閉じる

67,234view

保釈金とは?なんのためのお金?金額相場や返金のタイミングも簡単に解説

この記事で分かること

  • 保釈金は身柄を解放してもらうために払うお金
  • 保釈金は基本的には返還される
  • 保釈金の相場は150万円から300万円
  • 保釈金が数億円になることもある
  • 保釈については弁護士に相談することがおすすめ

保釈金とは、被告人が釈放されるために裁判所に預ける保証金です。起訴後は保釈の請求をし、保釈金の納付をすることで自宅に帰ることもできるようになります。相場は150万円から300万円で、支払いが難しい人でも立替え制度を利用することができる可能性もあります。手続きや納付に関しては弁護士に任せることで、スムーズに保釈を得ることができますので、刑事事件に強い弁護士への相談をおすすめします。

保釈金とは?

ニュースや新聞などで被告人が「保釈」されたという情報を見かけたことがあるかと思います。また、その際には「保釈金300万円で保釈された」などというような情報が出ることもあります。

このように聞くと、逮捕されたとしてもお金を払えば釈放してもらえるのではないかと考えるかもしれません。逆に、お金がなければ釈放してもらえないとも考えるかもしれません。しかし、実際のところはお金を払えば釈放してもらえるという単純なものでもなく、一定の条件を満たした上で認められるものです。

このページでは、保釈金について詳しく解説していきます。

保釈金とは被告人が釈放されるための保証金のこと

ある刑事事件において、逮捕されると身柄拘束を受けながら取調べを受けることがあります。

単純な事件であれば逮捕後数日以内に釈放されることも珍しくありませんが、複雑な事件であれば捜査に時間がかかり、必要に応じてさらに被疑者を拘束することになります。これを「勾留」と言います。検察官は、被疑者を交流している間に被疑者を起訴するかどうか判断します。

起訴された後であっても、身柄拘束の必要があれば引き続き勾留されることになり、それまで被疑者であった者は被告人として扱われるようになります。起訴後の勾留は数か月にも及ぶ長期間になることも想定されますが、この段階では「保釈」という制度が設けられています。

保釈とは、保釈保証金の納付によって一時的に身柄を釈放するという制度です。ただし起訴前の勾留には適用されず、被疑者が保釈されるということはあり得ません。保釈が可能なのはすでに起訴されている被告人に限られます。

保釈保証金を納める意味としては、公判期日に出頭しなければ保証金を返還しないという心理的強制により、被告人の出頭を確保するというところにあります。

保釈の3パターン

保釈が認められるパターンには以下の3つがあります。

  • 権利保釈(必要的保釈)
  • 裁量保釈(職権保釈)
  • 義務的保釈

この3つのうち一般的なのは「権利保釈」です。そもそも、起訴されたとしてもその時点では被告人も無罪になる可能性を秘めているのであり、厳密には犯罪者ではありません。有罪判決を受けるまでは「無罪の推定」を受けるという言い方もします。

そのため適法に保釈の請求があった場合には裁判所はこれを認めなければならないと法定されています。ただし一定の場合には除外されるともあり、つまり保釈が許されなくなります。簡単にまとめると以下のようなケースでは保釈が認められません。

  1. 重罪を犯した
  2. 前に重罪を犯し有罪の宣告を受けている
  3. 常習である
  4. 証拠を隠そうとする疑いがある
  5. 告発者等に報復行為をする疑いがある
  6. 被告人の氏名または住居が分からない

ただし、これらのケースに当てはまる場合でも「裁量保釈」が認められることがあります。裁量保釈は、裁判所の裁量によって保釈の許可がなされる保釈の形を言います。裁判所の自由な裁量にゆだねられますが、2016年の法改正によって裁量判断における考慮事情は明文化されています。

裁判所は保釈した被告人に逃亡または罪証隠滅するおそれがどの程度あるのか、身体の拘束をすることにより被告人が受ける健康上・経済上・社会生活上・防御の準備上の不利益の程度なども考慮し、適当と認めるときには職権で保釈を許すことができると定められました。

裁量保釈も認められなかった場合、最後に保釈の可能性としてあり得るのは「義務的保釈」です。これは不当な勾留などから被告人を守るためのもので、勾留が不当であるとみられる場合には必ず保釈が許されるというものです。実際、不当な勾留というものは起こっています。

過去には単純な窃盗事件で逃亡のおそれ等がないにもかかわらず逮捕後100日を超え拘禁しその末に犯行を自白したということがあり、最高裁判例でも不当であったとの評価を受けています。捜査機関も無理矢理事件を解決するために不当・違法なやり方を採ることがあり得ますので、その場合には義務的保釈が許される可能性が出てくるでしょう。

保釈までの流れ

保釈を請求できるのは被告人やその弁護人だけでなく、配偶者や兄弟姉妹、親なども含まれます。内縁関係である夫や妻、婚約者、友人などは認められません。

まずは請求権限のある者が保釈請求書を提出します。その後、裁判官が検察官の意見を聴いたうえでこれが認められれば保釈許可決定がなされます。ただしこの時点ではまだ保釈は執行されません。実際に保釈金を納付してからの執行となります。

保釈金は返ってくる

保釈金は保証金ですので原則被告人に返されます。有罪判決であったとしても同様です。振り込みによる返金が考えられますが、振込手数料が引かれることもなく、納めた金額はそのまま返還されます。ただし定められた約束を破るなど、違反行為があれば後述のように返ってこないこともあるので注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
保釈とは、保釈保証金の納付によって一時的に身柄を釈放するという制度です。起訴前の勾留には適用されず、被疑者が保釈されるということはありません。保釈の手続きについては刑事事件に強い弁護士に依頼することをおすすめします。

保釈金の相場金額はいくら?

