債務名義とは?差押えを可能にする債務名義の種類と取得方法

この記事で分かること
  1. 債務名義とは、強制執行を申し立てる資格を示す文書のことである。
  2. 債務名義には、確定判決をはじめとする11の種類がある。
  3. 強制執行の申立てには、執行文の付いた債務名義の正本が必要となる。
  4. 強制執行を行うなら、その分野に詳しい弁護士に相談するのが一番である。

強制執行の申立てには、執行文の付いた債務名義の正本が必要で、裁判所からもらう必要があります。そのあとの強制執行申立て、強制執行手続の進行も含め、慣れない人が取り組むと、思わぬ失敗につながりかねません。債務名義の取得に始まる強制執行については、その分野に詳しい弁護士への相談から始めましょう。

債務名義とは

債務名義とは、裁判所に強制執行を申し立てる資格を示す文書のことです。

強制執行とは、裁判所の力によって強制的に債権を回収する手続をいいます。たとえば、何度催促しても貸したお金を返してくれない人から強制的にお金を返してもらう手続がその例です。

強制執行は、債権者(前の例でいえば、お金を貸した人)が裁判所へ申立てることにより始まります。その際、債権者は、自分が強制執行を申し立てる資格があることを裁判所に示さなければなりません。強制執行は、家や給料の差押えなど、債務者(前の例でいえば、お金を借りた人)の生活への影響が大きいため、裁判所としては、本当に強制執行してよいことの確認がぜひとも必要だからです。

この時に用いられるのが、債権者・債務者・権利の内容と範囲が書かれた債務名義に他なりません。

ワンポイントアドバイス
「債務名義」はドイツ語の訳ですが、訳し方について専門家の評判は良くなく、強制執行とのつながりが今ひとつピンと来ないことばになってしまっています。ただ、債務名義は強制執行に欠かせないものなので、訳し方はさておき、このことばに慣れるようにしましょう。

債務名義の種類

法律は、具体的な債務名義として、11の種類を定めています。それらのうち、強制執行の実務で用いられることが多いのは、次の4つです。

  • 確定判決
  • 仮執行の宣言を付した判決
  • 執行証書
  • 和解調書

それぞれについて解説します。

確定判決

確定判決とは、もはや不服申立てができなくなった最終的な判決をいいます。

たとえば、債権者A対債務者Bの裁判で、

  • 地方裁判所は「Aの勝ち」の判決
  • Bが不服申立てした高等裁判所は不服申立てを認めない判決
  • さらに不服申し立てをした最高裁判所も不服申立てを認めない判決

となった場合、Bはこれ以上の不服申立てはできないので、「Aの勝ち」判決が確定判決となるのです。

また、地方裁判所の「Aの勝ち」判決のあと、不服申立て期間の2週間以内にBが不服申立てをしなければ、Bはもはや不服を申し立てることができなくなり、「Aの勝ち」判決が確定判決となります。

確定判決は、もはや変わることのない裁判所の最終判断であり、債権者の権利は動かしがたいものとして落着します。そこで、債務名義として、強制執行のもととすることができるわけです。

仮執行の宣言を付した判決

仮執行の宣言を付した判決(略して、仮執行宣言付判決)とは、仮の強制執行を許す一文が付いた判決をいいます。

たとえば、次のような判決主文(判決の結論に当たるもの)があったとしましょう。

  • 1 被告は、原告に対し、500万円の金員を支払え。
  • 2 訴訟費用は被告の負担とする。
  • 3 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

この第3項が、仮執行宣言です。「判決は確定していないけれど、ひとまず(=仮に)500万円の債権を回収するための強制執行をしてもよいですよ」という意味を表しています。

仮執行宣言付判決は、まだ相手が不服申し立てできる、つまり判決が確定していなくても、債務名義となり、この判決をもとに強制執行ができるのです。

そこには、判決が確定するまでの間に、相手が財産を処分してしまい、判決が確定してからの強制執行ができなくなることを防ぐねらいがあります。

執行証書

執行証書とは、「決めたことを債務者が守らなかったら、ただちに強制執行されてもかまいません」という意味の一文が書かれた公正証書のことです。

公正証書とは、当事者同士で決めた合意を、公証人役場という国の役所にいる公証人という公務員が証明する文書をいいます。
たとえば、夫婦が離婚するに当たり、元夫は元妻に対し、子どもの養育料として毎月10万円を送金するという公正証書を作る場合などです。

