債権回収に有効な民事調停の進め方、メリット、デメリット

この記事で分かること
  1. 調停は裁判所で行う話し合いの手続き
  2. 調停は低コストかつ中立的に債務名義を取ることができる
  3. 調停に応じない相手に対しては効果がなく訴訟による債権回収せざるをえない

借金や売掛金の支払いを求めても応じてくれない、相手も意地になっているとき。お互いに頭を冷やして話し合える調停で前進を期待できます。調停委員会が間に入るため中立に近づき、訴訟ほどのコストもかかりません。その一方で訴訟と同じだけの拘束力がないことから、調停に前向きな人間に対してしか効果がないことも知っておきましょう。

民事調停を用いた債権回収とは

民事調停とは裁判所で調停委員会を通してお互いの主張を話し合い、合意に導く手続きです。民事調停を用いた債権回収とは、つまり直接の和解では難しい債権回収となります。

裁判所での話し合いと私的な話し合いの何が違うのか?

それは話し合いの形式と中立性です。

示談や訴訟の場合はお互いに対面して話ます。訴訟の場合も裁判官を間に主張をぶつけ合いますね。

しかし、調停の場合はお互いが別の部屋で待機します。調停委員会に主張するときは一方ずつが調停室に入ります。したがって相手に対する敵意をお互いが持っている場合でも、調停委員会がクッションになることで冷静な話し合いが可能となります。

お互いが話した内容で合意できれば調停調書が作成され、2回目以降の調停が必要であれば改めて日時の設定が行われます。

決して調停をすることで判決や決定が得られることはなく、あくまで合意の結果です。しかし調停調書は強制執行の根拠になるため有益です。

調停のコストは?

調停のコストは申し立て費用が請求金額に応じて数千円から数万円、時間は1回につき2時間程度です。また、2回目以降の調停がある場合は、1ヶ月ほど時間が空いてしまうので思いの他解決が長引くこともあります。

調停は調停委員会がいるため弁護士がなくても法的な知識が補われます。しかし調停委員会はどちらの肩を持つこともありません。調停を有利に運ぶなら弁護士に相談した方が良いでしょう。弁護士は費用がかかる一方で、調停も訴訟も当事者を代理できます。

調停委員と裁判官は違う?

調停委員会は裁判官と2人の調停委員によって構成されます。調停委員は元裁判官や弁護士といった法律の専門家が担う他、社会経験上相当とされる一般人が担当することもあります。

調停委員も裁判官と同じく中立を保つ存在ですが、調停委員の価値観によっては調停が不利な方向に進むことがあります。事前情報を頭に入れた上で主張を組み立てましょう。

裁判所の外で話し合う場合は示談

調停は裁判所で行われます。裁判所の外でも話し合いは可能ですが、この場合は示談(和解交渉)と言います。示談の話し合いは一切の申し立てが不要で当事者の自由に行えます。

ただ、債権回収のように明確な被害者と加害者がいるケースはお互いが感情的にぶつかりやすいです。示談の合意を公正証書にしたり裁判上の和解にしたりすればそれらを根拠に強制執行ができます。

調停が調わなければ訴訟

調停は合意すればそこで終わります。1回または数回の調停で合意が取れなければ調停は不調となります。調停が不調となった場合、2週間以内に訴訟を申し立てれば同じ収入印紙を用いて費用を払えます。つまり訴訟の申請費用が、調停の申請費用分安くなります。

訴訟は合意に導くことを目的としていないので、当事者がお互いに確かな証拠と主張を用意しなくてはいけません。調停以上に弁護士の力が求められます。

調停の内容に背けば、結局、強制執行

調停調書は、確定判決と同じく債務名義としての効力を持ちます。債務名義とは債務を確定させる書面のことで強制執行の根拠になります。つまり調停調書の内容に相手が背けば、それを理由に強制執行できます。

公正証書での和解も、裁判上の和解も、調停も、訴訟も、最後は強制執行に行き着きます。

とはいえ、調停に応じるくらいですから何かしら支払いができる算段を持っていることが予想されます。

ワンポイントアドバイス
調停は裁判所で行われる話し合いで、目的は合意形成です。そのため調停委員は債務者も債権者も歩み寄ることを望みます。そのため訴訟より利益が減ることも考えられます。それでも少ない時間と費用で解決できる調停が実現すれば、魅力的であること間違いありません。

債権回収で民事調停を用いるメリット

債権回収で民事調停を用いるメリットはこちらです。

  • 公開されず、穏便な解決が可能
  • 手続きのコストが少ない
  • 時効中断の効果がある
  • 調停調書を根拠に強制執行できる

公開されず、穏便な解決が可能

調停は裁判と異なり申し立てた事実やその結果が公開されません。もちろん、傍聴人が立ち会うこともないので、心理的安心感があります。また、調停委員が間に入ることで感情的な争いを避けやすくなる点もメリットです。

