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生前相続とは|生前にできる相続対策と注意点

生前相続とは|生前にできる相続対策と注意点

この記事で分かること

  • 生前相続という言葉の意味
  • 生前から対策をする理由
  • 生前贈与という方法
  • 遺言や家族信託の活用
  • 生前対策のメリットと注意点

生前相続とは、生きているうちに財産を引き継いだり相続の準備をしたりすることを指す言葉で、主に生前贈与などの生前対策を意味します。この記事では、言葉の正確な意味、生前から対策をする理由、生前贈与や遺言、家族信託、生命保険の活用といった主な方法、メリットや判断能力があるうちに行う必要があるなどの注意点、進め方までを具体的に整理して理解でき、自分に合う備えが見えてきます。

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「生前相続」とは?言葉の意味と実際

「生前相続」という言葉を、どこかで耳にしたことはありませんか。元気なうちに、財産を子や孫に引き継いでおきたい。そう考えて、その方法を調べる中で、この言葉にたどり着いた方も多いのではないでしょうか。あなたも、生きているうちにできる相続の準備について、知りたいと思っているのかもしれません。

はじめに、少し大切なお話をします。実は、法律のうえでは、相続は人が亡くなってはじめて起こるものです。ですから、厳密にいえば、生きているうちの相続、つまり「生前相続」というものは存在しません。世間で生前相続と呼ばれているのは、生きているうちに財産を引き継いだり、相続に向けた準備をしたりすること、つまり生前贈与をはじめとする生前の相続対策のことを指しているのです。

言葉の正確さはともかく、大切なのは、生きているうちにできる準備には、さまざまな方法があり、それぞれにメリットや注意点があるということです。この記事では、生前にできる相続対策の全体像を、弁護士の視点でわかりやすく整理していきます。なお、税率や非課税の枠といった具体的な数字は、制度や状況によって変わるため、ここでは考え方の軸を中心に説明します。

相続というと、亡くなった後の手続きをイメージしがちですが、本当に大切なのは、その前の準備です。元気なうちに、しっかりと備えておくかどうかで、残された家族の負担も、相続のもめごとの起こりやすさも、大きく変わってきます。生前の対策は、いわば家族への思いやりでもあるのです。まずは、どんな方法があり、何に気をつければよいのかを、ひとつずつ見ていきましょう。難しく考える必要はありません。

この記事では、まず「生前相続」という言葉の意味を整理し、なぜ生前から対策をするのか、そして生前贈与や遺言、家族信託、生命保険といった主な方法を順に見ていきます。さらに、生前対策のメリットや注意点、進め方までを取り上げます。読み終えるころには、自分にどんな備えができるのか、その全体像がつかめているはずです。気になるところから読み進めていただいてもかまいません。

相続の準備というと、まだ自分には早い、縁起でもない、と感じる方もいるかもしれません。けれども、生前の相続対策は、けっして死を意識した後ろ向きなものではありません。むしろ、残りの人生を安心して過ごし、大切な家族の将来を守るための、前向きで思いやりに満ちた行いです。元気な今だからこそ、できることがあります。その第一歩として、まずは知ることから始めてみましょう。

大切な財産を、自分の思いどおりに、そして家族が争うことなく引き継いでもらうために、生前にできることは少なくありません。この記事が、あなたとご家族の安心につながる、確かな手がかりになればと思います。

まずは気負わず、できることから少しずつ始めていきましょう。

なぜ生前から相続の対策をするのか

そもそも、なぜ生きているうちから相続の対策をするのでしょうか。早めに準備しておくことには、いくつかの大きな意味があります。

相続をめぐる争いを防げる

一つめは、相続をめぐる家族の争いを防げることです。誰に何を渡すのかを、生きているうちにはっきりさせ、家族にも伝えておけば、亡くなった後に相続人どうしがもめる事態を、大きく減らせます。何の準備もないまま相続が起きると、財産の分け方をめぐって、思いがけず家族が対立してしまうことがあるのです。

