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財産開示手続とは?相手の財産を調べる方法

財産開示手続とは?相手の財産を調べる方法

この記事で分かること

  • 財産開示請求手続きは債務名義を根拠に行える
  • 財産開示で嘘をついても30万円の過料しか払わなくて良い
  • 財産開示請求手続きに頼らず強気の交渉と調査をしよう

財産開示請求手続きによって相手に財産の内容を陳述させることが可能ですが財産開示請求手続きはすぐに行えるものではなく、その場で嘘をついた時のペナルティが小さいことも知られています。したがって財産開示請求手続きをするだけでなく独自の財産調査やその他の材料を用いた交渉も検討することが大切です。

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相手の財産が分からないと、判決があっても回収できない

訴訟に勝ち、判決も確定した。ところが相手は支払わず、「払えるお金はない」と言い張る。本当に財産がないのか、それとも隠しているだけなのか。預金を差し押さえようにも、どの銀行に口座があるのか分からない。こうした壁に突き当たる債権者は少なくありません。

差押えをするには、差し押さえる財産を債権者の側で見つけて特定しなければなりません。裁判所が代わりに探してくれるわけではないのです。そのため、財産の手がかりがないまま判決を取っても、回収できずに終わってしまうことがありました。

この問題を解決するために用意されているのが、財産開示手続と、第三者からの情報取得手続です。財産開示手続は、相手本人を裁判所に呼び出して、自分の財産を明らかにさせる手続きです。第三者からの情報取得手続は、銀行や登記所などに、相手の財産の情報を回答させる手続きです。2020年4月の民事執行法の改正で、どちらも大きく使いやすくなりました。

この記事では、債権回収の依頼を受けている弁護士の立場から、二つの手続きの仕組みと使い分け、申し立てるための条件、手続きの流れと費用、自分でできる財産の調べ方までを、具体例を交えて説明していきます。

二つの手続きは、判決を取った後の回収の場面で力を発揮しますが、使いこなすには、それぞれの条件と特徴を知っておく必要があります。どの手続きをどの順番で使うかによって、回収できる額が大きく変わることもあります。

財産開示手続とは|相手に財産を明らかにさせる

財産開示手続は、裁判所が相手(債務者)を呼び出し、裁判所の期日で、自分が持っている財産について、宣誓したうえで陳述させる手続きです。預金の口座、不動産、車、勤務先、取引先に対する売掛金など、差押えの対象になる財産を明らかにさせます。

債権者も期日に出席して、相手に直接質問することができます。「給料はどこから受け取っているのか」「売上はどの口座に入金されているのか」といった質問を重ねることで、差押えの手がかりをつかめます。

財産開示手続で明らかにさせる財産の範囲は広く、預金、不動産、車、株式などのほか、給料や報酬を受け取っている先、取引先に対する売掛金、生命保険の解約返戻金なども含まれます。差押えが禁止されている財産は、明らかにさせる対象から外れます。

2020年の改正で罰則が強化された

以前の財産開示手続は、相手が呼び出しに応じなくても、軽い過料が科されるだけでした。そのため、無視する相手が多く、実効性に乏しいと言われていました。

2020年4月の改正で、この点が大きく変わりました。正当な理由なく期日に出頭しなかったり、宣誓を拒んだり、うその陳述をしたりすると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金という刑事罰の対象になります。刑事罰を背景に、相手が手続きに応じる割合は高まっています。

比べる点 改正前 2020年4月以降
申し立てられる債務名義 確定判決など一部に限られていた 仮執行宣言つきの支払督促、公正証書など、すべての債務名義
不出頭・うその陳述への制裁 30万円以下の過料 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金
第三者からの情報取得 なし 銀行、登記所、市町村などから情報を取り寄せられる

改正によって、公正証書を持っている債権者も財産開示手続を使えるようになりました。分割払いの約束を公正証書にしておいた場合でも、相手が払わなくなったときに、相手の財産を調べる道が開けています。

