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民事調停とは?債権回収での流れと費用、不成立の対応

民事調停とは?債権回収での流れと費用、不成立の対応

この記事で分かること

  • 調停は裁判所で行う話し合いの手続き
  • 調停は低コストかつ中立的に債務名義を取ることができる
  • 調停に応じない相手に対しては効果がなく訴訟による債権回収せざるをえない

借金や売掛金の支払いを求めても応じてくれない、相手も意地になっているとき。お互いに頭を冷やして話し合える調停で前進を期待できます。調停委員会が間に入るため中立に近づき、訴訟ほどのコストもかかりません。その一方で訴訟と同じだけの拘束力がないことから、調停に前向きな人間に対してしか効果がないことも知っておきましょう。

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訴訟ではなく、話し合いで解決したいとき

取引先との間で代金の支払いをめぐって行き違いがある。相手は支払う気がないわけではなさそうだが、金額や支払い方法で折り合えず、当事者同士の話し合いは平行線のまま。かといって、長年の取引先を相手に訴訟を起こすのは気が引ける。こうした場面で考えたいのが、民事調停です。

民事調停は、簡易裁判所で、調停委員という第三者が当事者の間に入り、話し合いによる解決を目指す手続きです。裁判官が一方的に結論を出す訴訟と違い、当事者が納得したうえで合意することを目指します。合意が成立すれば、その内容は調停調書に記録され、判決と同じように、相手が約束を守らなければ差押えができるようになります。

手続きは訴訟より簡単で、手数料も訴訟の半額ほどです。裁判所の手続きの中では、最も身近で使いやすいものの一つといえます。弁護士に依頼せず、自分で申し立てる人も多くいます。調停委員は、法律の専門家や、その分野に詳しい民間の人から選ばれていて、当事者の話をよく聞いたうえで、解決案を示してくれます。

一方で、調停はあくまで話し合いの場なので、相手が出てこなかったり、合意を拒んだりすれば、解決しないまま終わってしまいます。この記事では、債権回収の依頼を受けている弁護士の立場から、民事調停の仕組み、向いている場面と向かない場面、申立ての方法と費用、手続きの流れ、調停が成立しなかったときの対応までを説明していきます。

会社どうしの取引では、代金の支払いをめぐる行き違いが、品質や納期、仕様の解釈など、ほかの問題と絡み合っていることがよくあります。こうした紛争は、訴訟で白黒をつけるより、事情に詳しい第三者を交えて全体を整理したほうが、早く解決することも少なくありません。民事調停は、そうした柔軟な解決に向いた手続きです。

民事調停とは|調停委員が間に入る話し合いの手続き

民事調停は、民事調停法に基づく手続きで、簡易裁判所で行われます。当事者が合意すれば、地方裁判所で行うこともあります。裁判官(または民事調停官)と、2人以上の民事調停委員で作る調停委員会が、当事者の言い分を聞き、互いに譲り合える解決案を探ります。

項目 内容
申し立てる先 原則として相手の住所地を管轄する簡易裁判所(当事者が合意すれば別の簡易裁判所や地方裁判所も可)
扱う紛争 お金の貸し借り、売買代金、請負代金、家賃、損害賠償など、民事の紛争全般
請求額の上限 なし
進め方 非公開の部屋で、調停委員が双方から交互に話を聞くことが多い
期日の回数 多くは2〜3回、数か月で終わる
結果 合意すれば調停調書が作られる。合意できなければ不成立で終わる

調停委員とはどんな人か

民事調停委員は、弁護士や、不動産鑑定士、建築士、税理士、会社の経営経験者など、社会生活の知識や経験が豊かな人の中から、最高裁判所が任命します。建築の請負代金の争いなら建築に詳しい委員が、不動産の争いなら不動産に詳しい委員が担当するなど、紛争の中身に合わせて選ばれることもあります。専門的な知識を持つ委員が、双方の言い分をかみ砕いて整理してくれることが、当事者だけの話し合いとの大きな違いです。

