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不当利得返還請求とは?相続財産の使い込みを取り戻す

不当利得返還請求とは?相続財産の使い込みを取り戻す

この記事で分かること

  • 不当利得返還請求は正当な理由のない利益の返還を求める請求
  • 相続では預貯金の使い込みを取り戻す手段になる
  • 利益と損失・因果関係・正当な理由の不存在が要件
  • 時効があり使い込みに気づいたら早めの対応が必要
  • 損害賠償請求との違いや遺産分割との関係も重要

不当利得返還請求とは、法律上の正当な理由がないのに利益を得た人に対し、その利益の返還を求める請求です。相続の場面では、相続人による預貯金の使い込みなどで、本来は遺産であるべき財産を取り戻す手段になります。この記事では、利益と損失・因果関係・正当な理由の不存在という成立要件、時効、不法行為に基づく損害賠償請求との違い、遺産分割との関係や活用法までを弁護士の視点で解説します。気づいたら早めの対応が大切です。

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不当利得返還請求とは?相続でなぜ役立つのか

「亡くなった親の預金が、いつの間にか減っていた」「同居していた相続人が、親のお金を勝手に使っていたようだ」。相続をきっかけに、それまで隠れていた財産の使い込みが発覚することは、決して少なくありません。とくに、財産の管理を特定の家族に任せきりにしていた場合に、こうした問題が表面化しやすい傾向があります。そんなとき、使い込まれた財産を取り戻すための法的な手段として登場するのが、不当利得返還請求です。聞き慣れない言葉かもしれませんが、いざというとき相続トラブルの場面で大きな力を発揮してくれる、とても重要な権利です。

不当利得返還請求とは、正当な理由がないのに利益を得た人に対して、その利益を返すよう求める請求のことです。相続の場面では、本来は遺産であるべきお金を、一部の相続人などが正当な理由なく自分のものにしてしまった場合に、これを取り戻すために使われます。日常的には「使い込み」という言葉のほうが分かりやすいかもしれませんが、その使い込まれた財産を、法的な根拠をもって取り戻すための武器となるのが、この不当利得返還請求なのです。この記事では、不当利得返還請求とはどのような権利なのか、成立するための要件や期限、ほかの請求との違い、そして相続でどう活用するのかまで、弁護士の視点でわかりやすく解説します。

大切な財産を不当に失わないために、また失った財産を取り戻すために、この権利の仕組みを正しく理解しておきましょう。本記事では、不当利得返還請求とは何かという基本と、その要件や時効、ほかの請求との違いといった、制度の「仕組み」の部分を中心に解説していきます。なお、実際に使い込みを発見してから、証拠を集めて取り戻すまでの具体的な手順については、別の記事でくわしく解説していますので、あわせて参考にしてください。

ワンポイントアドバイス
遺産の使い込みが疑われるときは、まず預金の取引履歴などで、いつ、いくら引き出されたのかという客観的な事実をおさえることが第一歩です。感情的に問い詰める前に、証拠を確保しておきましょう。時効が完成すると請求できなくなるため、気づいたら早めに専門家へ相談することをおすすめします。

不当利得とは「正当な理由のない利益」

不当利得とは、法律上の正当な理由がないにもかかわらず、他人の財産や労務によって得た利益のことをいいます。たとえば、本来受け取る権利のないお金を受け取ってしまった場合、その利益は不当利得にあたります。この利益を得た人は、損をした人に対して、その分を返す義務を負います。これが、不当利得返還請求の基本的な考え方です。

身近な例で考えると分かりやすいかもしれません。たとえば、振込先を間違えて、まったく関係のない人の口座にお金を振り込んでしまった場合、受け取った相手は、そのお金を自分のものにしてよい理由がありません。たまたま自分の口座にお金が入ってきただけで、それを受け取る権利まで生じたわけではないからです。だから、振り込んでしまった人は、受け取った相手に対してそのお金の返還を求められます。これがまさに不当利得返還請求の典型例です。相続の場面でも、根っこにある考え方は、この振込ミスの例とまったく同じです。本来は遺産として相続人みんなで分けるべきお金を、一部の人が正当な理由もなく自分のものにしてしまったのなら、それを返してもらえる、ということなのです。