相続をめぐる争いは、ふだんは仲のよい家族の間でも起こり得ます。お金が絡むと、それまで表に出なかった気持ちのもつれが噴き出してしまうことがあるのです。とくに、分けにくい不動産が財産の中心を占めている場合や、相続人どうしの仲がもともとよくない場合には、争いに発展しやすくなります。生前にきちんと備えておくことは、こうした争いから家族を守る、何よりの手立てになります。

「うちの家族は仲がよいから大丈夫」と思っている方こそ、注意が必要かもしれません。相続をめぐる争いの多くは、もともと仲のよかった家族の間で起こっているからです。生前は問題がなくても、いざ財産を分ける段になると、それぞれの事情や思惑が交錯し、思わぬ対立が生まれることがあります。だからこそ、どんな家族であっても、生前の備えをしておく意味があるのです。備えあれば憂いなし、という言葉のとおりです。

実際、相続をめぐる争いは、財産が多い家庭だけで起こるものではありません。むしろ、ごく普通の家庭で、自宅と多少の預貯金をどう分けるか、といったことをきっかけに起こることのほうが多いのです。「うちは財産が少ないから関係ない」と考えるのは、危険な思い込みかもしれません。財産の多い少ないにかかわらず、生前の備えは、家族の平穏を守るために役立つのです。

自分の意思を反映できる

二つめは、自分の意思を相続に反映できることです。誰にどの財産を渡したいか、お世話になった人にどう報いたいか。そうした自分の思いを、生きているうちに形にしておけます。何もしなければ、財産は法律の定めにしたがって分けられますが、生前に対策をすれば、自分の希望に沿った引き継ぎが可能になります。

たとえば、長年自分を支えてくれた人に多めに財産を渡したい、特定の子に事業を継いでほしい、といった希望があるとします。何の対策もしなければ、こうした思いは、相続に反映されません。けれども、生きているうちに対策をしておけば、自分の意思を、一定の範囲で相続に反映させることができます。自分が築いてきた財産を、自分の思いどおりに引き継いでもらう。そのための準備が、生前の相続対策なのです。

とはいえ、自分の思いどおりにといっても、まったく自由にできるわけではありません。一定の範囲の相続人には、法律で保障された最低限の取り分があり、これを無視することはできません。自分の意思を反映させつつ、こうした相続人の権利にも配慮する。そのバランスをうまく取ることが、円満な生前対策の鍵になります。自分の思いと、家族の権利。その両方を見すえることが大切です。

税の負担を抑える効果が期待できる

三つめは、相続税の負担を抑える効果が期待できることです。生前贈与などを計画的に行うことで、亡くなったときにかかる相続税の負担を、和らげられる場合があります。ただし、その効果は状況によって変わるため、税理士などの専門家に確認することが大切です。

もっとも、税の負担を抑えることばかりに気を取られるのは禁物です。税のことだけを考えて対策をすると、かえって家族の争いを招いたり、自分の生活が苦しくなったりすることもあります。税の軽減は、あくまで生前対策のメリットの一つにすぎません。争いを防ぎ、自分の意思を反映し、そして無理のない範囲で税の負担も抑える。こうした全体のバランスを考えながら進めることが大切です。

生前の相続対策は、しばしば「相続税対策」とほぼ同じ意味で語られることがあります。けれども、本来はもっと幅広いものです。税のことはもちろん大切ですが、それ以上に、家族が争わずに済むようにすること、自分の意思を実現することのほうが、多くの方にとって重要なはずです。税の軽減だけを目的にすると、かえって大切なものを見失いかねません。何のために対策をするのか、その目的を見失わないようにしましょう。

生前にできる相続対策の主な方法

では、生きているうちにできる相続対策には、どんな方法があるのでしょうか。代表的なものを、まず一覧で見ておきましょう。

方法 主な内容
生前贈与 生きているうちに財産を渡す
遺言 財産の渡し方を自分で決めておく
家族信託 信頼できる家族に財産の管理を託す
生命保険の活用 受取人を指定して財産を残す

