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親族内承継とは?子や親族へ事業を引き継ぐ方法
長年かけて育ててきた会社や事業を、わが子に引き継いでほしい。そう願う経営者の方は多いはずです。あなたも、自分が築いてきたものを次の世代へ託したいと考えて、このページを開いたのかもしれません。事業を後継者にバトンタッチすることを事業承継といいますが、その中でも、子や親族を後継者にする方法を親族内承継と呼びます。
親族内承継は、古くから最も一般的に行われてきた事業の引き継ぎ方です。会社や個人事業を、わが子や兄弟、おいやめいといった親族に受け継いでもらうことで、経営者が大切にしてきた理念や価値観を、家族の手で守り続けていけます。一方で、計画的に準備を進めないと、税金や相続をめぐる思わぬトラブルを招くこともあります。
この記事では、親族内承継のメリットや、何を引き継ぐのか、自社株の承継方法、そして見落としがちな相続との関係まで、弁護士の視点でわかりやすく整理していきます。大切な事業を、家族へ円満に引き継ぐために、まずは全体像をつかんでいきましょう。なお、税額や株式の評価額といった具体的な数字は、制度や状況によって変わるため、ここでは考え方の軸を中心に説明します。
事業承継は、ただ会社の名義を変えれば終わり、という単純なものではありません。経営の実権を確かに引き継ぎ、税金や相続の問題に備え、従業員や取引先との関係を守りながら進めていく、息の長い取り組みです。だからこそ、行き当たりばったりではなく、しっかりとした計画が欠かせません。とはいえ、ポイントを押さえれば、けっして手の届かない難題ではありません。一つずつ整理していきましょう。
この記事では、まず親族内承継のメリットを確認し、続いて引き継ぐべき三つの要素、自社株の承継方法、税負担や相続をめぐる課題、そしてトラブルを防ぐ制度や進め方までを順に見ていきます。読み終えるころには、自分の会社や事業を、どう家族へ引き継いでいけばよいのか、その道筋が見えてくるはずです。気になるところから読み進めてみてください。
会社を立ち上げ、ここまで育ててきた経営者にとって、事業は人生そのものといってもよいかもしれません。その大切なものを、信頼するわが子や親族へ託す。それは、喜びであると同時に、大きな責任を伴う決断でもあります。だからこそ、感情だけでなく、冷静な準備と計画が必要です。この記事が、あなたの大切な事業を次の世代へつなぐための、確かな手がかりになればと思います。
親族内承継は、準備に時間こそかかりますが、しっかり計画を立てて取り組めば、家族の手で事業を守り、育てていける、たいへん意義のある選択です。大切なのは、できるだけ早く動き出すこと、そして一人で抱え込まず専門家の力を借りることです。あなたが築いてきたものが、次の世代へ確かに受け継がれていくよう、今できる準備から始めていきましょう。
事業を継ぐということは、単に資産を受け取ることではなく、そこで働く人たちの暮らしや、取引先との約束まで引き受けることです。その重みを理解したうえで、後継者とともに一歩ずつ歩んでいけば、きっとよい承継ができます。
親族内承継のメリット
まずは、親族内承継にどんな利点があるのかを見ていきましょう。ほかの引き継ぎ方と比べて、いくつかの強みがあります。
関係者の理解を得やすい
後継者が経営者の子や親族であれば、従業員や取引先、金融機関といった関係者の理解を得やすいという利点があります。「先代の息子さんが継ぐなら安心だ」と受け止めてもらえることも多く、引き継ぎがスムーズに進みやすいのです。長年築いてきた信頼関係を、そのまま次の世代へ引き継ぎやすい点は、大きな魅力といえます。
会社にとって、取引先や金融機関との信頼関係は、何ものにも代えがたい財産です。経営者が代わるとき、この信頼が揺らいでしまうと、取引が細ったり、融資の条件が変わったりすることもあります。その点、後継者が経営者の家族であれば、関係者は安心して取引を続けてくれることが多いのです。承継をきっかけに信頼が損なわれるリスクを抑えられることは、親族内承継の見過ごせない利点です。