当事者の公平を保つための制度

不当利得返還請求の根底にあるのは、当事者間の公平を保つという考え方です。一方が正当な理由なく利益を得て、もう一方が損をしているという不公平な状態を、もとに戻すための制度なのです。誰かが不当に得をして、誰かが不当に損をしている。そのアンバランスを是正し、本来あるべき公平な状態を取り戻すこと。それこそが、不当利得返還請求という制度の目的なのです。

この「公平を保つ」という発想は、不当利得返還請求を理解するうえでとても大切です。たとえ相手にだますつもりや悪意がなかったとしても、結果として一方が理由なく得をし、もう一方が損をしているなら、その不均衡は正されるべきだ、という考え方に立っています。相続の場面でいえば、一部の相続人が使い込みによって遺産を多く取得してしまえば、その分、他の相続人が本来受け取れるはずだった遺産は減ってしまいます。この不公平を是正し、本来あるべき公平な分配に戻すために、不当利得返還請求が役立つのです。

相続で不当利得返還請求が問題になる場面

相続において、不当利得返還請求はどのような場面で問題になるのでしょうか。実際の相続では、いくつかの典型的なパターンがあります。代表的なケースを見ていきましょう。これを知っておくと、自分の状況で使えるかどうかの判断に役立ちます。

相続で不当利得返還請求が問題になりやすいのは、主に次のような場面です。

  • 相続人の一人が、亡くなった方の預貯金を無断で引き出して使っていたとき
  • 亡くなる前後に、説明のつかない出金があったとき
  • 遺産を調べる中で、使いみちのわからない使途不明金が見つかったとき

相続人による預貯金の使い込み

もっとも多いのが、相続人の一人が、亡くなった方の預貯金を使い込んでいたというケースです。たとえば、親と同居していた子どもが、親の通帳やキャッシュカードを管理していて、親の生前や死後に、無断でお金を引き出して自分のために使っていた、というような場合です。本来であれば遺産として相続人全員で分けるべきお金が、一部の相続人によって不当に使われてしまった。このとき、損をした他の相続人は、使い込んだ相続人に対して、その分を返すよう不当利得返還請求ができる可能性があります。

このようなケースは、親の介護や身の回りの世話を、特定の子どもが一手に引き受けていた家庭で、とりわけ起こりがちです。財産を管理していた立場を利用して、本人のためではなく自分のためにお金を使ってしまう、というパターンです。世話を引き受けていた当人からすれば「これくらいは受け取って当然の見返りだ」という意識があることもありますが、本人の同意や正当な理由なく親の財産を自分のために使えば、それは法的には使い込みにあたります。亡くなった後に他の相続人が通帳を確認して、はじめて多額の使い込みに気づく、というのもよくある展開です。生前は財産の状況が家族にも見えないブラックボックスになっていて、相続をきっかけに、はじめてすべてが明るみに出る、というわけです。

亡くなる前後の不明な出金

亡くなる直前や直後に、預金口座から多額のお金が引き出されているというケースもよくあります。本人が引き出せる状態ではなかったのに出金されている、あるいは使いみちが説明できない出金がある、といった場合です。こうした不明な出金について、正当な理由がないと判断されれば、引き出した人に対して返還を求められることがあります。とくに、本人が入院や入所をしていて、自分では口座を操作できなかったはずの時期に、まとまった金額が繰り返し引き出されている場合などは、いったい誰が、どんな理由で、そのお金を引き出したのかが、鋭く問われることになります。遺産分割の前提として、まずこうした使い込みの有無を明らかにすることが重要になります。遺産分割協議については、こちらの記事も参考になります。

使途不明金をめぐる争い

三つ目のパターンが、使途不明金をめぐる争いです。相続が始まって遺産を調べていくと、「このお金は何に使われたのか」という使途不明金が見つかることがあります。この使途不明金が、正当な支出だったのか、それとも誰かの使い込みだったのかをめぐって、相続人間で激しい争いになることは珍しくありません。その使途不明金が、結局は誰かの不当な利得だったと認められれば、不当利得返還請求の対象になります。逆に、本人の生活や介護のための正当な支出だったと認められれば、請求は通りません。この正当な支出か使い込みかという線引きが、争いの中心になります。