訴訟との違い

比べる点 民事調停 訴訟
解決の方法 当事者の合意 裁判官の判決(和解もある)
手数料 訴訟のおよそ半額 請求額に応じた額
公開 非公開 原則として公開の法廷
証拠の扱い 厳格な証明は求められない 主張を証拠で証明する必要がある
相手が応じない場合 不成立で終わる 相手が欠席すれば、こちらの請求どおりの判決が出ることが多い
解決の柔軟さ 分割払いや、将来の取引の条件なども決められる 原則として請求が認められるかどうかの判断

調停は、白黒をはっきりさせるより、双方が納得できる落としどころを探る手続きです。その分、解決の内容を柔軟に決められます。たとえば、未払いの代金を分割で払ってもらう代わりに、今後の取引は前払いにする、といった将来の関係まで含めた合意をすることもできます。

民事調停が向いている場面、向かない場面

民事調停は、どんな債権回収にも使えるわけではありません。使いどころを誤ると、時間だけが過ぎてしまいます。申し立てる前に、自分の事案に合うかを見きわめましょう。向いている場面と、向かない場面を整理しておきます。

向いている場面 向かない場面
相手に支払う意思はあるが、金額や方法で折り合えない 相手に支払う意思がまったくない
取引関係を続けたい、関係を壊したくない 相手が連絡に一切応じない、所在が分からない
当事者同士では感情的になって話が進まない 相手が財産を隠したり処分したりしそう
証拠が十分でなく、訴訟で勝てるか分からない 証拠がそろっていて、訴訟ですぐに判決が取れる
非公開で解決したい 急いで差押えまで進めたい

調停を選ぶかどうか迷ったときは、相手に払う意思があるか、相手との関係を続けたいか、急いで差押えまで進む必要があるかの三点を考えてみてください。払う意思があり、関係を続けたく、急ぐ必要がないなら、調停は有力な選択肢です。

取引関係を続けたい相手に向いている

長年の取引先との間で、代金の一部について争いが生じた場合を考えてみてください。訴訟を起こせば、たとえ勝っても、相手との関係は終わってしまうかもしれません。調停であれば、調停委員が間に入って互いの言い分を聞き、関係を保ちながら解決を探ることができます。

証拠が十分でない場合にも使える

口頭での約束が多く、訴訟で請求を証明できるか自信がない場合でも、調停であれば、手元にある資料と事情の説明をもとに話し合いを進められます。調停では、厳格な証明までは求められないので、相手も一定の支払いには応じる意思がある場合、証拠の弱さを補って解決できることがあります。ただし、相手が支払いの根拠そのものを否定している場合は、調停でも解決は難しくなります。

支払う意思のない相手には不向き

反対に、相手に支払う意思がまったくない場合は、調停を申し立てても、相手が期日に来なかったり、合意を拒んだりして、不成立で終わる可能性が高くなります。その間にかかった時間が無駄になり、相手の財産が減っていくおそれもあります。こうした相手には、支払督促や訴訟を選ぶほうが確実です。

財産が失われそうなら先に仮差押えを

相手に支払う意思はありそうでも、経営が危うく、財産を処分してしまうおそれがある場合は、調停を申し立てる前に、仮差押えで財産を押さえておくことを考えます。調停は話し合いの手続きなので、その間に相手の財産がなくなってしまえば、合意ができても実際には回収できません。仮差押えをしたうえで調停に臨めば、相手も合意に前向きになりやすくなります。

もう一つ、調停が向かない場面として、相手の会社がすでに実質的に営業をやめている場合が挙げられます。調停で合意しても、相手に支払う財産がなければ回収はできません。相手の事業の状況を確かめ、回収の見込みがある場合に調停を選ぶことが大切です。

申立ての方法と費用

民事調停の申立ては、申立書を簡易裁判所に出して行います。郵送で出すこともできます。簡易裁判所には、定型の申立書の書式が用意されていて、紛争の種類ごとに空欄を埋めていけば完成するようになっています。

申立書を出す前に、どの簡易裁判所に申し立てるかを確かめておきます。原則は相手の住所地を管轄する簡易裁判所ですが、契約書で紛争を扱う裁判所を決めている場合や、相手と話し合って申立先を合意した場合は、別の裁判所に申し立てることもできます。