財産開示手続を申し立てるための条件

財産開示手続は、誰でもいつでも使えるわけではありません。次の条件を満たす必要があります。

条件 内容
債務名義を持っていること 判決、仮執行宣言つきの支払督促、和解調書、調停調書、強制執行を受け入れる文言のある公正証書など(執行文が必要なものは付いていること)
強制執行を始められる状態であること 債務名義が相手に届いているなど、強制執行の要件を満たしていること
ほかの方法で全額を回収できないこと 過去6か月以内の強制執行で全額を回収できなかったか、分かっている財産に強制執行をしても全額を回収できないことを示す
相手が最近財産開示をしていないこと 相手が過去3年以内に財産開示の期日で陳述していないこと(例外あり)

財産開示の申立ては時効も止める

財産開示手続は、強制執行と同じく、時効の完成を猶予し、手続きが終われば時効を更新する効果があります。判決から10年近くたって、時効が気になり始めた債権でも、財産開示手続を申し立てることで時効を延ばしながら、相手の財産を確かめることができます。

条件を満たしているかどうかは、申立ての段階で裁判所が書類をもとに判断します。条件を満たしていないと判断されると申立ては却下されるので、財産を調べた経過を丁寧に書面にまとめておくことが、手続きを確実に進めるための第一歩です。

「全額を回収できない」ことの示し方

三つ目の条件は、少し分かりにくいかもしれません。財産開示手続は、ほかに回収の方法がない場合に使う手段という位置づけなので、分かっている財産で足りるなら使えない、という考え方です。

実際には、分かっている財産を一覧にし、その価値が請求額に届かないことを示せば足ります。たとえば、相手の自宅に銀行の抵当権がついていて、競売しても一般の債権者に回る額が見込めないこと、知っている口座を差し押さえたが残高がわずかだったことなどを、資料とともに説明します。相手の財産がまったく分からないという場合も、調べた範囲を説明することで、この条件を満たせるのが通常です。

申立てに必要な書類

書類 内容
財産開示手続申立書 当事者、債務名義、申立ての理由を書く
債務名義の正本と送達証明書 執行文が必要なものは付けたもの
財産調査の結果を示す資料 不動産の登記簿、過去の差押えの結果など、全額を回収できないことを示すもの
当事者が会社なら資格証明書 登記事項証明書
手数料と郵便切手 手数料2,000円の収入印紙と、裁判所が定める郵便切手

財産調査の結果を示す資料としては、相手の住所地の不動産の登記簿の写しや、自分で調べた範囲をまとめた報告書を出すのが一般的です。裁判所ごとに書式が用意されていることが多いので、申し立てる裁判所のものを使ってください。

申立ての理由の書き方の例

申立書の理由の欄には、たとえば次のような事情を書きます。「債務者の住所地の土地建物は第三者の所有であり、債務者名義の不動産は見当たらない。債務者が取引の際に使用していた○○銀行○○支店の預金を差し押さえたが、残高は○○円にとどまり、請求債権の全額の弁済を得られなかった。そのほか、債務者の財産は判明していない」。調べた事実を具体的に書き、それを裏付ける資料を添付します。

財産開示手続の流れ

財産開示手続は、次のような流れで進みます。申立てから差押えまで、全体で数か月を見込んでおくとよいでしょう。

  1. 相手の住所地を管轄する地方裁判所に、財産開示手続の申立書を出す。
  2. 裁判所が手続きの開始を決定し、相手に通知する。
  3. 裁判所が期日を決め、債権者と相手を呼び出す。
  4. 相手は期日の前に、自分の財産を書いた財産目録を裁判所に提出する。
  5. 期日に相手が出頭し、宣誓したうえで財産について陳述する。
  6. 債権者は、裁判所の許可を得て相手に質問する。
  7. 明らかになった財産をもとに、差押えを申し立てる。

