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儲け話で勧誘されて大損してしまったら 損失は取り戻せる?

この記事で分かること

  • 特殊詐欺に遭った被害者の約8割は65歳以上の高齢者
  • 儲け話の典型例は、未公開株商法や社債商法、怪しいファンド販売など
  • 損害賠償請求や契約無効の訴えはできるが、お金が全額返ってくるかどうかは不明

見ず知らずの他人に儲け話を持ちかけられると「怪しい」と思うのが普通ですが、何度も儲かると言われたり、過去に株や投資で失敗した経験があるとつい話に乗ってしまいがちです。しかし、本当に設けた人は誰一人としていません。それを知っておくことが大切です。

儲け話の勧誘による損害の実態とは

自宅に突然パンフレットを送り付けてきたのちに電話をかけてきて、「この株を買えば必ず儲かる」などと言って消費者をだます詐欺の手口が年々増加しています。特に、65歳以上の高齢者が被害に遭うケースが多く見られ、社会問題となっています。

特殊詐欺被害の現状

「オレオレ詐欺」に代表されるように、不特定多数の消費者に、電話やメールなどの手段を使って預貯金口座への振り込みなどの方法により現金などをだましとることを「特殊詐欺」と言います。犯行手口が認知されてきている分、だんだん手口が巧妙化してきているのが最近の特徴です。

警察庁の認知件数は

高齢者を狙った特殊詐欺被害の認知件数は年々増えており、平成28年には11,000件を突破しました。未公開株、投資などの金融商品等取引名目の特殊詐欺については、年々減少しているものの、被害を受ける高齢者の割合は依然として高止まりしたままとなっています。

  特殊詐欺被害認知件数(カッコ内は高齢者の被害認知件数) 高齢者の割合 金融商品等取引名目の特殊詐欺認知件数 金融商品等取引名目の特殊詐欺被害の高齢者の割合
平成28年 14,151件
(11,041件)
78% 344件 94%
平成27年 13,824件
(10,641件)
77% 663件 85.4%
平成26年 13,392件
(10,753件)
79% 1,228件 87.5%

(警察庁の広報資料(※1)等をもとに作成)

「劇場型」勧誘が最多

未公開株やファンドなどの販売には、「劇場型」勧誘の手口が使われることが最も多くなっています。劇場型勧誘とは、複数の業者が登場して「○○社の株を買えば何倍もの利益が得られる」などと嘘を言って消費者に高額なリターンがあるように誤認させ、預貯金口座への振り込みなどの方法を使ってお金をだまし取ろうとする手口のことを言います。

高齢者の様子の変化から発覚するケースが多い

ものを買わなくなった、口数が少なくなった、子どもに借金をするなど、高齢者の家族の様子がいつもと違うことから詐欺事件が発覚するケースが多くなっています。

ワンポイントアドバイス
特殊詐欺全体の被害数が年々増加を続けているだけではなく、その手口も日々、巧妙化を続けています。いざというときに早く気付けるように、離れて暮らしていても日頃から高齢者の家族と連絡をまめに取っておくことが大切です。

儲け話への勧誘による損失被害① 未公開株商法

儲け話の勧誘による詐欺の典型例としてまず挙げられるのが、未公開株商法です。実質的に価値のないものあるいは著しく価値の低いものを、あたかも価値があるかのように見せかける点が問題となっています。

未公開株商法とは

名前を知らない会社のパンフレットをいきなり送り付けてきて、「この会社は上場間近で、上場すれば株価が2倍3倍と膨れ上がる」などと嘘を言いながら消費者を勧誘し、ほとんど価値のない株を著しく不当に高い金額で購入させることを「未公開株商法」と言います。

あたかも高額なリターンがあるように見せかける

証券会社や金融機関を名乗る業者から頻繁に電話がかかってきて、「この会社は有望だ」「必ず○倍になる」と言われると、最初は不信感があるものの次第に本当に有望な株であるように錯覚するようになります。その心理につけ込んで勧誘してくるのがこの手口です。

会社の実態がないケースがほとんど

最初のうちは担当者と連絡が取れますが、お金を振り込むとその後連絡が途絶えてしまいます。上場予定と言われた会社も、登記はされていても経営実態のないケースがほとんどです。

ワンポイントアドバイス
「自分が得た知見は正しい、間違っているはずがない」と考えるのは、「正常性バイアス」とも呼ばれる人間の認知に備わる特性です。「未公開株で儲かる」という怪しげな言葉を疑わず信じてしまう方の中には、日常的に株取引を行われている方も多く、「分野に対する知見が深い人ほど騙されやすい」という点に、この手の手法を予防する難しさがあります。

儲け話による損失被害② 怪しい社債・ファンドの勧誘

「弊社は外国にある資源の利権を握っていて、今後成長が見込める」などと語って、今後成長が期待できる企業であるかのように偽って社債やファンドを勧誘・販売する業者も多くいます。

