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「地積規模の大きな宅地の評価」とは?平成30年廃止・広大地評価からの変更点

この記事で分かること
- 現在は地積規模の大きな宅地の評価が広大地の評価の代わりに使われている
- 地積規模の大きな宅地の評価は普通住宅地区と普通商業・併用住宅地区で適用される
- 地積規模の大きな宅地は規模格差補正率の分評価額が安くなる
地積規模の大きな宅地の評価は広大地の評価に代わって作られた制度です。これまで曖昧だった制度を改め相続税の計算が効率的に行えるようになりました。まだ始まったばかりの制度ですがしっかり覚えておきましょう。相続税計算が難しいときは税理士へご相談を。
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地積規模の大きな宅地の評価とは?
地積規模の大きな宅地の評価とは、広すぎて効率的な利用が難しい土地に対する税負担を減らすための評価方法で、規模格差補正率という倍率の分だけ正味の遺産総額を安くできます。地積規模の大きな宅地の広さは三大都市圏において500m2、それ以外の地域において1000m2と決められています。
この制度は「平成30年1月1日以降に開始された相続」から適用されます。つまり平成29年12月31日以前に被相続人の死亡や失踪宣言があった場合はこれまで使われていた広大値の評価に基づいて評価額を算定します。
曖昧だった広大地の評価は平成30年に廃止
地積規模の大きな宅地の評価が適用される前は広大地の評価が適用されます。制度をよく知らないと多少の税率が変わっただけかと思うことでしょう。しかしこの広大値の評価基準が非常に曖昧だったのです。
まず広大地と言いながら具体的な広さが決まっていませんでした、強いて言えば一般的な土地よりも著しく広大であるというだけ。
つぎに分譲住宅地を作る場合などに土地の一部を道路にしなければいけないこと。同じ広さでも幅広く道路に面している場合は広大値の評価を適用できる可能性が遠のきます。道路が必要かどうかという論点を明確に争うことは難しいですね。
そして土地をそのまま計算すると損する方のためにある制度ですからマンション建設に適している場合はこれに該当しません。個別具体的というメリットはあるのかもしれませんがこれも曖昧な基準ですね。
あとは大規模工業地域に該当していないことが条件でした。
このような制度を活用するのが難しく、修正申告になる場合も少なくありませんでした。そのため地積規模の大きな宅地の評価はより客観的で使いやすい制度になっています。
もしかしたら、自分の土地がこれに当たるかもしれないと思ったらすぐに弁護士や税理士に問い合わせてください。
地積規模の大きな宅地の条件は?
地積規模の大きな宅地として評価額が安くなる条件は広大地と異なり明確な基準が決められています。税理士に相談する前段階として知っておくならこの3点を押さえておけば大丈夫でしょう。
三大都市圏は500㎡、それ以外は1000㎡
まず、三大都市圏であれば500㎡以上、それ以外の地域であれば1000㎡以上の土地であることが前提です。これだけ大きいと家を建てただけでは土地が余ってしまうし、広すぎて買い手がつかないという事情もわかりますね。
あくまでも500m四方、1km四方ではない点に気をつけてください。参考までですが500㎡の正方形はおよそ22.4m四方、1000㎡の正方形はおよそ31.6m四方になります。
実際の地積は固定資産税評価表や権利証に書かれていますが、念のために測量した方が良い場合もあります。権利証の数字をそのまま書く前に一度税理士に相談してください。
”三大都市圏”はしっかり調べよう
一般的に三大都市圏といえば東京、大阪、名古屋です。ただ、これらはあくまで中心でありこの地積規模の大きな宅地の評価における分け方では、概ね南関東、大阪・兵庫・京都・奈良、愛知・三重となっています。一部地域が入っていないのでかならず地方自治体に確認してください。
指定容積率400%未満、東京の一部は容積率300%未満
指定容積率400%未満であることも条件です。容積とは建物大きさのことで指定容積率は建築基準法に基づいて決められています。この指定容積率が原則として400%未満、東京の一部は指定容積率300%未満であることが求められます。
指定容積率400%とはマンションが建てられるくらいの大きさで、マンションを建てて不動産投資できる場所なら土地の利用可能性と税負担額の不公平を均すという税制の趣旨に合いません。だからこの基準は意外と大切です。
実は広大地の評価においてもこの指定容積率が目安となっていたようです。
普通商業・併用住宅地区か普通住宅地区に区分されている
都市計画において普通住宅地区か普通商業・併用住宅地区であることも条件となります。要するに住宅地や住宅地と店舗が入り混じっている地域でこの制度が使えることを意味します。
路線数においては普通住宅地区は図形なし、普通商業・併用住宅地区は正円が使われています。
地積規模の大きな宅地の評価方法を紹介
地積規模の大きな宅地の評価方法を紹介します。具体的な用語よりも土地評価の流れが分かれば次の行動をしやすくなるでしょう。
地積規模の大きな宅地はこのような式で表される
地積規模の大きな宅地と認められた場合は土地の評価額に規模格差補正率という倍率をかけます。
そのため次のような計算式になります。
評価額=路線価×奥行価格補正率×不整形地補正率×規模格差補正率×地積
ちなみに固定資産税評価額が路線価に基づく評価額より安い場合は、固定資産税評価額に規模格差補正率を乗じたものを評価額として採用します。
奥行価格補正率とは?
