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土地信託とは?相続対策としての土地信託のメリットとデメリット

この記事で分かること

  • 土地信託とは、信頼できる者に土地を任せ、儲けをもらうシステムである。
  • 土地信託は、信託会社に任せるのが普通である。
  • 土地信託には、処分型と賃貸型とがあり、賃貸型が一般的である。
  • 賃貸型土地信託の手続は、4つの段階からなっている。
  • 賃貸型土地信託には、6つのメリットと4つのデメリットがある。
  • 賃貸型土地信託には、3つの節税効果があり、相続土地の維持に役立つ。
  • 土地信託を考えるなら、まず土地信託と税に詳しい弁護士に相談することが大切である。

土地信託にはメリットと節税効果があります。逆に、デメリットもあります。しっかりと土地を運用して、儲けを生み出してくれる信託会社を選ぶことが大切です。それには、土地信託と税についての知識、信頼できる信託会社を選ぶ眼が必要です。土地信託を考えるなら、土地信託と税、および信託会社の情報に詳しい弁護士に相談することから始めましょう。

土地信託とは

土地信託とは、信頼できる者に自分の土地を使って儲けてもらい、その儲けを自分がもらうシステムです。

「信頼する者に土地を託する(=任せる)」の意味です。

信託会社への土地信託が普通

土地信託は、信託会社に任せるのが普通です。

土地という大きな財産です。個人より、会社という組織に任せる方が安心です。より大きな儲けも期待できます。

信託会社には、信託銀行と、信託銀行以外の信託会社とがあります。信用度の高さから、大手銀行グループの信託銀行に任せるケースが多いです。

ワンポイントアドバイス
土地信託は、土地という大きな財産を他人に任せるものです。失敗した時に失うものはとても大きいです。慎重に行うことが大切です。土地信託を考えるなら、土地信託に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

土地信託の種類

土地信託には、処分型と賃貸型の2種類があります。

処分型

処分型の土地信託とは、最後に土地を売ってしまうタイプの土地信託です。

信託会社は、信託された土地の上に建物を建てます。分譲マンションが多いです。分譲マンションは、居室と土地とをひとつの物件として売るマンションです。

分譲マンションの売り上げは、土地だけの売り上げよりも高いです。分譲マンションの代金には、土地だけでなく居室の代金も含まれるからです。

信託会社は、分譲マンションの売り上げから信託会社への報酬などを差し引いた金額を、信託した人(=信託者)に渡します。信託者は、土地だけを売るより高い金額をもらえます。

土地は、分譲マンションを買った人の物になります。信託者に帰って来ません。処分型は、最後に土地を手放してもよいと思う人が利用するタイプです。

賃貸型

賃貸型の土地信託とは、最後に土地が信託者に帰って来るタイプの土地信託です。

信託会社は、信託された土地の上に建物を建てます。賃貸マンションが多いです。賃貸マンションは、居室を貸し、代わりに賃料をもらうマンションです。

土地だけを貸すより、マンションを貸すほうが借り手は見つかりやすいです。マンションは住まいです。生活に欠かせないものです。その分、借りたい人も多いのです。

信託会社は、もらった賃料から信託会社への報酬などを差し引いた金額を、信託者に渡します。信託者は、土地だけを貸した場合よりも高い確率で儲けをもらえます。

信託が終わると、土地とマンションは信託者の物になります。賃貸型は、土地を手放したくないと思う人が利用するタイプです。

土地信託は賃貸型が一般的

信託者は、信託で儲けた後も、土地を持っていたいと思うのが普通です。土地信託は、賃貸型が一般的です。

ワンポイントアドバイス
処分型と賃貸型とは、最後に土地が帰って来るか来ないかの違いがあります。どっちのタイプの信託にしようか迷ったら、土地信託に詳しい弁護士に相談しましょう。