たとえば、本人の生活費や医療費、介護費用として使われたものであれば、正当な支出といえます。しかし、財産を管理していた相続人が、その説明をできなかったり、明らかに本人のためとは思えない高額な支出があったりすると、使い込みが疑われます。問題は、本人がすでに亡くなっているため、お金の本当の使いみちを本人に確認できないという点です。生きていれば一言で済むはずの確認ができないために、争いが複雑になり、長引きやすいのです。遺された記録から、当時の事情を推し量っていくほかありません。だからこそ、出金の記録や、当時の本人の生活状況といった客観的な事情を積み重ねて、その支出が正当だったのかどうかを判断していくことになるのです。

不当利得返還請求が認められる要件

不当利得返還請求は、ただ「お金が減っていた」というだけで認められるわけではありません。法律上、いくつかの要件を満たして初めて認められるものです。やみくもに「返してほしい」と求めても通るわけではないので、どのような条件が必要なのか、しっかり確認しておきましょう。

  1. 一方が利益を得て、もう一方が損失を被っているという事実を確認します。
  2. その利益と損失との間に、因果関係があることを示します。
  3. 相手の利益に、法律上の正当な理由がないことを明らかにします。

利益と損失があること

一つ目の要件として、まず、一方が利益を得て、もう一方が損失を被っているという事実が必要です。相続の場面でいえば、使い込んだ相続人がお金という利益を得ており、その分、遺産が減って他の相続人が損をしている、という対応関係です。誰かが得をし、その裏で誰かが損をしているという、対応し合う利益と損失の存在が、不当利得返還請求の出発点になります。

たとえば、相続人の一人が遺産からまとまったお金を無断で使ったとすれば、その人はそのお金の分だけ利益を得ています。一方で、遺産がその分減ったことで、他の相続人は本来受け取れたはずの取り分を失っており、これが損失にあたります。このように、一方の利益と他方の損失が、表と裏のように対応していることが必要です。単に「自分が損をした気がする」というだけでは足りず、それに対応する相手の具体的な利益がはっきりしていることが求められます。誰が、いくら得をしたのかを示せることが大切です。

利益と損失に因果関係があること

二つ目の要件として、その利益と損失との間に因果関係があることが必要です。一方が得た利益が、もう一方の損失によって生じたものである、という結びつきです。使い込みの例でいえば、相続人が引き出して使ったお金(利益)が、遺産の減少(損失)の原因になっている、という関係です。利益と損失が、たまたま別々に生じたのではなく、つながっているということが求められます。

この因果関係は、単純な使い込みのケースでは比較的はっきりしていることが多いといえます。引き出した本人が使ったことが明らかなら、利益と損失のつながりも明確だからです。ある相続人が遺産から引き出して得た利益は、まさにその引き出しによって遺産が減ったことと直結しているからです。ただし、お金の流れが複雑だったり、複数の人が関わっていたりすると、誰の行為がどの損失につながったのかが分かりにくくなることもあります。その場合は、預金の取引履歴などをもとにお金の動きを丁寧に追って、利益と損失のつながりを一つずつ明らかにしていく必要があります。

法律上の正当な理由がないこと

そして三つ目、最も重要なのが、その利益に法律上の正当な理由がないことです。たとえば、亡くなった方から正式に贈与を受けていた、あるいは本人の頼みで本人のために使っていた、といった正当な理由があれば、不当利得にはあたりません。逆に、無断で引き出して自分のために使った、といった正当化できない事情であれば、不当利得として返還の対象になります。この「正当な理由があるかどうか」が、争いの最大の焦点になることが多いのです。

