2019/1/28 144view

親族内承継とは?子どもへの事業承継の利点とデメリット、手続の流れ

この記事で分かること
  1. 親族内承継とは、自分の娘や息子、娘婿などの親族に事業を継がせること
  2. 親族内承継は従業員や取引先に受け入れられやすく、後継者も早期に育成できる
  3. 相続の問題が起きるので、弁護士へ早めの相談を心掛ける

会社を長期的に運営するためには、必ず後継者の問題が起こってきます。後継者を親族にするか、従業員にするか、他社で実力を積んだ有力者にするかは経営者の判断によります。今回は、親族に事業を継承する「親族内承継」について説明します。

親族内承継とは?

「親族内承継」とは文字通り、自分の娘や息子、娘婿などの親族に事業を継がせることを意味します。現在は減少傾向にあるとはいえ、最も多く選択される承継方法となっています。事業継承の準備をしておかないと、経営者が死亡した際に会社が廃業に追い込まれるケースが数多くあるため、事前の準備が重要になります。

親族とは?

法律用語の「親族」とは、厳密には「6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族」(民法725条)のことをいいます。「親等」とは親族関係の遠近を示す言葉で、「姻族」とは配偶者の血族のことを指します。つまり「親族」には、子や孫とその配偶者、兄弟姉妹とその配偶者などが含まれます。

しかし一般的に「親族内承継」という場合、世間の目から見て身内に引き継がれたと判断されているときに用いられることが多く、厳密な意味で用いられているわけではないといえます。

親族内承継のメリット

親族内承継を選択する理由には、せっかく自分が作った会社を娘や息子に引き継いでもらいたいという心理的な要因もあるでしょう。しかし、親族内承継のメリットは、自分の願望を実現させることができるというだけではありません。主に、次のメリットがあることも知られています。

  • 周りに受け入れられやすい
  • 後継者を探す手間が省け、早期から準備できる

周りに受け入れられやすい

親族内承継の場合、従業員や取引先など周りの方の納得を得られる場合が多く、それほど士気の低下や反発を招くことがありません。当然、親族内承継を快く思わない方もいるでしょう。しかし、親族以外の者に承継させる場合もそれは同じです。

親族内承継の場合、金融機関や取引先の信頼をあまり失わずに事業を継続することができ、この点大きなメリットがあるといえます。

後継者を探す手間が省け、早期から準備ができる

後継者を育てるには時間がかかります。社内のシステムや仕事のノウハウを把握しておく必要があり、従業員や取引先とも信頼関係が築かれていることが理想的です。このような後継者を育てることは一朝一夕で行うことはできず、そのため早期から育てることができる親族内承継には一定のメリットがあります。また、早期から準備しておくことで、経営者の急病や急死に備えることもできます。

親族内承継のデメリット

以上のようなメリットがあるとはいえ、親族内承継にもデメリットがあります。次に親族内承継のデメリットについてみていきます。

  • 親族内承継を断られることもある
  • 時間がかかることがある
  • 遺産トラブルが起きる
  • 多額の税金がかかる

親族内承継を断られることもある

経営者が娘や息子に会社を継いでもらう気でいても、本人が乗り気ではなく断られる場合もあります。もし受け継いでくれると考えていて準備をしていなければ、困ることになってしまいます。このようなことがないよう様々なケースを考えて後継者を選び、早めの準備をしておく必要があるでしょう。

時間がかかることがある

親族内承継の場合、早めに準備できることがメリットだと上では述べましたが、会社を継がせようと考えている親族が異なる会社の従業員や学生である場合、育成に時間がかかってしまうことがあります。

遺産トラブルが起きる

親族内承継をする場合に、遺産相続の方法を利用することがあります。しかしその場合、会社の後継者に多くの遺産が相続されることになり、その他の相続人とのトラブルが起きかねません。このトラブルによって、株式や事業用資産の一部を経営と関係のない相続人が承継し、会社の運営に支障が出るということも起こり得ます。

多額の税金がかかる

生前贈与など遺産相続の方法をとる場合は、多額の相続税や贈与税がかかることもあります。特に中小企業でも評価額が高額になる会社の場合は、承継にかかるコストが多くなってしまうことがあります。そうなると、会社の一部を売り渡すなど事業規模が小さくしなければならないという場合も出てきてしまいます。

ワンポイントアドバイス
親族内承継には、多くのメリットもありますが、数々のデメリットもあります。また相続や承継に多くの手続がかかってしまうこともあります。こうしたデメリットを少しでも軽減するためには、まず専門の弁護士に相談することをおすすめします。