土地信託のメリット

一般的である賃貸型の土地信託のメリットを6つ紹介します。

土地が建物付きで帰ってくる

信託が終わると、信託した土地に賃貸マンションなどの建物が付いて、信託者に帰って来ます。

信託者は、賃貸マンションなどの経営を続けて賃料をもらうことができます。まとまったお金が必要なら、土地とマンションなどを売ってお金に変えることもできます。

建設資金を借りなくてすむ

土地信託では、マンションなどを建てる資金は信託会社が借り入れます。信託者は、資金繰りに悩まなくてすみます。

マンション経営などの知識が必要ない

マンションなどの経営は、信託会社が行います。信託者は、マンション経営などの仕方を勉強しなくてすみます。経営のやりくりに頭を悩ますこともありません。

大きな儲けを期待できる

信託会社は、信託財産経営のプロ集団です。個人でマンション経営などを行うより、ずっと大きな儲けを期待できます。

住宅以外の経営もできる

土地信託で経営できるのは、賃貸マンションなど住宅に限りません。土地の広さや場所などに応じて、他の経営もできます。

街中の狭い土地なら、テナントの入る商業ビルにピッタリです。郊外の広い土地なら、大型商業施設での集客が期待できます。交通量が多く、路上駐車の多い場所なら、駐車場を作ることでスムーズな交通に貢献できます

信託受益権を売ることができる

信託者が信託会社から儲けをもらえる権利を、信託受益権といいます。

信託受益権は、それ自体ひとつの財産です。他人に売ることができます。借金の担保にすることもできます。まとまったお金が必要なときに役立ちます。

ワンポイントアドバイス
土地信託のメリットは、ひとことでいえば、信託者に負担がかからないことです。それだけに、実力と信用のある信託会社を選ぶことが大切です。どの信託会社がよいのか迷ったら、土地信託に詳しい弁護士に相談しましょう。

土地信託の流れ

賃貸型土地信託の手続の流れは、次の4つの段階に分けることができます。

土地信託契約を結ぶ

信託者と信託会社とで、土地信託契約を結びます。

信託会社は土地の所有者となる

土地信託契約により、信託会社が土地の所有者となります。

土地の所有者が信託者から信託会社に変わったことを、法務局に申請して、記録してもらいます。不動産登記といいます。所有者が変わったことを誰もが分かるようにするためです。

信託者は、信託受益権を手にする

信託者は、信託受益権を手にします。

信託会社から儲けをもらえる権利を、信託受益権といいます。賃貸マンションの賃料をもらう権利などです。

信託会社による土地の管理運用

信託会社は、信託された土地を使って儲けを生み出します。信託土地の管理運用といいます。

土地の上に賃貸マンションを建てて、借主から賃料をもらう。商業ビルを建てて、テナントからテナント料をもらう。駐車場にして、借主から賃料をもらう。こうした賃料やテナント料が、土地の管理運用による儲けです。

儲けを生み出す方法は、信託会社が考えます。信託した人が関わるのは、信託会社が考えた方法に同意するくらいです。

信託した人への配当

信託会社は、儲けから信託会社への報酬などを差し引いた金額を、信託者に支払います。配当といいます。

差し引かれるのは、信託会社への報酬の他、次のものがあります。

  • マンション建設などのための借入金
  • マンション管理会社などに支払う管理費用
  • マンションなどにかかる固定資産税

信託契約の終了と土地建物の返還

契約期間がすべて過ぎると、土地信託契約が終わります。契約期間は、賃貸マンションの場合、20年から30年くらいといわれています。

土地信託契約が終わると、信託会社が土地を持っている理由がなくなります。土地の所有権は、信託者に戻ります。

土地の上に建てたマンションなどの所有権も、信託者に移ります。土地信託契約で決められているからです。

ワンポイントアドバイス
土地信託の流れの中で一番のウリは、マンションなど建物の所有権も付いて来ることです。差し出した土地に建物が付いて戻ってくるのです。上手に行えば、これほどおいしいシステムはありません。土地信託に詳しい弁護士とも相談して、土地信託を上手に行ってくれる信託会社を見つけましょう。