実際の争いでは、使い込みを疑われた側は、たいてい「正当な理由があった」と反論してきます。何の言い分もなく、素直に返還に応じるケースは、むしろ少数といえるでしょう。「生前に贈与してもらった」「本人に頼まれて生活費や入院費に充てた」「介護の対価として受け取った」などです。これらの主張が事実であれば、不当利得にはあたりません。そのため、争いは「本当にそうした正当な理由があったのか」という点に集中します。贈与契約書のような裏づけがあるか、支出が本人のために使われた形跡があるか、当時の本人にお金を渡したり管理を任せたりする判断力があったかなど、さまざまな客観的な証拠をもとに、正当な理由の有無が判断されることになります。ここでどれだけ説得力のある証拠を示せるかが、結果を大きく左右します。

不当利得返還請求の時効に注意

不当利得返還請求には期限があり、時効が成立すると請求できなくなってしまいます。どれだけ正当な請求であっても、時効が完成してしまえば、原則として相手はお金を返さなくてよいことになります。せっかくの正当な権利を失ってしまわないために、時効には十分な注意が必要です。

権利を行使できることを知ってから一定期間

不当利得返還請求権は、権利を行使できることを知ったときから一定の期間が過ぎると、時効によって消滅します。相続の場面でいえば、使い込みがあったこと、そして誰がそれをしたのかを知ったときから、期間が進み始めると考えられます。使い込みに気づいたら、時効が完成する前に、早めに行動を起こす必要があります。

つまり、「遺産が使い込まれていた」「引き出したのはあの相続人だ」と気づいた時点が、時効を考えるうえで一つの起点になります。気づいてからのんびりしていると、その間にも時効は進んでいきます。とくに、相手との話し合いがこじれて長引いているうちに、知らないあいだに時効が完成してしまった、ということもあり得ます。使い込みの事実を知ったら、できるだけ早く請求の準備に取りかかることが大切です。

権利を行使できるときから一定期間

また、使い込みの事実を知らなかったとしても、権利を行使できるときから一定の期間が過ぎると、やはり時効にかかります。長い年月が経ってから使い込みに気づいた場合には、すでに時効が完成してしまっているおそれもあるのです。つまり、「知ってから」進む期間と、「行使できるときから」進む期間という、性質の異なる二つの時効の期間を意識しておく必要があります。何年も前の使い込みについては、たとえ最近になって気づいたとしても、行使できるときからの期間がすでに過ぎてしまっていることもあります。相続の時効には、ほかにもさまざまな期限が関わってきます。相続にまつわる時効については、こちらの記事が参考になります。

時効が迫っているときは早めに対応を

時効が迫っている場合は、できるだけ早く対応することが大切です。時効は、ただ待っているだけだと進んでしまいますが、裁判上の請求など一定の手続きをとることで、完成を防げる場合があります。使い込みに気づいたものの、時効が心配だというときは、自己判断で放置せず、早めに専門家に相談することをおすすめします。また、時間が経つほど、金融機関に残る取引履歴などの証拠が確保しにくくなることもあります。証拠の面からも、早めの行動が肝心です。

不当利得返還請求と似た請求との違い

使い込まれた財産を取り戻す方法には、不当利得返還請求のほかにもいくつかあります。似たような目的の請求でも、それぞれ性質が異なります。違いを知っておくと、状況に応じた使い分けができます。

不法行為に基づく損害賠償請求との違い

使い込みのような行為に対しては、不当利得返還請求のほかに、不法行為に基づく損害賠償請求という方法も考えられます。両者は似ているようで、その性質には違いがあります。どちらも使い込まれた財産を取り戻すための手段ですが、成立の要件や時効の期間などに違いがあります。状況によっては、両方を検討したり、有利なほうを選んだりすることになります。どちらの請求が適しているかは、専門的な判断が必要になる場面です。

大まかにいえば、不法行為に基づく損害賠償請求では、相手にわざと、あるいは不注意で損害を与えたという、故意や過失といった点が問題になります。一方、不当利得返還請求では、相手に悪意があったかどうかを必ずしも立証する必要はなく、正当な理由なく利益を得たという事実があれば足りる、という違いがあります。そのため、相手にわざと使い込んだという悪意があったことの立証が難しい場合には、不当利得返還請求のほうが使いやすいことがあります。一方で、時効の期間などの面では、損害賠償請求のほうが有利になる場面もあります。どちらを選ぶか、あるいは両方を主張するかは、ケースごとの戦略になります。このように、それぞれに一長一短があるため、ケースに応じて選択することになります。

