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除籍謄本とは?取得方法と相続における使いみち

この記事で分かること

  • 除籍謄本とは、全員が除かれた戸籍の謄本である。
  • 除籍謄本は、遺産分割、遺言書検認、相続放棄において重要な働きをする。
  • 除籍謄本の取得では、請求先、費用、必要書類を押さえることが大切である。
  • 除籍謄本と並んで、改製原戸籍が相続手続で重要な働きをする。
  • 除籍謄本など戸籍類の取得漏れは、相続手続を遅らせる原因となる。
  • 除籍謄本など戸籍類の収集を含めた相続手続については、弁護士に相談することが一番である。

除籍謄本とは、全員が除かれ、誰もいなくなった戸籍の謄本です。もはや使いみちなしと思われがちですが、相続手続において大事な働きをします。相続では、改製原戸籍も重要な役割を果たします。これら戸籍類を正しく集めることが、スムーズな相続手続につながります。まず、戸籍類収集と相続手続を専門とする弁護士に相談することが一番です。

除籍謄本とは

属する人全員が除かれて、誰もいなくなった戸籍を、除籍といいます。

除籍全体をコピーし、除籍原本の内容と同じであるという役所の証明を付けたものが、除籍謄本です。除籍された人全員が載っています。

除籍謄本の見本は、東京都北区のホームページで見ることができます。

参考リンク:東京都北区ホームページ「除籍」

除籍謄本について重要な3つのポイントを解説します。

戸籍とは親族関係の記録

戸籍は、そこに籍を置く人の親族関係の記録です。親族関係とは、親子・兄弟・夫婦などのつながりです。

「いついつ誰々の子として生まれた」「いついつ誰々と結婚した」などが、時の流れに沿って記録されます。

原則として、一組の夫婦とその間の未婚の子どもをひとまとめにして、一つの戸籍が出来上がります。

「戸籍から除かれる」とは?

「戸籍から除かれる」とは、戸籍に属していた人が、何らかの原因により、戸籍から出て行くことです。「除籍される」と表現します。除籍された人の欄には、×印が付けられます。

除籍される主な原因

除籍される主な原因として、婚姻、養子縁組、子の氏の変更、離婚・離縁、分籍、死亡・失踪宣告、国籍喪失などがあります。

子の氏の変更とは、子どもの籍が、離婚した両親の一方から他方に移ることです。

分籍とは、20歳以上の人(成年)が、親の戸籍から出て自分だけの戸籍を作ることです。

失踪宣告とは、長い間生死不明の人が、家庭裁判所の審判によって、死亡したものとみなされることです。

国籍喪失とは、外国国籍になるなどの理由により、日本の国籍を失うことです。

除籍の取り扱い

除籍は、戸籍をつづった帳簿である戸籍簿から外されます。そして、除籍だけをつづった除籍簿につづられます。

ワンポイントアドバイス
戸籍がコンピューター化された役所では、除籍謄本ではなく、除籍全部事項証明書が発行されます。効力は、除籍謄本と同じです。この記事の解説は、除籍全部事項証明書にも、そのまま当てはまります。

相続における除籍謄本の使いみち

除籍には誰も載っていないので、除籍謄本は、もはや使いみちがないのではと思われがちです。ところが、相続において、除籍謄本は重要な役目を果たします。

相続における除籍謄本の使いみちについて解説します。

遺産分割での相続人の確定

遺産分割を行うには、相続人全員の参加が必要です。相続人がひとりでも欠けて行われた遺産分割は、無効です。

相続人全員を参加させるには、相続人全員をリストアップしなければなりません。相続人の確定という作業です。相続人の確定には、被相続人の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を見なければなりません。

相続人のうち、特に、子ども全員を見つけ出すことが重要です。被相続人は何度か結婚していたかもしれません。妻以外の女性との間の子どもを認知していたかもしれません。誰かと養子縁組をしていたかもしれません。