とはいえ、家族だからといって、関係者が自動的に信頼してくれるわけではありません。後継者が経営者としての力量を示してこそ、信頼は本物になります。だからこそ、承継の前から後継者を取引先や金融機関に引き合わせ、少しずつ顔を覚えてもらい、信頼を育てていくことが大切です。先代の信用を土台にしつつ、後継者自身の信用も積み重ねていく。この二段構えが、円滑な承継を支えます。
金融機関との関係も同じです。融資を受けている会社では、経営者が代わることで、借入の条件や保証の扱いが見直されることもあります。後継者が金融機関の信頼を得られるよう、早めに関係づくりを始めておくと安心です。とくに、経営者が会社の借入の個人保証をしている場合、その保証を後継者がどう引き継ぐかは、慎重に検討すべき重要な論点になります。
早くから計画的に準備できる
親族内承継では、後継者を早い段階で決めて、時間をかけて育てていくことができます。経営に必要な知識や経験を、何年もかけてじっくり身につけてもらえるのです。後継者の育成だけでなく、株式や資産の引き継ぎについても、余裕をもって計画を立てられます。準備期間を長く取れることは、円満な承継への大きな助けになります。
事業承継には、思いのほか多くの準備が必要です。後継者を育てるだけでなく、株式をどう集めるか、相続でほかの家族とどう折り合うか、税金にどう備えるか。これらを一つずつ整えていくには、何年もの時間がかかることも珍しくありません。早くから後継者が定まっていれば、その長い準備期間を有効に使えます。時間という資源を味方につけられることが、親族内承継の強みなのです。
逆に、準備の時間が足りないまま承継を迎えると、あらゆることが後手に回ります。後継者の育成が不十分なまま経営を任せることになったり、株式の集約が間に合わなかったり、相続でもめたりと、問題が次々に噴き出しかねません。だからこそ、親族内承継を考えるなら、まだ早いと思うくらいの時期から動き出すのが理想です。早すぎて困ることは、まずありません。
経営理念を受け継いでもらえる
身近で経営者の姿を見て育った親族なら、その経営理念や仕事への姿勢を、自然と受け継いでくれることが期待できます。会社が大切にしてきた価値観を守りながら、次の世代へとつないでいける。これは、外部から後継者を迎える場合には得がたい、親族内承継ならではの強みです。
会社には、創業以来受け継がれてきた理念や、独自の社風といった、目に見えない財産があります。これらは、その場かぎりの引き継ぎでは伝わりにくいものです。けれども、幼いころから経営者の背中を見て育った親族であれば、こうした精神的な土台を、肌で感じながら受け継いでくれます。事業の魂ともいえる部分を絶やさずに次へつなげること。これこそ、親族内承継が長く選ばれてきた理由の一つです。
親族内承継で引き継ぐもの
事業を引き継ぐといっても、引き継ぐべきものは一つではありません。大きく三つの要素があり、それぞれをきちんと承継することが、円滑な事業承継につながります。
| 引き継ぐもの | 主な内容 |
|---|---|
| 経営権 | 会社を動かす力。株式や事業そのもの |
| 資産 | 事業用の不動産や設備、資金など |
| 知的資産 | ノウハウや技術、信用、取引先との関係 |
とくに見落とされがちなのが、三つめの知的資産です。長年の経営で培ってきたノウハウや、取引先との信頼関係、従業員との結びつきといったものは、目に見えませんが、事業の価値そのものを支える大切な財産です。これらをきちんと引き継がないと、形のうえでは事業を継いでも、中身が伴わなくなってしまうことがあります。
たとえば、長年の取引先との関係が、実は先代経営者の人柄によって支えられていた、というのはよくある話です。経営者が代わったとたんに取引が途絶えてしまっては、事業は大きく傾きます。だからこそ、後継者には、こうした人と人とのつながりも、丁寧に引き継いでいく必要があります。先代が元気なうちに、後継者を取引先へ紹介し、関係を築いてもらう。そうした地道な積み重ねが、知的資産の承継を支えるのです。