これらの方法は、どれか一つだけを選ぶというよりも、目的に応じて組み合わせて使うことが多いものです。たとえば、生前贈与で少しずつ財産を渡しながら、残りは遺言で渡し方を決めておく、といった使い方が考えられます。それぞれの特徴を知ったうえで、自分の目的に合った方法を選んでいくことが大切です。

どの方法が自分に合っているかは、財産の内容や、家族の状況、そして何を実現したいのかによって変わります。現金が多いのか、不動産が中心なのか。相続人が何人いて、仲はどうなのか。誰に何を残したいのか。こうした事情によって、適した方法は一人ひとり異なります。だからこそ、それぞれの方法の特徴をつかんだうえで、自分の状況に照らして選ぶことが大切になります。次の項目から、主な方法を一つずつ見ていきましょう。

また、これらの方法は、一度決めたら終わりというものでもありません。家族の状況や、自分の考えは、時とともに変わっていきます。一度立てた計画も、状況の変化に応じて見直していくことが大切です。たとえば、遺言は何度でも書き直せますし、対策の組み合わせも、その時々の事情に合わせて調整できます。生前対策は、人生の歩みに寄り添いながら、柔軟に整えていくものだと考えておくとよいでしょう。

生前贈与という方法

生前の相続対策として、もっともよく知られているのが、生前贈与です。これは、生きているうちに、財産を子や孫などに渡す方法です。

生前贈与のよいところは、自分の意思で、確実に、渡したい相手へ財産を渡せることです。亡くなるのを待つのではなく、自分の目が黒いうちに引き継ぎを進められるため、計画どおりに事を運びやすくなります。また、計画的に行えば、相続税の負担を抑える効果が期待できる場合もあります。

生前贈与には、いくつかの進め方があります。毎年少しずつ渡していく方法もあれば、まとまった財産を渡したうえで、税の精算を相続のときまで先送りにする方法もあります。どちらが適しているかは、財産の状況や、渡す相手、渡したい時期などによって変わります。一律の正解はありませんから、自分のケースに合った進め方を、専門家と相談しながら選んでいくのが確実です。

生前贈与で大切なのは、贈与したという事実を、きちんと形に残しておくことです。口頭でのやり取りだけでは、後で本当に贈与があったのかどうかをめぐって、相続人の間で争いになることがあります。贈与の内容を書面にしておく、財産を渡した記録を残しておくといった工夫が、後のトラブルを防ぎます。せっかくの生前贈与が争いの種にならないよう、きちんと証拠を残しておくことを心がけましょう。

また、生前贈与をする際には、本当に贈与する側と受け取る側の双方が、その内容を理解し、合意していることも大切です。たとえば、親が子に知らせないまま子名義の口座にお金を移していただけ、といった場合には、後で本当の贈与だったのかが問題になることもあります。お互いがきちんと認識したうえで贈与する。この基本を押さえておくことが、後の争いを避けるうえで欠かせません。

一方で、贈与には税負担が伴うことがあります。一度にまとまった財産を渡すと、その分の負担が重くなることもあるため、進め方には工夫が必要です。また、特定の人にだけ多くを渡すと、ほかの相続人との間で不公平が生じ、後のトラブルにつながることもあります。生前贈与には、こうした注意点もあるのです。

とくに気をつけたいのが、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続の際に持ち戻して考えることがある、という点です。つまり、生前に贈与したつもりでも、相続のときに、その分が計算に含められることがあるのです。また、特定の相続人への贈与は、ほかの相続人の取り分を計算する際に、考慮されることもあります。生前贈与を相続対策として使うなら、こうした仕組みも踏まえて、計画的に進める必要があります。

こうした仕組みがあるため、生前贈与は、思いつきで進めるのではなく、相続全体を見すえた計画のもとで行うことが大切です。いつ、誰に、どれだけ渡すのか。それが相続のときにどう扱われるのか。こうした点を踏まえて進めないと、よかれと思った贈与が、かえってもめごとや、予想外の負担を生むこともあります。生前贈与を相続対策として活用するなら、専門家の助言を受けながら、計画的に進めるのが安心です。

