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交通事故に遭ったとき、「人身事故」と「物損事故」のどちらで処理するかで、その後の展開は大きく変わります。「物が壊れただけだから物損でいいか」と思って手続きを進めたものの、本当にそれでよかったのか不安になっていませんか。受け取れる賠償の金額が何十万円も変わることもあり、この選択は決して軽く見てはいけません。この記事では、人身事故と物損事故の違いを、賠償の内容や手続きの面からわかりやすく整理し、どちらで届け出るべきか、注意点まで弁護士の視点で解説していきます。
人身事故と物損事故とは
まず、それぞれの言葉の意味を確認しておきましょう。
人身事故とは、交通事故によって人がケガをしたり、亡くなったりした事故をいいます。一方、物損事故は、車やバイク、ガードレール、建物など、物だけが壊れて、人にケガがなかった事故を指します。
同じ「交通事故」でも、人の身体に被害があったかどうかで、この2つは区別されます。そして、どちらに分類されるかによって、受け取れる賠償も、相手が負う責任も、まったく違ってくるのです。
人身事故と物損事故の違い
人身事故と物損事故には、いくつもの違いがあります。主なポイントを表で整理してみましょう。
| 項目 | 物損事故 | 人身事故 |
|---|---|---|
| 慰謝料 | 原則なし | あり(入通院・後遺障害など) |
| 治療費 | なし | あり |
| 休業損害 | なし | あり |
| 物の損害(修理費など) | あり | あり |
| 実況見分調書 | 作られないことが多い | 作られる |
| 相手の行政処分(点数) | 原則なし | あり(違反点数の加算) |
| 相手の刑事責任 | 原則問われない | 問われることがある |
このように、人身事故のほうが、被害者が受け取れる賠償の範囲が広く、相手が負う責任も重くなります。順番に、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
賠償される損害の範囲が違う
最も大きな違いは、賠償される損害の範囲です。物損事故では、修理費や代車費用など、物に関する損害しか賠償されません。一方、人身事故では、これらに加えて、慰謝料・治療費・休業損害など、ケガに関する損害も賠償されます。
相手の責任の重さが違う
人身事故では、相手は行政処分(違反点数の加算による免許停止など)を受けたり、自動車運転過失致傷罪などで刑事責任を問われたりすることがあります。物損事故では、原則としてこうした責任は問われません。
証拠の残り方が違う
人身事故では、警察が実況見分を行い、事故状況を記録した実況見分調書を作成します。これは過失割合を判断するうえで重要な証拠です。物損事故では作られないことが多く、あとから事故状況を証明しづらくなります。
物損事故で受け取れるもの
物損事故では、物に関する損害を賠償してもらえます。代表的なものを見ておきましょう。
- 修理費:壊れた車などを修理する費用。原則として実費が認められます。
- 買い替え費用:修理が不可能、または修理費が時価額を超える場合の買い替え費用。時価額が上限です。
- 代車費用:修理や買い替えの間、レンタカーなどを借りた費用。相当な期間・グレードの範囲で認められます。
- 評価損(格落ち):修理しても残る、車の価値の低下分。新しい車や高級車で認められやすい傾向があります。
- 休車損害:営業車などが使えなかったことによる減収。
- レッカー費用・所持品の損害:事故車の移動費用や、壊れた所持品の損害。
物損事故でも、これだけの損害を請求できます。ただし、慰謝料は原則として含まれません。
物損事故で慰謝料がもらえるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
物損事故でよくあるトラブル
物損事故は「軽い事故」と思われがちですが、賠償をめぐってトラブルが起こることも少なくありません。代表的なものを知っておきましょう。
修理費を全額もらえない
修理費が車の時価額を超えると、賠償額が時価額に制限されます(経済的全損)。古い車では、時価額が低いため、修理費を全額もらえないことがあります。
評価損を認めてもらえない
評価損(格落ち)を請求しても、保険会社になかなか認めてもらえないことがあります。評価損の主張には専門的な根拠が必要で、争いになりやすい項目です。
代車費用でもめる
代車費用について、「期間が長すぎる」「グレードが高すぎる」などとして、保険会社と争いになることがあります。
人身事故で受け取れるもの
人身事故では、物の損害に加えて、ケガに関する損害も受け取れます。物損事故との大きな違いがここにあります。
- 入通院慰謝料:ケガの治療で入院・通院したことに対する慰謝料。
- 後遺障害慰謝料:症状が残り、後遺障害と認定された場合の慰謝料。
- 治療費:診察・検査・投薬・リハビリなどの費用。
- 通院交通費:通院にかかった交通費。
- 休業損害:ケガで仕事を休んだことによる減収。主婦の家事労働も対象です。
- 逸失利益:後遺障害により将来の収入が減ると見込まれる場合の損害。
これらは、物損事故では一切受け取れないものです。ケガをしているなら、人身事故として届け出ることが、適正な賠償につながります。
人身事故の慰謝料がどのように決まり、どう計算されるのかについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
約53万円
たとえば、むちうちで3か月通院した場合、弁護士基準でおよそ53万円前後の入通院慰謝料が見込めます。物損のままなら、この慰謝料はゼロです。違いの大きさがわかるでしょう。