同じように、従業員との関係も大切な知的資産です。長年会社を支えてきたベテラン社員が、後継者を認めて協力してくれるかどうかは、承継後の経営を大きく左右します。後継者が現場で汗を流し、社員と信頼関係を築いておくことは、目に見えにくいけれど決定的に重要な準備です。人の心は、書類では引き継げません。だからこそ、時間をかけた関係づくりが欠かせないのです。
承継がうまくいかない原因の一つに、後継者と古参社員との間に溝が生まれてしまう、という問題があります。長年会社を支えてきた社員からすれば、経験の浅い後継者に従うことに、抵抗を感じることもあるでしょう。こうした溝を埋めるには、後継者が真摯に学ぶ姿勢を見せ、社員の知恵に耳を傾けることが大切です。先代が橋渡し役となって、後継者と社員の関係をつないでおくことも、円滑な承継への助けになります。
経営権を引き継ぐうえで中心となるのが、株式の承継です。会社の意思決定は、株式の保有割合によって左右されます。後継者がしっかりと経営の舵を取れるよう、株式をどう引き継ぐかが、親族内承継の大きなポイントになります。
会社の重要な決定は、株式を多く持つ人の意向によって決まります。もし後継者が十分な株式を持てず、ほかの親族に株式が分散していると、後継者が自分の考えで経営を進めようとしても、思うように決められないことがあります。経営者として責任を持って舵取りをするには、それにふさわしい議決権を確保しておくことが不可欠です。株式の集約は、後継者が安心して経営に専念するための土台だといえます。
株式が分散していると、後継者が重要な決定をしようとするたびに、ほかの株主の同意を得る必要が出てきます。これでは、機動的な経営は望めません。とくに、経営方針をめぐって親族間で意見が割れたとき、株式が分かれていると、会社の意思決定そのものが止まってしまうおそれもあります。後継者が腰を据えて経営に取り組めるよう、株式を後継者のもとへ集めておくことの意味は、想像以上に大きいのです。
自社株をどう承継するか
会社の経営権を引き継ぐには、後継者に株式を集めることが欠かせません。株式が分散したままだと、後継者が思うように経営を進められなくなるおそれがあるからです。株式を後継者に引き継ぐ方法には、大きく三つの選択肢があります。
生前贈与で引き継ぐ
経営者が元気なうちに、後継者へ株式を贈与する方法です。早くから計画的に進められるのが利点ですが、贈与には税負担が伴うことがあるため、進め方には注意が必要です。時間をかけて少しずつ引き継ぐなど、工夫が求められます。
生前贈与のよいところは、経営者の意思で、確実に後継者へ株式を渡せる点です。相続を待つのではなく、自分の目が黒いうちに引き継ぎを進められるため、計画どおりに事を運びやすくなります。一方で、まとめて多くの株式を贈与すると、その分の負担が重くなることもあります。長い時間をかけて少しずつ渡していくなど、負担を抑える工夫をしながら進めることが大切です。
株式の生前贈与には、いくつかの進め方があります。毎年少しずつ渡していく方法もあれば、まとまった株式を一度に渡したうえで、税の精算を相続のときまで先送りにする方法もあります。どちらが適しているかは、会社の状況や経営者の年齢、後継者の事情などによって変わります。一律の正解はありませんから、自分のケースに合った方法を、専門家と相談しながら選んでいくことが大切です。
譲渡で引き継ぐ
後継者が経営者から株式を買い取る方法です。後継者に資金が必要になりますが、対価を支払って引き継ぐことで、ほかの相続人との間で不公平が生じにくいという面もあります。
相続で引き継ぐ
経営者が亡くなったときに、相続によって後継者が株式を引き継ぐ方法です。ただし、遺言などで後継者に株式を集める準備をしておかないと、株式がほかの相続人にも分散し、経営が不安定になるおそれがあります。
相続による承継でとくに気をつけたいのが、株式が法定相続分にしたがって複数の相続人に分かれてしまう事態です。何も準備をしていないと、後継者だけでなく、ほかのきょうだいにも株式が渡り、経営の意思決定が複雑になりかねません。これを防ぐには、後継者へ株式を集中させる内容の遺言を用意しておくことが有効です。ただし、その際にも、ほかの相続人の最低限の取り分への配慮を忘れてはいけません。