ワンポイントアドバイス
生前贈与は、計画的に進めることが大切です。一度に渡すか、少しずつ渡すかで、税の扱いも変わってきます。自分のケースに合った進め方を、専門家と相談しながら決めましょう。

遺言・家族信託・生命保険の活用

生前贈与のほかにも、生きているうちにできる対策はあります。それぞれの特徴を見ていきましょう。

遺言

遺言は、自分が亡くなった後の財産の渡し方を、生きているうちに決めておく方法です。誰にどの財産を渡すかを自分の意思で指定でき、相続をめぐる争いを防ぐ効果も期待できます。ただし、一定の範囲の相続人に保障された最低限の取り分には、配慮が必要です。

家族信託

家族信託は、信頼できる家族に、財産の管理や引き継ぎを託しておく方法です。たとえば、自分が高齢になり、判断能力が衰えても、託された家族が財産を管理し続けられます。認知症などへの備えとしても注目されている方法です。

家族信託の大きな利点は、自分が元気なうちに、将来の財産管理の道筋をつけておけることです。たとえば、自宅や預貯金の管理を、信頼できる子に託しておけば、いざ自分の判断能力が衰えても、その子が手続きを進められます。判断能力が衰えてからでは、財産が事実上凍結されてしまい、家族でさえ動かせなくなることがあります。家族信託は、そうした事態を防ぐ、柔軟で心強い備えになります。

たとえば、認知症などで判断能力が衰えると、本人名義の預貯金を引き出したり、不動産を売却したりすることが、原則としてできなくなります。介護の費用を本人の財産でまかないたくても、それができない、という事態に陥ることもあるのです。家族信託で、あらかじめ財産の管理を家族に託しておけば、こうした場合でも、託された家族が必要な手続きを進められます。将来の不安に備える手段として、知っておく価値のある方法です。

生命保険の活用

生命保険を活用して、特定の人に財産を残すこともできます。受取人を指定しておくことで、その人に確実にお金を渡せます。相続の際に、すぐに使えるお金を用意しておく手段としても役立ちます。

生命保険の保険金は、受取人として指定された人が受け取るため、ほかの相続人との分割の対象になりにくいという特徴があります。そのため、特定の人に確実にお金を残したいときに役立ちます。また、亡くなった直後は、葬儀の費用や当面の生活費など、すぐにまとまったお金が必要になることがあります。生命保険を活用しておけば、そうした急な出費にも備えられます。使い道の広い、便利な手段です。

亡くなった人の預貯金は、相続の手続きが終わるまで、すぐには自由に引き出せないことがあります。手続きには一定の時間がかかるため、その間の費用に困ることもあるのです。その点、生命保険の保険金は、受取人が比較的早く受け取れるため、当面の資金として役立ちます。残された家族が、お金の面で困らないようにしておく。そうした配慮としても、生命保険の活用は意味を持ちます。

生前の相続対策のメリット

生前に相続の対策をしておくことには、亡くなってからでは得られない、大きなメリットがあります。改めて整理しておきましょう。

最大のメリットは、選べる方法が多く、自分の意思を反映しやすいことです。亡くなった後では、もう本人は何もできませんが、生きているうちなら、贈与、遺言、信託など、さまざまな方法の中から、自分の目的に合ったものを選べます。家族とよく話し合いながら、納得のいく形を作っていけるのも、生前ならではの強みです。

亡くなった後の相続では、残された家族が、限られた情報の中で、手探りで手続きを進めることになります。本人に確認したくても、もうかないません。そのため、財産の在りかがわからなかったり、本人の意思が不明で、分け方をめぐってもめたりすることがあります。生前に対策をしておけば、本人が自分の言葉で意思を伝え、家族の疑問に答えながら、準備を整えられます。この違いは、とても大きいのです。

