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小規模宅地等の特例とは?自宅の評価を大きく軽減

小規模宅地等の特例とは?自宅の評価を大きく軽減

この記事で分かること

  • 小規模宅地等の特例の仕組みと大きな減額の効果
  • 特例が使える土地の種類と面積の上限
  • 誰が引き継ぐと使えるか(配偶者・同居親族・家なき子)
  • 申告が必須という手続きと期限の注意点
  • 取りこぼしを防ぐための準備と相談先

この記事では、自宅の土地の評価を大きく引き下げられる小規模宅地等の特例について、その仕組みと効果をわかりやすく解説します。対象になる土地の種類や面積の上限、配偶者・同居親族・家なき子といった引き継ぐ人ごとの要件、税額がゼロでも申告が必要だという見落としやすい手続き、分割協議の遅れによる失敗まで、弁護士の視点で整理します。読み終えれば、特例を取りこぼさないために何を準備すべきかがわかります。

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小規模宅地等の特例とは

相続税が心配な方にとって、まず知っておきたいのが「小規模宅地等の特例」です。これは、亡くなった方が住んでいた自宅の土地などについて、相続税を計算するうえでの評価を大きく引き下げられる制度です。名前は少し難しそうですが、中身は「自宅を相続税のために手放さずに済むように、土地の評価を軽くしてあげましょう」という、暮らしを守るための仕組みだと考えてください。

制度の目的とおおまかな仕組み

そもそも相続税は、亡くなった方が残した財産の評価額をもとに計算されます。自宅の土地は財産の中でも金額が大きくなりやすく、とくに都市部では、土地の評価額が高いために相続税が思いのほか重くのしかかることがあります。何も対策をしなければ、相続税を払うために住み慣れた自宅を売らざるを得ない、という事態すら起こりえます。

これは決して大げさな話ではありません。相続税は現金で一括して納めるのが原則であり、手元にまとまった預貯金がなければ、財産の大半が自宅の土地と建物というご家庭では、納税資金を用意するために自宅を手放すしかなくなることがあります。長年家族の思い出が詰まった住まいを、相続税のために売却する——そんな悲しい結末を避けるためにこそ、この特例の存在を知っておく意味があるのです。

相続税は、原則として現金で一括して納めることになっています。手元にまとまった預貯金がなく、財産の大半が自宅という土地と建物のご家庭では、納税のためにその自宅を手放さざるを得ない、という事態も起こりえます。小規模宅地等の特例は、まさにこうした「自宅を失うリスク」から家族を守るために設けられた制度なのです。

そうした事態を防ぐために設けられているのが、この特例です。一定の要件を満たせば、自宅の土地の評価を大幅に下げて相続税を計算できるため、残された家族が自宅を守りやすくなります。相続税対策を考えるうえで、まず最初に検討すべき制度といっても言い過ぎではありません。

裏返せば、この特例を使えるか使えないかで、納める相続税の額は大きく変わります。同じ評価額の自宅であっても、特例を活かせた家庭と取りこぼした家庭とでは、最終的な税負担に大きな差が生まれることも珍しくありません。だからこそ、自宅をお持ちの方は「うちは関係ない」と決めつけず、まずは制度の中身を正しく理解しておくことが、ご家族の財産を守る第一歩になります。

自宅の評価が大きく引き下げられる

この特例の最大の特徴は、自宅として使われていた土地について、評価を大きく引き下げられる点にあります。たとえば評価額の高い土地であっても、要件を満たせばその評価を大きく圧縮して相続税を計算できるため、税負担が劇的に変わることもあります。自宅の評価がどう決まるのかという基礎については、あわせて確認しておくと理解が深まります。

なぜこれほど大きく評価を下げられるのかというと、自宅の土地は「生活の基盤」だからです。亡くなった方と暮らしを共にしてきた家族にとって、その土地は単なる財産ではなく、これからも住み続けるための拠り所です。そうした生活基盤にまで通常どおりの相続税をかけてしまうと、残された家族の暮らしそのものが立ち行かなくなりかねません。特例が大幅な評価減を認めているのは、こうした家族の生活を守るという、はっきりとした目的があるからなのです。

