者の中には、「親から家の頭金を出してもらったが、あれは特別受益になるのだろうか」と気になっている方もいるかもしれません。住宅取得のための資金援助は、まさに生計の資本としての贈与の代表例であり、相続のときに問題になりやすい類型です。心当たりがあるなら、いつ、いくら、どのような名目で渡されたのかを思い出せるよう整理しておくとよいでしょう。

同じように、独立して商売を始める子に開業資金を出した、農業や家業を継ぐ子に田畑や設備を渡したといったケースも、生計の資本としての贈与にあたりやすいものです。これらはいずれも、その子が自分の生活や事業の基盤を築くための元手として渡された財産といえます。金額が大きくなりやすいぶん、ほかの相続人との差も開きやすく、相続の場面で特別受益として取り上げられることが多くなります。

特別受益にあたらないとされる例

反対に、特別受益にあたらないと考えられるものもあります。両者の線引きは実務上もはっきりしないことが多いのですが、おおまかな整理として次の表が参考になります。

特別受益にあたりやすいもの あたりにくいもの
住宅購入のための資金援助 通常の範囲の生活費の援助
独立や開業のための事業資金 一般的な範囲の教育費
婚姻や養子縁組のためのまとまった財産 少額のお祝いや贈り物
特定の相続人への不動産の贈与 親としての通常の扶養の範囲の支出

教育費については、扶養の一環として親が当然に負担すべきものか、それとも一部の子にだけ特別に費やされたものかで評価が分かれます。きょうだいの一人だけが特別に高額な教育を受けていたような場合には、特別受益が問題になることもあります。あくまで個別の事情によって結論が変わる点に注意してください。

もう少し具体的に考えてみましょう。たとえば、長女には海外への留学費用を全額負担し、次女には特に援助をしていなかったという家庭があったとします。この場合、留学費用が通常の教育費の範囲を超えて、次女との間に大きな差を生んでいるとみられれば、特別受益として持ち戻しの対象になる可能性が出てきます。逆に、子全員に同じように学費を出していたのであれば、それは親としての通常の扶養とみなされ、特別受益とは評価されにくいでしょう。差があるかどうか、その差がどの程度かが、判断の分かれ目になります。

特別受益の持ち戻し計算の考え方

特別受益が認められると、その分を相続財産に持ち戻して計算します。ここでは、具体的な金額を示すのではなく、計算がどのような順序で進むのか、その流れをつかんでいきましょう。流れがわかれば、自分のケースで何が論点になるのかも見えてきます。

持ち戻しの基本的な流れ

持ち戻しの計算は、おおむね次のような順序で進みます。難しく見えても、ひとつずつ追えば理解できます。

  1. 亡くなった時点の相続財産に、特別受益にあたる生前贈与を足し戻し、計算上の相続財産を求めます。
  2. その計算上の相続財産をもとに、各相続人の本来の取り分を法定相続分などにしたがって算出します。
  3. 特別受益を受けていた相続人については、算出した取り分から、すでに受け取っている特別受益の分を差し引きます。
  4. 差し引いた結果が、その相続人が実際に受け取る取り分となります。

この流れによって、生前に多くを受け取っていた人の取り分は少なくなり、何も受け取っていなかった人の取り分は相対的に増えることになります。前渡し分を計算に反映させることで、全体の公平が保たれるわけです。なお、特別受益の評価は原則として相続が始まった時点を基準に行うとされており、贈与を受けた当時の価値ではない点も押さえておきましょう。

持ち戻し免除の意思表示

もっとも、被相続人が「この贈与については持ち戻さなくてよい」という意思を示していた場合には、その意思が尊重されます。これを持ち戻し免除の意思表示といいます。つまり、特別な事情があって特定の相続人に多めに渡したいと考えていたなら、その意思によって持ち戻しの調整を外すことができるのです。

この意思表示は、遺言で明確に示しておくのが確実です。ただし、持ち戻しを免除したとしても、後で触れる遺留分の制約までなくせるわけではありません。免除によって相続分の調整を外せても、別の相続人の遺留分を侵害していれば、その部分については請求を受ける可能性が残ります。免除と遺留分は別の問題として整理しておく必要があります。

なお、夫婦の間で、長年連れ添った配偶者に住まいを贈与したような場合については、持ち戻しの免除があったものと推定される取り扱いが設けられています。これは、配偶者の生活の安定に配慮した仕組みです。こうした例外もあるため、自分のケースで持ち戻しがどう扱われるかは、贈与の相手や内容によって変わってきます。一律に決まるものではないと考え、心配な点は個別に確認しておくとよいでしょう。