とくに、財産がどこに、どれだけあるのかを、家族が把握していないケースは少なくありません。亡くなった後に、家族が手がかりを探して、銀行や役所を駆け回ることになる、ということもあります。生前に、財産の一覧を整理し、その在りかを家族に伝えておくだけでも、残された人の負担は大きく減ります。これも、立派な生前対策の一つです。完璧な準備でなくても、できることから始める意味は大きいのです。

また、早めに準備を始めれば、それだけ時間をかけて、計画的に対策を進められます。生前贈与を少しずつ行うにも、家族の理解を得るにも、時間が必要です。元気なうちに動き出すことで、余裕をもって、よりよい形を整えられるのです。何より、自分の手で家族の将来に備えられたという安心感は、大きな意味を持つでしょう。

生前に相続の準備を整えておくことは、自分自身の安心にもつながります。財産のことを整理し、誰に何を渡すかを決め、家族にも伝えておく。それだけで、漠然とした不安が解消され、気持ちが軽くなったと感じる方は少なくありません。残りの人生を、安心して、前向きに過ごすためにも、生前の相続対策には意味があります。家族のためだけでなく、自分のためでもあるのです。

生前対策を進める過程で、家族と相続について話し合う機会が生まれることも、見逃せない価値です。ふだんはなかなか切り出しにくい相続の話を、自分が元気なうちに、自分から伝えておく。それによって、家族はあなたの思いを知り、いざというときに、その意思を尊重できます。お金の話を超えて、家族の絆を確かめ合う機会にもなり得るのです。生前対策には、そんな温かい側面もあります。

もちろん、相続の話を家族に切り出すのは、勇気のいることかもしれません。けれども、自分が元気なうちに、自分の言葉で思いを伝えておくことは、残された家族への、何よりの贈り物になります。何も伝えられないまま相続が起きれば、家族は本人の真意がわからず、悩み、ときに争うことになります。あなたの思いを、あなたの口から伝えておく。それが、家族を争いから守る、最も確かな方法の一つなのです。

生前の相続対策の注意点

多くのメリットがある生前の相続対策ですが、注意すべき点もあります。これらを踏まえて進めることが大切です。

判断能力があるうちに行う必要がある

もっとも大切なのが、対策は判断能力があるうちにしかできない、という点です。贈与にせよ、遺言にせよ、家族信託にせよ、自分でその意思を示せることが前提になります。認知症などで判断能力が衰えてしまうと、これらの対策ができなくなってしまうことがあります。だからこそ、生前の相続対策は、元気なうちに、早めに始めることが何よりも大切なのです。

この点は、いくら強調してもしすぎることはありません。多くの方が、「まだ元気だから、もう少し先でいい」と考えているうちに、対策の機会を逃してしまいます。判断能力は、ある日突然衰えることもあります。そうなってからでは、贈与も遺言も家族信託も、できなくなってしまうおそれがあるのです。生前の相続対策において、早すぎるということはありません。思い立ったときが、始めどきだと考えてください。

自分の生活への影響も考える

相続対策に気を取られるあまり、財産を渡しすぎて、自分の老後の生活が苦しくなっては、本末転倒です。生前贈与などをする際には、自分のこれからの暮らしに必要なお金を、しっかり残しておくことが大切です。将来にわたって、自分が安心して暮らせることを大前提に、無理のない範囲で対策を進めましょう。

子や孫のためを思って、つい多くの財産を渡してしまいたくなるのが、親心というものかもしれません。けれども、自分の老後には、生活費だけでなく、思わぬ医療や介護の費用がかかることもあります。財産を渡しすぎて、いざというときに自分が困ってしまっては、元も子もありません。まずは自分の暮らしを守り、そのうえで余裕のある範囲で次の世代に引き継ぐ。この順番を、けっして忘れないようにしましょう。

ほかの相続人への配慮

特定の人にだけ財産を渡すと、ほかの相続人が不満を抱き、争いの原因になることがあります。 生前の対策をする際には、ほかの相続人の取り分や気持ちにも配慮し、できれば事情を説明しておくことが、争いを防ぐことにつながります。