遺言は、後継者へ確実に株式を引き継ぐための、強力な手段です。けれども、遺言で後継者にすべてを集中させようとすると、ほかの相続人の取り分が極端に少なくなり、最低限の取り分の保障を侵してしまうことがあります。そうなると、ほかの相続人から取り戻しを求められ、かえって争いを招きかねません。遺言を作る際には、事業を守る視点と、家族の公平を保つ視点の、両方のバランスを慎重に考える必要があります。
親族内承継の課題と注意点
多くの利点がある親族内承継ですが、注意すべき課題もあります。これらを知らずに進めると、思わぬ壁にぶつかることがあります。
税負担への備え
株式や事業用資産を引き継ぐ際には、税負担が生じることがあります。とくに、業績の良い会社の株式は評価が高くなり、その分、引き継ぐ際の負担が大きくなることもあります。後継者がこの負担に対応できるよう、早めに見通しを立て、備えておくことが大切です。具体的な税負担の見込みについては、税理士などの専門家に確認するのが確実です。
皮肉なことに、会社の業績が良ければ良いほど、株式の評価は高まり、引き継ぐ際の負担も大きくなる傾向があります。立派に育てた会社だからこそ、承継の負担が重くのしかかる、ということが起こり得るのです。この負担に後継者がどう対応するかは、事業承継の大きな課題です。だからこそ、負担を軽くするための制度の活用も含めて、早い段階から備えを考えておくことが欠かせません。
負担への備えとしては、計画的に株式を引き継いで負担を分散させる方法や、事業承継を支援する制度を活用する方法などがあります。何の備えもないまま相続を迎えると、後継者が重い負担を抱え込み、最悪の場合、事業の資産を手放さざるを得なくなることもあります。そうした事態を避けるためにも、どんな備えができるのかを、早めに専門家と一緒に検討しておくことが大切です。
後継者の育成
後継者に経営者としての力が備わっていなければ、事業を引き継いでも立ちゆかなくなるおそれがあります。経営に必要な知識や判断力は、一朝一夕には身につきません。だからこそ、早い段階から後継者を決め、計画的に育てていくことが欠かせないのです。
ほかの相続人との公平
もっとも注意したいのが、ほかの相続人との関係です。事業を継ぐ子に株式や事業用資産を集中させると、ほかの子の取り分が少なくなり、不公平感から争いに発展することがあります。一定の範囲の相続人には、最低限の取り分が法律で保障されており、これを侵害すると、その取り戻しを求められることもあるのです。この点への配慮を欠くと、せっかくの承継が、家族の争いの火種になりかねません。
事業を継ぐ子に財産を集中させたいという思いと、ほかの子にも公平に分けたいという思いは、しばしばぶつかり合います。経営者にとって、これは頭の痛い問題です。事業を守るためには株式を後継者にまとめたい。けれども、それではほかの子が納得しないかもしれない。この難しいかじ取りこそ、親族内承継の最大の悩みどころだといってもよいでしょう。だからこそ、早めの対策が重要になります。
この問題への対処として大切なのは、ほかの相続人にも目配りをすることです。たとえば、事業を継がない子には、事業以外の財産を多めに渡すことで、全体としての公平を図る方法があります。あるいは、後継者から他の相続人へ何らかの形で埋め合わせをする方法も考えられます。事業を守りつつ、家族の納得も得る。そのための工夫を、早いうちから練っておくことが、円満な承継の鍵になります。
こうした調整は、経営者が元気なうちに、家族みんなで話し合っておくのが理想です。なぜ事業を一人の子に集中させるのか、その理由を経営者の口から伝え、ほかの子の理解を得ておく。そうすることで、相続が起きたときの不公平感や不信感を、大きく減らせます。財産の分け方そのものだけでなく、そこに込めた思いを共有しておくこと。それが、家族の絆を保ちながら事業を引き継ぐための、何よりの備えになります。