特別受益と遺留分の関係

特別受益を考えるうえで避けて通れないのが、遺留分との関係です。生前贈与が特別受益にあたるかどうかは、遺留分の計算にも影響します。ここを誤解していると、せっかくの対策が思わぬ請求を招くこともあるため、しっかり押さえておきましょう。

遺留分の計算に特別受益が影響する仕組み

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分のことです。たとえ遺言や贈与で財産の大半を特定の人に渡そうとしても、遺留分を持つ相続人は、その侵害された分を金銭で請求できます。この遺留分を計算するときの土台となる財産には、一定の生前贈与も加えて考えることになります。

つまり、ある相続人への生前贈与が特別受益にあたると評価されれば、その贈与は遺留分の計算上も財産に組み込まれ、ほかの相続人の遺留分を押し上げる方向に働きます。生前にまとまった財産を渡したつもりでも、それが遺留分の計算に取り込まれることで、結果として遺留分を侵害したと判断される場合があるのです。

ここで誤解が生じやすいのは、「生前に渡してしまえば、もう相続とは関係ない」という思い込みです。確かに、生前贈与によって亡くなった時点の財産は減ります。しかし、遺留分を計算するときには、一定の生前贈与を財産に加えて考えるため、渡したはずの財産が計算上は戻ってくることになります。手元から財産が離れていることと、遺留分の計算からも外れることは、別の話なのです。生前贈与を相続対策として使うなら、この点をきちんと理解しておく必要があります。

近年の民法改正による変更点

遺留分と生前贈与の関係については、近年に施行された民法改正によって整理が進みました。特に重要なのが、相続人に対する生前贈与をどこまでさかのぼって遺留分の計算に取り込むかという点です。改正後の主なポイントを整理すると、次のようになります。

  • 遺留分を侵害された人の権利は、原則として金銭の支払いを求める権利として整理されました。
  • 相続人に対する生前贈与のうち、遺留分の計算に取り込む対象は、原則として相続開始前の一定の期間内のものに限られるようになりました。
  • ただし、当事者の双方が遺留分を侵害すると分かったうえで行った贈与については、その期間にかかわらず取り込まれる余地が残されています。

このように、何でも無制限にさかのぼるわけではなくなった一方で、悪意のある贈与には例外が用意されています。古い時期の贈与だから関係ないと安易に考えるのは危険で、贈与の時期や当事者の認識によって扱いが変わる点に注意が必要です。

特別受益をめぐってトラブルになりやすい場面

特別受益は、相続人どうしの感情がぶつかりやすい論点でもあります。どのような場面でもめやすいのかをあらかじめ知っておけば、争いを避ける手立ても考えやすくなります。実際の相談でよく見られるパターンを紹介します。

贈与の事実や評価で争いになる

もっとも多いのが、そもそも贈与があったのかどうか、あったとしてどれくらいの価値だったのかで意見が食い違うケースです。贈与を受けたとされる側は「あれは貸付であって贈与ではない」「もう返済した」と主張し、ほかの相続人は「明らかに特別受益だ」と反論する、といった対立です。

不動産のように評価額が変動するものが贈与されていた場合には、その評価額をめぐってもめることもあります。いつの時点の、どのような基準による価値で計算するのかは、結論を大きく左右します。当事者だけで折り合いをつけるのが難しく、専門家の関与が必要になりやすい場面です。

証拠が残っていない

もうひとつの典型が、贈与があったはずなのに、それを裏づける資料が残っていないという問題です。何十年も前の贈与となると、当時の通帳がすでに処分されていたり、振込の記録が手元に残っていなかったりすることがあります。記憶だけを頼りに主張しても、相手が認めなければ、贈与の事実そのものを証明するのは容易ではありません。

注意
「確かに援助してもらっていた」という記憶があっても、それを示す資料がなければ、特別受益の主張は通りにくくなります。通帳の記録や振込の控え、当時のやり取りなど、手がかりになりそうなものは早い段階で確保しておきましょう。

感情のもつれが解決を難しくする

特別受益の争いには、お金の問題だけでなく、家族の間に長年たまった感情が深くかかわることが少なくありません。「自分だけが親の世話をしてきたのに」「あの子はいつも特別扱いされていた」といった思いが、過去の贈与をめぐる主張の背景にあることはよくあります。こうした感情がからむと、本来は計算で整理できるはずの問題が、なかなか前に進まなくなります。

当事者だけで話し合おうとすると、過去の出来事の蒸し返しになり、かえって対立が深まることもあります。第三者である専門家が間に入ることで、感情の問題と法的な論点を切り分け、冷静に着地点を探りやすくなります。話がこじれる前に、早めに相談先を確保しておくことが、結果として家族関係を守ることにもつながります。