社債商法の手口とは

社債商法とは、非上場企業の社債を「高利になる」とうたって販売することです。未公開株商法と同様、この社債商法による詐欺被害も高齢者を中心に数多く見られます。

高い利息を受け取れることが魅力

社債商法は、消費者に「定期的に高利の利息を受け取れる」「満期日には元本が返還される」と魅力を感じさせるのが大きな特徴のひとつです。また、実際に最初の数か月は利息がきちんと払われ、消費者を安心させられるため、勧誘がしやすくなっています。

数回利息が支払われたのちに音信不通になる

社債を発行する会社は登記はなされているものの、未公開株商法と同じく営業の実態がないケースがほとんどです。最初の数回は利息が支払われますが、やがて利息の支払いがストップするようになり、最終的には音信不通となってしまいます。

規制の抜け穴を利用した手口でファンドを販売

次に、怪しいファンドを勧誘する手口について見ていきましょう。ファンドを販売する場合、「集団投資スキーム」と呼ばれるしくみの抜け穴をついた方法で消費者を勧誘し、お金をだまし取る手口が有名です。

集団投資スキームとは

投資者から出資金などを集めて、その金銭を用いて何らかの事業へ投資を行い、事業から生じる収益を出資者に分配するしくみのことを「集団投資スキーム」と言います。集団投資スキームを扱う業者は第二種金融商品取引業の登録が必要であり、金融商品取引法の規制を受けます。

適格機関投資家が一人いれば登録の必要はない

ただし、集団投資スキームには抜け穴があります。まず、投資のプロである「適格機関投資家」が一人いれば、登録の必要はありません。また、この適格機関投資家には投資事業有限責任組合など比較的簡単に設立できる組織も含まれてるため、これを利用して詐欺を行う者が増えているのです。

運用の実態はなし、もしくは破たん必至なケースがほとんど

このような詐欺ファンドは運用の実態がなかったり、破たんが目に見えているケースがほとんどです。そのため、最初は配当が振り込まれていても、やがて振り込まれなくなり行方をくらましたり、「運用に失敗した」などと言って言い訳をする業者が後を絶ちません。

ワンポイントアドバイス
うまい話というのはそうそうあるものではありません。家族・親族や友人・知人に異変を感じた時、周囲の人間が正しく指摘できるかも、特殊詐欺による被害を防ぐための取り組みとしてはとても重要です。

儲け話の勧誘による損失を取り戻すための救済策

見ず知らずの他人が突然儲け話を持ち掛けたり、自分の損失を肩代わりしてくれることは一切ありません。株やファンドへの投資は原則自己責任で行うものとの意識を持つことが大切ですが、万が一被害に遭ったときは、以下のような救済方法を取ることができます。

救済方法

ウソの儲け話で大きな損失を被った場合、以下のような救済方法が考えられます。しかし、だまし取られた現金が無事に全額戻ってくるとは限りません。それを覚悟の上で以下のような救済措置を実施するとよいでしょう。

不法行為に基づく損害賠償請求

ほとんど価値のない株や運用実態のないファンドなどを、あたかも高額なリターンが得られる手堅いものであるかのように見せかけることは、民法上の「不法行為」に当たります。そのため、話を持ち掛けてきた業者に対して、不法行為責任に基づく損害賠償請求をすることが可能です。

無登録業者による販売は原則無効

平成23年の金融商品取引法改正により、金融商品取引法上無登録業者による未公開株や未公開証券の販売は原則として無効とされています。そのため、被害者は取引の無効を主張できるのです。

振り込め詐欺救済法が適用可能なことも
ファンドや社債販売を行う際、実体のない会社の社債を高い利息が受け取れると偽って販売することは詐欺行為にあたります。そのため、振り込め詐欺救済法を適用して相手方の口座を凍結させることが可能です。

ファンドの場合はクーリングオフが適用できる

集団投資スキームを利用したファンド販売の場合、営業を行う者が事業を遂行する役務に対して投資者に帰すべき組合財産から手数料を徴収することが多くなっています。これを役務提供契約ととらえると、特定商取引法が適用されることになり、クーリングオフが利用できる可能性があります。

上記のような救済方法はあるものの、だまし取られたお金がすべて返ってくるとは限りません。赤の他人から持ちかけられた話で利益を得られるようなおいしい話はまずないため、そのような話をする業者は相手にしないことが一番です。しかし、万が一お金を渡してしまった場合は、最寄りの消費生活センターか消費者問題に強い弁護士に相談し、対応してもらうことが必要です。

消費者トラブルに巻き込まれたら弁護士に相談を
悪質な不正請求・不当契約は法律のプロが解決
  • 購入した商品が不良品でメーカーに問い合わせたところ、返金・交換に応li>えなかった
  • クレジットカードの利用明細に見に覚えのない請求が含まれていた
  • 突然、アダルトサイトから料金を請求された
  • 月額契約したエステサロンをやめたいのに解約させてもらえない
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  • 上記に当てはまるなら弁護士に相談