申立書に書くこと

  • 申立人と相手方の住所、氏名(会社なら商号と代表者名)
  • 申立ての趣旨(どのような解決を求めるのか。「相手方は申立人に対し、金○○円を支払うとの調停を求める」など)
  • 紛争の要点(取引の経緯、未払いの金額、話し合いの状況)
  • 添付する資料(契約書、請求書などの写し)

紛争の要点では、これまで相手とどんな話し合いをしてきたのか、どこで折り合えずにいるのかを書いておくと、調停委員が争点をつかみやすくなります。

申立ての趣旨の書き方の例

申立ての趣旨は、どんな解決を求めるのかを書く欄です。全額の支払いを求めるなら「相手方は申立人に対し、金○○円を支払うとの調停を求める」と書きます。分割払いでもかまわない場合は、「相手方は申立人に対し、金○○円を相当な方法で支払うとの調停を求める」のように、柔軟な書き方をすることもできます。書き方で解決の幅が縛られるわけではありませんが、自分がどこまで譲れるかを考えて書いておくと、話し合いの軸が定まります。

用意する書類

書類 内容
調停申立書 裁判所の書式を使うと便利
相手方用の申立書の写し 相手に送るためのもの
証拠の写し 契約書、請求書、納品書、やり取りのメールなど
資格証明書 当事者が会社の場合の登記事項証明書
手数料と郵便切手 収入印紙と、裁判所が定める額の切手

手数料

申立ての手数料は、求める額に応じて決まっていて、訴訟のおよそ半額です。

求める額 民事調停の手数料 (参考)訴訟の手数料
50万円 2,500円 5,000円
100万円 5,000円 1万円
300万円 1万円 2万円
500万円 1万5,000円 3万円

このほかに、書類を相手に送るための郵便切手代を納めます。額は裁判所によって異なります。

弁護士に依頼する場合は、申立書の作成と期日への同行、合意の内容の確認までを任せることができます。調停は訴訟より手続きが簡単な分、弁護士費用も訴訟より抑えられることが多いでしょう。請求額が大きい場合や、合意の内容が複雑になりそうな場合は、依頼を検討してください。

民事調停の流れ

民事調停は、一般的に次のような流れで進みます。訴訟に比べて手続きはシンプルで、初めての方でも流れをつかみやすいはずです。

  1. 申立書を簡易裁判所に出す。
  2. 裁判所が第1回の期日を決め、双方を呼び出す(申立てから1か月から1か月半ほど後)。
  3. 期日には、調停委員が双方から交互に話を聞き、争点と互いの希望を整理する。
  4. 調停委員が、双方の言い分を踏まえた解決案を示す。
  5. 次の期日までに、それぞれが解決案を検討する。
  6. 合意できれば調停が成立し、調停調書が作られる。合意できなければ不成立で終わる。

期日は、1か月に1回ほどのペースで開かれ、1回の期日は2時間程度です。平日の日中に開かれるのが通常です。多くの事件は、2〜3回の期日で、申立てから3か月ほどで終わります。

相手に申立てが届いたら

申立てが受理されると、裁判所から相手に、申立書の写しと期日の呼出状が送られます。相手は、期日の前に、言い分を書いた回答書を出すよう求められることがあります。回答書が届けば、相手がどこに不満を持っているのか、どこまでなら歩み寄れそうかが、ある程度見えてきます。第1回の期日の前に、回答書の内容を踏まえて、こちらの説明を準備しておきましょう。

期日の様子

調停の期日は、法廷ではなく、テーブルのある調停室で行われます。服装や言葉づかいに特別な決まりはありません。多くの場合、申立人と相手方は別々の待合室で待ち、調停委員が交互に呼んで話を聞きます。相手と顔を合わせずに言い分を伝えられるので、感情的な対立を避けながら話し合いを進められます。

調停委員は、相手の言い分をこちらに伝え、こちらの言い分を相手に伝えながら、互いに歩み寄れる点を探します。相手の本音を、調停委員を通じて知ることができるのも、調停の利点です。

ワンポイントアドバイス
期日の前に、自分が最低限譲れない条件と、譲ってもよい条件を整理しておきましょう。たとえば、総額は減らしても一括で払ってもらいたいのか、総額は譲れないが分割でもよいのか。優先順位がはっきりしていると、調停委員から解決案を示されたときに、その場で判断しやすくなります。