逆にいえば、この特例は「誰にでも無条件に使えるおまけ」ではなく、家族の生活を守るという目的に沿った要件が定められています。だからこそ、要件を満たしているかどうかの確認が大切になりますし、その確認には専門的な視点が欠かせません。制度の趣旨を理解しておくと、なぜ細かな要件が設けられているのかも、自然と納得できるようになります。

特例が使える土地の種類

小規模宅地等の特例は、どんな土地にでも使えるわけではありません。土地の使われ方によって、対象になるかどうかや、評価を下げられる割合、限度となる面積が変わってきます。ここでは代表的な区分を整理しておきましょう。

大きく分けると、亡くなった方が住んでいた居住用の土地、商売に使っていた事業用の土地、人に貸していた貸付用の土地という三つの系統があります。それぞれで引き下げられる割合や限度面積、要件が異なるため、ひとくちに「小規模宅地等の特例」といっても、中身はいくつかの枠に分かれていると理解しておくと整理しやすくなります。多くのご家庭でまず関わってくるのは、やはり自宅の土地に関する居住用の枠です。

  • 亡くなった方が住んでいた、自宅の敷地となる居住用の土地
  • 亡くなった方が商売などに使っていた、事業用の土地
  • 亡くなった方が人に貸していた、貸付用の土地

居住用の枠は、効果が大きいぶん、要件もしっかり確認する必要があります。誰が住んでいたか、誰が引き継ぐか、その後も住み続けるかといった点が、特例を使えるかどうかを左右します。自宅をお持ちのご家庭にとっては最も身近な枠だからこそ、思い込みで判断せず、ご自身のケースに当てはまるかを丁寧に確かめておくことが大切です。

居住用の宅地(自宅の土地)

最もよく使われるのが、亡くなった方が自宅として住んでいた土地です。一定の要件を満たせば、限度となる面積までの部分について、評価を大きく引き下げられます。この記事で主に取り上げているのも、この居住用の宅地に関する特例です。マイホームをお持ちのご家庭にとって、最も身近で効果の大きい区分だといえます。

居住用の宅地として認められるかどうかは、その土地が本当に生活の拠点として使われていたかがカギになります。住民票がそこにあるかどうかだけでなく、実際に生活の本拠として暮らしていたという実態が重視されます。形式と実態が食い違っていると、思わぬところで判断が分かれることもあるため、ふだんの暮らし方が自然と要件を満たしているかを、一度振り返っておくとよいでしょう。

事業用・貸付用の土地

自宅以外にも、亡くなった方が商売に使っていた土地や、人に貸していた土地についても、別の枠で特例の対象になることがあります。ただし、引き下げられる割合や限度面積、満たすべき要件は、居住用の土地とは異なります。複数の土地をお持ちの場合は、どの土地にどの枠を当てはめるのが最も有利かという、専門的な判断が必要になります。

というのも、複数の土地について特例を使おうとすると、限度となる面積を土地の間でどう振り分けるか、という調整が必要になるからです。評価額の高い土地に優先して特例を当てたほうが有利になることもあれば、土地の用途によって計算が複雑に絡み合うこともあります。自宅と事業用、貸付用の土地が混在しているようなご家庭では、組み合わせ方ひとつで最終的な税額が変わるため、専門家による試算がいっそう重要になります。

限度となる面積に上限がある

居住用の宅地について評価を引き下げられるのは、一定の面積までと決められています。広い土地のすべてが対象になるわけではなく、限度面積を超えた部分については通常どおりの評価になります。土地が広いご家庭ほど、どこまでが特例の対象になるのかを正確に把握しておくことが大切です。土地の面積や形状によって評価額が変わる仕組みについても、知っておくと役に立ちます。

逆にいえば、限度面積の範囲内に収まる一般的な広さの自宅であれば、その土地全体について評価減の効果をしっかり受けられる可能性が高いということです。ご自宅の敷地がどれくらいの広さなのかは、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書で確認できます。まずはご自宅の面積を把握し、限度面積と照らし合わせてみることから始めると、特例の効果をイメージしやすくなります。