そこには、知られざる子どもの存在が浮かび上がります。その子どもたちも、れっきとした相続人です。これらをはっきりさせるために、被相続人の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍が必要になるわけです。

被相続人の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍の中には、除籍も含まれるかもしれません。その場合、除籍謄本を手に入れる必要があります。

遺言書検認での相続人の確定

公正証書遺言以外の遺言書は、家庭裁判所の検認を受けなければなりません。

検認は、遺言者の相続人全員の立会いの下で行われます。家庭裁判所は、検認を行う日時を相続人全員に通知します。

家庭裁判所が相続人全員に検認の日時を通知するには、相続人全員をリストアップしなければなりません。相続人の確定という作業です。

相続人の確定には、遺言者の生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍を見なければならないこと、除籍謄本を見なくてはならない場合もあることは、遺産分割の場合と同じです。

相続放棄での相続人であることの証明

相続放棄は、家庭裁判所への申述という形で行います。申述できるのは、相続人です。申述人が相続人であることを証明しなければなりません。

相続人であることの証明は、戸籍謄本の提出という方法を用います。相続人は、被相続人の妻、子ども、親・祖父母といった直系尊属、兄弟姉妹です。申述人がそのいずれかであることは、戸籍謄本を見れば分かります。

申述人が相続人であることを示す戸籍の全員が除かれ、除籍となっている場合もあります。その場合、相続人であることを証明するために、除籍謄本を手に入れる必要があります。

ワンポイントアドバイス
相続における除籍謄本の使いみちを知るには、相続と戸籍の関係を理解しなければなりません。相続関係が戸籍にどのように表されるのかの理解です。理解が難しいときは、相続と戸籍に詳しい弁護士に質問してみましょう。

除籍謄本の取得方法

相続手続において除籍謄本を手に入れることが必要になった場合、その具体的な方法とはどのようなものなのでしょうか。

除籍謄本の取得方法について、請求先、費用、必要書類の3つのポイントに分けて解説します。

除籍謄本の請求先

除籍は、戸籍簿とは別の除籍簿につづられます。除籍簿は、本籍地である市区町村役場に保管されます。本籍地とは、除籍の「本籍」欄に書かれた市町村です。

除籍謄本の請求先は、除籍が保管されている本籍地の市区町村役場です。

除籍謄本は郵送での取り寄せも可能

除籍謄本は、本籍地の市区町村役場に足を運べば、その場で取得できます。

本籍地が遠方にあって、足を運ぶことができないときは、郵送での取り寄せも可能です。

郵送での取り寄せ方法は、市区町村によって多少違いがあります。請求先の市区町村役場に確認しましょう。

除籍謄本の取得費用

市町村役場から除籍謄本を取得するのは、タダではありません。お金がかかります。交付手数料と呼ばれます。

除籍謄本など戸籍類の交付手数料は、平成12年3月まで、国が金額を決め、全国どこの市区町村も同じでした。平成12年4月から、それぞれの市区町村が条例で交付手数料を決めることができるようになりました。

現在、除籍謄本の交付手数料は、全国ほぼ全ての市区町村が1通750円としています。以前に国が決めていた金額をそのまま条例に取り入れた市区町村がほとんどだからです。

必要書類

除籍謄本を手に入れるのに必要な書類は、請求先の市区町村ごとに決められています。

全国の市区町村で共通な書類は、次の通りです。

  • 除籍謄本の交付申請書(タイトルや書式は市区町村ごとにマチマチです)
  • 請求する人の本人確認書類(運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなど)
  • 請求者が除籍に載っている人の相続人であることを証明する書類(請求者の戸籍謄本など)
  • 請求者の委任状(請求者が病気・ケガなどのため第三者が申請に来る場合)

市区町村によっては、これら以外の書類が必要なケースもあります。請求先の市区町村に事前に確認しましょう。ホームページに解説コーナーを設けている市区町村も多くあります。