人身事故で適正な賠償を受けるためのポイント
人身事故では、受け取れる賠償の範囲が広い分、適正な金額を受け取るためのポイントがあります。押さえておきたい点を整理しましょう。
まず大切なのが、医師の指示に従って、きちんと通院を続けることです。慰謝料は通院期間や日数に応じて算定されるため、自己判断で通院をやめてしまうと、本来もらえるはずの慰謝料が減ってしまいます。
次に、後遺症が残った場合は、後遺障害の認定を受けることです。後遺障害と認定されると、後遺障害慰謝料や逸失利益を請求できます。認定の手続きは専門的なので、弁護士のサポートが役立ちます。
| ポイント | 理由 |
|---|---|
| 医師の指示どおり通院する | 慰謝料は通院期間・日数に応じて算定されるため |
| 痛みが続くなら治療を続ける | 早期に打ち切ると十分な賠償を受けられないため |
| 後遺症が残れば等級認定を受ける | 後遺障害慰謝料や逸失利益を請求するため |
| 示談前に金額が適正か確認する | 一度成立するとやり直せないため |
人身事故で適正な賠償を受けるには、専門的な知識が欠かせません。あなたのケースで賠償金がいくらになるか、計算ツールで確認したうえで、相談を検討してみてください。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
どちらで届け出るべきか
では、人身事故と物損事故、どちらで届け出るべきなのでしょうか。判断の基準はシンプルです。
ケガをしているなら、人身事故で届け出るべきです。少しでも痛みや違和感があるなら、物損ではなく人身として処理しましょう。
逆に、本当に物の損害だけで、ケガがまったくない場合は、物損事故として処理することになります。ただ、判断に迷うときは、念のため病院を受診しておくと安心です。
人身事故と物損事故、判断に迷ったときは
人身事故と物損事故のどちらにするか、判断に迷うこともあるでしょう。そんなときは、自分の体の状態を最優先に考えてください。
少しでも痛みや違和感があるなら、物損のままにせず、病院を受診して人身事故への切り替えを検討しましょう。物損のままだと、慰謝料も治療費も受け取れず、あとで後悔することになりかねません。
物損から人身への切り替え
「事故のときは物損にしたけれど、あとから痛みが出てきた」というケースもよくあります。この場合、物損事故から人身事故への切り替えが可能です。
切り替えには、医師が作成した診断書が必要です。病院でケガの診断書を取り、それを持って警察に届け出ます。ただし、時間がたつほど切り替えが難しくなるため、早めの対応が肝心です。
物損事故から人身事故への切り替え方法とメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
相手が逃げた場合(当て逃げ)はどうなるか
物損事故でも人身事故でも、相手がその場から逃げてしまうことがあります。いわゆる当て逃げ・ひき逃げです。
相手が見つからないと、賠償を請求する相手がいないため、損害の回復が難しくなります。この場合は、自分の車両保険や人身傷害保険を使うことを検討します。
当て逃げに遭ったときの対応方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
弁護士に相談するメリット・デメリット
人身事故でも物損事故でも、弁護士に相談することで得られるメリットは大きいものです。ただし、デメリットもあるので、両方を知っておきましょう。
弁護士に相談するメリット
弁護士に依頼する最大のメリットは、慰謝料が増額しやすくなることです。慰謝料には3つの基準があり、弁護士が交渉することで、最も高い「弁護士基準」で算定されやすくなります。
- 慰謝料が弁護士基準で算定され、増額しやすくなる
- 保険会社とのやり取りをすべて任せられ、精神的な負担が減る
- 過失割合や後遺障害の認定など、専門的な交渉を進めてもらえる
- 適正な賠償額の見通しを、早い段階で把握できる
交通事故の慰謝料の3つの基準については、こちらの記事で詳しく解説しています。
弁護士に相談するデメリット
一方で、デメリットもあります。代表的なのが、弁護士費用がかかることです。ただし、これには対策があります。
- 弁護士費用がかかる(ただし弁護士費用特約で自己負担なしになることが多い)
- 賠償額が小さい物損事故では、費用倒れになる可能性がある
- 解決までに、ある程度の時間がかかることがある
交通事故の被害者が弁護士に相談したほうがよい理由については、こちらの記事もご覧ください。
あなたのケースで賠償金がいくらになるか、まずは下記の計算ツールで確認してみてください。
交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
事故に遭ったときの手続きの流れ
人身事故・物損事故にかかわらず、事故に遭ったときの基本的な手続きの流れを確認しておきましょう。
- その場で必ず警察に連絡する(届け出は法律上の義務)。
- 相手の氏名・連絡先・車のナンバー・保険会社を確認する。
- 事故現場や車の損傷を写真に撮り、目撃者がいれば連絡先を聞く。
- 少しでも痛みや違和感があれば、その日のうちに病院を受診する。
- ケガがあれば人身事故として届け出て、保険会社にも連絡する。
どんな事故でも、まず警察に届け出ることが大切です。届け出をしないと、事故の事実を証明する交通事故証明書が発行されず、賠償請求で困ることがあります。
よくある質問(FAQ)
人身事故と物損事故は何が違いますか?