ご自宅の面積は、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書を見れば確認できます。普段はあまり意識しない情報ですが、特例を考えるうえでは出発点になる大切な数字です。限度面積を超える広い土地の場合でも、超えた部分が通常評価になるだけで、限度内の部分はきちんと評価減を受けられます。「広いから対象外だろう」と決めつけず、まずは面積を調べてみることをおすすめします。

誰が引き継ぐと使えるのか

小規模宅地等の特例で見落とされがちなのが、「誰がその土地を引き継ぐか」という取得者の要件です。同じ自宅であっても、引き継ぐ人によって特例を使えたり使えなかったりするため、ここは特に丁寧に確認する必要があります。

言いかえれば、「どの土地か」だけでなく「誰がもらうか」までセットで考えて初めて、特例を使えるかどうかが決まるということです。遺産分割で誰が自宅を引き継ぐかを決めるとき、この特例の要件を意識せずに分け方を決めてしまうと、本来使えたはずの評価減を逃すことにもなりかねません。分割の方針を考える段階から、取得者の要件を頭に入れておくことが、賢い相続の進め方につながります。

遺産の分け方を決めるとき、目先の公平さだけでなく、「誰が引き継げば特例を使えるか」という視点を持つことが大切です。たとえば、同居していた子が自宅を引き継げば特例を使えるのに、別居の子に渡してしまうと使えなくなる、ということもあります。分け方ひとつで税負担が大きく変わるのですから、分割の方針は税の面まで見据えて考えると、家族全体にとって有利になります。

配偶者が引き継ぐ場合

亡くなった方の配偶者が自宅の土地を引き継ぐ場合は、同居していたかどうかにかかわらず特例を使えるのが基本です。長年連れ添ったパートナーが住まいを失わずに済むよう、配偶者については要件がやさしく設定されています。配偶者がいるご家庭では、まずこの点を押さえておくとよいでしょう。

同居していたかどうかを問われないというのは、配偶者にとって大きな安心材料です。たとえば、夫婦の一方が単身赴任で別に暮らしていた場合や、入院・施設入所で自宅を離れていた場合でも、配偶者が自宅の土地を引き継ぐのであれば特例の対象になりえます。残された配偶者の住まいを最優先で守ろうという、制度の温かい配慮がここに表れているといえるでしょう。

配偶者が引き継ぐ場合は要件がやさしいぶん、まずは配偶者が自宅を引き継ぐ形を基本に考えるご家庭も多いでしょう。ただし、そのときに二次相続のことまで見据えておかないと、配偶者が亡くなる次の相続で、子が重い負担を背負うこともあります。配偶者の住まいの安心を確保しつつ、その先の相続まで見通して分け方を考えると、より後悔のない選択ができます。

同居していた親族が引き継ぐ場合

亡くなった方と同居していた子などの親族が引き継ぐ場合も、一定の要件を満たせば特例を使えます。ポイントは、相続税の申告期限まで、その土地を引き続き所有し、かつ住み続けることが求められる点です。同居していた家族がそのまま住み続けるのであれば、自然と要件を満たせるケースが多いといえます。

気をつけたいのは、申告期限を待たずに売却したり、引っ越したりしてしまうと、要件を満たさなくなる場合があることです。相続をきっかけに住み替えを考えている方は、特例との関係をよく確認してから動く必要があります。せっかく同居していて要件を満たせるはずだったのに、早まった行動で特例を逃してしまっては、もったいない話です。引き継いだ後の予定も含めて、計画的に判断することが大切になります。

別居の親族(いわゆる「家なき子」)

亡くなった方に配偶者も同居の親族もいない場合には、別居している親族でも、一定の条件を満たせば特例を使えることがあります。これは通称「家なき子」と呼ばれる枠で、持ち家を持たずに賃貸暮らしをしている子などが対象になりえます。ただし条件は細かく、近年は要件が厳しくなった経緯もあるため、自己判断は禁物です。生前のうちから相続全体を見据えて備えておくことが、こうした特例を活かす近道になります。