親族内承継の方法~生前贈与、相続、売買

親族へ事業を承継させるためには、「生前贈与による承継」「相続による承継」「売買による承継」の3つの方法があります。具体的にみていきましょう。

生前贈与による承継

生前贈与による承継」とは、経営者が生きている間に後継者に株式などを贈与し、承継を行う方法です。生前贈与のメリットは、経営者が相続後も関わって面倒をみることができる点や、後継者が早期の段階から経営に関われるところにあります。長男など、早くから後継者が決まっている場合は、生前贈与による承継を選択する経営者が多くいます。

相続による承継

経営者が遺言書に承継について記しておき、死亡したら後継者に会社が承継される形が「相続による承継」です。相続による承継を行うためには、事前に弁護士と相談して遺言書を作成する必要があります。この方法のメリットは、贈与税に比べれば安価な相続税が適応されることであり、また次に説明する売買による承継の場合に比べ、準備資金が少なくなることです。

売買による承継

売買による承継」とは、適正な価格を払って自社株や事業用資産を購入したという形で後継者へ承継させる方法をいいます。対価を払っての承継ですので、遺産トラブルが起きづらく、後継者の地位も安定しやすくなりますが、多額の費用を事前に準備しなければならないのが欠点です。親族内承継の場合には、売買による承継の方法がとられるのは少ないといえるでしょう。

ワンポイントアドバイス
親族内承継の場合、遺産トラブルなど法的な問題が発生しやすくなります。こうしたトラブルを未然に防ぐために必要なのは、弁護士と相談して親族内承継の手続を進めていくことです。事業の承継にはある程度の時間がかかりますので、思い立ったらすぐ専門の弁護士に相談してみましょう。

親族内承継のポイント

親族内承継は、身内への承継であるため、あまり準備をしなくていいと簡単に考えがちですが、実際にはやることがたくさんあります。まずは早期から承継問題に取り組むことを心掛け、めぼしい人物の選定、早めの打診などの対策を行っておきましょう。

「当然継いでくれるものだから黙っている」という考えで自分だけで進めていると、「そういうつもりがないのかと思って、違うことをする準備をしてしまった」ということにもなりかねません。親族内承継の場合でも、早めに打診し、後継者育成に取り組みましょう。

公正証書遺言の作成

相続による承継を行う場合には、遺言書を書かなければなりません。もし遺言がなければ、相続人のすべてで会社を分割することにもなりかねません。しかし、遺言書を書いても偽造されたり、紛失したりするなんてことになったら元も子もありません。

そこで公正証書遺言を利用することをおすすめします。公正証書遺言を作成するためには公証人に内容を話さなければならないなどのデメリットもありますが、遺言が紛失しない、偽造されない、すぐに遺産相続を開始できるなどの多大なメリットがあります。

遺言書の作成には時間がかかりますので、弁護士と相談して早期に進めたほうがいいでしょう。また、この段階で遺言執行者となる弁護士を決めておくことも重要です。

親族内承継を有利に進めるためのコツ~無議決権株式の発行~

他の相続人にも株を渡す必要があるが、経営に関われないようにしたいという場合には、無議決権株式を事前に発行しておきましょう。

無議決権株式とは、株式を有していても株主総会で投票する権利がない株式のことを指し、これを有していると財産になる一方で、経営に関わることができません。またさらに、税金対策としては、株式評価を下げて会社の評価額を減らす方法がとられることもあります。

親族内承継をする心構え~しっかりとした計画を立てる~

親族内承継が上手くいかなかったという場合の多くは、準備不足にあります。「どうせ自分が死ぬのはまだまだ先だから、まだ準備しなくていいや」という考えは、後々のトラブルにつながります。親族内承継の場合は特に、相続の問題と切っても切り離せません。事前に他の相続人へ配慮した計画を作り、合意は言葉ではなく書面で記録を残すようにしましょう。

ワンポイントアドバイス
継承者以外の相続人にとっては、会社の親族内承継は単なる遺産相続問題のひとつでしかありません。経営者にとっては会社の問題が第一かもしれませんが、他の方はそうではないので、しっかりと対策を立てておくことが重要になります。トラブルを未然に防ぐために、事前に弁護士に相談し計画を立てるようにしましょう。

親族内承継は弁護士に相談

親族内承継とは、親族に事業を承継させる方法のことを意味します。この他に従業員承継などの承継方法がありますが、親族内承継の場合は身内に会社を譲ることができるので、早期から後継者を育成でき、経営者が安心できるといったメリットがあります。

しかし、親族内承継には遺産トラブルが発生しやすく、事前に対策を立てておくことが重要になります。もし親族内承継を考えているのならば、早めに専門の弁護士に相談しに行き、しっかりとした計画を立てるよう心掛けましょう。

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