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相続人が行方不明だと遺産分割協議は進められない
亡くなった方の遺産をどう分けるか。相続人同士で話し合うのが遺産分割協議です。ところが、いざ協議を始めようとしたら、相続人の中に連絡の取れない人がいる。そんな状況に直面している方は意外と多いものです。
「兄が10年以上前に家を出たきり連絡がつかない」「おじが若い頃に失踪してそのままになっている」「亡くなった父の前妻との間に子どもがいるが、所在が分からない」——。こうした悩みを抱えて、弁護士のもとを訪れる方は少なくありません。
行方不明の相続人を放置したまま遺産分割を進めることは、残念ながらできません。なぜできないのか。そして、どうすれば遺産分割を前に進められるのか。本記事では、相続人が行方不明の場合の対応方法を、弁護士の視点から徹底的に解説していきます。
遺産分割協議は相続人全員の参加が必須
遺産分割協議には、相続人全員の参加が法律上の絶対条件です。一人でも参加しない相続人がいれば、協議そのものを始めることができません。
なぜでしょうか。理由はシンプルです。遺産は相続人全員の共有財産だからです。共有財産をどう分けるかは、共有者全員の合意がなければ決められません。これは民法が定める大原則です。
たとえば、亡くなったお父さんに3人の子どもがいるとしましょう。長男・次男・長女の3人です。長女が音信不通の場合、長男と次男だけで「家は長男、預金は次男」と決めることはできません。長女の取り分が一切無視されているからです。
一人でも欠けた遺産分割協議は無効になる
仮に行方不明の相続人を除外して遺産分割協議書を作成したとしても、その協議書は法的に無効です。後から行方不明者が見つかったとき、「自分は協議に参加していない」と主張されれば、すべてやり直しになります。
不動産の名義変更も、預貯金の解約も、ストップしてしまいます。ようやくまとまった遺産分割が、何年もかけて積み上げた合意が、一瞬で崩れ去ることもあるのです。
「行方不明」と「音信不通」は同じ意味で扱われる
法律の世界では、「行方不明」と「音信不通」はほぼ同じ意味で使われます。手紙、電話、メール、SNS——あらゆる通信手段を尽くしても本人と連絡が取れない状態。これを音信不通といいます。
スマートフォンが普及した現在、人と人がまったくつながれない状況は、かつてよりも珍しくなりました。それでも、連絡を絶って暮らす人は確実に存在します。意図的に連絡を避けている人もいれば、何らかの事情で連絡できない状況にある人もいます。
行方不明・音信不通になる3つのパターン
ひとくちに「相続人が行方不明」といっても、その状況はさまざまです。とるべき対応は、行方不明の状態によって変わります。ここでは代表的な3つのパターンを紹介しましょう。
パターン1:連絡先や現住所がわからない
最も多いのが、本人の連絡先や住所が分からないケースです。電話番号もメールアドレスも知らない。住所も古い情報しか手元にない。そんな状況です。
この場合、まずやるべきは住所の調査です。本人の親族や友人に聞いて回るのも一つの方法ですが、もっと確実な方法があります。
戸籍の附票で住所を調べる方法
戸籍の附票(ふひょう)をご存じでしょうか。戸籍に付随する書類で、その戸籍に載っている人の住所の履歴が記録されています。
仕組みはこうです。住民票を移すと、その情報が本籍地の役所にも伝わり、戸籍の附票に追記されます。つまり、本人がきちんと住民票の異動手続きをしている限り、戸籍の附票を見れば現住所が分かるのです。
戸籍の附票の見本は、名古屋市名東区のホームページなどで確認できます。
参考リンク:名古屋市名東区ホームページ「戸籍の附票にはどんなことが載っているの?」
住民票を移していない場合の注意点
ここで注意してほしいのが、戸籍の附票の限界です。本人が住民票を移していなければ、附票には現住所が反映されません。
たとえば、引っ越し先の住所を住民票に登録していない人は、附票を取り寄せても古い住所しか出てきません。附票に書かれた住所を訪ねていったら、すでに別の家族が住んでいた——こうしたケースも珍しくないのです。
戸籍の附票を取得できる人の範囲
