2019/5/8 98view

老後の親の介護・面倒を見た子は多く相続できる?

この記事で分かること
  1. 介護をした法定相続人は、相続分に寄与分を上乗せすることができる。
  2. 寄与分の主張は、遺産分割の場で行うのが普通である。
  3. 介護を根拠に寄与分を主張するには、財産の維持、無償、継続、専念の4条件が必要である。
  4. 長男の妻が介護に尽くしても、法定相続人でないので、寄与分の主張はできない。
  5. 民法の改正により、平成31年7月から、長男の妻などに「特別寄与料」をもらう権利が認められる。
  6. 介護者が介護した分の遺産をもらいたいなら、まず弁護士に相談することが一番である。

介護者が法定相続人であれば、介護を根拠に寄与分の主張ができます。法定相続人でなければ、寄与分の主張はできません。平成31年7月から、法定相続人でない介護者などが財産をもらう権利が認められます。いずれにせよ、法律知識と交渉力が必要です。介護した分の遺産がほしいと思ったら、まず弁護士に相談しましょう。

介護と相続の関係とは

介護者は他の相続人よりも多くの遺産をもらえるか。これが、介護と相続の関係です。

普通に考えれば、答えは「イエス」です。介護は大変な苦労です。苦労の見返りとして、もらう遺産も上乗せされてしかるべきだからです。

では、法律はどうなっているのでしょうか。普通の考えと同じなのでしょうか。

法律は、介護と相続の関係をどう決めているのか。この記事で解説します。

親の面倒を見た子と面倒を見ない子

親の面倒を見た子。親の面倒を見ない子。面倒を見た子が多くの遺産をもらうのか。それとも、どちらも同じだけもらうのか。

介護と相続の関係を象徴するケースです。この記事では、こうしたケースを中心に解説します。

ワンポイントアドバイス
介護と相続の関係は、感情論におちいりがちです。「私はひとりでおじいちゃんの介護をしたんだから、遺産をたくさんもらって当然よ」。心情的にはそのとおりです。しかし、遺産のもらい方を決めるのは法律です。介護と相続の関係を決めるのも法律です。法律の一番の専門家は、弁護士です。弁護士と相談しながら、介護と相続の問題に取り組みましょう。よりよい解決が見出せるものと思われます。

介護者は寄与分を主張できる

介護と相続をつなぐキーポイントが、寄与分です。

寄与分とは何か。介護とどんな関係があるのか。あらましを解説します。

介護をした子は介護をしない兄弟よりも多くの遺産をもらえる

故人の介護をした子は、介護をしなかった子よりも多くの遺産をもらえます。法律で決められています。介護をした子には「寄与分」があるからです。

寄与分は被相続人に「寄与」した人の権利

「寄与分」とは、故人の遺産に貢献したことによる相続分の上乗せ分をいいます。

故人の遺産に貢献することを「寄与」といいます。寄与した人は、遺産分けに当たって、寄与した分だけ多くもらうことができます。この多くもらう分が、寄与分です。

遺産に貢献した人と貢献しない人の取り分が同じでは、貢献した人の苦労が報われません。貢献しない人の取り分は、貢献した人の苦労の横取りともいえます。不公平な遺産分けです。貢献した人に寄与分を認めることで、公平な遺産分けとなります。

「寄与」とは、被相続人の財産の維持増加に尽くすこと

遺産への貢献、つまり「寄与」とは、故人の財産の維持増加に尽くすことです。「維持」とは、財産が減るのを防ぐことです。「増加」とは、財産を増やすことです。このいずれかに貢献することが、「寄与」です。

介護は「被相続人の療養看護」に含まれる

法律は、寄与の方法をいくつか定めています。そのひとつが「被相続人の療養看護」です。「療養看護」とは、看病したり、身の回りの世話をすることです。介護そのものです。介護者は、寄与分を主張できます。

ワンポイントアドバイス
介護者が寄与分を持つことは、法律で決められています。介護者が、他の相続人に対して、自分の寄与分を主張するには、法律的な説明が必要になります。それが難しいときは、弁護士に相談しましょう。法律のプロとして、他の相続人に対し、法律に基づいて、筋道立てた説明をしてもらえます。

寄与分の金額はどう決まる?

