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交通事故が刑事事件になるケース!適用される刑と刑事処分までの流れ

目次[非表示]
交通事故が刑事事件となり逮捕される場合とは
交通事故で逮捕される場合とは、どのようなときなのでしょうか?
交通事故には、大きく分けて物損事故・人身事故・ひき逃げがあります。それぞれのどのような場合に刑事事件となるかについて、ここでは確認していきましょう。
物損事故
不注意で相手の自動車や公共物を壊してしまった場合であっても、人的被害が発生していない場合は、器物損壊罪として刑事事件になる可能性が無いわけではありませんが、逮捕される可能性は極めて低いです。
物損事故ではなく、怪我した人がいる場合や、死亡してしまった人が出るような事故を起こしてしまった場合は逮捕され重い処罰をされますが、物損事故であれば刑事事件になったとしても処罰は比較的軽いです。
ただし、飲酒運転をしていた場合や暴走運転などを行っていた場合は、道路交通法に違反となり逮捕されてしまう可能性も高くなるでしょう。また、処罰も軽いものではなくなる可能性もあります。
人身事故
運転中の不注意などで相手に怪我をさせてしまった場合は人身事故となりますが、必ずしも逮捕されるわけではありません。被害者の怪我が軽微であるような場合などには、すぐに逮捕されるわけではなく、家に帰ることができる場合が多いです。その後、在宅での捜査が進められるのです。
大抵の場合が、捜査後に裁判所から在宅起訴の書面が届き、罰金刑が科せられます。在宅起訴は、身柄が拘束されずに済み、逮捕されるわけではありません。しかし、検察官に起訴されたら、犯罪を起こしたと認められることになるので、前科はつきます。
前科がつくことになると、資格の取得や職種によっては就業などに限りが出てくるなど生活面にも影響が出てくる可能性もあります。
ひき逃げ
車で人身事故を起こしてしまい、その事故現場から立ち去るひき逃げ行為は悪質です。ひき逃げは大抵の場合、後から逮捕されることになります。
交通事故を起こして怪我人や死亡者を出してしまった場合は「自動車運転過失致死傷罪」という罪になりますが、それだけではなくて、その事故現場から去るという罪も加算されてしまうのです。
交通事故を起こしてしまうとパニックになってしまい、事故現場から逃亡する人もいますが警察の検挙率は高くて、半数以上が検挙されています。ひき逃げによって、被害者が死亡した場合の検挙率は9割にものぼります。ひき逃げを起こしてしまった場合、逃げても検挙されてしまいますので、ひき逃げは絶対にしないようにしましょう。
もしもひき逃げしてしまった場合には、弁護士に相談をした上で、自首をするなど適切な対応をするようにしましょう。
交通事故による刑の種類と重さ
交通事故を起こした際の刑の重さは、被害の状況(死亡・重症・軽傷)や事件の経緯(飲酒・危険運転)によって変わりますが、刑の種類と重さについて確認していきましょう。
殺人罪
相手を殺す目的で、何度も被害者を轢いたり引きずっていたりした場合は、悪質性が高いとして殺人罪に問われることがあります。また、あおり運転が悪質な場合には殺人罪として起訴される場合もあります。殺人罪となると、死刑、無期、5年以上の懲役となります。
第百九十九条
人を殺した者は、死刑又は無期若しくは五年以上の懲役に処する。
危険運転致死罪
飲酒運転や危険運転などの重大な過失によって、被害者を死亡させてしまった場合は危険運転致死罪に問われます。危険運転とは、次のようなことをいいます。
危険運転について
- 飲酒や薬物などによる酩酊状態での運転
- 速度超過や無免許での運転
- 人や車を妨害する目的で近づいて事故が生じた場合
- 信号無視・走行禁止区域(歩行者天国・歩道)で運転して事故が生じた場合
負傷者の救護と危険防止の措置違反交通事故を起こして、相手に被害を出してしまった場合にも関わらず、救護を怠ると違反行為として、10年以下の懲役および100万円以下の罰金に問われる場合があります。
自動車運転処罰法 第二条
次に掲げる行為を行い、よって、人を負傷させた者は十五年以下の懲役に処し、人を死亡させた者は一年以上の有期懲役に処する。
過失運転致死傷罪
自動車を運転するときに必要となる注意を怠り、交通事故で被害者を死亡させてしまったり、怪我を負わせてしまったりした場合には、過失運転致死傷罪に問われます。
自動車運転処罰法 第五条
自動車の運転上必要な注意を怠り、よって人を死傷させた者は、七年以下の懲役若しくは禁錮又は百万円以下の罰金に処する。ただし、その傷害が軽いときは、情状により、その刑を免除することができる。