戸籍の附票は、誰でも取得できるわけではありません。原則として取得できるのは、次の人たちに限られます。
- 本人
- 本人の配偶者(夫または妻)
- 本人の直系尊属(父母、祖父母など上の世代の血縁者)
- 本人の直系卑属(子、孫など下の世代の血縁者)
兄弟姉妹は、ここに含まれていません。ただし、相続人として行方不明の兄弟姉妹を探す必要がある場合には、「自己の権利を行使するため」として例外的に取得が認められます。この場合、相続関係を証明する戸籍謄本などの提出が求められます。
パターン2:生死は判明しているが居所がわからない
「年に一度くらい電話がかかってくる。でもどこにいるかは教えてくれない」「SNSの更新があるから生きているのは間違いない。でも会うことはできない」——こうしたケースです。
本人が生きていることは確実ですが、居所が分からず、遺産分割協議に呼び出すこともできない。この場合、家庭裁判所に不在者財産管理人を選任してもらう方法をとります。詳しくは後述します。
パターン3:生死不明の状態が7年以上続いている
最も深刻なパターンです。連絡を試みても本人と一切コンタクトが取れない。生きているのか亡くなっているのかすら分からない。そんな状態が7年以上続いている場合です。
このようなケースでは、家庭裁判所に失踪宣告を申し立てることができます。失踪宣告を受けた人は、法律上「死亡したもの」として扱われます。
「亡くなったことにする」という重い手続きですが、放置すれば本人名義の不動産も預貯金もそのまま——遺族にとっては苦しい状況が続きます。失踪宣告は、こうした事態を打開する制度なのです。
行方不明の相続人を探す具体的な方法
不在者財産管理人や失踪宣告の手続きに進む前に、まずは相続人本人を探す努力をすることが大切です。本人が見つかれば、面倒な家庭裁判所の手続きは不要になります。ここでは、実際に弁護士が行う調査方法を紹介します。
戸籍謄本・戸籍の附票を取得する
最初のステップは、戸籍の取得です。被相続人の戸籍を遡り、相続人を特定したうえで、その相続人の現在の戸籍を取り寄せます。次に、その戸籍に紐づく戸籍の附票を取得して住所を確認します。
戸籍は本籍地の市区町村役場で取得します。郵送でも請求できますが、必要書類が多く、時間もかかります。最近は広域交付制度が始まり、本籍地以外の役所でも一部の戸籍を取得できるようになりました。
親族や友人・知人に確認する
戸籍だけでは分からないこともあります。本人と親しかった親族や友人に話を聞くと、思わぬ情報が得られることも。
「最近どこどこで見かけた」「以前はあの会社で働いていた」「結婚して名字が変わったらしい」——こうした断片的な情報も、調査の手がかりになります。SNSのアカウントを持っている可能性もあるので、本名や旧姓で検索してみるのも一つの手段です。
弁護士会照会制度を活用する
弁護士には、弁護士会照会という独自の調査権限があります。弁護士会を通じて、企業や官公庁、銀行などに情報の開示を求められる制度です。
たとえば、本人の勤務先が分かっている場合、その会社に対して住所の照会をかけることができます。携帯電話会社に契約者情報を問い合わせることも可能です。一般の方では到底できないレベルの調査が可能になるのが、弁護士に依頼する大きなメリットといえるでしょう。
SNSやインターネットでの調査
現代ならではの調査方法として、インターネットでの検索も有効です。本人の名前、ニックネーム、過去の所属先、出身校などを組み合わせて検索すれば、SNSのアカウントや過去の活動の痕跡が見つかることがあります。
ただし、見つけたアカウントが本当に本人のものかを慎重に判断する必要があります。同姓同名の他人に連絡してしまうと、トラブルのもとです。本人と確信できる根拠を集めてから、慎重にアプローチしましょう。
不在者財産管理人を選任して遺産分割を進める方法
調査を尽くしても本人の居所が分からない。でも生きている可能性は十分にある。そんなときに使うのが、不在者財産管理人選任の申立てです。
不在者財産管理人とは何か
不在者財産管理人とは、行方不明の本人(不在者)に代わって、その財産を管理する人のことです。家庭裁判所が選任します。
なぜこんな制度があるのでしょうか。本人がいつ戻ってくるか分からない以上、その間も誰かが本人の財産を守らなければなりません。空き家になった本人名義の家が朽ち果てたり、預金が放置されたままだったりすると、本人にとっても周囲にとっても困ったことになります。