介護者は、寄与分を持ちます。寄与分は、他の相続人に対して主張します。具体的にどのように主張すればよいのでしょうか。

寄与分は遺産分割協議で主張することで決まる

寄与分は、遺産分けの話し合いの場、つまり遺産分割協議の場で主張するのが普通です。相続分上乗せの主張だからです。

寄与分について、介護者と他の相続人の間で話しがつかないとき、介護者は、家庭裁判所に、寄与分を定める審判または調停を申し立てることができます。遺産分割の審判または調停と合わせて申し立てるのが普通です。

寄与分は「遺産に対する割合」か「金額」で設定される

寄与分の決め方は、2つあります。「遺産総額(1000万円)の3割」というように、遺産に対する割合で決めることができます。また、「金300万円」というように、具体的な金額で決めることもできます。

寄与分を交えた相続分の計算方法

介護者の寄与分を交えた相続分の計算方法は、次のとおりです。
(遺産総額-寄与分)×法定相続分+寄与分

ワンポイントアドバイス
遺産分割協議の場で寄与分を主張した場合、他の相続人からの反発が予想されます。故人の介護をしたこと、それが寄与分に当たること、寄与分は法律で認められた権利であることを説明し、理解してもらわなければなりません。法律のプロである弁護士なら、第三者的立場から、筋道立てて説明してくれます。他の相続人の反発も治まる可能性があります。寄与分の主張に対する反発が予想されるときは、弁護士に相談することをお勧めします。

介護が「寄与」と認められる条件

介護者は、「被相続人の療養看護」をした者として、寄与分を持ちます。

寄与分を主張するには、介護をした事実の他に、次の4つの条件が必要とされています。

財産の維持増加につながること

介護者の介護により、故人の財産が維持され、または増加したことが必要です。民法の条文に明記されています。

介護者の介護で事足りれば、介護保険サービスなどは不要です。サービス利用料を支払わずにすみます。故人の財産が減らずにすみ、維持されます。

介護者の介護により故人の財産が増えるというケースは、想定できません。

無償であること

介護者が、無償で(タダで)、故人の介護をしたことが必要です。報酬をもらった場合、相続分の上乗せは必要ないからです。

継続して行うこと

介護者が、一定の期間、継続して介護したことが必要です。短期間またはこま切れの介護では、介護をしなかった相続人との違いが少なく、相続分の上乗せをするにふさわしくないからです。

寄与分を認めたいくつかの裁判例があります。介護期間が3年間から4年間くらいのケースが多いです。最低でも1年間以上は必要とされています。

片手間でなく専念したこと

介護者が、介護に専念したことが必要です。「付きっきり介護」「常時介護」、またはそれに近い介護です。片手間の介護では、介護をしなかった相続人との違いが少なく、相続分の上乗せをするにふさわしくないからです。

ワンポイントアドバイス
ひとくちに介護といっても、介護される人とのかかわりの度合いは千差万別です。自分が行った介護が故人への「寄与」といえるかどうかを自分で判断することは難しいです。第三者の目で、法律や裁判例に基づいて判断してもらうことが必要です。介護と相続に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

寄与分は法定相続人の権利

寄与分を持てるのは、法定相続人だけです。民法の条文にはっきりと書かれています。寄与分は、法定相続人の権利です。

法定相続人でない者は寄与分を持てない

法定相続人でない者は寄与分を持つことができません。寄与分を持てるのは法定相続人であると、民法の条文に明記されているからです。

長男の妻(嫁)は同居介護しても寄与分を持てない

長男の妻(嫁)が、故人と同居し、故人の財産維持・無償・継続・専念の4条件を満たす介護をしたとしても、寄与分を持つことはできません。嫁は故人の法定相続人ではないからです。

妻は夫の代襲相続人にもならない

長男が亡くなった後、嫁がしゅうと・しゅうとめの介護をした場合はどうでしょうか。

しゅうと・しゅうとめが亡くなった時、すでに長男は亡くなっています。長男の子が、長男に代わる相続人(代襲相続人)として、しゅうと・しゅうとめの遺産を相続します。代襲相続人も法定相続人です。