交通事故による逮捕後の流れ
交通事故を起こしてしまった場合、警察に逮捕されてから、どのような流れになるのかを確認していきましょう。
逮捕
他の犯罪と異なって、交通事故を起こしてしまったからといって突然逮捕されてしまうという可能性は低いです。しかし、逮捕されてしまった場合には通常の生活環境から切り離されてしまいます。その場で逮捕されてしまった場合には、突然家にも帰れなくなってしまうため、家族に心配をかけてしまうでしょう。
このような突然の出来事には家族なども驚いてしまうことになるでしょう。また、加害者は逮捕されてしまってから、逮捕から72時間経過しなければ、外部の人と面会することができません。
また先程も解説したように、ひき逃げなどの場合には後から逮捕されることになります。そのような場合にも、同様にいきなり身柄拘束されてしまう可能性もあります。
警察の取り調べ(48時間以内)
交通事故を起こしてしまった被疑者は、まずは警察の捜査を受けます。交通事故の場合は、飲酒運転や暴走運転などの重大な過失ではない限り、何日も身柄を拘束されることはありません。
しかし、警察の取り調べ中は、外部の人と連絡が取れません。数日でも連絡が取れない状況になると、家族や職場の人にも心配をかけてしまうでしょう。また、場合によっては無断欠勤が重なると、会社を懲戒解雇になってしまうことも考えられます。
検察への送検(24時間以内)
逮捕から、48時間以内に警察が「さらに詳しく捜査する必要がある」と判断した場合は、身柄が検察へと送られていきます。検察でも、警察と同じくように捜査が進められていきます。そこで24時間以内に起訴するかどうかの決定、または勾留をするかどうかの決定がなされます。
勾留(最大20日)
検察の捜査が長引く場合は、検察官が裁判所に依頼して被疑者を勾留します。勾留期間は延長したとしても、最大20日と決められているのです。この期間内に、検察官は起訴するかどうかを判断していかなければいけません。
交通事故では勾留されることは珍しいです。被疑者がまったく反省していない場合や、飲酒運転やスピード違反などの過失であった場合、被害者が死亡している場合などに勾留が考えられます。
起訴
「刑罰を科す必要がある」と検察官が判断した場合は起訴します。起訴されてしまうと刑事裁判となり、刑事裁判では99.9%が有罪になるといわれており、ほとんどの場合は有罪となり前科がついてしまいます。
裁判
起訴されると、刑事裁判で判決が下されます。執行猶予がつかず、実刑判決が下されてしまえば、数か月~数年単位で刑務所に入ることになるということも考えられます。
そのようなことにならないためにも、交通事故を起こしてしまった場合にはなるべく早く弁護士に相談をするようにしましょう。
交通事故を起こした際の対処法
交通事故を起こした際に適切な対処をしなければ、刑罰が科せられることは理解頂けたと思います。実際に交通事故を起こしてしまった際は、どのように対処すればいいのかを確認しておきましょう。
交通事故を起こした後は、下記の流れで対応していきます。この一連の流れで法律上定められている義務は3つです。3つの義務行為は必ず守りましょう。
交通事故を起こした際の一連の流れ
- 被害者の救護
- 事故状況を確認
- 二次被害の防止、道路の安全確保
- 警察への通報
- 実況見分調書の作成への立ち会い
- 被害者の連絡先などを確認
- 事故状況の記録や目撃者の確保
- 保険会社への連絡
負傷者の救護について
交通事故を起こしてしまったら、すぐに自動車の運転を停止して、負傷者がいないかを確認しましょう。交通事故による負傷者が出た場合は、救護して必要があれば、近隣病院まで運ぶ救急車を手配します。
救急車の手配などの救護活動せずに、事故現場から離れると「ひき逃げ」とみなされます。ひき逃げ行為をすると加点扱いになってしまいますし、刑罰も重たくなりますので、事故を起こしてしまったら、必ず負傷者の救護を行いましょう。
道路上の危険の除去
他の方に迷惑をかけないためや、二次災害を防止するために事故車両は道路の隅に寄せます。また、他の方に事故が起きたことを知らせます。二次災害を回避するための道路上の危険除去は義務です。この義務を怠ると、刑罰が重くなります。
警察への報告
負傷者の救護と道路の危険の除去をした後に、事故を起こしてしまったことを警察へ報告します。
交通事故後に警察へ報告するべき内容
- 事故発生の日時と場所
- 死傷者の数と負傷者の負傷の程度
- 損害した者と損壊の程度
- 交通事故にかかわる車輛などの積載物
- その事故についてとった措置の内容
交通事故現場でやっておいた方がよいこと
