家賃滞納の時効は?踏み倒し方法はある?

この記事で分かること
  1. 滞納家賃の時効は5年ですが、滞納から5年が経過しただけでは時効は成立しません。
  2. 債権者には時効の成立を阻止するためのさまざまな手立てがあります。
  3. 滞納は放置せず大家さんに相談しましょう。すでにトラブルになっている場合は弁護士に解決を依頼してください。

滞納家賃の時効は5年ですが、時効を成立させるまでのハードルは非常に高いです。夜逃げなどの選択をしてしまう前に、正しい対処法を知りましょう。

家賃滞納に時効はある?

債権(借金)の時効とは、定められた一定の期間が経過すれば債権者としての権利が失われることをいいます。滞納した家賃にも時効があり、時効が成立すれば債権者(ここでは賃貸契約を結んでいる大家さん)は債務者に対してそれ以上の支払いを要求することができません。

滞納した家賃の時効は5年

一般的な債権の時効は10年間ですが、基本的に毎月払いとなる家賃のように、1年未満の短期間の借金に関しては、5年間の時効と定められています。ただし、家賃を滞納したときから5年が経てば、すべての滞納分の支払い義務がなくなるわけではありません。

たとえば、2013年9月1日から毎月1年間分の家賃を滞納していたとすると、2019年2月2日時点では、2013年9月1日~2014年2月1日までの6ヶ月分の滞納家賃は時効により消滅しますが、残り6ヶ月分の滞納分はまだ時効を迎えていないため、債務者には引き続き支払い義務が残ります。

ワンポイントアドバイス
滞納した家賃の時効の起算点(時効の計算を開始するとき)は、支払期日の翌日となります。

時効を待てばよい?滞納した家賃を踏み倒す方法はあるのか

時効によって債権が消滅するならば、時効を待てば滞納した家賃を払わなくても済むような気がします。しかし、時効が成立するための条件は厳しく、単に支払期日から5年が経過したからといって支払い義務が消滅するわけではないのです。

時効が成立するための条件

時効が成立するための条件は大きく2つあります。

【1】時効が成立するまでの間、滞納家賃を一切支払っていない

滞納家賃の時効が成立するまでの5年の間に一度でも滞納分の一部を支払っていれば、その時点で時効が中断するため、滞納をはじめた日から5年が経過していても時効は成立しません。

【2】債権者が未納家賃を回収する手立てを何も行っていないこと

支払いの催促や裁判上の手続きといった滞納家賃を回収する手立てを、大家さんや不動産会社が何も行わなかった場合は、支払期日から5年が経てば時効が成立する可能性が高まります。

滞納家賃の支払い義務から逃れるには「時効の援用」が必要

少なくとも上記2つの条件を満たして時効が成立したとしても、単に時間が経っただけでは債務者の支払い義務は残ったままです。滞納家賃の支払期日から5年が経って時効が成立したら、債務者は債権者に対して「時効の援用」を行わなければなりません。

時効の援用とは、「時効が成立したので債務を支払いません(=時効により債務の支払い義務が消滅したので、その利益を享受します)」という意思表示を債務者が債権者に対して行うことをいいます。

通常は、時効を援用するとの意思表示を記載した内容証明郵便(郵便局が文書の内容を証明してくれる公的な文書)を債権者に対して送付します。債権者が時効援用の内容証明郵便を受け取って初めて、滞納していた家賃の支払い義務は消滅するのです。

債権者は時効の成立を阻止できる

このように、家賃を滞納したときから一定の条件を満たした上で5年が経過し、さらに時効の援用を行えば、法手続き上は滞納家賃の支払いから逃れることができます。しかし、当然ながら債権者にも、時効の成立を阻止できるさまざまな手立てがあるのです。時効の成立を阻止する具体的な方法は、次の3つです。

【1】裁判上の請求

大家さんや不動産会社が滞納から5年の間に滞納家賃を支払うよう求める訴訟を起こした場合、その時点で時効が中断します。「時効の中断」とは、単に時効の計算がストップするというだけでなく、時効のカウントがリセットされる(これまでの時効のカウントがなかったことになる)ことです。

提訴されると時効の計算はいったんストップし、債権者からの請求を認める判決が下されると、その時点で時効のカウントは0に戻ります。さらに、確定判決が出てしまうと、滞納家賃の時効は5年から10年へ延長になります。また、確定判決だけでなく、差し押さえや仮差し押さえ、仮処分の手続きが認められた場合も、時効が中断します。

時効が中断する裁判上の手続きには訴訟の他、支払督促、調停、和解の申し立てがあります。これらの手続きをとられてしまうと、時効が成立するのは大変に難しくなります。

【2】裁判外の請求(催告)

普通郵便の文書や電話、自宅訪問などで滞納した家賃の支払いを求められているだけでは、時効の計算を止めたりリセットしたりすることはできません。しかし、証拠に残すことができる内容証明郵便で支払いを請求すると、その時点で時効のカウントをいったん止めることができます。

内容証明郵便を用いた請求による時効の中断の効果は、内容証明郵便を送付してから6ヶ月です。たとえば、あと数日で時効が成立するというときでも、内容証明郵便を送ることで、債権者にはそこから6ヶ月の猶予期間ができるのです。6ヶ月の間に【1】の裁判上の手続きを取り、支払いの請求や差し押さえなどが認められれば、時効のカウントを0に戻すことができます。