申立てから期日までは、1〜2か月ほどかかるのが一般的です。期日の記録は、債権者が閲覧したり、写しを取り寄せたりできます。

ワンポイントアドバイス
相手が期日の前に出す財産目録は、裁判所を通じて閲覧できます。期日の前に目録の内容を確かめ、記載が抜けていそうな財産や、あいまいな記載について、質問を準備しておきましょう。目録に「なし」とだけ書かれた項目こそ、質問で掘り下げる価値があります。

期日の様子

財産開示の期日は、公開の法廷ではなく、非公開で行われます。裁判官が相手に宣誓させたうえで、財産目録の内容を確かめながら質問し、その後、債権者が質問します。相手が会社の場合は、代表者が出頭して陳述します。相手に弁護士がついていれば、弁護士も同席しますが、陳述するのは相手本人です。

期日で陳述された内容は記録に残るので、その記録をもとに差押えの申立てを準備します。期日の最後に、陳述の内容を踏まえて、相手と分割払いの話し合いがまとまることもあります。

期日での質問の組み立て

期日は、相手の財産について直接聞ける貴重な機会です。財産目録に書かれたことだけで終わらせず、差押えにつながる具体的な情報を引き出すよう、質問を準備しておきます。

  • 給料や報酬を受け取っている先の名前と所在地
  • 使っている銀行口座の銀行名と支店名
  • 事業をしているなら、主な取引先と売上の入金先
  • 車や不動産の所在と、ローンや担保の有無
  • 最近手放した財産があれば、その時期と相手

期日の後にすること

期日で財産が明らかになったら、相手が財産を動かす前に、すぐに差押えの申立てを準備します。期日の記録の写しを取り寄せ、陳述された銀行、支店、勤務先、取引先の名前と所在地を確かめたうえで、債権差押命令の申立書を作ります。相手は期日で財産を明かした以上、差押えが近いことを察しているので、時間をおかずに動くことが大切です。

相手が出頭しなかったら

相手が正当な理由なく期日に出頭しなかった場合は、刑事罰の対象になるので、検察庁や警察に告発することが考えられます。告発によって相手が手続きに応じてくることもあります。ただし、刑事罰が科されても財産が明らかになるわけではないので、並行して第三者からの情報取得を使うことを考えます。

補足
財産開示手続を申し立てると、相手には、債権者が財産を調べようとしていることが伝わります。相手が預金を引き出したり財産を移したりするおそれがあるので、分かっている口座の差押えを先に済ませておくなど、順番を考えて申し立てることが大切です。

財産開示手続は、相手が正直に答えることを前提にした手続きです。刑事罰があるとはいえ、財産を隠そうとする相手が、すべてを明かすとは限りません。そこで、相手の陳述に頼らずに情報を得る手段として設けられたのが、次に紹介する第三者からの情報取得手続です。

第三者からの情報取得手続とは

第三者からの情報取得手続は、2020年4月の改正で新しく設けられた手続きで、回収の実務を大きく変えました。相手本人ではなく、銀行や登記所などの第三者に、相手の財産の情報を回答させます。相手が出頭しない、うそをつくといった心配がなく、客観的な情報が得られるのが大きな特長です。

取り寄せる情報 回答する機関 財産開示手続を先にする必要 使える請求
預貯金(口座の有無、支店、残高) 銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行など 不要 すべての金銭債権
上場株式、国債など 証券会社、証券保管振替機構 不要 すべての金銭債権
不動産(土地、建物) 登記所(法務局) 必要(3年以内に実施されていること) すべての金銭債権
勤務先(給与の支払元) 市町村、日本年金機構など 必要 養育費など、人の生命や身体の侵害による損害賠償に限る

情報取得の手続きの流れ

  1. 相手の住所地を管轄する地方裁判所に、情報取得の申立書を出し、照会先を指定する。
  2. 裁判所が情報の提供を命じる決定を出し、照会先に送る。
  3. 照会先が、裁判所に情報提供書を出す(写しは債権者にも届く)。
  4. 債権者は回答を確かめ、財産があれば差押えを申し立てる。
  5. 回答から1か月ほど後に、相手に情報取得があったことが通知される。