調停が成立する割合は、事件の種類や相手の姿勢によってさまざまです。相手が期日に出てきて話し合いに応じていれば、多くの場合、何らかの形で合意にたどり着きます。反対に、相手が一度も出頭しなければ、不成立で終わるほかありません。第1回の期日に相手が来るかどうかが、調停の行方を大きく左右します。

期日での振る舞い

調停委員は、当事者の言い分だけでなく、話し方や態度も見ています。相手への不満をぶつけたくなる気持ちは分かりますが、感情的になるより、事実と資料をもとに落ち着いて説明するほうが、調停委員の理解を得やすくなります。相手の主張に反論するときも、「相手が悪い」ではなく、「この資料のとおり、納品は期日どおりに済んでいます」というように、根拠を示して話しましょう。

調停で資料を出すとき

調停でも、主張を裏付ける資料は大切です。契約書や請求書、やり取りのメールなどを、調停委員と相手の分の写しを用意して提出します。訴訟のように厳密な形式は求められませんが、どの資料が何を示すのかを簡単にまとめたメモを添えると、調停委員に理解してもらいやすくなります。

調停が成立したとき|調停調書の効力

当事者が合意すると、調停が成立し、合意の内容を記した調停調書が作られます。調停調書は、確定判決と同じ効力を持ちます。話し合いの結果が、判決と同じ重みを持つということです。

つまり、調停で決めた支払いを相手が守らなければ、調停調書をもとに、相手の預金や給料を差し押さえることができます。調停調書は、少額訴訟の判決や仮執行宣言つきの支払督促とは違い、強制執行の前に執行文を付けてもらう必要があります。

調停調書で差押えをするまで

相手が調停で決めた支払いを怠った場合は、まず調停調書を作った簡易裁判所に、執行文の付与と、送達証明書の交付を申請します。調停調書は、成立の後に当事者に送られているので、送達証明書はすぐに受けられます。そのうえで、相手の預金や給料などを特定して、差押えを申し立てます。訴訟を起こし直す必要はありません。

調停調書は、成立した後に裁判所から当事者に送られてきます。差押えのときに正本が必要になるので、大切に保管してください。分割払いの途中で相手の支払いが止まることもあるので、完済されるまで、支払いの記録とともに手元に置いておきます。

調停調書に入れておきたい条項

合意の内容は、後で差押えに使えるよう、はっきりと書いてもらう必要があります。分割払いで合意する場合は、次の点を必ず入れておきましょう。

  • 相手が支払うべき総額を認める一文
  • 毎回の支払額、支払日、振込先
  • 支払いを一定回数怠ったときは、残額を一括で支払う旨
  • その場合の遅延損害金の率と起算日

「誠意をもって支払う」といったあいまいな書き方では、相手が支払いを怠っても差押えができません。調停委員や書記官に、差押えに使える書き方になっているかを確かめてもらいましょう。

注意
調停で合意した内容は、成立した後に取り消すことは原則としてできません。その場の雰囲気で合意してしまわないよう、条件に少しでも迷いがあれば、次の期日まで考える時間をもらってください。

合意した内容に、連帯保証人を加えたい場合は、保証人にも調停に参加してもらい、調停調書に保証の条項を入れます。保証人が参加していなければ、保証人の財産を差し押さえることはできません。相手の代表者などに保証人になってもらう場合は、期日に同席してもらえるよう、事前に調整しておきましょう。

調停が成立しなかったとき

相手が期日に来なかったり、話し合いがまとまらなかったりすると、調停は不成立で終わります。不成立になっても、それまでの話し合いが無駄になるわけではありません。不成立になった場合は、次のような対応を考えます。

2週間以内に訴えを起こせば手数料を活かせる

調停が不成立で終わった通知を受けた日から2週間以内に、同じ請求について訴えを起こせば、調停の申立ての時に訴えを起こしたものとみなされます。さらに、調停で納めた手数料を、訴訟の手数料に充てることができ、差額だけを納めればよくなります。

