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知らないだけでも犯罪かも?⑦〜児童買春で逮捕されるケースとは?〜
この記事で分かること
- 児童買春の概要と児童ポルノ禁止法についてわかります
- 児童買春での逮捕の問題点である児童の年齢の認識についてわかります
- 児童買春罪と児童ポルノ製造罪のつながりについてわかります
児童買春は18歳未満の児童(またはその保護者)に金銭を払って、その児童と性交をすることです。18歳未満だと知らなかったため、児童買春罪に問われなくても青少年保護育成条例によって罰せられることもあります。児童が大人びていたり年齢を偽っていたりすることなどもありますが、その場合でも、罪に問われることがあるのです。
児童買春の基本的知識
まず、児童買春の基本的な知識から確認していきましょう。
児童買春は児ポ法によって明確に禁じられていますが、児ポ法が施行される以前は、児童福祉法や各地の淫行条例で規制されていました。児童福祉法34条1項6号は「児童に淫行をさせる行為」を禁止し、違反者には10年以下の懲役、もしくは300万円以下の罰金を科するとしています。
売買春そのものは売春防止法で禁止されています。しかし、これには罰則規定がなく売買春の当事者を罰することはできません。そのため、対償があった場合でも「18歳未満の者との淫行」ということで検挙していました。
1998年、児童買春、児童ポルノを規制して児童の権利を保護する目的で児ポ法が成立しました。国際的に児童ポルノに対する規制が厳しくなる中、日本の対応が遅れていたことがきっかけとなったと言えます。
児ポ法は児童買春について明確に規制しています。児童の定義は「18歳に満たない者」(児ポ法2条1項)で、児童買春とは児童やその保護者等にお金を払って(もしくはお金を払うと約束して)その児童と性交等をすることです。また、身体を触ることや自らの性器に触れさせることも禁止されています。児童買春は「5年以下の懲役又は300万円以下の罰金」です。
お金を払わない買春も犯罪
では、お金を払わないで買春するのであれば、犯罪にならないのでしょうか。
金銭の支払いなどがなければ児童買春は成立しません。ただし、各都道府県の青少年保護育成条例では、金銭の支払いがなくても18歳未満の児童と性交に類似したみだらな行為があった場合、「2年以下の懲役または100万以下の罰金(東京都、神奈川、千葉、埼玉)」となります。このように、児童買春は児ポ法や青少年保護育成条例などで厳しく取り締まられているのです。
児童側から誘ってきても
当然のことですが、18歳未満の児童側から買春を誘ってきた場合も犯罪になります。
斡旋も犯罪
児童買春をするだけでなく、斡旋した場合も児童ポルノ法を犯したことになります。刑罰は5年以下の懲役、若しくは500万円以下の罰金、またはその両方です。さらに児童買春斡旋を業務とした場合は、罪が重くなり、7年以下の懲役および1000万円以下の罰金になります。
18歳未満の少女を性風俗店で働かせるのも犯罪ですし、もし、その児童が18歳以上だと自分の年齢を偽って働いていたとしても、場合によっては罪に問われます。
児童買春と児ポ製造
ネットでは少女との淫行の写真と称する写真が多数見つけることができます。それらが本当に少女なのか簡単には判別できませんが、児童買春の後、写真等を撮影した場合、さらに罪が重くなる可能性があります。
児童買春罪(児ポ法4条)と児童ポルノ製造罪(同7条4項)の関係が問題となります。児童買春をした後、もしくは行為前、行為中に写真や動画を撮影した場合、罪の数が問題になります。児童買春を児童ポルノ製造のための手段と見て牽連犯(1つの犯罪の結果が他の罪に触れること)とするか、全体を児童買春という1つの行為とするかということですが、もしそうであれば、最も重い刑で処断されますから、児童買春罪の懲役5年となるのでしょうか?