相続トラブルを防ぐ仕組みを知っておこう
親族内承継では、事業用資産を後継者に集中させる必要がある一方で、それがほかの相続人の取り分を圧迫するという、難しい問題が生じます。この板挟みを和らげるための仕組みが、法律によって用意されています。
中小企業の事業承継を円滑に進めるための法律では、相続の際の最低限の取り分をめぐるトラブルを防ぐための特例が設けられています。たとえば、後継者が引き継いだ自社株について、ほかの相続人の取り分の計算から外す合意をしておくことができる、といった仕組みです。あらかじめこうした取り決めをしておくことで、後継者が安心して経営に専念できる環境を整えやすくなります。
また、この法律には、事業を引き継ぐ際の税負担を一定の条件のもとで猶予する制度も含まれています。これらの制度を活用できるかどうかは、会社の状況や手続きの進め方によって変わります。複雑な制度ですから、利用を考える場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。制度の存在を知っておくだけでも、選べる道が広がります。
こうした制度は、知らなければ使えません。逆にいえば、存在を知って早めに準備を始めれば、後継者の負担を大きく和らげられる可能性があります。ただし、利用するには一定の要件を満たし、定められた手続きを踏む必要があります。自己流で判断するのは危険ですから、活用を考えるなら、必ず専門家に相談しながら進めてください。制度を味方につけられるかどうかで、承継のしやすさは大きく変わります。
こうした制度は、要件や手続きが細かく定められており、年々見直しもされています。ある時点で使えた制度が、状況によっては使えなくなることもあります。だからこそ、最新の情報をもとに判断することが欠かせません。制度の活用を検討するなら、その分野にくわしい専門家に相談し、自分のケースで何が使えるのかを確認するのが確実です。情報の鮮度が、そのまま承継の成否に関わってきます。
親族内承継の進め方
では、実際に親族内承継を進めるには、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。流れを整理しておきましょう。
- 後継者を決める。誰に事業を引き継いでもらうのかを、早い段階ではっきりさせます。
- 後継者を育成する。経営に必要な知識や経験を、時間をかけて身につけてもらいます。
- 承継の計画を立てる。株式や資産をどの方法で、いつ引き継ぐのかを具体的に決めます。
- 相続への備えをする。ほかの相続人との公平に配慮し、遺言や特例の活用を検討します。
- 専門家と連携しながら実行する。税や法律の問題について、専門家の助言を受けつつ進めます。
大切なのは、できるだけ早くから準備を始めることです。後継者の育成にも、株式の引き継ぎにも、相続への備えにも、時間がかかります。経営者が元気なうちに計画的に進めておくことで、いざというときに慌てずに済みます。先延ばしにすればするほど、選べる手は少なくなっていくものです。
もし、経営者が急に倒れたり亡くなったりして、何の準備もないまま相続が起きてしまうと、事態は一気に深刻になります。後継者が決まっていない、株式が分散する、税負担に対応できない、相続人どうしがもめる。こうした問題が同時に押し寄せ、最悪の場合、事業の継続そのものが危うくなることもあります。そうした事態を避けるためにも、元気な今のうちから、一歩ずつ準備を進めておくことが何よりも大切なのです。
準備は、何も一度にすべてを整える必要はありません。まずは後継者を決める、次に育成を始める、そして株式や相続の計画を立てる、というように、できることから少しずつ進めていけばよいのです。大切なのは、先送りにせず、今日から第一歩を踏み出すことです。小さな一歩の積み重ねが、やがて確かな承継の土台を築いてくれます。思い立った今が、始めどきだと考えてください。
専門家に相談すべきケース
親族内承継は、経営、税金、法律、家族の事情が複雑にからみ合う、難しい取り組みです。次のような場合は、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