150~300万円が一般的

一般的には150万円から300万円が保釈金の額となります。ただし保釈金の納付は被告人の出頭を確保するのが目的ですので以下のように様々なことを考慮した上で決定されます。この金額はあくまで目安として考えるようにしましょう。

金額はどうやって決まるか

裁判所は、保釈を許すのであれば必ず保釈金額を決めなければなりません。

犯罪の性質や被告人の資産等を考慮し、被告人の出頭を確保するのに十分と言える相当な額でなければなりません。その際、被告人等から意見を聴く法律上の必要はありませんが、実務上、弁護人が出頭し被告人の資産状況や保証金の負担者等について報告することが行われています。

これらの情報を考慮した上で金額の算定がなされます。重大な事件であるかどうか、被告人に前科があるのか、予想される刑の重さなどは判断材料となります。

たとえば重大事件について、重い処罰が下されることが確実と思われる場合には釈放することによって証拠隠滅や逃亡のリスクが高くなりますのでそれだけ保釈金額も高く設定されます。逆に執行猶予がつきそう、事件が軽微で逃亡のおそれも低いとみられる場合には保釈金額も低く設定されます。

もう1つのポイントとしては、被告人の経済力も重要な要素になります。高額所得者であれば相場の数百万円程度であれば、これが返金されないことのダメージが小さいため証拠隠滅などに走る可能性が高まります。

そこで経済力に応じた金額設定が行われることで、結果、数億円の保釈金になったという実例もあります。たとえば、堀江貴文(ホリエモン)の保釈金は3億円でした。

保釈金の支払の方法

保釈金を納付するときは基本的に弁護士を通して行います。具体的な納付方法としては、現金で納付する方法や小切手を持参する方法、電子納付などの方法があります。

ワンポイントアドバイス
保釈金の相場は150万円から300万円ほどですが、資産額などによっては数千万になることもありますし、数億円となる可能性もあります。支払いは弁護士を通して行うことが多いため、弁護士への相談をおすすめします。

保釈金が支払えない場合どうするか

保釈金額が決まったが、それだけのお金を払えないということもあるでしょう。最終的に支払えなければ保釈されることはありません。しかし、自分で大金を用意できないと思われる場合でもなんとか納付して保釈してもらう方法はあります。

その一つ目は、保釈の請求者以外の者に保釈金を納めてもらう方法です。保釈の請求権者は配偶者や親・兄弟姉妹、弁護人などに限られていましたが、保釈金の納付に関しては恋人や友人等にしてもらうことも可能です。被告人がルールを守り逃亡するなどの違反行為をしなければ全額返ってくるお金ですので、信頼を得ている人に頼んで代わりに納付してもらえないか相談してみると良いでしょう。

二つ目に、保釈金に代えて有価証券あるいは被告人以外の者の保証書を提出することも認められています。

三つ目に、立替え制度を利用する方法があります。上二つの法定されている手段ではなく、民間団体の実施している制度を利用して保釈金を準備するというものです。代表的なのは「日本保釈支援協会」による立替えです。保釈金の立替えのほか保証書の発行なども行っています。この制度を利用するには、まず協会に立替えの申し入れを行います。

その後審査が行われ、これを通過すれば協会との間で立替えに関する契約を締結します。通常、弁護人に立て替え金が振り込まれることになります。ただし立替えが認められる金額の上限が設けられていることや、立替えの期間があり、その期間を超過するごとに更新が行われ手数料がかかってくるなどのデメリットもあります。

数か月ごとに、立て替え金に比例して設定された手数料がかかってきますので立て替える金額が高いほど、返納するまでの期間が長いほど手数料は多く必要になってきます。被告人の違反によって裁判所が保釈金を没取したときには協会との契約内容に従い、被告人の家族等が代わりに返納しなければならなくなります。一方で銀行などから融資を受けるのに比べて審査も緩やかで、申込してからも短い期間で立て替え金を受けられるといったメリットはあります。

日本弁護士連合会による保釈補償保険制度など、いくつかの団体が保釈金に対するサービスを展開していますので、保釈金を用意できなさそうと思うときでも諦めることなく、弁護人などに助言を求めるようにしましょう。最適な方法をアドバイスしてくれるかもしれません。

ワンポイントアドバイス
保釈金が自分で支払えない場合には、まずは弁護士に相談すると良いでしょう。刑事事件に強い弁護士であればそのようなケースの経験もあるはずですので、適切な対応方法を教えてくれるはずです。