遺産分割との関係

使い込みの問題は、独立した請求であると同時に、遺産分割とも密接に関わります。使い込まれたお金をどう扱うかによって、遺産全体の評価が変わり、最終的に各相続人が受け取る額も変わってくるからです。使い込みがあった場合、その分を遺産に戻して計算するのか、別途請求するのかなど、遺産分割の進め方にも影響します。たとえば、使い込んだ相続人がいる場合、その人が本来受け取るべき遺産から、使い込んだ分を差し引いて調整するといった考え方もあります。また、介護などに貢献した相続人がいる場合の寄与分など、ほかの要素ともからみ合うことがあります。寄与分については、こちらの記事でくわしく解説しています。

状況に応じた使い分けが必要

このように、使い込まれた財産を取り戻すには複数の方法があり、どれを使うのが有利かは、ケースによって変わります。どんな証拠が残っているか、時効までの残り期間はどうか、相手との関係はどうかといった事情を総合的に踏まえて、最適な方法を選ぶ必要があります。たとえば、時効の残り期間が短いケースでは、時効の面で有利なほうを選ぶことが重要になりますし、相手の悪意を立証しにくいケースでは、それを必要としない請求を選ぶことになります。一つの方法にこだわるのではなく、状況に応じて柔軟に検討することが、財産を取り戻すうえで重要になります。

不当利得返還請求は専門家に相談を

不当利得返還請求は、要件の判断や証拠の確保、時効への対応など、専門的な知識を要する場面が多くあります。当事者だけで進めようとすると、必要な証拠をそろえられなかったり、相手の反論に対応できなかったりすることもあります。また、感情的な対立が絡みやすいぶん、冷静な対応も求められます。確実に財産を取り戻すためには、専門家の力を借りるのが安心です。

証拠集めと立証を任せられる

不当利得返還請求で財産を取り戻すには、使い込みがあったこと、そしてそれに正当な理由がないことを、証拠によって示す必要があります。預金の取引履歴を取り寄せたり、いつ・いくら引き出されたのかという出金の状況を分析したりと、立証には地道で専門的な作業が欠かせません。弁護士に相談すれば、こうした証拠集めや立証を任せられます。自分一人では難しい主張も、専門家の力で説得力を持たせることができます。

たとえば、金融機関に対して被相続人の口座の取引履歴を取り寄せる手続きは、相続人であれば請求できますが、慣れていないと手間取ることがあります。取り寄せた大量の取引記録から、不自然な出金を見つけ出し、それがいつ、いくら、どのように引き出されたのかを整理する作業も、専門的な目が必要です。弁護士であれば、こうした作業を的確に進め、使い込みの事実を裏づける証拠として組み立ててくれます。証拠がしっかりそろっているかどうかは、請求が認められるかどうかを大きく左右します。だからこそ、立証を専門家に任せる意味は大きいのです。相続トラブルの事例については、こちらの記事も参考になります。

相手との交渉や手続きを任せられる

使い込みをした相手は、多くの場合、身内である他の相続人です。身内どうしでお金の返還を求める交渉は、どうしても感情的になりやすく、当事者だけで進めるのは精神的にも実務的にも大きな負担になります。とくに、これまで親しくしてきた兄弟姉妹に対して「お金を返してほしい」と切り出すのは、精神的にもつらいものです。弁護士が間に入ることで、こうした直接のやり取りを避け、冷静に交渉を進められます。話し合いでまとまらなければ、調停や訴訟といった法的手続きにも対応してもらえます。感情的な対立で消耗することなく、財産を取り戻すという本来の目的に集中できるのは、専門家に任せることの大きな利点だといえます。遺産分割を弁護士に相談するメリットについては、こちらの記事が参考になります。