訴訟に移るときは、あらためて訴状を作り、証拠を出す必要があります。調停の中で相手が述べた言い分は、訴訟でどんな反論が出てくるかを知る手がかりになります。調停の記録やメモをもとに、相手の主張に先回りした訴状を作ると、訴訟を有利に進められます。

調停に代わる決定

当事者の間でわずかな点について折り合えない場合などに、裁判所が、一切の事情を考えて、調停に代わる決定を出すことがあります。この決定に対して、当事者が2週間以内に異議を出さなければ、決定は確定し、調停調書と同じ効力を持ちます。異議が出れば、決定は効力を失います。

調停に代わる決定は、たとえば、支払額については双方がほぼ歩み寄ったものの、支払いの回数だけで折り合えない、という場面で使われます。裁判所が、双方の事情を踏まえて、妥当と考える回数で決定を出し、双方が異議を出さなければ、そのまま解決します。

調停の間に財産を処分されないために

調停の手続き中に、相手が財産を処分してしまうおそれがある場合は、調停委員会に、調停前の措置を求めることができます。相手に対して、財産の処分などを一時的に禁じるものです。ただし、この措置には差押えのような強制力はなく、相手が従わなかった場合は過料が科されるにとどまります。財産の処分を確実に止めたいなら、仮差押えを使う必要があります。

相手が出頭しないとき

相手が正当な理由なく期日に出頭しない場合は、5万円以下の過料が科されることがあります。ただ、実際に過料が科されることは多くなく、相手が出てこない以上、調停で解決するのは難しいといえます。相手が1回目の期日に出てこなければ、支払督促や訴訟に切り替えることを早めに考えてください。

相手が期日に来ないことが分かった時点で、調停を取り下げて支払督促や訴訟に切り替えるか、裁判所に調停に代わる決定を出してもらうよう求めるか、を判断します。調停に代わる決定は、相手が異議を出さなければ確定するので、相手が手続きに無関心な場合には、かえって早く債務名義を手に入れられることもあります。

時効の扱い

調停を申し立てると、手続きが続く間は、時効の完成が猶予されます。調停が不成立で終わった場合は、終わってから6か月の間は時効が完成しません。その間に訴えを起こせば、時効を止めたまま手続きを続けられます。

調停を有利に進めるための準備

調停は話し合いの場ですが、何の準備もなく臨むと、相手の言い分に押し切られることもあります。次のような準備をしておくと、調停を有利に進めやすくなります。

準備すること 内容
経緯の整理 取引の始まりから、未払いが生じ、話し合いが行き詰まるまでを時系列でまとめる
資料の準備 契約書、納品の記録、請求書、相手とのやり取りを、調停委員に見せられる形で整える
相手の言い分の予測 相手がどんな理由で減額や支払いの延期を求めてくるかを考え、答えを用意する
譲れる範囲の決定 最低限の回収額と、分割の回数や期間の限度を決めておく
合意の後の見通し 相手が合意を守らなかった場合に、どの財産から回収するかを考えておく

とくに、相手の言い分を予測しておくことは大切です。交渉の段階で相手が何を理由に支払いを渋っていたかを思い出し、その点について、調停委員に納得してもらえる資料を用意しておきます。調停委員が「この点は申立人の言い分に理がある」と感じれば、相手に対して歩み寄りを促してくれます。

民間の話し合いの手続きという選択肢

裁判所の調停のほかに、弁護士会や業界団体などが運営する民間の紛争解決の手続きもあります。国の認証を受けた機関の手続きであれば、申し込むことで時効の完成を猶予する効果も認められています。業界の事情に詳しい専門家が間に入る手続きもあるので、紛争の中身によっては検討する価値があります。ただし、民間の手続きで合意しても、それだけで差押えができるわけではありません。2024年4月からは、国の認証を受けた機関で成立した和解のうち、当事者が強制執行を受け入れることに合意したものについて、裁判所の決定を経て差押えができる仕組みも設けられています。

債務者の側が使う特定調停

民事調停の一種に、借金の返済に困った債務者が、債権者との間で返済の条件を見直すための特定調停という手続きもあります。取引先から特定調停を申し立てられた場合は、債権者として期日に呼ばれ、返済の計画について意見を述べることになります。相手の返済計画が現実的かどうかを見きわめ、納得できなければ同意しないことも可能です。