交通事故を起こしてしまった際の対処法について説明しましたが、現場でやっておいたほうがよいことをここで紹介しておきます。
衝突地点や停車位置、被害者の店頭地点、事故車両の損壊状況など事故の状況の証拠収集をしておくと役立ちます。現在は、多くの方がスマートフォンを所有している時代なので、カメラ機能を利用して現場を撮影しておきましょう。
交通事故を目撃していた人がいた場合は、その人の氏名や住所、連絡先を聞いておきましょう。警察や検察がスムースに捜査できるように準備しておくことで、反省の色を見せることができます。
交通事故を起こしてしまった場合は、被害者への謝罪をしましょう。保険会社が対応してくれるため、自分は何もやらなくていいという姿勢だと、被害者の心情を大きく損ないます。交通事故を起こして相手を傷つけてしまった場合は、なによりも被害者に対する誠意ある態度が必要です。
交通事故を起こした際に弁護士に相談するメリット
交通事故を起こした際に、弁護士に相談するメリットは次のようなものがあげられます。
被害者や保険会社との交渉・手続きを依頼できる
交通事故を起こしてしまった場合は、被害者との示談交渉や保険会社への手続きを行うことになります。交通事故をはじめて起こしてしまった人は、不安になるものです。とくに、他の犯罪とは異なって、交通事故は誰にでも突然起きるものなので、どのように対処すればいいのか不安を強く感じるでしょう。
弁護士に依頼すれば、被害者との示談交渉や保険会社への手続きを代理で行ってもらえます。専門の知識を持っている弁護士にすることで、安心感が得られるでしょう。
適切な損害賠償額を提案できる
交通事故を起こしてしまった場合は、被害者側から損害賠償が求められます。当事者同士で示談交渉をすると、高額な示談金(賠償金)が請求されてしまうこともあるのです。
刑事事件を豊富に扱っている弁護士が、第三者的立場で示談交渉に介入することで、これまでの経験からの適切な損害賠償額を提案してくれるでしょう。弁護士が事故に見合った適切な賠償額を教えてくれるので、高額な費用が請求されてしまうという事態を避けることができます。
刑罰を軽くすることができる
交通事故の加害者に対する刑事処分は、被害の状況(死亡・重症・軽傷)や事件の経緯(飲酒運転や危険運転)など総合的な面から考慮して判断されていきます。
刑事手続きに関しては、加害者本人は被疑者として捜査対象となるので、検察官に刑事処分に関する交渉はできません。検察官に対して、刑事処分に関する交渉がしたい場合は、弁護士に弁護活動を依頼する必要が出てくるのです。
被害者との間で示談交渉をおこないます。場合によっては、被害者に嘆願書を作成してもらうこともあります。この嘆願書を作成してもらえると弁護活動が有利に動かせることが多いです。
今後の流れを詳しく知ることができる
交通事故は突然起きてしまいます。警察に逮捕されてしまったら、外部との接点が遮断されてしまいます。そのため、多くの人が今後はどのような流れで手続きが進められていくのか不安になるでしょう。不安になっても、警察や検察の方には聞きづらいでしょう。いつ保釈されるのかを聞くと、反省の色がないと見なされてしまうこともあるかもしれません。
しかし、弁護士に相談すると、これまでの経験から詳しい話や今後の流れを丁寧に教えてくれます。どうなるかが明確にわかるので、とても安心できます。
交通事故で刑事事件になる可能性がある場合には弁護士に相談
交通事故は突然起こってしまう可能性がありますし、交通事故が刑事事件になってしまうことも十分に考えられます。
もしも逮捕されてしまった場合には有罪となり、前科がついたり懲役になってしまったりする可能性があります。刑事事件や交通事故への対応経験が豊富な弁護士に相談をすることで、不起訴処分を獲得するなどして前科をつけずに解決できる可能性もあります。
交通事故を起こしてしまったときには弁護士への相談が重要です。交通事故の加害者になってしまった場合には、すぐに刑事事件に強い弁護士へ相談をすることをおすすめします。
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
- 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
- 23日間以内の迅速な対応が必要
- 不起訴の可能性を上げることが大事
- 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
- 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実