最も大きな違いは、賠償される損害の範囲です。物損事故では物の損害(修理費など)しか賠償されませんが、人身事故では慰謝料・治療費・休業損害なども賠償されます。また、人身事故では相手が行政処分や刑事責任を問われることがあります。
物損事故でも慰謝料はもらえますか?
原則としてもらえません。慰謝料はケガをしたこと(人身損害)に対して支払われるものだからです。ただし、修理費・代車費用・評価損など、物に関する損害はしっかり請求できます。
ケガがありますが、物損事故のままで大丈夫ですか?
いいえ、ケガがあるなら人身事故として届け出るべきです。物損のままだと、慰謝料や治療費を請求できません。あとから痛みが出た場合も、人身事故への切り替えを検討してください。
事故のあと痛みが出てきました。今からでも人身に切り替えられますか?
可能です。病院でケガの診断書を取り、それを持って警察に届け出れば、人身事故に切り替えられます。ただし、時間がたつほど因果関係を疑われ、切り替えが難しくなるため、できるだけ早く対応しましょう。
人身事故にすると相手はどうなりますか?
相手は行政処分(違反点数の加算による免許停止など)を受けたり、場合によっては刑事責任を問われたりすることがあります。「相手に申し訳ない」と感じる方もいますが、ケガをしているなら、適正な賠償を受けるために人身事故にすべきです。
物損事故と人身事故で、過失割合の決まり方は違いますか?
過失割合の考え方自体は同じですが、人身事故では実況見分調書が作られるため、事故状況を証明しやすくなります。物損事故では調書が作られないことが多く、過失割合の交渉で不利になることがあります。
弁護士に相談すると費用はどのくらいかかりますか?
弁護士費用は、依頼内容や事務所によって異なります。ただし、多くの自動車保険に付いている「弁護士費用特約」を使えば、保険会社が費用を負担してくれるため、自己負担なしで依頼できることが多いです。まずは加入している保険を確認しましょう。
物損事故でも弁護士に相談する意味はありますか?
あります。特に、評価損や全損で争いがある場合や、相手が無保険の場合などは、弁護士のサポートが役立ちます。ただし、賠償額が小さいと費用倒れになることもあるため、弁護士費用特約の有無を確認したうえで相談するとよいでしょう。
相手が当て逃げで逃げてしまいました。どうすればよいですか?
まず警察に届け出てください。そのうえで、ドライブレコーダーや防犯カメラ、目撃者の情報など、加害者の特定につながる手がかりを集めましょう。加害者が見つからない場合は、自分の車両保険や人身傷害保険を使うことを検討します。
人身事故にすると、慰謝料はいくらもらえますか?
ケガの程度や通院期間によって変わります。たとえば、むちうちで3か月通院した場合、弁護士基準でおよそ53万円前後が目安です。後遺障害が残れば、さらに後遺障害慰謝料が加わります。正確な金額は、計算ツールや弁護士への相談で確認しましょう。
物損事故から人身事故への切り替えに期限はありますか?
法律上の明確な期限はありませんが、実務上は事故から1週間から10日以内が目安とされています。時間がたつほど、事故とケガの因果関係を疑われ、切り替えが難しくなります。痛みに気づいたら、できるだけ早く病院を受診し、警察に届け出ましょう。
専業主婦ですが、人身事故で休業損害はもらえますか?
もらえます。家事ができなかった期間について、休業損害を請求できます。「収入がないから関係ない」と思われがちですが、家事労働は経済的な価値があるものとして扱われます。あきらめずに請求しましょう。
軽い物損事故でも警察に届け出る必要がありますか?
必要です。物損事故でも、警察に届け出ないと交通事故証明書が発行されず、賠償請求で困ることがあります。「物が壊れただけだから」「相手と話がついたから」と届け出を省くと、あとからトラブルになりかねません。どんなに軽い事故でも、必ずその場で警察に連絡し、届け出を行いましょう。
まとめ
人身事故と物損事故は、同じ交通事故でも、賠償の内容も相手の責任もまったく異なります。物損事故では物の損害しか賠償されませんが、人身事故では慰謝料・治療費・休業損害なども請求できます。また、人身事故では相手が行政処分や刑事責任を問われることがあります。
ケガをしているなら、人身事故として届け出るべきです。少しでも痛みや違和感があるなら、物損のままにせず、病院を受診して人身事故への切り替えを検討しましょう。物損のままだと、本来受け取れるはずの賠償を受け取れず、後悔することになりかねません。
事故の対応や、保険会社との交渉に不安があるときは、一人で抱え込まず、交通事故に詳しい弁護士に相談してみてください。弁護士費用特約を使えば、自己負担なく依頼できることも多いです。適正な賠償を受けるために、弁護士があなたを支えます。
あなたの慰謝料はいくら?3基準で比較診断
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