ワンポイントアドバイス
弁護士は、仕事に必要なとき、弁護士の名で除籍謄本を請求できます。除籍謄本がどこの市区町村にあるか分からない、除籍謄本の申請に必要な書類をそろえる時間がないなど、自ら取り組むのが難しい場合、弁護士に相続人調査を依頼しましょう。弁護士が、相続人調査の名目で、手早く除籍謄本を取得してくれます。除籍謄本の取得に手間取ったら、まず弁護士に相談しましょう。

除籍謄本を取得する場合の注意点

除籍謄本の取得の仕方を誤ると、取得できなかったり、必要ない書類を取得したりして、やり直さなくてはならなくなります。その分、相続の手続が遅れます。除籍謄本の取得は、正しく行うことが重要です。

相続のために除籍謄本を取得するに当たって特に注意すべき3つのポイントを解説します。

除籍謄本の次は改製原戸籍の手配

戸籍類のひとつに、「改製原戸籍」があります。遺産分割や遺言書検認では、被相続人の一生を通じての戸籍を見なければなりません。その中に改製原戸籍が含まれる場合、改製原戸籍を取得する必要があります。

改製原戸籍とは

日本の戸籍は、1300年以上の歴史があり、何度か戸籍のスタイルが変えられてきました。戸籍のスタイルを変えることを、戸籍の「改製」といいます。

改製される前の戸籍を「改製原戸籍(かいせいげんこせき)」といいます。「原」には、「現在の形のもとになる前の形」という意味があります。

最近の重要な改製として、昭和32年と平成6年の改製があります。

昭和32年の戸籍改製

太平洋戦争を堺に、家族を「家」を中心とした人の集まりとい考える民法から、家族を「夫婦とその子ども」を中心に考える民法へと変わりました。

戸籍も、民法改正を反映させ、「家」の主である戸主を筆頭に、妻・子ども・孫・兄弟姉妹・甥姪までをも含む戸籍のスタイルから、夫婦とその間の未婚の子どもだけの戸籍のスタイルへと変わりました。昭和32年の戸籍改製です。

昭和32年の改製以前の戸籍が、改製原戸籍です。昭和32年改製原戸籍の見本は、東京都北区のホームページで見ることができます。

参考リンク:東京都北区ホームページ「改製原戸籍謄本・改製原戸籍抄本」

平成6年の戸籍改製

国民の親族関係の記録である戸籍は、無くなったり傷付いたりすることなく大切に保管されなければなりません。戸籍謄本の交付など、戸籍にまつわる事務処理も、請求者を長く待たせないようにするなど、効率的に行われなければなりません。

こうした要請に応えるため、平成6年から、戸籍を役所にあるコンピューターのディスク内に記録できるようになりました。平成6年の戸籍改製です。

平成6年の戸籍改製を受けて、全国の市区町村ごとに戸籍のコンピューター化が始まりました。現在、全国ほとんどの市区町村で戸籍がコンピュータ化されています。コンピューター化された時期は、市区町村によってマチマチです。

平成6年の戸籍改製以前の紙の戸籍が、改製原戸籍です。平成6年改製原戸籍の見本は、東京都北区のホームページで見ることができます。

参考リンク:東京都北区ホームページ「改製原戸籍謄本・改製原戸籍抄本」

現在の戸籍

現在の戸籍は、コンピューターのディスク内にあるので、そのスタイルは見ることはできません。

戸籍の内容は、「戸籍全部事項証明書」(以前の戸籍謄本に当たるもの)、「戸籍個人事項証明書」(以前の戸籍抄本に当たるもの)によって確認することができます。それらの見本は、東京都北区のホームページで見ることができます。

参考リンク:東京都北区ホームページ「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)・戸籍個人事項証明書(戸籍抄本)」