不当利得返還請求についてよくある質問

最後に、相続での不当利得返還請求についてよく寄せられる質問にお答えします。あなたの疑問に近いものがあれば、参考にしてください。

親の預金が勝手に引き出されていました。取り戻せますか

正当な理由なく引き出されたお金であれば、不当利得返還請求によって取り戻せる可能性があります。ただし、そのためには、無断で引き出されたこと、そして引き出した人にそのお金を取得する正当な理由がないことを、証拠によって示す必要があります。預金の取引履歴を取り寄せるなどして、出金の状況を確認することが第一歩になります。相手が「本人に頼まれて引き出した」などと主張してくることもあるため、判断が難しい場合は専門家に相談するとよいでしょう。

不当利得返還請求と損害賠償請求は、どちらを使えばよいですか

両者は目的こそ同じですが、成立の条件や時効のあつかいなどが異なります。一般に、相手の故意や過失といった主観的な事情を立証しなくてよい不当利得返還請求のほうが使いやすい場面もあれば、時効などの面で損害賠償請求のほうが有利な場面もあります。証拠の状況や時効の残り期間によって、どちらが適しているかは変わります。両方を視野に入れて検討する必要があるため、専門家の判断を仰ぐのが確実です。

使い込みがあったのは何年も前です。今からでも請求できますか

不当利得返還請求には時効があり、長い年月が経っている場合は、すでに時効が完成しているおそれがあります。時効の期間は、使い込みを知ったときから数える期間と、権利を行使できるときから数える期間の両方が関わります。何年も前のことだからといってあきらめる前に、まずは時効が成立しているかどうかを確認することが大切です。時効が迫っている場合は、完成を防ぐ手続きをとれることもあるため、早めに専門家へ相談しましょう。

相手が「生前に贈与された」と主張しています。どうなりますか

相手が正当な理由として贈与を主張する場合、その主張が認められれば、不当利得にはあたらず、返還請求は通りません。逆に、贈与の事実が認められなければ、不当利得として返還の対象になります。実際には、本当に贈与があったのか、それとも無断の使い込みだったのかをめぐって、証拠に基づいた争いになります。贈与契約書の有無や、当時の本人の状態など、さまざまな事情から判断されることになります。

使い込んだのは身内です。穏便に解決できますか

使い込みをした相手が身内の場合、関係を壊したくないという思いから、できるだけ穏便に解決したいと考えるのは自然なことです。まずは話し合いによって返還を求め、相手が応じてくれれば、調停や訴訟といった手続きに至らずに、円満に解決できます。ただし、身内どうしのお金の話は感情的になりやすく、当事者だけでは折り合えないこともあります。そうしたときは、弁護士に代理人として間に入ってもらうことで、直接対決を避けながら、冷静に交渉を進めやすくなります。穏便な解決を目指す場合であっても、適切な落としどころを見極めるうえで、専門家のサポートは有効に働きます。

不当利得返還請求で公平な相続を実現するために

不当利得返還請求とは、正当な理由なく利益を得た人に対して、その利益を返すよう求める請求です。相続の場面では、相続人による預貯金の使い込みや、亡くなる前後の不明な出金、使途不明金をめぐる争いなど、さまざまな場面で、使い込まれた財産を取り戻すために活用されます。請求が認められるには、利益と損失があること、その両者に因果関係があること、そして相手の利益に法律上の正当な理由がないこと、という三つの要件を満たす必要がありました。とくに、正当な理由があるかどうかが、実際の争いでは最大の焦点になります。

不当利得返還請求には時効があり、使い込みに気づいたら早めの行動が欠かせません。時効が完成してしまうと、正当な請求であっても認められなくなってしまうからです。また、不法行為に基づく損害賠償請求など似た請求との違いや、遺産分割との関係も踏まえて、状況に応じた使い分けが必要です。要件の判断や証拠の確保、相手との交渉には専門的な知識が求められるため、使い込みが疑われるときは、自己判断で動く前に、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。証拠が散逸する前に、そして時効が完成する前に動き出すことが、財産を取り戻せるかどうかの分かれ目になります。不当に失われた財産を取り戻し、公平な相続を実現するために、この権利を上手に活用しましょう。

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