そこで、本人の代理人として財産を管理する人を裁判所が選ぶ。それが不在者財産管理人なのです。
不在者財産管理人ができること
不在者財産管理人が、自分の判断で行えることは限られています。具体的には、次の3つです。
- 保存行為:家の雨漏り修理など、財産の現状を維持する行為
- 利用行為:預金を利息付きで運用するなど、財産を活用して収益を得る行為
- 改良行為:建物にエアコンを設置するなど、財産の価値を高める行為
これらは「保存・利用・改良」と呼ばれ、いずれも財産の維持・改善を目的とした行為です。
家庭裁判所の許可が必要な行為
これを超える行為、つまり財産を処分するような行為には、家庭裁判所の許可が必要です。たとえば次のような行為です。
- 不在者名義の不動産を売却する
- 老朽化した建物を取り壊す
- 遺産分割協議に参加する
「遺産分割に参加するだけなのに許可が必要なの?」と思うかもしれません。でも考えてみてください。遺産分割は、抽象的な相続権を具体的な財産に変える行為です。「相続権」という財産を処分する性質を持っているのです。だから家庭裁判所のチェックが入るわけです。
不在者財産管理人選任の申立て手続き
それでは、実際の申立て手続きを見ていきましょう。
申立てができる人
申立てができるのは、不在者の利害関係人と検察官です。利害関係人には、次のような人が含まれます。
- 不在者の他の共同相続人
- 不在者の配偶者や子(不在者本人の家族)
- 不在者にお金を貸している債権者
- 不在者と共有関係にある財産の共有者
相続人として遺産分割を進めたい場合、自分が「他の共同相続人」として申立てをすることになります。
申立先の家庭裁判所
申立先は、不在者の従来の住所地または居所地を管轄する家庭裁判所です。「従来の住所地」とは、行方不明になる直前に本人が住んでいた場所のことです。
申立書の見本は、裁判所のウェブサイトで公開されています。
参考リンク:裁判所WEBサイト「不在者財産管理人選任の申立書」
申立てに必要な書類と費用
申立てに必要な主な書類と費用は、以下のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申立書 | 裁判所所定の様式 |
| 不在者の戸籍謄本 | 出生から現在まで |
| 不在者の戸籍の附票 | 住所履歴の確認用 |
| 申立人の利害関係を証する資料 | 戸籍謄本など |
| 不在の事実を証する資料 | 返戻された手紙など |
| 不在者の財産に関する資料 | 不動産登記簿、預金通帳の写しなど |
| 収入印紙 | 800円 |
| 連絡用の郵便切手 | 裁判所により異なる |
| 予納金 | 20万円〜100万円程度(事案により異なる) |
予納金とは、不在者財産管理人の報酬や管理費用にあてるためのお金です。事案の規模によって金額は変わりますが、最低でも数十万円が必要になるのが一般的です。
不在者財産管理人が遺産分割に参加する際の注意点
不在者財産管理人を選任しても、すぐに遺産分割協議が成立するわけではありません。いくつかの注意点があります。
法定相続分を下回る遺産分割は認められない
不在者財産管理人が遺産分割協議に参加するには、家庭裁判所の許可が必要だと先ほど述べました。実務では、遺産分割協議書の案を裁判所に提出して、許可を求めます。
ここで重要なのが、不在者の取り分が法定相続分を下回る内容では、原則として許可が下りないということです。
なぜか。不在者財産管理人は、不在者の利益を守るのが仕事だからです。法定相続分より少ない取り分しか確保できない遺産分割は、不在者にとって不利益。家庭裁判所がこれを認めるわけにはいきません。
たとえば、相続人が3人で法定相続分が3分の1ずつの場合、不在者には少なくとも3分の1の財産が割り当てられる必要があります。「行方不明の人にはお金を渡しても仕方ないから、ゼロでいい」という分割は通りません。
管理費用は不在者本人の負担
不在者財産管理人が業務を行ううえで発生する費用は、最終的には不在者本人の財産から支払われます。具体的には、管理人への報酬、財産の維持管理費、家庭裁判所への往復交通費などです。