特別受益のトラブルを防ぐためにできること

ここまで読んで、特別受益が思った以上に複雑で、争いの種になりやすいと感じた方も多いでしょう。しかし、生前から備えておけば、多くのトラブルは避けられます。最後に、実践しておきたい対策を整理します。

贈与契約書や記録を残す

生前贈与をするなら、いつ、誰に、何を、どのような目的で渡したのかを書面に残しておくことが何よりの備えになります。贈与契約書を作っておけば、後になって贈与の有無や趣旨が争われたとしても、客観的な手がかりとして役立ちます。記録があるかないかで、相続のときの紛争のしやすさは大きく変わります。

書面というと身構えてしまうかもしれませんが、難しく考える必要はありません。誰から誰へ、何を、いつ渡したのかが第三者から見てもわかる形で残っていれば、それが大きな意味を持ちます。あわせて、振込で渡して記録を残す、贈与の経緯を簡単なメモにしておくといった工夫も、後の安心につながります。手間に見えても、こうしたひと手間が、将来の家族の争いを未然に防ぐ力になります。

持ち戻し免除を明確にしておく

特定の相続人に多めに渡したい事情があるなら、持ち戻し免除の意思を遺言ではっきり示しておきましょう。口頭で家族に伝えていただけでは、後で「そんな話は聞いていない」と覆されかねません。免除の意思を書面で明確にしておくことで、贈与をした人の思いを相続に反映させやすくなります。ただし、前述のとおり遺留分への配慮は別途必要です。

専門家に相談する

特別受益と遺留分がからむ問題は、制度の理解だけでなく、個別の事情に応じた判断が求められます。自分のケースでどの贈与が特別受益にあたりそうか、遺留分との関係で何に気をつけるべきかは、専門家に相談することで具体的に見えてきます。すでに相続が始まって争いになりそうな場合はもちろん、生前の対策として準備を進めたい場合にも、早めの相談が安心につながります。

相談の際には、どのような贈与がいつ行われたのか、それを示す資料があるか、相続人が誰でどのような関係なのかといった情報を整理しておくと、話がスムーズに進みます。手元の資料が不十分でも、何が足りないか、どこを補えばよいかを助言してもらえます。一人で抱え込んで答えの出ない悩みを続けるより、早い段階で専門家の視点を借りるほうが、結果的に時間も気持ちの負担も軽くなることが多いものです。

立場ごとに見る特別受益のポイント

同じ特別受益の問題でも、自分がどの立場にいるかによって、注意すべき点や取るべき行動は変わってきます。ここでは、よくある三つの立場に分けて、それぞれが押さえておきたいポイントを整理します。自分の状況に近いところから読んでみてください。

生前に多めにもらっていた側

すでに住宅資金や事業資金などのまとまった援助を受けていた人は、相続のときにほかのきょうだいから特別受益を指摘される立場になりやすいといえます。このとき大切なのは、受けた援助の性質を正確に説明できるようにしておくことです。それが贈与だったのか貸付だったのか、生計の資本といえるほどのものだったのか、当時の事情によって評価は変わります。

もし被相続人が「これは特別に渡すものだから持ち戻さなくてよい」と考えていたのであれば、その意思を示す遺言などがないか確認しておきましょう。持ち戻し免除の意思が認められれば、取り分の調整を避けられる可能性があります。一方で、ほかの相続人の遺留分を侵害している場合には、免除があっても請求を受ける余地が残る点は意識しておく必要があります。

何ももらっていなかった側

自分は援助を受けていないのに、ほかのきょうだいが多くを受け取っていたという人は、特別受益を主張することで取り分を回復できる可能性があります。ここでの鍵は、相手が受けた贈与の事実と、その内容を示す手がかりをどれだけ集められるかです。記憶だけでは相手に否定されてしまうため、客観的な資料があるかどうかが結論を左右します。

当時の通帳の記録、不動産の名義の移転を示す記録、関係者のやり取りなど、贈与をうかがわせる手がかりは早めに確認しておきましょう。話し合いで折り合いがつかなければ、遺産分割の手続きの中で特別受益を主張していくことになります。どこまで主張が通りそうかは個別の事情によるため、見通しを立てるうえでも専門家の助言が役立ちます。

これから生前贈与をする親の側

子や孫に生前贈与を考えている人は、その贈与が将来の相続でどう扱われるかを意識しておくと、後の争いを防げます。特定の子に多めに渡したい事情があるなら、その理由とともに、持ち戻し免除の意思を遺言で明確にしておくのが有効です。あわせて、贈与の内容を書面に残しておけば、贈与の有無や趣旨をめぐる争いも起きにくくなります。