奥行価格補正率とは土地の奥行が浅すぎたり深すぎたりする場合に用いられます。奥行きのない土地は単純に不便で、奥行がありすぎる土地は利用効率以上の税金がかかりやすいからです。
ちなみに土地の奥行は道路に面した部分から計算するため旗竿地も同様の計算を用います。
不整形地補正でお得に節税
土地が全て四角いとは限りません。土地がいびつな形をしているほど使いづらくなるでしょう。そのため不整形地の場合は不整形地補正率を計算して評価額を安くできます。
不整形地補正率はその土地が長方形であると仮定した面積から実際の面積を引いて出されたかげ地面積を参考にして算出します。
不整形地補正の他には崖地であったり土地利用が難しい事情がある場合の様々な補正が使えます。ここまでは地積規模の大きな土地でなくても使える割引です。
規模格差補正率=地積規模の大きな宅地の評価独自のポイント
規模格差補正率は当然、広大地の評価の値と変わっています。
規模格差補正率は地積をAとし国税庁の決めた値をB、Cとして次の計算式で表します。
規模格差補正率=(A×B+C)÷A
以下、国税庁より引用
”上記算式中の「B」及び「C」は、地積規模の大きな宅地の所在する地域に応じて、それぞれ次に掲げる表のとおりです。
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
---|---|---|
B | C | |
500㎡以上1,000㎡未満 | 0.95 | 25 |
1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.9 | 75 |
3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 225 |
5,000㎡以上 | 0.8 | 475 |
地積 | 普通商業・併用住宅地区、普通住宅地区 | |
---|---|---|
B | C | |
1,000㎡以上3,000㎡未満 | 0.9 | 100 |
3,000㎡以上5,000㎡未満 | 0.85 | 250 |
5,000㎡以上 | 0.8 | 500 |
以上”
不動産の価格は厳密な計算が必要
規模格差補正率の計算そのものは難しくありませんが、他の要素の計算でも少数や分数を使うため計算ミスが起きやすいです。不動産の価格は厳密に計算してください。
わずかなミスが税金の増加や相続税の修正申告の手間を生じさせるかもしれません。
市街地農地を計算するときは?
地積規模の多い宅地には市街地農地も含まれます。市街地農地とは市街地への転用が認められた、あるいはその許可申請が不要である農地のことで基本となる価格は「宅地であると仮定した場合のもの」が使われます。
これは一般の宅地との不公平を防ぐためでしょう。一方で宅地造成費が考慮されないことも相当でないため基本となる価格から控除されます。
ただし、これは宅地の評価額を下げるための制度ですから宅地への転用が不可能である場合に使うことができません。おそらく山林として評価額を下げる芽が出てくるでしょう。
評価額の計算におけるアドバイスはただ一つ、ミスを徹底的に防ぐことです。
地積規模の大きな宅地の評価を活用する上で注意すべきことは?
地積規模の大きな宅地の評価を活用する上で注意すべきことは、自己流の計算と申告をしないことです。
数字の扱いに長けた人だと自分で計算した方が早いと思いがちですが、税金は法解釈や実務での扱いという論点も知っておく必要があります。また、権利証の数字を信じて実測と異なることが明らかになった時も面倒です。
もし、相続税申告でミスをすると修正申告するように命じられ追徴税がかかります。修正申告の手間だけでも手一杯になるかもしれません。
一応、適用要件のチェックシートは用意されていますが自己判断せず税理士と一緒に手続きを進めることがおすすめです。
広大地・地積規模の大きな宅地の評価を使って節税するなら税理士へ相談を
相続の中でも財産評価は難しく、ここを間違えると相続税の金額で損をする可能性が高いです。使える制度は可能な限り使って節税を試みてください。
地積規模の大きな宅地に該当する不動産は収益物件を作りづらいことが予想されるので、節税とともにどう売却するかも一緒に考えると良いでしょう。
経験豊富な税理士は積極的な土地活用や土地の売却についてもアドバイスが可能なのであなたの利益を最大化するためぜひご活用ください。
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