長男の妻が、長男の代襲相続人になれれば、しゅうと・しゅうとめの法定相続人として、寄与分を主張できます。しかし法律は、妻を夫の代襲相続人としていません。長男の妻は、長男の代襲相続人になることはできません。しゅうと・しゅうとめの法定相続人にはなれません

長男が亡くなった後、嫁がしゅうと・しゅうとめの介護をしても、嫁は寄与分を持つことができません。

ワンポイントアドバイス
本文で長男の妻を例に挙げたのは、日本では伝統的に、長男の妻がしゅうと・しゅうとめの介護をするケースが多いからです。介護者が次男や三男の妻であっても、寄与分を持てないことに変わりありません。ちなみに、2016年の厚生労働省の調査では、子の配偶者が介護者となる割合は9.7%です。1982年の43%と比べると、大きく減っています。

長男の妻(嫁)が介護した分の遺産をもらうには

法定相続人でない人は、いかに献身的な介護をしても、寄与分を持つことはできません。しかし、献身的な介護には、大変な苦労を伴います。それ相当の埋め合わせがあってしかるべきです。寄与分を持てないのなら、それに代わる埋め合わせを考えるべきです。遺産の一部をもって、その埋め合わせに当てるのが、故人の介護者への感謝の思いにかなうことです。

ここでは、わが国の伝統的なパターンである、長男の妻(嫁)が介護者となるケースで解説します。長男の妻(嫁)が、介護した分の遺産をもらう方法として、次の5通りが考えられます。

夫の相続分を分けてもらう

夫は故人の長男です。法定相続人です。夫は故人の遺産をもらいます。その中から、介護に見合った分の財産をもらう方法です。

次の2点に注意が必要です。

夫との交渉が必要

夫との交渉が必要です。嫁が故人の介護に尽くしたことを理解してもらう、そこから嫁の苦労をねぎらう気持ちを引き出す。これができれば、夫から財産を分けてもらうことにつながります。

夫婦の不仲に発展するおそれあり

夫との交渉がうまくいかなければ、財産はもらえません。それが嫁の不満となり、夫婦の不仲に発展するおそれもあります。

嫁の寄与を夫の寄与に含めて主張する

嫁が故人の介護に尽くしたことを長男による寄与ととらえる方法です。長男が、遺産分割協議の場で、自分の寄与分を主張します。長男が寄与分としてもらった遺産の上乗せ分を、後で嫁に与えます。

夫の気持ちの持ち方がポイント

嫁の苦労をねぎらう気持ち。嫁の寄与を自分の寄与として主張する気持ち。この2つの気持ちを夫が持つことが、嫁が財産をもらうためのポイントです。

夫の寄与とするための2つの考え方

嫁の寄与を夫の寄与とするとらえ方は、次の2通りに分けることができます。 

夫婦の寄与を一体ととらえる

嫁の寄与イコール夫の寄与とする考え方です。「夫婦は一体」という思いが背景にあります。

この考え方に立った裁判例があります。東京高裁平成元年12月28日決定(家裁月報42巻8号45頁)です。この決定では、「共同相続人間の衡平を図る見地からすれば、」「相続人の配偶者ないし母親の寄与が相続人の寄与と同視できる場合には相続人の寄与分として考慮することも許されると解するのが相当である。」という判断が示されています。

夫の寄与に嫁を使ったととらえる

夫の寄与の実行役として妻を使ったとする考え方です。

裁判例の主流です。神戸家裁豊岡支部平成4年12月28日審判(家裁月報46巻7号57頁)では、「上記看護は,Bの妻として,Bと協力し合い,Bの補助者または代行者としてなされたものであるから,遺産分割に当たっては,Bの寄与分として考慮すべきである。」という判断が示されています。

遺言を書いてもらう

介護の相手であるしゅうと・しゅうとめが健在のうちに、嫁に財産を与えるとの遺言を書いてもらう方法です。

遺言で財産を与えることを、遺贈といいます。遺贈の相手は法定相続人に限られません。嫁に遺贈する遺言も可能です。

次の3点に注意が必要です。

遺留分を侵さないこと

法定相続人が確実にもらえる遺産の割合を、遺留分といいます。遺留分を侵す遺贈は、遺留分権者からの返還請求を受けるおそれがあります。遺留分を侵さない遺贈をしてもらうことが重要です。