具体例で考える|取引先との代金トラブルを調停で解決したケース

ある包装資材の会社は、10年以上取引のある食品メーカーとの間で、特注の箱の代金をめぐって行き違いが生じていました。会社は400万円を請求していましたが、食品メーカーは「一部の箱の印刷に色むらがあったので、200万円しか払えない」と主張していました。

会社としては、色むらは許容範囲内だと考えていましたが、食品メーカーとの取引は今後も続けたいと考えていました。訴訟で争えば、取引が打ち切られるおそれがあります。弁護士と相談し、民事調停を申し立てることにしました。

第1回の期日では、調停委員が双方から話を聞き、色むらのあった箱の数量と、実際に食品メーカーが使えなかった数量を確かめるよう求めました。第2回の期日までに双方が資料を持ち寄った結果、実際に使えなかった箱は全体の1割ほどだと分かりました。

調停委員は、使えなかった分を差し引いた360万円を、3回に分けて支払うという解決案を示しました。双方がこれを受け入れ、調停が成立しました。食品メーカーとの取引はその後も続いています。訴訟で争っていれば、判決までに1年近くかかり、取引関係も壊れていたかもしれません。

個人の例も挙げておきます。親戚に貸した150万円の返済をめぐり、親戚は「返すつもりはあるが、今は苦しい」と言うばかりで、話し合いは感情的な言い合いになっていました。この方は、親戚との関係をこれ以上悪くしたくないと考え、民事調停を申し立てました。

調停室では、調停委員が親戚の家計の状況を丁寧に聞き取り、月3万円ずつなら無理なく返せることを確かめました。双方がそれを受け入れ、2回怠ったら残額を一括で払うという条項つきで調停が成立しました。直接話すと言い争いになっていた二人が、調停委員を間に置くことで、落ち着いて解決にたどり着けた例です。

二つの例に共通しているのは、当事者が、相手との関係を大切にしたいと考えていたことです。民事調停は、回収の額を少し譲ってでも、確実な支払いと関係の維持を両立させたいときに、力を発揮する手続きです。どの手続きを選ぶかは、回収の額だけでなく、相手との今後をどうしたいかも考えて決めてください。

民事調停に関するよくある質問

民事調停は、弁護士に頼まずにできますか

できます。申立書の書式は裁判所に用意されていて、窓口で書き方の案内も受けられます。期日でも、調停委員が丁寧に話を聞いてくれるので、自分で進める人も多くいます。ただし、請求額が大きい場合や、相手に弁護士がついている場合は、弁護士に相談することをおすすめします。

調停にはどのくらいの期間がかかりますか

多くの事件は、2〜3回の期日で、申立てから3か月ほどで終わります。争点が多い場合や、資料の確認に時間がかかる場合は、半年以上かかることもあります。

調停委員の解決案に従わなければいけませんか

従う義務はありません。調停は当事者の合意で成り立つ手続きなので、解決案に納得できなければ、断ることができます。ただし、調停委員の解決案は、双方の言い分と資料を踏まえた、ある程度の合理性のある提案です。断る場合は、訴訟に進んだときの見通しと比べて判断するとよいでしょう。

相手が遠方にいる場合でも調停できますか

原則として相手の住所地の簡易裁判所に申し立てる必要がありますが、当事者が合意すれば、別の裁判所で行うこともできます。2026年5月からは裁判手続きのオンライン化が進み、ウェブ会議などを使って期日に参加できる場面も広がっています。申し立てる裁判所に、利用の可否を確かめてください。

調停で決めた分割払いを相手が守りません

調停調書に基づいて、相手の財産を差し押さえることができます。執行文を付けてもらい、相手の預金や給料などを特定して、強制執行を申し立ててください。

調停の内容は外部に知られますか

調停は非公開で行われるので、第三者が傍聴することはできません。取引先との紛争を、ほかの取引先や世間に知られずに解決したい場合にも向いています。

調停の途中でやめることはできますか

申立人は、調停が成立するまでであれば、いつでも申立てを取り下げることができます。話し合いの途中で相手が支払いに応じた場合や、訴訟に切り替えたい場合には、取り下げて次の手続きに進むことも可能です。

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