ただし、これらの費用は、まず申立人が予納金として裁判所に納めます。後から不在者の財産を取り崩して、予納金を返してもらう流れです。財産が少ない場合、予納金が戻ってこないリスクもあるので、注意が必要です。
失踪宣告の申立てで相続を進める方法
行方不明の状態が長期間続き、生死すら分からない場合に使えるのが、失踪宣告という制度です。
失踪宣告とは何か
失踪宣告とは、長期間生死不明の状態が続いている人について、家庭裁判所が「死亡したもの」とみなす制度です。
実際に亡くなったかどうかを確かめる手続きではありません。あくまでも法律上の取り扱いを「死亡」と整理する制度です。本人が生きて現れる可能性もゼロではありませんが、実務上の不都合を解消するための便宜的な仕組みなのです。
失踪宣告を受けた人を「失踪者」と呼びます。失踪者については、相続が開始されたものとして扱われ、その相続人が遺産分割に参加できるようになります。
失踪宣告の2つの種類
失踪宣告には、生死不明の原因によって2つの種類があります。
普通失踪(7年以上の生死不明)
最も一般的なのが普通失踪です。
- 本人の生死が7年以上分からない状態が続いていること
- その間、本人と一切連絡が取れていないこと
7年という期間は、最後に生存が確認されたときから起算します。たとえば、最後に親族が会ったのが2018年5月だとすれば、2025年5月の経過後に普通失踪の申立てができることになります。
特別失踪(事故・災害から1年以上)
事故や災害、戦争などに遭遇して生死不明になった場合は、特別失踪となります。
- 本人が事故・災害・戦地・船舶の沈没などの「危難」に遭遇したこと
- その危難が去った後、1年以上本人の生死が分からないこと
具体例としては、東日本大震災の津波で行方不明になり、その後1年以上消息がつかめないケースが挙げられます。普通失踪より短い期間で申立てができるのは、生存している可能性が低いと判断されるためです。
失踪宣告の申立て手続きの流れ
失踪宣告の手続きは、不在者財産管理人より時間がかかる重い手続きです。流れを順を追って見ていきましょう。
家庭裁判所への申立て
申立てができるのは、利害関係人です。配偶者、相続人、債権者などが該当します。検察官は申立てできません。
申立先は、不在者の従来の住所地を管轄する家庭裁判所です。
参考リンク:裁判所WEBサイト「失踪宣告の申立書」
家庭裁判所での審理と公告
申立てを受けた家庭裁判所は、本当に生死不明の状態が続いているかを慎重に審理します。具体的には、次のような調査が行われます。
- 申立人や親族への書面による問い合わせ
- 家庭裁判所調査官による事情聴取
- 参与員による聞き取り
- 裁判官による面接
審理と並行して、家庭裁判所は公告を行います。公告とは、本人または本人の生死を知る人に届け出を促す告知のことです。家庭裁判所の掲示板と官報に掲載されます。
公告期間は、普通失踪で3か月以上、特別失踪で1か月以上です。この期間内に本人または生死を知る人からの届け出がなければ、失踪宣告の審判が出されます。
失踪宣告の審判確定と失踪届
失踪宣告の審判が確定すると、申立人は10日以内に市区町村役場に失踪届を提出しなければなりません。
失踪届の見本は、自治体のホームページで確認できます。
参考リンク:春日部市ホームページ「戸籍の届け出」
届出が受理されると、本人の戸籍に「失踪宣告により死亡とみなされる」旨が記載されます。法律上は亡くなった人として扱われ、相続が開始されます。
失踪宣告までにかかる期間と費用
失踪宣告の申立てから審判確定まで、通常1年から1年半程度かかります。長期間を要する主な理由は、次の3点です。
| 時間がかかる理由 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 慎重な審理が必要 | 「死亡したもの」とみなす重大な手続きのため、書面照会・調査官調査・参与員聴取・裁判官面接など、複数の調査が行われる |
| 公告期間の確保 | 普通失踪で3か月以上、特別失踪で1か月以上の公告期間を経なければ審判できない |
| 手続きの慎重性 | 誤った宣告をすれば本人や周囲に重大な影響を及ぼすため、二重三重のチェックが行われる |