保釈金が返金されるタイミング

判決時点から数日で返金される

保釈自体、判決の時点で効力が失われます。それに伴い保釈金も返還されることとなります。しかし、判決時に裁判所で即座に返されるわけではなく、返金の手続などもあるため実際には数日の期間を要するでしょう。

立替えなどをしており手数料を心配する場合にはこのタイムラグも考慮しておかなければなりません。送金先は保釈金の納付時に届け出ることになりますので、その指定の口座に振り込まれます。現金が手渡しされることは通常ありません。

保釈金が返金されないケース

ここまででも少し触れてきたように、被告人の行いによっては納めた保釈金が返されないこともあります。この保釈金を返還しない処分のことを「没取」と言います。「没収」と呼ばれることもありますが、厳密には刑罰の一種である没収とは区別して没取と言います。そして没取をされる段階では保釈自体も取り消されていることが多いでしょう。

保釈に関しては、これを許す場合に被告人の住居を制限するなど、その他適当な条件を設けることができると法定されています。保釈許可決定においても主文で保証金額が明示されるほか、条件も記載されます。

この指定条件には、たとえば「被告人は○○に居住しなければならない」ということが書かれたりします。住居を変更する必要があれば裁判所に申し出て許可を受けなければなりません。

他にも「召喚を受けたときは必ず定められた日時に出頭しなければならない」というものや「海外旅行または○○日以上の旅行をする場合には前もって裁判所に申し出て許可を受けなければならない」といったものが指定されることもあります。

召喚とは、裁判所が日時・場所を指定して出頭を命じることで、これに応じなければ保釈金の全部または一部が没取される可能性のほか勾引という直接的・強制的な方法によって出頭させられることにもなりかねません。保釈された被告人は指定条件を遵守しなければならないのです。

この特別に指定される条件のほか、釈放後被告人が逃亡もしくは罪証を隠滅するおそれが出てきたときや、報復行為をしそうな場合などは保釈の取消し、もしくは保釈金の没取ができると法定されています。

ちなみに、没取された保釈金は被害者に分けられたりすることはありません。国庫に帰属し、国のお金になります。その後の使い道などは特に指定されていません。

ワンポイントアドバイス
保釈金は通常は戻ってくるお金ですが、裁判に出頭しないなどの行為があると保釈金が帰ってこないこともあります。弁護士の指示に従って対応していれば、保釈金が戻ってこないということはほぼないでしょう。

保釈以外の方法で身柄解放されるには

起訴後の勾留に関しては保釈金の納付による保釈の許しを得て釈放されるというのが一般的で、一時的ではあるものの釈放してもらえる確率が最も高い方法です。しかし大金を納めて一時的な釈放を得るのではなく、勾留そのものをやめてもらい釈放を得るということも可能です。

勾留中、被告人ないし被疑者が取ることのできるアクションとしては「勾留理由の開示請求」「勾留の取消しの請求」などがあります。これらは、起訴後に限られる保釈とは違って起訴前の勾留でもできるという特徴があります。

勾留理由の開示請求は、どのような理由があって勾留を決定したのか、これを公表するように求めるのがその内容であり、直接的に釈放を求めるものではありません。しかしその開示手続きの結果、勾留の要件が満たされていないことが明らかになれば請求または職権で勾留が取り消されることがあります。

被疑者の利害関係人は取消の請求をできないもののこの開示請求はできますので、可能性としては低いですが勾留理由の開示請求をすることで間接的に勾留の取消しに関与することができるでしょう。

勾留の理由がない、勾留の必要がないと思う場合には勾留の取消しの請求ができます。毎年10万件ほどの勾留決定がなされており、そのうちのごく一部の者しか取消されていませんが、100人程度は実際に勾留を取り消されていますので請求をする価値はあるでしょう。

ワンポイントアドバイス
保釈以外の方法で保釈金を支払うことなく身柄を解放されることもできますが、簡単なことではありません。これを成功させるためには、刑事事件に強い弁護士の助力が必要不可欠といえるでしょう。

保釈については弁護士に相談

保釈金とは、被告人が釈放されるために裁判所に預ける保証金であるということを説明しました。

起訴後は保釈の請求をし、保釈金の納付をすることで自宅に帰ることもできるようになります。相場は150万円から300万円で、支払いが難しい人でも立替え制度を利用すれば保釈してもらえるかもしれません。

違反さえしなければ判決後に保釈金は返ってきますので、それまで余計な疑いをかけられないよう行動を慎むようにしましょう。手続きや納付に関しては弁護人を介することができますので、スムーズに保釈を得るためにも弁護士を依頼しておくと良いでしょう。

また、弁護士に依頼するときには刑事事件に強い弁護士に相談することをおすすめします。

刑事事件はスピードが重要!
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
  • 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
  • 23日間以内の迅速な対応が必要
  • 不起訴の可能性を上げることが大事
  • 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
  • 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実
上記に当てはまるなら弁護士に相談