照会先からの回答は、申立てから数週間ほどで届くのが一般的です。預貯金の情報取得では、財産開示を先にする必要がないため、判決を取ったらすぐに申し立てることができます。

預貯金の情報取得が最も使われる

実務で最もよく使われるのが、預貯金の情報取得です。判決を取った後の最初の一手として定着しています。財産開示手続を先にしなくても申し立てられ、債務名義があれば、すべての金銭債権の回収に使えます。

申し立てるときは、照会する金融機関を指定します。回答では、相手の口座の有無だけでなく、どの支店に、どの種類の預金が、いくらあるのかまで分かります。支店まで特定できるので、そのまま預金の差押えに進めます。

不動産と株式の情報取得

不動産の情報取得では、登記所から、相手が所有者として登記されている土地や建物の所在地などの情報が回答されます。2021年5月から始まった手続きで、財産開示手続が過去3年以内に実施されていることが条件です。全国の不動産を対象に調べられるので、相手が遠方に不動産を持っている場合でも見つけられます。

上場株式や国債などの情報取得では、証券会社や証券保管振替機構から、相手が持っている銘柄や数量の情報が回答されます。相手が株式投資をしていそうな場合に使える手段です。

勤務先の情報取得が使える場合

勤務先の情報を市町村や日本年金機構から取り寄せられるのは、養育費や婚姻費用などの扶養に関する請求と、人の生命や身体を害したことによる損害賠償の請求に限られます。交通事故でけがをさせられた被害者が賠償金を回収する場合などには、この手続きで加害者の勤務先を調べ、給料を差し押さえることができます。

情報取得の限界

第三者からの情報取得は、照会した機関の範囲でしか情報が得られません。指定しなかった銀行に口座があっても、その情報は分かりません。インターネット専業の銀行や、地域の小さな信用組合などを見落とさないよう、相手の生活や事業の範囲を考えて照会先を選ぶ必要があります。

相手には後から知らされる

第三者からの情報取得で金融機関から回答があった場合、そのことは相手にも通知されます。ただし、通知されるのは、回答があってから1か月ほど後です。その間に差押えを申し立てれば、相手に預金を動かす時間を与えずに済みます。回答を受け取ったら、すぐに差押えの準備に入りましょう。

照会先の選び方

預貯金の情報取得で照会先を選ぶときは、次のような観点で候補を絞り込みます。

  • 相手の自宅や本店、事業所の近くにある銀行、信用金庫
  • 相手が過去の取引の支払いに使っていた銀行
  • 公共料金の引き落としや給料の受け取りによく使われる大手の銀行やゆうちょ銀行
  • 相手の業界の取引でよく使われる金融機関

一度の申立てで空振りに終わっても、照会先を変えてあらためて申し立てることができます。最初は可能性の高い数行に絞り、見つからなければ範囲を広げる、という進め方が費用の面でも効率的です。

申立ての費用

財産開示手続と第三者からの情報取得手続にかかる主な費用は、次のとおりです。どちらも、訴訟や不動産の競売に比べると少ない費用で使えます。

手続き 申立ての手数料 そのほかの費用
財産開示手続 2,000円 郵便切手代
第三者からの情報取得手続 1,000円(回答する機関ごとではなく申立てごと) 郵便切手代、回答する金融機関などへの費用

預貯金の情報取得では、照会する金融機関ごとに、回答のための費用を予納します。多くの金融機関に照会するほど費用が増えるので、相手の住所や事業所の近くの金融機関、相手が以前使っていた銀行などに絞り込むのが効率的です。

手続きにかかった費用は、執行の費用として、差押えで回収したお金から優先して差し引くことができます。

手続きの費用は比較的少ないものの、弁護士に依頼する場合は別に弁護士費用がかかります。請求額が小さい場合は、預貯金の情報取得だけを自分で申し立てるなど、費用とのつり合いを考えた使い方もできます。