土地信託のデメリット

賃貸型の土地信託のデメリットを4つ紹介します。

配当なしの場合もあり

信託者が配当をもらえない場合があります。

配当は、儲けから信託会社への報酬などを差し引いた金額です。差し引きがゼロまたはマイナスなら、配当はありません。

赤字分は信託した人の負担に

土地信託の赤字分は、信託者が負担します。

儲けから信託会社への報酬などを差し引いた金額がマイナスなら、未払い金が残ります。未払い金は、信託者が負担します。

たとえば、金融機関からの借入返済が、儲けだけで賄いきれない場合です。借入金をそのままにはできません。金融機関が困ります。残りの借入金は、信託者が支払います。

信託会社は、未払い分を肩代わりまでしてくれません。

信託できない土地もある

土地の中には、土地信託できない土地もあります。

地盤が弱ければ、建物は建てられません。狭ければ、マンションや大型商業施設は建てられません。へき地で人もまばらなら、商業ビルには不向きです。斜面では、駐車場にはできません。

儲けの見込めない土地は、信託会社は手を出しません。土地信託契約を結んでもらえません。

個人運用よりも配当が減る

自分で土地運用するよりも、配当が減ります。

「土地信託の配当=土地運用による儲け-(信託会社への報酬+借入金+管理費用+固定資産税など)」です。自分で土地運用すれば、信託会社への報酬は要りません。その分、配当が高くなります。

ただ、自分で土地運用して、信託会社に任せるのと同じだけ儲けられるとは限りません。信託会社に任せた場合より儲けが少ないのなら、信託会社への報酬が要らなくても、配当は高くなりません。

つまり、個人運用よりも配当が減ることは、信託会社に任せるのと同じだけ儲けられる個人にとってのデメリットといえます。

ワンポイントアドバイス
土地信託にデメリットがあるのは、信託会社に任せるからです。でも、土地信託は信託会社に任せるのが普通です。信託会社に任せる以上、デメリットは覚悟しなければなりません。それだけに、デメリットのなるべく少ない信託会社に任せたいものです。いくつかの信託会社と話をして、ベストな会社を選びましょう。会社選びに迷ったら、土地信託に詳しい弁護士に相談することをお勧めします。

土地信託は相続した土地を維持する一つの方法

土地信託は、相続した土地を維持する方法の一つとして活用できます。

土地信託による3つの節税効果

土地信託には、3つの節税効果があります。

信託会社への所有権移転は非課税

土地信託を行うと、土地の所有権は信託者から信託会社に移ります。この所有権移転に対し、所得税はかかりません。

信託受益権の相続には非課税枠あり

信託者が亡くなりました。信託受益権を信託者の相続人が受け継ぎます。土地の所有者は、信託会社のままです。

相続税は、信託土地の評価額をもとに計算されます。

信託会社への報酬、信託会社が負担する借入金・管理費用・固定資産税などは、土地の評価額から差し引かれます。債務控除といいます。土地そのものを相続するよりも、相続税を安くできます。

信託者への所有権移転は非課税

信託契約が終わりました。土地の所有権が、信託会社から信託者の相続人に戻されます。相続人は、信託者の地位を受け継いだ人だからです。この所有権移転に対して、所得税はかかりません。

土地信託を相続土地の維持に活かすなら弁護士に相談を

こうした節税効果を使えば、相続税を納めるために土地を売ることなく、済ませることができます。土地信託は、相続した土地を維持する一つの方法です。

ただ、実際に節税効果を活かした土地信託を行うのは、信託会社です。土地信託はもちろん、節税の知識もある信託会社に任せることが大切です。

それには、土地信託と税の知識、および信託会社の情報が必要です。一般の方が、こうした知識を身に付け、情報を集めることは、大変な苦労です。土地という大きな財産です。中途半端な知識と情報をもとに行動すると、かえって大損するおそれがあります。

土地信託を考えるなら、まず土地信託と税、および信託会社の情報に詳しい弁護士に相談するのが一番です。

この記事が、相談のための予備知識として役立てば幸いです。

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