公正証書に、たとえば「私(元夫)が養育料の支払いを3か月分怠ったら、直ちに強制執行されてもかまいません」という内容が書かれていれば、執行証書となります。

元夫が養育料の支払いを3か月分怠れば、元妻はただちに、この執行証書をもとに、裁判所に元夫への強制執行を申立てることができるわけです。

もしも執行証書がなければ、元妻は裁判を起こして、「元夫は元妻に養育料3か月分を支払え」という判決をもらい、それを債務名義にすることで、やっと強制執行ができます。
執行証書には、こうした手続を省けるメリットがあるのです。

和解調書

和解調書とは、争いの当事者が互いに折れて争いをやめる合意(和解)を裁判所でした場合に、その合意内容を箇条書きにした文書をいいます。作るのは裁判所書記官です。

和解調書には、いったん始まった裁判の途中で和解することにより作られるものと、裁判が始まる前に当事者が裁判官の前で和解することによって作られるものとがあります。

どちらの和解調書も、確定判決と同じ力を持ちます。債務名義になることも確定判決の力のひとつですので、和解調書も確定判決と同じように、債務名義となるわけです。

ワンポイントアドバイス
本文で紹介したほかにも7つの債務名義があります。自分が持っている書類が債務名義になるかどうか迷ったら、強制執行に詳しい弁護士に相談しましょう。

債務名義の取得方法

裁判所に強制執行を申し立てるには、執行文の付いた債務名義の正本が必要になります。

執行文は強制執行への承認

執行文とは、裁判所書記官が、その債務名義で強制執行をしてもよいと認める一文のことです。実務では、「債権者は,債務者に対し,この債務名義により強制執行をすることができる。」という書き方がされます。

正本は原本の分身

正本とは、原本の写しでありながら原本と同じ力を持った文書をいいます。原本の分身といってもよいでしょう。謄本が、原本の写しにとどまり、原本と同じ力を持たないのと対照的です。

執行文付き債務名義正本の交付申請

執行文の付いた債務名義の正本は、債務名義が保管されている裁判所または公証役場からもらわなければなりません。たとえば、確定判決が債務名義だったら、確定判決の記録が保管されている裁判所からもらうことになります。

裁判所から執行文の付いた判決正本をもらう順序は、次のとおりです。

正本の交付申請

まず、確定判決の正本の交付申請を行います。

正本交付申請書を提出し、判決用紙1枚につき150円の手数料を収入印紙で納めます。

執行文付与の申請

次に、執行文の付与を申請します。

執行文付与申請書を提出します。執行文を付けてもらう判決正本も一緒に提出します。交付手数料として、判決正本1通につき300円の収入印紙を納めます。

執行文付与は、判決正本の最終ページの空欄に執行文の一文を書き足す、または執行文と題する書類を正本に継ぎ足す形で行われます。

正本交付と執行文付与の各申請書見本は、裁判所WEBサイトで見ることができます。

参考リンク:裁判所WEBサイト「執行文付与・証明申請 ①執行文付与申請書・同請書②書類の交付申請書・同請書」

執行文のサンプルは、次のとおりです。

執行文 見本

ワンポイントアドバイス
正本の交付申請や執行文付与の申請の仕方が分からなかったら、強制執行に詳しい弁護士に相談しましょう。

債務名義の取得を含む債務者への差し押さえ・強制執行の検討は弁護士に相談を

債権回収のため強制執行をするには、まず裁判所から執行文の付いた債務名義をもらい、次に裁判所に強制執行の申立てをするという流れになります。

それぞれの手続では、この記事に書ききれない決まりや必要書類があり、慣れない方がひとりで取り組むのは、とても大変です。

やはり、裁判所での手続の専門家である弁護士の力を借りるのが、強制執行を成功させ、債権を無事に回収する早道といえます。

債務名義の取得を含む債務者への差押えと強制執行を検討するなら、まず強制執行に詳しい弁護士に相談しましょう。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談