自分でできる財産の調べ方

裁判所の手続きを使う前に、債権者が自分で調べられることもあります。手がかりを集めておけば、裁判所の手続きも的を絞って使えます。

不動産の登記簿

土地や建物の登記簿は、法務局で誰でも取り寄せられます。相手の住所の土地建物、相手の会社の本店や工場の登記簿を取り寄せ、所有者が相手本人か、抵当権がついているかを確かめます。オンラインで請求して郵送で受け取ることもできます。

自動車の登録

相手が自動車を持っている場合、登録番号が分かれば、運輸支局で登録事項等証明書を取り寄せて、所有者やローンの有無を確かめられることがあります。請求の理由を示す必要があり、判決などを持つ債権者であれば、差押えのためという理由で請求できます。ローンの支払いが終わっていない車は、販売会社などに所有権が残っていることが多いので注意してください。

登記簿で抵当権の額が大きいことが分かった場合でも、借入れの返済がかなり進んでいれば、競売したときに一般の債権者に回る額が残ることもあります。抵当権の設定時期や額から、残りの借入れを推し量ってみるとよいでしょう。

取引の記録

相手と取引をしていた場合は、相手からの振込の記録に、相手の口座の銀行名や支店名が表示されていることがあります。請求書や見積書のやり取りの中で、相手の取引先の名前が出てきていることもあります。こうした記録は、差押えの手がかりとして非常に役に立ちます。

相手の会社の登記簿と決算公告

相手が会社であれば、商業登記簿で本店、支店、役員の変化を確かめられます。本店の移転が繰り返されていたり、役員が次々と入れ替わっていたりする場合は、財産の移転が行われている兆しかもしれません。決算公告を出している会社であれば、貸借対照表から資産の大まかな状況を読み取れることもあります。

弁護士会照会

弁護士に依頼している場合は、弁護士会を通じて、企業や団体に必要な事項を照会する制度を使えます。弁護士会照会と呼ばれ、携帯電話会社に契約者の住所を照会したり、金融機関に預金の有無を照会したりすることがあります。回答するかどうかは照会先の判断によりますが、判決などを持つ債権者からの照会であれば、金融機関が預金の情報を回答する例も増えています。

信用調査会社

相手が会社であれば、信用調査会社の調査報告を利用する方法もあります。取引先、取引銀行、業績の推移など、差押えの手がかりになる情報が載っていることがあります。

財産を隠された場合の対抗手段

調べてみると、相手が支払いを求められた後に、不動産を家族の名義に変えていた、預金を親族の口座に移していた、ということが分かることがあります。このように、債権者を害すると知りながら財産を減らす行為は、詐害行為として裁判所に取り消してもらうことができます。取り消されれば、財産は相手のもとに戻され、差押えの対象になります。

詐害行為の取消しを求めるには、財産が移された時期や、相手が債権者を害することを知っていたことを示す必要があり、請求できる期間にも限りがあります。財産の移転に気づいたら、早めに弁護士に相談してください。

弁護士会照会は、相手の住所が分からなくなったときの所在の調査にも使われます。携帯電話の契約者の住所や、郵便の転居届の有無などを照会して、相手の新しい住所を突き止められることがあります。住所が分かれば、訴訟や差押えの書類を届けられるようになります。

具体例で考える|財産が分からない相手からの回収

ある内装業の会社は、元請けの会社に対して工事代金420万円の支払いを命じる判決を得ていました。元請けは判決の後に本店を移転し、代表者とも連絡がとれなくなりました。取引のときに使っていた銀行口座は、すでに解約されていました。

依頼を受けた弁護士は、まず元請けの新しい本店の近くにある都市銀行、地方銀行、信用金庫あわせて6行を指定して、預貯金の情報取得を申し立てました。その結果、1行の支店に約90万円の普通預金があることが分かり、すぐに差し押さえて回収しました。