かつては、形式的に持ち家がない状態を作り出して特例を使おうとする動きもあったため、制度の趣旨に沿わない使い方を防ぐ方向で要件が見直されてきました。そのため、「賃貸暮らしの子だから当然使える」と単純に考えるのは危険です。過去に持ち家を所有していなかったか、親族の所有する家に住んでいないかなど、細かくチェックされる項目があります。家なき子の枠を使えるかどうかは、まさに専門家の確認が欠かせない領域だと考えておきましょう。

家なき子の枠は、過去に持ち家を所有していなかったか、親族の所有する家に住んでいないかなど、細かな点が確認されます。賃貸暮らしだからといって、当然に使えるわけではありません。制度の趣旨に沿わない使い方を防ぐ方向で要件が見直されてきた経緯もあり、判断は容易ではありません。少しでも当てはまりそうな場合は、自己判断せずに専門家へ確認するのが安心です。

特例を使うための手続き

小規模宅地等の特例は、要件さえ満たしていれば自動的に適用されるものではありません。使うためには、決められた手続きをきちんと踏む必要があります。ここを知らずにいると、せっかくの特例を取りこぼしてしまいます。

逆にいえば、手続きさえ正しく踏めば、効果の大きい評価減を確実に受けられます。流れを大まかにでも知っておけば、いざ相続が起きたときに慌てずに済みますし、専門家へ依頼する際にも話がスムーズに進みます。

逆にいえば、手続きさえ正しく踏めば、効果の大きい評価減を確実に受けられるということでもあります。手続きの流れを大まかにでも知っておけば、いざ相続が起きたときに慌てずに済みますし、専門家に依頼する際にも話がスムーズに進みます。ここでは、特例を使ううえで欠かせない手続きのポイントを順に押さえていきましょう。

相続税の申告が必須

特例を使うには、相続税の申告を行うことが大前提です。注意したいのは、特例を使った結果として相続税がゼロになる場合でも、申告そのものは必要だという点です。「税額が出ないなら申告しなくてよい」と思い込んでいると、特例を使えないまま期限を過ぎてしまうおそれがあります。

この「ゼロでも申告が必要」という点は、本当に多くの方が見落とすところです。特例はあくまで「申告して初めて適用される」ものであり、黙っていて自動的に評価が下がるわけではありません。申告という手続きを通じて「この土地は要件を満たすので評価を下げます」と意思表示をして、はじめて効果が認められるのです。税額がゼロになるからこそ申告が必要、という一見ふしぎな仕組みを、まずはしっかり頭に入れておいてください。

この点を知らないために、「税金がかからないなら手続きは不要だろう」と申告をしないまま期限を過ぎてしまうケースが、後を絶ちません。期限を過ぎてしまうと、本来使えたはずの特例を使えず、かからなかったはずの税金が発生してしまうこともあります。税額がゼロでも申告は必要——この一点だけは、ぜひ覚えて帰ってください。

申告期限と必要書類

相続税の申告には期限があり、その期限までに必要な書類をそろえて手続きしなければなりません。特例を使う場合には、要件を満たしていることを示す書類もあわせて提出します。書類の準備には手間がかかるため、相続が起きたら早めに動き出すことが大切です。実際にどのくらいの相続税がかかるのか、税率や計算の仕組みを知っておくと、準備の見通しが立てやすくなります。

提出する書類には、亡くなった方や相続人の関係を示すもの、土地の状況がわかるもの、遺産の分け方を確定させたことを示すものなど、さまざまな種類があります。慣れない方がこれらをひとりでそろえるのは、想像以上に骨が折れる作業です。とりわけ申告期限は、悲しみのなかで葬儀や各種手続きに追われる時期と重なります。だからこそ、早い段階で専門家に依頼し、必要書類の収集と申告を任せてしまうのが、結果的にいちばん確実で負担の少ない進め方になります。

申告期限は、悲しみのなかで葬儀や名義変更など、さまざまな手続きに追われる時期と重なります。そのなかで、慣れない書類集めや申告を一人でこなすのは、想像以上に大きな負担です。専門家に任せてしまえば、何が必要かを一から調べる手間も省け、漏れなく確実に進められます。心身ともに余裕のない時期だからこそ、頼れるところは頼るという選択が、結果的に最善になります。

