2020/1/23 492view

債権譲渡担保を活用すべきシーンと注意点

この記事で分かること
  1. 債権も担保にできるし、登記もできる
  2. 債権譲渡担保は対抗要件を具備することが大切
  3. 安全な債権譲渡担保は信頼性と手続きのスムーズさで決まる

債権譲渡担保は不動産や動産を担保にしづらい状況でかつ、回収できそうな債権がある時に用います。物権に比べて譲渡しやすいことから広く用いられていますが、契約一つで譲渡できるため第三者との対抗もしやすいです。そのため、債権譲渡担保は回収可能性だけでなく、手続きの安全さも問われます。

債権譲渡担保とは?

債権譲渡担保とは譲渡担保の目的物に債権を用いた取引です。本来、譲渡担保どころか担保権は形あるものが対象となっていましたが取り引きの慣習と判例によって債権譲渡担保が認められるようになりました。

現在は動産及び債権譲渡について特例法が定められるほど発展しています。

譲渡担保とは

ここで譲渡担保が通常の担保と何が違うのか説明します。

譲渡担保とは、「債務者が債務を履行するまで担保の所有権を債権者の下へ移し、債務が履行されたら、再度、債務者の下に所有権を戻す」という性質の契約です。動産に関して言えば質権に比べて占有及び競売の必要がない点にメリットがあります。

一方で、譲渡担保には、債権者あるいは債務者の下でやりとりされる所有権を、占有している側が勝手に処分してしまうリスクがあります。

これに対応するため、所有権を債権者が持っている場合は、譲渡担保契約は債務者が債務の履行をした際に、債権者から債務者へと所有権を再び移すことを義務付けます。逆に、占有を債務者に残している場合は、契約で第三者への対抗要件を具備することで利益の損失を防ぎます。

こうした仕組みを通じて、動産の中でも占有が難しい財産を担保に入れることを容易とし、強制執行が不要となる点も、譲渡担保の魅力となっています。

やっていることは債権譲渡

動産と違い債権はモノと呼べないため所有権どころか物権が認められるとは思えません。実際のところ、債権のやりとりで係争となった場合に、債権の所有で争うことはなく、あくまで「権利の移転」と「現在の債権者は誰か」という論点をめぐって争うことになります。

債権譲渡自体は債権譲渡担保と関係なく民法で認められています。たとえば、ファクタリングも債権譲渡を用いた資金調達と言えます。

したがって、債権譲渡担保を用いる場合も債権譲渡の制約や対抗要件について理解しておくことが必要となります。

譲渡担保権行使は私的に行える

法定担保権及び約定担保権は、通常裁判所に担保権の実行を申し立て、換金し、配当を受けるという流れが必要です。

一方で譲渡担保はすでに動産あるいは債権の持ち主となっているため、担保権の実行に新しい手続きは必要ありません。したがって、非常に効率的です。

ワンポイントアドバイス
債権譲渡担保は譲渡担保のひとつですが、基本的には債権譲渡の制約に服します。動産、債権のいずれも契約した時点で債権者のものにできる点がメリットで、特に債権は動産と異なり場所をとりません。

債権譲渡担保が効果的なケースとは?

債権譲渡担保がどのような場合に効果的なのか、紹介します。

債務者が大手企業と取引している

動産や不動産であればある程度値段を予想できます。当たり前ですが「このくらいの債務ならこのくらいの担保を」つけられるのは明確な評価あってこそです。債権の場合は額面が決まっているのでより担保を決めやすそうです。

しかし、債権が必ず実現するなら債権回収で悩むことはありません。しっかりと履行する能力がある企業の債権を担保にしたいですね。

債権の金額が大きい

債権の金額が大きければ、動産や不動産に比べて利便性の高い債権が候補になります。一つ一つの金額が小さくても、債権の数が多ければそれをまとめて担保にすることが可能です。

よほど掛け取引の少ない会社でもない限り、債権譲渡担保の利用は考えて良いでしょう。

動産や不動産に対する担保権実行が期待できない

動産や不動産がある場合でも、担保権が実行できると限りません。これは評価額の問題でなく優先順位の問題です。担保権は同じものに複数個設定することができますが、設定した順番が遅れているほど、得られる配当額も小さくなっていきます。

したがって、担保を設定しても満足な配当を得られないなら債権を担保にせざるを得ません。

ワンポイントアドバイス
債権譲渡担保は手続きの手軽さと、債権の移動しやすさから好んで用いられます。債権譲渡担保は、多くの場合で効果的ですが、特に他の担保権に価値を見出せない場合や、再建の信頼度が高いときに有効です。

もちろん、十分な債権を持っていることが前提です。

債権譲渡担保を実行するまでの流れ

債権譲渡担保の契約書を作成する

債権譲渡担保は契約で定めることによって発生する約定担保にあたります。しっかり契約書を交わさなければ担保権の活用はできません。そもそも譲渡担保は権利を移転するための契約が必要です。

譲渡担保の契約書を作成・合意することで、債務者が持つ(第三債務者に対する)債権が、債権者のものになります。ただし、譲渡担保の契約を結ぶだけでは、自由な取り立てはできません。債務者が債務履行できなくなって、初めて債権を行使できるようになります。