調停でうまく事件を片付ければ訴訟を行った場合に比べ穏便です。

それに調停は訴訟と異なり法的な正しさよりもお互いの合意が優先されます。したがって今後も見据えた柔軟な解決を図ることが可能です。

手続きのコストが少ない

調停はかかる費用が安く、早く終わる傾向

調停は手続きのコストが少ない点もメリットです。調停の費用は安く、仮に不調であった場合でも2週間以内に訴訟を申し立てれば、調停で申し立てた収入印紙代が実質無料になります。

そして調停は訴訟よりも比較的早く終わる傾向にあり、長引いた場合も訴訟に移行すべしと判断されれば調停不成立となります。調停は1〜3ヶ月ほどの期間行われますが、頻度は月に1回程度です。

時効中断の効力がある

調停が行われれば時効が停止されます。債権回収においては10年の消滅事項を過ぎるとそれ以上遡って請求できないという原則があり賃料や給与債権などの短期消滅時効であればもっと短い期間しか認められません。

ですから、時効が到来する前に停止が求められます。そしてちなみに、内容証明郵便を送るだけでも6ヶ月は停止できますが、その間に法的手続きを踏まなければ再び時効が減っていきます。

調停調書を根拠に強制執行できる

調停調書は強制執行をするための債務名義となります。調停調書の内容を果たさず強制執行の必要ありと思われるときは、裁判所に強制執行の申し立てを行いましょう。

強制執行が認められれば財産の差し押さえや借主の強制退去が行われます。

ワンポイントアドバイス
より強い効力を持つものがより高いコストを要する。これは法律の分野でも同じです。調停はうまくいけば訴訟よりも低料金で手早く解決が可能です。

しかし、調停がうまくいかなければ裁判や強制執行が必要となる点も知っておきましょう。詳しくは次で解説します。

債権回収で民事調停を用いるデメリット

債権回収で民事調停を用いるデメリットはこちらです

  • 合意できなければコストの無駄になる
  • そもそも互いの出頭なくして進行できない
  • 調停不成立だと時効が停止しなかったものとして計算される
  • 当事者間で解決できるなら示談で十分

合意できなければコストの無駄になる

調停は双方の合意によって決められるため柔軟性が高く時間節約の可能性がある手続きです。しかし、逆に言えば双方の合意を得られない場合に時間と費用が無駄になるリスクもあります。

2週間以内に訴訟へ移った場合も、印紙代以外の費用は余計になってしまいます。

また、調停委員は中立な立場にあるだけで中立な人間が担うと限りません。人選によって相手が有利になりかねないことも気をつけるべきポイントです。

そもそも互いの出頭無くして進行できない

そもそも、話し合いの場に相手が出頭しなければ調停も何もありません。そして、調停には法的拘束力がありません。調停が嫌なら出頭しなければよく、それで債権回収を長引かせようとする債務者は珍しくないのです。

調停が難しい債務者に対しては、話し合いでの解決でなく相手が出頭しなくても進行できる訴訟を行うべきです。ほとんど勝つと思われる事例でも裁判なく自力救済に売って出れば違法です。

調停不成立だと時効が停止しなかったものとして計算される

調停は時効を停止させますが、調停不成立となった場合は時効が中断されません。この点は特に気をつけてください。調停中に時効が到来した場合は調停不成立が確定してから1ヶ月後に消滅時効が到来します。

債権者が時効援用を防ぐためには、とにかく債務の存在を認めさせることです。債務の承認は時効を中断させるので「〇〇までに払う」という言質を取れば時効の心配をなくせます。

当事者間で解決できるなら和解で十分

当事者間での話し合いが可能なら、裁判所に赴く必要はなく和解契約書を作れば事足ります。債務名義にするなら金銭債権に限り公正証書の形で示談書を作ることが効果的で、そうでない場合も裁判上の和解という形にします。

和解は任意交渉によって行われるため裁判所の都合によらず自由なスケジュールで話し合えます。

ワンポイントアドバイス
調停は法的拘束力がなく、話し合いに応じなければ訴訟するしかありません。逆に話し合いによる解決が期待できるならより効率的な示談を用いた方が良いでしょう。調停による解決可能性はあまり高くありません。

ちなみに、調停をする場合も示談で解決する場合も弁護士による代理が可能です。

民事調停を視野に入れた債権回収をお考えなら適切な手段を選ぶ上でも弁護士に相談を

話し合いに応じない相手に圧力をかけたい、自分1人で臨むより裁判所の力を借りたいという考えで調停を考えているなら思ったほどの効果を得られないかもしれません。調停は法的拘束力がなく、調停委員が債務者有利の結論を促すこともあるからです。

そもそも、今の状況に対して最低な手段を見極めることも素人には難しいです。示談交渉が難しい時も一度弁護士に相談し、調停や訴訟の可能性も検討すべきです。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談