遺産分割が決まっていないと使えない

もう一つの重要な条件が、誰がその土地を引き継ぐかが決まっていることです。遺産分割の話し合いがまとまらず、土地を誰が相続するか未確定のままだと、申告期限の時点では特例を使えないのが原則です。家族間で揉めて分割が長引くと、税負担の面でも不利になりかねません。

つまり、特例という税金の問題は、遺産分割という家族の問題と切り離せない関係にあるのです。誰が自宅を引き継ぐかが決まらなければ、特例を使えるかどうかも宙に浮いてしまいます。「税理士に任せておけば大丈夫」と考えがちですが、その前提として家族の話し合いがまとまっていなければ、税の専門家も手の打ちようがありません。相続税を抑えたいのであれば、まずは分割の話し合いを円満かつ速やかに進めることが、何よりの近道だと心得ておきましょう。

よくある失敗と注意点

小規模宅地等の特例は効果が大きいぶん、使い方を誤ると損失も大きくなります。弁護士として相談を受けるなかでも、次のような点でつまずく方が少なくありません。

申告を忘れて特例を逃す

最も多いのが、申告が必要だと知らずに期限を過ぎてしまうケースです。前述のとおり、特例で相続税がゼロになる場合でも申告は欠かせません。「うちは相続税がかからないだろう」という思い込みが、かえって特例の取りこぼしを招くことがあるのです。

とくに、ふだん税金の手続きになじみのない方ほど、この落とし穴にはまりやすい傾向があります。相続が起きてから慌てて調べ始めて、申告期限が迫っていることに気づく、というケースも少なくありません。期限を過ぎてしまうと、特例を使えないばかりか、本来不要だった税金や余分な負担が生じることもあります。「自分には関係ない」と思っている方こそ、一度は専門家に相談して、申告の要否を確かめておくことをおすすめします。

分割協議がまとまらない

遺産分割でもめてしまい、申告期限までに土地の引き継ぎ手が決まらない、というケースもよく見られます。こうなると、本来使えたはずの特例を期限内に使えなくなることがあります。税負担を抑えるためにも、相続が起きたら早めに分割の話し合いを進めることが大切です。話がこじれそうなときは、早い段階で弁護士に間に入ってもらうのも一つの手です。

家族だけで話し合うと、つい感情がぶつかってしまい、かえってまとまりにくくなることがあります。とくに自宅という大きな財産が絡むと、「住み続けたい人」と「公平に分けてほしい人」との間で利害が対立しがちです。第三者である弁護士が間に入ることで、冷静に、かつ法的な見通しを踏まえて話を進められるようになります。分割が早くまとまれば、特例も期限内に使えますから、もめごとの解決と節税は、実は同じ方向を向いているのです。

「争いを避けること」と「税金を抑えること」は、一見すると別々の話に思えるかもしれません。しかし、特例を使うには申告期限までに分け方を確定させる必要があるため、もめて分割が長引けば、節税の面でも不利になります。つまり、家族が早く円満にまとまることが、そのまま税負担を抑えることにつながるのです。もめそうな気配があるなら、早めに専門家を間に入れて、円満な解決を急ぐことが大切です。

他の制度や控除との兼ね合い

相続税には、小規模宅地等の特例以外にもさまざまな控除や特例があります。たとえば一定の要件を満たす相続人について税負担を軽くする仕組みなど、組み合わせて使えるものもあります。どの制度をどう活用するのが最も有利かは、ご家庭の事情によって変わります。使える制度を見落とさないよう、全体を見渡して検討することが大切です。

相続税の負担を抑える方法は、小規模宅地等の特例ひとつにとどまりません。相続人の状況に応じた各種の控除や、生前からの計画的な対策など、組み合わせられる手立てはいくつもあります。大切なのは、ひとつの制度だけに目を奪われず、ご家庭にとって最も有利な組み合わせを全体として設計することです。そのためにも、相続に詳しい専門家に、使える制度を一通り洗い出してもらうのがよいでしょう。