譲渡担保契約を結ぶ際は、登記が有効

動産や債権も譲渡担保を用いる場合はその事実を法務局で登記できます。
譲渡担保を登記することは、万一、債権が勝手に処分されてしまった場合の第三者への対抗力になるとともに、既に第三者の下へ譲渡されている目的物を見抜くことができます。

そして、登記は債権者に通知せず第三者への対抗要件を具備する効果があります。

債権譲渡について第三債務者に通知する

債権譲渡は登記するだけでは取り立てられません。
第三債務者に対する通知をする、あるいは公式な通知がなくても第三債務者(債権譲渡担保の対象となった債権で想定されている債務者)がその事実を承諾することが、第三債務者に対する対抗要件となります。

登記をしている場合は、登記事項証明書の送付をもって第三債務者への通知とします。もちろん、第三者に勝手な債権譲渡をさせないための対抗要件にもなります。債権者への通知は確定日付のはっきりする内容証明郵便で行います。

ちなみに登記は第三者への対抗要件であり、第三債務者への対抗要件である通知及び承諾とは目的が異なります。

債務が履行されたら債権を返す

譲渡担保は債務を履行するまで目的物や債権の権利者を債権者にするところに特徴があります。一般的な約低担保であれば債務履行とともに担保を外しますが、譲渡担保の場合は目的物を債務者に返します。

債務者が債務を履行できる状況で、債権者が勝手に処分や実行することは許されません。

債務が履行されなければ債権を返さない

債務が履行されるまでは債権を返す必要はないし、債務不履行となったタイミングで債権回収することは認められています。

債権を返して欲しいと債務者が主張した時は、きちんと債務履行の実現性を確認してください。

ワンポイントアドバイス
譲渡担保は権利の移転と、担保権の実行という2つの内容に合意する必要があります。特に債権は実態を持たないため動産よりも二重譲渡しやすいです。第三者への対抗力とは別に登記事項証明書を取得しておくのも良いでしょう。

担保は債権を実行するための最終手段です。ただ債務を履行されるより有利だからという目的での担保権実行は許されません。債権譲渡においては第三債務者への通知忘れにも注意が必要です。

債権譲渡担保のリスクを知ろう

債権譲渡担保は手続きが簡便なだけに、知っておくべきリスクがいくつかあります。債権場と担保で実行力の高い債権回収をするために、これらのポイントを抑えましょう。

担保にする債権は、信頼できる債権か

そもそも債権回収が怪しい債権だと実行力にならない

その債権は信頼できますか?これは債権譲渡担保において最も重大な要素と言えます。言い換えるなら、「第三債務者に対する信頼」が問われています。

そもそも、債権が額面通り支払われるなら誰も苦労しないし強制執行も必要ありません。あなたが債権回収に頭を悩ませる必要もないでしょう。

債務不履行が問題となるのは、債務者が支払えない状況に陥るからです。つまり、債権を担保にしたところで第三債務者も同じように危険な状態なら実行力なしと判断されます。ゆえに大手企業の債権は魅力的なのです。

契約に不備があると、第三者に債権を取られるリスク

第三者への対抗要件を備えなければ、せっかく手にした債権を失ってしまいます。債権を守るためにも法的な不備は早期対策が肝心です。

二重譲渡を防ぐため、必ず早めの登記を!

債権は担保にしやすいので、手軽に二重譲渡しようという誘惑があります。二重譲渡の場合は確定日付の早いほうが債権者となります。したがって、登記が早いほうあるいは債権者への通知が早いほうが勝ちます。

だからこそ登記は早めに行うべきです。時には登記事項証明書によって既に譲渡された債権だとわかる場合もあります。

予約完結権を用いて、契約成立の強制権を持つ

債権譲渡を猶予するために予約権を用いて、債務不履行を条件に予約完結と譲渡を行う方法も考えられます。しかし、予約は予約に過ぎず、その後の予定を確定するものと言えません。対抗要件を備えるなら予約完結権の通知が必要です。

予約についての通知だけでは対抗要件は具備できません。

対象の債権が譲渡禁止債権の場合、担保にすることはできない

譲渡禁止債権を担保にすることはできません。債権を担保にする前に。しっかり契約書を確認してください。譲渡禁止の取り決めを担保権で否定することはできません。

第三債務者へ通知するタイミング

第三債務者への通知をいつ行うのか。これは意外と大切な論点です。債権譲渡は少なからず第三債務者に「この会社、先行きが良くないのでは?」という印象をつけてしまいます。そのため、自社のイメージを下げたくない債務者としては遅らせたいと考えています。債権者が無理に通知することで債務者との関係悪化も考えられます。

ワンポイントアドバイス
対抗要件を具備し、安全に債権回収できるようにする。これが原則です。債権を担保にする場合は、債権の品質を見抜きましょう。

債権譲渡担保で債権回収の可能性が広がる。ケースに応じた戦略は弁護士に相談を

債権譲渡担保は担保権の選択肢を大きく広げます。それに、債権の信頼度が高ければモノを担保にするより安定した債権回収が見込まれます。しかし債権譲渡担保には二重譲渡や譲渡禁止債権といったリスクがあるため下調べが肝心です。

本当に債権譲渡担保を利用すべきか迷った時は弁護士にご相談ください。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談