児童買春と児童ポルノ製造は併合罪
実は、児童買春と児童ポルノ製造については、上記のような考え方をせずに併合罪(刑法45条)とする判例があります。17歳の少女との性交の場面をデジタルビデオカメラで撮影した事案(金沢地判平成17年1月11日)では併合罪となりました。併合罪になると別々の罪に問われることになるので、罪も重くなります。児童買春と児童ポルノ製造がすべて併合罪になるかは、事案によって異なる可能性はあるかもしれませんが、一般的には併合罪となると考えていいでしょう。
児童買春と年齢の問題点
児童買春で問題になるのは、買春した相手の年齢に対する認識です。「大人っぽかったので18歳未満だと思わなかった」という弁解は、よく聞きます。
13歳未満と18歳未満の違い
児童が13歳未満だった場合と18歳未満だった場合とでは、罪の重さや種類が少し変わってきます。基本的に、児童の年齢が若ければ若いほど、罪は重くなります。
12歳未満と知って買春
たとえば12歳の少女が売春をしたとします。仮に、少女が12歳と知っていて相手になった場合は、強姦罪(刑法177条)が成立します。13歳未満の女子を相手に姦淫をした場合、たとえ合意があっても、強制わいせつ罪や強姦罪が成立するからです。
強制わいせつ罪の法定刑は6ヶ月以上10年以下の懲役です。強姦罪は3年以上の有期懲役となっています。
13歳未満の認識がなくて買春
問題は相手が13歳未満であることの認識がない場合です。たとえば12歳の少女が外見も大人びていて、14歳の姉の学生手帳を持ち出して相手に「私は中学生です」と示して売買春が行われたなどの場合です。そうなると事実が分からなかったため故意ではないことになり、強姦罪での処罰は難しいでしょう。ただし、児ポ法で児童買春罪での処罰になると考えらえます。
18歳未満の認識がなくて児童買春
通常、児童買春で検挙された者は「まさか18歳未満だと思わなかった」と言いわけすることが多いようです。仮に本当に18歳以上だったとの認識がなければ児童買春はもちろん、淫行条例なども刑法が適用されて罰せられなくなります。しかし、出会い系サイトやJKビジネスでは18歳未満の若年層を狙っている者をターゲットにしていますから、客観的に考えて、18歳未満だと知らなかったという言い訳が認められることは多くないでしょう。
児童買春のきっかけの問題とは
児童買春のきっかけは専ら出会い系サイトというイメージがあります。実際はどうなのでしょうか。
出会い系サイトを利用した児童買春で検挙された例は、メディアでも多く伝えられています。モラルを求められるメディアの人間が逮捕された例や2011年に大手スポーツ新聞の39歳の管理職(デスク職)の男が、出会い系サイトで知り合った16歳の女子高校生を買春したとして逮捕、(略式)起訴された事件が大きく報じられました。続報によると80万円の罰金を支払ったとされています。
出会い系サイトへの規制
こうした出会い系サイトが児童買春の温床になっているとして、規制が加えられています。いわゆる「出会い系サイト規制法」(インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律)です。同法は児童を性交等に誘引する行為を禁止しています。違反者には100万円以下の罰金が科されます。送致人員を見ると2011年に443人と最多を記録しましたが、その後は減少傾向が続き2015年は229人となっています。
JKビジネスがきっかけ
最近、児童買春の新たな温床と指摘されているのが、いわゆる「JKビジネス」です。
JKビジネスの法律上の定義はありませんが、内閣府のHPには以下のような説明があります。「少年の性を売り物とする営業であり、例えば、リフレと呼ばれるマッサージや添い寝等をさせる営業、ガールズ居酒屋と呼ばれる女子従業員に水着等を着用させて、接客させる営業形態などがあるとされ、近年、大都市圏を中心に出現しています。
特定異性接客営業規制に関する条例が施行
こうしたJKビジネスに対しても規制が入ることになりそうです。警視庁はJKビジネスを対象とした「特定異性接客営業規制に関する条例」を2017年7月1日に施行しました。ここでいう特定異性接客営業(いわゆるJKビジネス)とは、リフレ、撮影や見学、カフェ、コミュ、散歩といったサービスに「青少年であることをアピールする文言や映像」また「性的好奇心をそそるもの」が付け加わったもの。規制対象のサービスに18歳未満の者を従事させることを禁止されています。
児童買春で困ったら弁護士に相談
逮捕はある日突然にやってきます。
もし、児童買春で逮捕されたら速やかに弁護士に依頼することをおすすめします。事件の流れやどのような行動をとるべきか、弁護士からアドバイスをもらえることで、パニックにならずに落ち着いて対応できる可能性があります。また、事件によっては被害者である児童と示談交渉をとれることがあります。事件の内容が内容だけに示談交渉は難航するケースが多くありますが、弁護士が間に入ることで、進めやすくなるでしょう。
刑事事件に巻き込まれたら弁護士へすぐに相談を
- 逮捕後72時間、自由に面会できるのは弁護士だけ。
- 23日間以内の迅速な対応が必要
- 不起訴の可能性を上げることが大事
- 刑事事件で起訴された場合、日本の有罪率は99.9%
- 起訴された場合、弁護士なしだと有罪はほぼ確実