使える制度を見落とさないことが、結果的に大きな差を生みます。一つの制度にこだわるより、全体を見渡す視点を大切にしましょう。

特例を確実に使うための準備

小規模宅地等の特例を取りこぼさないために、生前から、あるいは相続が起きたらすぐに取り組んでおきたいことを順番に整理します。

一度にすべてを完璧にこなす必要はありません。できるところから順に進めていけば十分です。

  1. 自宅の土地の名義や面積、評価のおおよそを把握しておく
  2. 誰がその土地を引き継ぐのが特例の面で有利かを家族で話し合う
  3. 遺言の作成など、分割でもめない備えをしておく
  4. 相続が起きたら、申告期限から逆算して早めに書類をそろえる
  5. 税理士や弁護士に要件の確認と申告のサポートを依頼する
ワンポイントアドバイス
小規模宅地等の特例は「使えるはずだったのに使えなかった」という後悔が起きやすい制度です。要件の確認も申告も専門的な判断を伴うため、自己判断で進めず、早い段階で専門家に相談しておくことが、確実に特例を活かすいちばんの近道です。とりわけ、自宅を誰が引き継ぐかをめぐって家族の意見が分かれそうなときは、税理士だけでなく弁護士にも相談しておくと、税と争いの両面から備えられます。

小規模宅地等の特例に関するよくある質問

最後に、小規模宅地等の特例について、相談者からよく寄せられる質問にお答えします。

効果が大きい制度だからこそ、細かな疑問でつまずく方も少なくありません。よくある質問を通じて、押さえておきたいポイントをもう一度確認しておきましょう。

マンションでも特例は使えますか

はい、分譲マンションにお住まいの場合でも、その敷地のうちご自宅に対応する部分の土地について、特例の対象になりえます。一戸建てに限った制度ではありません。マンションの場合は土地の持ち分という形になりますが、要件を満たせば評価を引き下げられる可能性があります。詳しくは専門家に確認してみてください。

「マンションは建物だから土地の特例とは関係ない」と思われがちですが、分譲マンションの所有者は、その敷地に対する持ち分も一緒に所有しています。この敷地の持ち分が特例の対象になりうるのです。都市部のマンションは敷地の評価が高くなることもあるため、特例による評価減の効果が意外に大きくなるケースもあります。戸建てかマンションかで最初からあきらめてしまわず、まずは対象になるかを確認してみる価値があります。

老人ホームに入っていた場合はどうなりますか

亡くなる前に老人ホームへ入居していた場合でも、一定の要件を満たせば、それまで住んでいた自宅について特例を使える可能性があります。介護のために住まいを離れていたケースを救済する取り扱いがあるためです。ただし条件があるので、入居の経緯や自宅の使われ方を踏まえて、個別に判断してもらう必要があります。

たとえば、要介護の認定を受けて施設に入居していたか、その間に自宅を人に貸し出していなかったか、といった点が確認されます。「老人ホームに移ったから自宅ではなくなった」と早合点して特例をあきらめてしまう方もいますが、要件を満たせば使える可能性は十分にあります。介護を理由に自宅を離れていたご家庭ほど、自己判断せずに専門家へ相談してみる価値が大きいといえます。

相続税がゼロでも申告は必要ですか

はい、必要です。小規模宅地等の特例を使った結果として相続税がゼロになる場合でも、特例を適用するためには相続税の申告が欠かせません。申告をしなければ特例そのものを使えず、本来かからなかったはずの税金が発生してしまうこともあります。「税額が出ないから」と申告を省略しないよう、くれぐれも注意してください。

申告の期限は、亡くなったことを知った日の翌日から数えて決められた期間内です。この期限はあっという間に到来します。期限を過ぎてから「特例を使えばよかった」と気づいても、原則として後戻りはできません。相続が起きたら、まずは申告が必要かどうかを早めに確認し、必要であれば期限から逆算して準備を始める——この一手間が、特例を確実に活かすかどうかの分かれ目になります。

誰に相談すればよいですか

特例の適用判断そのものは税理士の領域ですが、誰が土地を引き継ぐかをめぐって家族間で意見が割れそうな場合や、すでに争いの兆しがある場合には、弁護士に相談するのが安心です。税負担を抑えることと、家族が円満に相続を終えること——その両方を実現するために、早めに専門家の力を借りていきましょう。

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