進め方と専門家への相談

では、生前の相続対策は、どのように進めればよいのでしょうか。基本的な流れを整理します。

  1. 目的をはっきりさせる。何のために対策をするのか、何を実現したいのかを整理します。
  2. 財産を把握する。どんな財産がどれだけあるのかを、棚卸しします。
  3. 方法を選ぶ。目的に合った方法を、組み合わせて検討します。
  4. 専門家に相談する。税や法律の影響について、専門家の助言を受けます。
  5. 家族と話し合う。ほかの相続人にも事情を伝え、理解を得ておきます。

どの専門家に相談すればよいかは、対策の内容によって変わります。

  • 遺言や家族信託、相続人どうしのトラブル防止については、弁護士が力になれます。
  • 相続税や生前贈与の税の見通しについては、税理士が力になれます。
  • 不動産の名義変更などの手続きについては、司法書士が力になれます。

生前の相続対策は、税金、法律、家族の事情が複雑にからみ合う、奥の深いものです。弁護士に相談すれば、遺言や家族信託の活用、相続人どうしのトラブルを防ぐ対策について助言を受けられますし、税理士に相談すれば、税の面での効果を見通せます。自分だけで進めようとすると、思わぬ落とし穴にはまることもあります。大切な家族の将来のために、専門家の力を借りることを、けっして遠回りだとは思わないでください。早めの相談が、あなたの思いを確かに実現するための備えになります。

よくある質問

「生前相続」という制度があるのですか

厳密には、相続は人が亡くなってはじめて起こるものなので、「生前相続」という制度そのものはありません。世間で生前相続と呼ばれているのは、生前贈与をはじめとする、生きているうちにできる相続の対策のことを指しています。言葉にとらわれず、生きているうちにどんな準備ができるのかを知ることが大切です。具体的な方法は、専門家に相談しながら選ぶとよいでしょう。

生前の相続対策は、いつから始めればよいですか

できるだけ早く始めることをおすすめします。対策は、判断能力があるうちにしかできないため、元気なうちに動き出すことが大切です。また、早く始めれば、それだけ時間をかけて計画的に進められ、選べる方法も増えます。まだ早いと思うくらいの時期から準備を始めておくのが、安心につながります。先延ばしにせず、早めに検討しましょう。

生前贈与と遺言は、どちらがよいですか

どちらが適しているかは、目的によって変わります。生きているうちに確実に財産を渡したいなら生前贈与が、亡くなった後の渡し方を決めておきたいなら遺言が向いています。両方を組み合わせて使うことも多く、一方だけが正解というわけではありません。自分の目的に合った方法を、専門家と相談しながら選ぶとよいでしょう。

認知症になると、相続の対策はできなくなりますか

判断能力が衰えてしまうと、贈与や遺言、家族信託といった対策が、難しくなることがあります。これらは、自分の意思を示せることが前提になるからです。だからこそ、相続の対策は、判断能力がしっかりしている、元気なうちに進めておくことが大切です。将来に備えたいなら、早めに専門家へ相談することをおすすめします。

生前の相続対策をすると、税金は必ず安くなりますか

必ず安くなるとはかぎりません。生前贈与などを計画的に行えば、相続税の負担を抑えられる場合もありますが、進め方によっては、かえって負担が大きくなることもあります。また、税の軽減ばかりを重視すると、家族の争いを招いたり、自分の生活が苦しくなったりすることもあります。税の効果は状況によって変わるため、進める前に税理士などの専門家へ確認することが大切です。

生前の相続対策は、誰に相談すればよいですか

遺言や家族信託の活用、相続人どうしのトラブルを防ぐ対策は弁護士に、税金面は税理士に、不動産の名義に関わる手続きは司法書士に、それぞれ相談できます。生前の相続対策は、税金と法律の両面が関わるため、まずは弁護士に全体像を整理してもらい、必要に応じてほかの専門家とも連携してもらう、という進め方が有効です。どの方法が自分に合っているか迷うときも、専門家に相談すれば、状況に応じた助言を受けられます。一人で抱え込まず、頼れる先を見つけてください。

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