改製原戸籍謄本が必要になるとき

遺産分割や遺言書検認では、被相続人の一生を通じての戸籍謄本が必要です。

まず、被相続人の戸籍のある市区町村が戸籍をコンピューター化した時期を調べます。コンピューター化以前の被相続人の親族関係については、昭和32年改製原戸籍または平成6年改製原戸籍を取得します。コンピューター化以後の親族関係については、戸籍全部事項証明書または除籍全部事項証明書を取得します。

改製原戸籍は、普通の戸籍と同じように、市区町村役場で取得できます。交付請求書に記入して、窓口に提出します。交付請求書の見本は、東京都北区のホームページで見ることができます。

参考リンク:東京都北区ホームページ「戸籍の証明書」

戸籍集めは平日に行うのが基本

除籍謄本にせよ改製原戸籍にせよ、保管されているのは市区町村役場です。土日祝日は休みです。当直職員がいたとしても、戸籍事務は行いません。戸籍集めは、平日に行うのが基本です。

休日対応の役所もある

市区町村役場の中には、特別な出張所を設けて、土日祝日でも戸籍事務を行っているところがあります。コンビニエンスストアで戸籍謄本などが取れる市区町村もあります。しかし、改製原戸籍なども含めた全ての戸籍類が取れるとは限りません。事前に市区町村役場に確認しましょう。

戸籍の取得漏れがあると相続手続きが止まる

戸籍の取得漏れは、相続手続を遅らせ、相続人が思わぬ損を被るおそれがあるので注意しましょう。

遺産分割と遺言書検認の開始が遅れる

遺産分割と遺言者検認では、相続人確定のため、被相続人の一生を通じた戸籍謄本が必要です。被相続人の一生のうち、一部分でも戸籍の取得漏れがあると、相続人が確定せず、遺産分割と遺言書検認を始めることができません。

遺産分割が遅れると、被相続人が亡くなってから10か月以内に相続税の申告ができず、配偶者の相続税軽減措置や小規模宅地等の特例を受けられなく場合が出てきます。

遺言書検認が遅れると、家庭裁判所が遺言書の現状を記録するのが遅れ、その間に遺言書が紛失したり、盗難に遭ったり、誰かに書き換えられたりするおそれが高まります。

遺産分割と遺言者検認を手早く行うには、切れ間のない被相続人の戸籍の取得が必要です。

相続放棄では熟慮期間を過ぎるおそれも

相続放棄では、申述人と被相続人の相続関係を証明する戸籍謄本が必要です。この取得に手間取ると、相続放棄の申述ができる期間(熟慮期間)を過ぎてしまい、相続放棄ができなくなるおそれがあります。

ワンポイントアドバイス
除籍謄本や改製原戸籍を含めた戸籍類を集めることは、慣れない人にとっては大変な仕事です。苦労して集めたものの、必要な戸籍がなかったり、違う戸籍を取ってしまったりすると、戸籍がそろうまでに時間がかかり、相続の手続が遅れるなどの支障を来たします。その点、弁護士に認められた「職務上の請求」という権限を使うと、手早く正確に戸籍を取得できます。除籍謄本を含めた戸籍類の取得については、まず弁護士に相談しましょう。

除籍謄本の収集を含む相続手続きは弁護士に相談を

これまで見てきたように、除籍謄本を含む戸籍類を集めるのは、とても大変な仕事です。しかし、必要な戸籍類がそろわなければ相続手続を始められません。戸籍類の収集と相続手続は一体なのです。

戸籍類の収集が相続という法律手続のために必須であることから、法律手続を業とする弁護士には戸籍類を手早く収集する権限が与えられています。家庭裁判所での相続手続についても、相続人の委任があれば、相続人の代理人として家庭裁判所の手続に関わることが認められています。

弁護士が、除籍謄本を含む戸籍類を手早く収集し、家庭裁判所での手続を代理することにより、相続手続がスピーディに進められます。このことは、相続人にとって大きなプラスとなります。

除籍謄本の収集を含む相続手続は、まず弁護士に相談することから始めましょう。

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