ただし、内容証明郵便を送ったときから6ヶ月以内に債権者が裁判上の手続きを取らなかった場合は、6ヶ月間の時効の中断はなかったものとされます。

【3】債務の承認

【2】の催告でも最終的には裁判上の手続きを行わなければなりませんが、裁判上の手続きを何ら踏まずに、時効のカウントをリセットさせる方法があります。それが「債務の承認」です。債務の承認とは、債務、つまり滞納家賃の存在を債務者が認めることをいいます。債務の承認にあたる行為は、たとえば次のようなものです。

  • 債権者に電話などで支払いを促され、滞納家賃の一部を支払う(1円でも支払ってしまえば債務を承認したとみなされます)
  • 債権者に電話などで支払いを促され、支払いを待ってくれるように頼む
  • 「債務承認書」など債務の存在を認める文書にサインする

債権者が電話などで支払いを促すだけの行為に、時効を中断させる効果はありません。しかし、債務者が上記のような行動により債務の存在を認めてしまうと、その時点で時効のカウントは0に戻ります。つまり、債務の承認を行ったときからさらに5年、時効が成立するまでの期間が延びるのです。

夜逃げすれば滞納家賃の返済を免れる?

ここまで見てきた方の中には、「だったら、債権者からの連絡が一切届かないように、5年の間行方をくらませてしまえばいい」と、“夜逃げ”という選択を考える方もいるかもしれません。しかし、夜逃げなどで滞納家賃の時効の成立を待つことは、実質不可能と考えられます。

たとえ上手く行方をくらませることができたとしても、債権者に住所を知られると思うと、住民票を取ることも簡単ではないでしょう。そのような不便な生活の中でさらに、いつ債権者に居場所が知られるかもわからないという不安に、5年もの間さらされ続けるのです。

一方で、債権者には公示送達など、相手の住所がわからなくても裁判の確定判決を得る方法もあります。時効が成立するまでに裁判上の手続きを取ることを続けることにより、時効の成立を半永久的に阻止する手立てがあるのですから、逃亡生活が必ず5年で終了するとも限らないのです。

ワンポイントアドバイス
時効の成立を待って滞納家賃を踏み倒すことは、実質的に不可能。現実的ではありません。今後の生活を守るためにも、家賃を滞納せざるを得ないときでも正しい対処が必要です。

時効の成立を待つのではなく、家賃滞納したときの正しい対処法について

ここからは、どうしても支払えず家賃を滞納してしまったときに取るべき正しい対処法を解説します。

滞納したまま放置せず、大家さんに連絡

支払えないからといって何の連絡もせずに滞納を放置することは、債務者にとって不利にしかなりません。滞納をせざるを得ない状況でも、必ず大家さんへ連絡をして、謝罪と交渉を行うことが大切です。

支払いの目途が立てられる場合

「今月ちょっと苦しいだけで来月には払える」「仕事が決まったので、給料が入れば払える」など、支払いの目途が立てられるのであれば、「×月×日までに払うので、支払いを待ってください」と大家さんへ相談してみましょう。

いつまでに支払うという期日を明確に決められるのであれば、数ヶ月程度の遅れであれば問題にはしないような対応を取ってくれるケースが少なくありません。

支払いの目途が立てられない場合

「失業中でしばらくは支払えない……」など、支払いの目途が立たないようであれば、毎月支払える額での滞納分の分割払いを相談してみましょう。必ず応じてもらえるとは限りませんが、大家さんのほうでも「まったくもらえないよりは」と、承諾してくれるケースがあるようです。

「催告がこないから」と家賃を滞納し続けると…

場合によっては、滞納をし続けているにもかかわらず、大家さんなどからまったく支払いの催促がない、というケースもあるでしょう。しかし、滞納家賃を請求されないからと安心していると、住み続けられなくなることもあります。

一般的に、家賃の滞納が3ヶ月以上になると、貸主は借主に対して強制退去の手続きを取ることができるとされています。もちろん、賃貸契約を交わしている以上貸主の意思で勝手に追い出すことはできませんが、正規の手続きをきちんと踏めば、借主はそれ以上そこに住み続けることができなくなります。

公的な支援制度を利用する

生活苦でどうしても家賃が支払えない場合は、次のような公的支援制度を利用することも可能です。

生活困窮者自立支援制度

経済的に生活が困難な人の自立をサポートしてくれる厚生労働省の制度です。就労支援や失業中の家賃補助(原則3ヶ月分、月額に上限あり)などを行っており、家計の立て直しを図れます。全国に相談窓口が設置されているので、まずは市町村役場に問い合わせてみましょう。

ワンポイントアドバイス
借金が膨れ上がり家賃の支払いも困難な場合、債務整理という法手続きで借金を減らすことが可能です。債務整理にはいくつか種類があり、どの方法を選択すべきなのかは収支の状況などにもよるので、早めに弁護士へ相談してみましょう。

家賃滞納で困ったときは弁護士へ相談

「どうしても家賃が払えなくて滞納してしまった」
「毎日支払い催促がきてどうしたらいいかわからない」

そんな家賃滞納などの借金トラブルに悩んでいる方は、とれる対応策や選択肢がたくさんあるうちに、できるだけ早く弁護士へ相談してみてはいかがでしょうか。

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