費用としては、収入印紙800円、官報公告料約4,000円〜5,000円、連絡用切手代などがかかります。弁護士に依頼する場合は、これに弁護士報酬が加わります。
失踪宣告後の相続手続き
失踪宣告の審判が確定すると、失踪者については相続が開始されます。
たとえば、亡くなった父の遺産分割を進めたいケースで、相続人の一人である長男が失踪宣告を受けたとしましょう。長男は法律上死亡したものとして扱われるため、長男の相続権は長男の子(つまり孫)に承継されます。これを再転相続といいます。
孫が新しい相続人として遺産分割協議に参加することで、ようやく協議が成立できる態勢が整うわけです。
失踪者が生きて現れた場合の対応
失踪宣告には、もう一つ知っておくべき側面があります。失踪者が後から生きて現れたとき、どうなるのかという問題です。
失踪宣告取消の審判申立て
失踪者が現れただけでは、失踪宣告は自動的に取り消されません。家庭裁判所に「失踪宣告取消」の審判を申し立てる必要があります。
申立てができるのは本人または利害関係人で、家庭裁判所の審理を経て、取消の審判が出されます。審判が確定すると、本人の戸籍から「失踪宣告」の記載が抹消され、本人は法律上も生きている人として復活します。
すでに分割した遺産はどうなるか
問題は、失踪宣告に基づいてすでに分割された遺産の扱いです。原則として、失踪宣告に基づく相続はなかったことになり、遺産は元失踪者に返還しなければなりません。
ただし、返還の範囲には大きな配慮があります。現に利益を受けている範囲(現存利益)でだけ返還すればよいのです。
具体例で考えてみましょう。失踪者の子が再転相続で500万円の現金を受け取り、そのうち100万円を旅行で使い切ってしまった。この場合、返還するのは残っている400万円だけでよいのです。すでに使ってしまった100万円まで返す必要はありません。
「失踪宣告を信じて行動した人」を不当に困らせないための配慮です。とはいえ、返還される側からすれば不満が残るかもしれません。失踪宣告の取消しは、関係者全員に複雑な影響をもたらす重い問題なのです。
不在者財産管理人と失踪宣告のどちらを選ぶべきか
ここまで読んできて、「結局どちらの制度を使えばいいの?」と迷われた方もいるのではないでしょうか。それぞれの制度には向き不向きがあります。
選択基準を比較表で確認
両制度の主な違いを表で整理しました。
| 項目 | 不在者財産管理人 | 失踪宣告 |
|---|---|---|
| 対象となる状態 | 居所不明(生死は問わない) | 7年以上の生死不明(普通失踪) |
| 本人の扱い | 生存している前提 | 死亡したものとみなす |
| 手続きの期間 | 2〜3か月程度 | 1年〜1年半程度 |
| 遺産の取り分 | 本人の取り分は確保が必要 | 本人の相続人が代わって取得 |
| 手続き終了後 | 本人が現れれば財産を引き渡す | 本人が現れたら取消手続き |
| 費用負担 | 予納金20万〜100万円程度 | 収入印紙等の実費中心 |
判断に迷ったときのポイント
実務上の選び方を、シチュエーション別に紹介します。
- 連絡が取れないが、生きている可能性が高い → 不在者財産管理人
- 音信不通になってまだ7年経っていない → 不在者財産管理人(失踪宣告はそもそも要件を満たさない)
- 7年以上生死不明で、財産を完全に処分したい → 失踪宣告
- 本人の子に相続権を承継させたい → 失踪宣告
- 急いで遺産分割を進めたい → 不在者財産管理人(失踪宣告は時間がかかりすぎる)
どちらを選ぶかは、ご家族の状況や、急ぐ事情があるかどうか、費用負担の余力など、複数の要素を総合的に考える必要があります。一人で判断するのが難しい場合は、迷わず専門家に相談しましょう。
相続人が行方不明の場合に弁護士に相談すべき理由
行方不明の相続人がいる相続案件は、ふつうの相続案件以上に専門知識が求められます。なぜ弁護士への相談が有効なのか、3つの理由をお伝えします。
弁護士なら居所調査の権限を持っている
弁護士には、職務上請求と弁護士会照会という2つの強力な調査手段があります。
職務上請求とは、職務遂行のために必要な戸籍や住民票を取得できる権限です。一般の方では取得しにくい戸籍も、弁護士なら円滑に取得できます。