大切なのは、生前贈与を相続全体の設計の一部として考えることです。一部の子への援助だけを切り離して進めると、ほかの子の遺留分とのバランスを欠き、かえって不満や紛争を招くことがあります。誰に何をどれだけ渡すのか、残された財産で遺留分を満たせるのかまで見通しておくことが、円満な相続への近道になります。

よくある質問

最後に、特別受益と遺留分についてよく寄せられる質問にお答えします。自分の疑問に近いものがないか確認してみてください。

生前にもらった分は、いつのものでも特別受益になりますか

特別受益にあたるかどうかと、それが遺留分の計算に取り込まれるかどうかは、分けて考える必要があります。相続人どうしの取り分を調整する持ち戻しの場面では、贈与の時期に明確な区切りがあるわけではありません。一方で、遺留分の計算に取り込む場面では、原則として相続開始前の一定の期間内の贈与に限られるなど、時期による制約があります。どちらの問題かによって扱いが変わると理解しておきましょう。

親から受けた教育費は特別受益になりますか

通常の範囲の教育費は、親としての扶養の一環とみなされ、特別受益にあたらないと考えられることが多いです。ただし、きょうだいの中で一人だけが特別に高額な教育を受けていたような場合には、その差が特別受益として問題になることもあります。ほかの相続人との均衡をふまえて個別に判断される点に注意してください。

特別受益があると必ず取り分が減りますか

特別受益を受けていた相続人は、その分を取り分から差し引かれるため、結果として実際に受け取る額は少なくなる傾向があります。ただし、被相続人が持ち戻し免除の意思を示していた場合には、その調整が外れることもあります。また、計算の結果がどうなるかは、財産の全体像や相続人の構成によっても変わってきます。

特別受益でもめそうなときは誰に相談すればよいですか

贈与の事実や評価、遺留分との関係など、特別受益の問題は法的な判断が必要になる場面が多くあります。話し合いでの解決が難しそうなときや、請求を受けて対応に困っているときは、相続に詳しい弁護士に相談するのが確実です。相談するタイミングに迷う場合は、争いが大きくなる前の早い段階で見通しを立てておくと、その後の選択肢が広がります。

持ち戻し免除があれば遺留分も気にしなくてよいですか

そうとは限りません。持ち戻し免除は、あくまで相続人どうしの取り分を調整する持ち戻しの場面で効果を持つものです。遺留分は、相続人に保障された最低限の取り分という別の制度であり、免除があっても遺留分の制約まで外せるわけではありません。免除を活用する場合でも、ほかの相続人の遺留分を侵害していないかは、別途確認しておく必要があります。

口約束だけの贈与でも特別受益になりますか

贈与そのものは口頭でも成立し得ますが、相続の場面で問題になるのは、その贈与があったことをどう示すかです。書面がなく口約束だけだった場合、相手が贈与の事実を認めなければ、これを証明するのは容易ではありません。後から争いになったときのことを考えれば、贈与をするなら契約書などの形で記録を残しておくことが、双方にとって安心につながります。

不動産を生前にもらった場合はいつの価値で計算しますか

不動産のように時間とともに価値が変わる財産については、いつの時点の価値で計算するかが争いになりやすい論点です。特別受益の評価は、原則として相続が始まった時点を基準に考えるとされています。つまり、贈与を受けた当時の価値ではなく、相続のときの価値で評価し直すという考え方です。もっとも、評価の方法や前提によって結論が変わることもあるため、不動産がからむ場合は特に慎重な検討が必要になります。

遺産分割が終わった後でも特別受益を主張できますか

遺産分割の話し合いがすでにまとまり、合意が成立してしまった後で、改めて特別受益を持ち出すのは難しいのが一般的です。分割の前に、特別受益にあたりそうな贈与がないかをきちんと確認し、必要なら手続きの中で主張しておくことが大切です。心当たりがあるのに見過ごしたまま合意してしまうと、後で取り返すのは容易ではありません。分割の前の段階で、専門家に一度相談しておくと安心です。

あなたの相続税はいくら?無料診断

5,000万円
2人

基礎控除額

4,200万円

課税対象額

800万円

相続税の総額(概算)

80万円

申告が必要です

※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。

遺産相続は弁護士に相談を
法律のプロがスムーズで正しい相続手続きをサポート
  • 相続人のひとりが弁護士を連れてきた
  • 遺産分割協議で話がまとまらない
  • 遺産相続の話で親族と顔を合わせたくない
  • 遺言書に自分の名前がない、相続分に不満がある
  • 相続について、どうしていいのか分からない
掲載2,000以上事務所 初回相談無料の事務所多数 全国対応

かんたん3ステップで相談できます

1
お住まいの
地域を選ぶ
2
事務所を
比べて選ぶ
3
無料相談を
申し込む
上記に当てはまるなら弁護士に相談
相続に強い弁護士を探す