- 自社株の評価や税負担がどのくらいになるのか見当がつかない
- 後継者に株式をどう集めればよいか判断できない
- ほかの相続人とのバランスをどう取ればよいか悩んでいる
- 事業承継を支援する制度を活用できるか知りたい
税金の細かな計算は税理士の、相続をめぐる権利関係や家族間の調整は弁護士の得意とするところです。親族内承継では、こうした専門家が連携して支えてくれることで、円満かつ確実な引き継ぎが実現しやすくなります。大切な事業と、大切な家族の関係の両方を守るために、頼れる専門家の力を借りることを、けっして遠回りだとは思わないでください。早めの相談が、あなたと後継者の未来を守る確かな備えになります。
よくある質問
後継者にしたい子がまだ若く、経営経験がありません
経営経験は、時間をかけて積んでいくものですから、今の段階で経験がなくても問題ありません。むしろ、早くから後継者を決めておけば、それだけ長く育成の時間を取れます。社内のさまざまな部門を経験させたり、外部で学ばせたりしながら、計画的に経営者としての力を養っていくことが大切です。早めに承継を見すえて動き出すことが、何よりの準備になります。
事業を継ぐ子に財産を集中させると、ほかの子ともめませんか
その心配は、親族内承継でもっとも注意すべき点です。事業用の資産を一人に集中させると、ほかの子の取り分が少なくなり、争いの原因になることがあります。これを防ぐには、ほかの子への配慮を含めた財産の分け方を考えたり、事業承継を支援する制度を活用したりすることが有効です。早めに弁護士などに相談し、家族全体のバランスを踏まえた計画を立てておくと安心です。
個人で営む事業でも親族内承継はできますか
できます。会社だけでなく、個人で営む事業も、子や親族へ引き継ぐことができます。ただし、個人事業の場合は、事業用の資産や許認可、取引先との契約などを、一つずつ引き継いでいく必要があります。会社の場合とは手続きが異なる部分もあるため、進め方に迷うときは、専門家に相談しながら準備を進めるとよいでしょう。
親族の中に後継者にふさわしい人がいない場合はどうすればよいですか
親族の中に適任者がいない場合は、従業員に引き継いでもらう方法や、外部の第三者に引き継ぐ方法など、ほかの選択肢を検討することになります。親族内承継にこだわりすぎて、無理に承継を進めると、かえって事業がうまくいかなくなることもあります。大切なのは、事業を健全に続けていける形を選ぶことです。どの方法がよいか迷うときは、専門家に相談してみてください。
後継者を一人に絞れず、子ども複数に継がせたいのですが
複数の子に事業を引き継がせること自体はできますが、経営の意思決定が分かれて混乱しやすいという難しさがあります。誰が最終的な決定権を持つのかがあいまいだと、後々の対立につながりかねません。役割分担を明確にする、あるいは中心となる後継者を一人定めるなど、経営が安定する形を工夫することが大切です。複数での承継を考えるときこそ、早めに専門家へ相談し、もめない仕組みを整えておくとよいでしょう。
事業承継の相談は、誰にすればよいですか
事業承継は、税金、法律、経営など、さまざまな分野が関わる総合的な取り組みです。自社株の評価や税負担、事業承継税制については税理士が、相続をめぐる権利関係や遺言、家族間の調整については弁護士が力になれます。どこから手をつければよいか迷うときは、まず全体像を整理してもらうところから始めるとよいでしょう。複数の専門家が連携して支えてくれる体制があると、より安心して承継を進められます。
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基礎控除額
4,200万円
課税対象額
800万円
相続税の総額(概算)
80万円
申告が必要です
※ 配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を考慮しない概算です。実際の税額は個別事情により異なります。