判断力のあるうちに書いてもらうこと

遺言を書くには、自分が書いた遺言が他の人にどんな法律的な影響を与えるかを正しく判断できる力が必要です。この力を、意思能力といいます。意思能力のない状態で書いた遺言は、無効となってしまいます。しゅうと・しゅうとめに意思能力があるうちに遺言を書いてもらうことが必要です。

遺言の細かな決まりを守ること

遺言を書くには、細かな決まりがあります。法律で決められています。決まりを守らない遺言は、無効になってしまいます。遺言の決まりについて分からないときは、弁護士に相談することをお勧めします。
  

生前贈与をもらう

介護の相手であるしゅうと・しゅうとめが健在のうちに、生前贈与という形で財産をもらう方法です。

生前贈与の相手は、法定相続人に限られません。嫁への生前贈与も可能です。

遺留分を侵さないことが重要

遺留分を侵す生前贈与は、遺留分権者から財産の返還請求を受けるおそれがあります。遺留分を侵さない生前贈与をしてもらうことが重要です。 

養子縁組をする

しゅうと・しゅうとめと養子縁組をすれば、嫁はしゅうと・しゅうとめの養子となります。養子は、実子と同格の法定相続人になります。法定相続人であれば、寄与分の主張ができます。

夫婦関係の悪化に注意

しゅうと・しゅうとめと養子縁組をすることは、夫である長男からすれば、妻が自分の姉妹になることです。夫が、抵抗感を覚えるおそれがあります。法定相続人が増えることで、他の法定相続人の相続分が減ります。法定相続人である夫の不満が生じるおそれもあります。こうしたことが原因で、夫婦関係が悪化するおそれがあります。

ワンポイントアドバイス
5通りのいずれの方法をとるにせよ、それぞれ注意する点があります。特に、夫との交渉力、遺言や遺留分についての法律知識が重要になってきます。交渉と法律知識は、弁護士の専門分野です。注意点をクリアするために、ぜひ弁護士のアドバイスを受けましょう。

民法改正で新設「特別寄与料」とは?

平成30年7月に民法が改正され、「特別の寄与」についての条文が追加されました。改正法は平成31年7月1日から施行されます。

改正法が施行されると、故人の介護者などは、「特別寄与者」として、相続人に対し、寄与に応じた金銭(「特別寄与料」)の支払いを求めることができるようになります。

特別寄与料の新設は、親族トラブルの新たな火種にも

改正法が施行されると、しゅうと・しゅうとめを介護した長男の妻などは、相続人に対し、特別寄与料の支払いを求めることができるようになります。

特別寄与料の支払いについて、特別寄与者と相続人の間で話しがつかないとき、特別寄与者は、家庭裁判所に、特別寄与料の支払いを求める審判または調停を申し立てることができます。

相続人の間での遺産分割の争いの上に、特別寄与者と相続人の間での特別寄与料の争いが加わることも予想されます。三者がにらみ合う形です。複雑な争いの図式です。争いが泥沼化しないうちに弁護士に相談するのが得策といえるでしょう。

ワンポイントアドバイス
「特別寄与者」となれるのは、親族のみです。6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族のみです。長男の妻は、1親等姻族に当たります。内縁の妻や介護ヘルパーは親族に当たりません。いかに献身的な介護をしても、特別寄与者にはなれません。

介護した分の遺産を相続したいなら、まず弁護士に相談を

故人を介護した見返りとして遺産をもらう方法を解説してきました。いずれの方法においても、相続についての法律知識、相手との交渉力が求められます。

どちらも一般の人にとっては難しいことがらです。法律と交渉の専門家の力を借りるのが賢明です。その一番の専門家が、弁護士です。

介護した分の遺産をもらいたいと思ったら、まず弁護士に相談しましょう。

遺産相続は弁護士に相談を
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相続人のひとりが弁護士を連れてきた
遺産分割協議で話がまとまらない
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上記に当てはまるなら弁護士に相談