弁護士会照会は、弁護士会を通じて企業や役所、銀行などに情報の開示を求められる制度です。携帯電話会社への契約者照会、勤務先への在職確認、金融機関への口座照会など、調査の幅が大きく広がります。
これらの権限を駆使することで、自力では到底見つけられなかった行方不明者を特定できるケースは少なくありません。
家庭裁判所での手続きをスムーズに進められる
不在者財産管理人選任や失踪宣告の申立ては、家庭裁判所での手続きです。家事事件には独特のルールや慣行があり、慣れていないと書類の不備で何度も補正を求められることになります。
弁護士に依頼すれば、申立書の作成から家庭裁判所とのやりとり、調査官への対応まで、すべて代理で進めてもらえます。結果的に手続きの完了が早まり、遺産分割の開始も前倒しできるのです。
遺産分割協議全体をサポートしてもらえる
行方不明者の手続きが終わっても、遺産分割協議そのものはまだ残っています。不在者財産管理人を交えた協議では、法定相続分を下回る分割が認められないという制約もあります。他の相続人との交渉、協議書の作成、相続登記や預金の解約手続き——やるべきことは山積みです。
弁護士に依頼すれば、調査・申立てから遺産分割協議、その後の各種手続きまで、ワンストップで任せられます。複数の専門家に相談する手間が省け、全体の流れに整合性が保てるのも大きなメリットです。
相続人が行方不明のときによくある質問
最後に、相談現場でよく寄せられる質問にお答えしておきましょう。
行方不明の相続人を無視して遺産分割はできる?
できません。相続人全員が参加しない遺産分割協議は無効です。後から行方不明者が見つかれば、すべてやり直しになります。
不動産の名義変更や預金の解約も進められません。「面倒だから無視してしまえ」という発想は、結果的に大きなトラブルを招くことになるので、絶対に避けてください。
不在者財産管理人の費用は誰が負担する?
不在者財産管理人の報酬や管理費用は、最終的には不在者本人の財産から支払われます。ただし、申立て時には申立人が予納金として家庭裁判所に納める必要があります。
予納金の額は事案により異なりますが、20万円〜100万円程度が一般的です。事件終了時に余りが出れば返還されますが、不在者の財産が乏しい場合は予納金が戻らないこともあります。
失踪宣告と認定死亡は何が違う?
似ているようで違う制度です。
- 失踪宣告:家庭裁判所が「死亡したもの」とみなす制度。生死不明が長期間続いている場合に使う
- 認定死亡:水難事故や火災など、明らかに亡くなった蓋然性が高いケースで、官公署の取調べに基づき戸籍に死亡が記載される制度
認定死亡は遺体が発見されないものの、状況から死亡が確実視される場合の手続きです。たとえば、船舶事故で遺体が見つからないケースなどで使われます。失踪宣告のような家庭裁判所への申立ては不要で、より簡便です。
まとめ:行方不明の相続人がいたら早めの対応が肝心
相続人の中に行方不明の人がいると、遺産分割は一気に複雑になります。とはいえ、適切な手続きを踏めば、必ず道は開けます。
最初にすべきは、本人を探す努力です。戸籍の附票を取り寄せ、親族に聞き、SNSも調べる。それでも見つからない場合に、不在者財産管理人選任や失踪宣告という制度の出番がやってきます。
時間が経てば経つほど、関係者の記憶も薄れ、調査も難しくなります。「いつかやろう」と先延ばしにしているうちに、別の相続人が亡くなって相続関係がさらに複雑になるケースも少なくありません。
行方不明の相続人がいて困っているなら、なるべく早く弁護士に相談してください。専門家の知見を借りることで、思っていたより早く問題が解決することもあります。一人で抱え込まず、まずは話を聞いてみることから始めてみませんか。
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基礎控除額
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課税対象額
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相続税の総額(概算)
80万円
申告が必要です
※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。