残りの330万円については、財産開示手続を申し立てました。期日に出頭した代表者は、財産目録には「めぼしい財産なし」と書いていましたが、弁護士が売上の入金先を質問すると、別の信用金庫の口座を使っていることと、大手の住宅会社から毎月工事代金を受け取っていることを陳述しました。弁護士はその住宅会社に対する工事代金を差し押さえ、3か月ほどで残りの大部分を回収できました。

財産目録に書かれたことをそのまま信じず、期日での質問で具体的な情報を引き出したことが、回収につながった例です。うその陳述に刑事罰があるからこそ、相手も質問に正直に答えざるを得ませんでした。

個人を相手にした例も挙げておきます。自転車に乗っていたところを車にはねられ、けがを負った方が、加害者に対して損害賠償の判決を得ていました。加害者は任意保険に入っておらず、判決の後も支払いがありません。加害者は事故の後に引っ越し、勤務先も分からなくなっていました。

人の身体を害したことによる損害賠償なので、勤務先の情報取得が使えます。弁護士は財産開示手続を申し立て、加害者が期日に出頭しなかったことを確かめたうえで、市町村に対して勤務先の情報取得を申し立てました。回答で新しい勤務先が分かり、給料を差し押さえることで、毎月の回収が始まりました。勤務先の情報取得は、けがの被害者を守るために特別に設けられた手段です。

財産開示と情報取得を使いこなすために

二つの手続きは、組み合わせて使うことで力を発揮します。片方だけで終わらせないことが大切です。一般的には、次のような順番で進めると、相手に財産を隠す時間を与えずに済みます。

  1. 自分で調べられる範囲(登記簿、取引の記録)で財産の手がかりを集める。
  2. 預貯金の情報取得で、相手の口座と残高を調べる。
  3. 見つかった口座をすぐに差し押さえる。
  4. それでも足りなければ財産開示手続を申し立て、期日で残りの財産を明らかにさせる。
  5. 財産開示の後、必要なら不動産の情報取得も使う。

手続きの選び方や順番を誤ると、相手に警戒されて財産を動かされることがあります。相手の財産の状況や、分かっている情報に応じて、どの手続きをどの順番で使うかを判断することが大切です。判決を取った後の回収に不安がある場合は、弁護士に相談して、回収の見通しを立ててから動くことをおすすめします。

二つの手続きは、相手の財産を「見つける」ための手段であって、見つけた財産から回収するには、あらためて差押えの手続きが必要です。調べることと押さえることを切り離さず、回答や陳述を受けてから差押えまでの時間をできるだけ短くすることが、回収の成否を分けます。そのためにも、財産開示や情報取得を申し立てる段階で、差押えの申立書の下準備を並行して進めておくと安心です。

財産開示手続に関するよくある質問

財産開示手続は、判決がなくても使えますか

使えません。財産開示手続を申し立てるには、判決や仮執行宣言つきの支払督促、公正証書などの債務名義が必要です。債務名義がない段階で相手の財産が失われそうな場合は、仮差押えを検討してください。

相手が財産開示の期日でうそをついたらどうなりますか

宣誓したうえでうその陳述をすると、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金の対象になります。後からうそが分かった場合は、告発を検討するとともに、判明した財産をすぐに差し押さえることを考えます。

第三者からの情報取得で、相手の勤務先は分かりますか

勤務先の情報を取り寄せられるのは、養育費などの請求と、人の生命や身体を害したことによる損害賠償の請求に限られます。売掛金や貸金の回収では使えないため、財産開示手続の期日で相手に勤務先を明らかにさせる方法が中心になります。

財産開示手続で財産がないと分かったら、どうすればよいですか

判決などで確定した権利は10年間有効です。その間に相手の財産状況が変わることもあるので、時期をおいて預貯金の情報取得などで財産を確かめることを考えます。相手に払う自社の債務があれば、相殺による回収も検討できます。

相手が会社の場合、代表者個人の財産も調べられますか

会社に対する債務名義では、代表者個人の財産を差し押さえることはできず、財産開示手続で代表者個人の財産を明らかにさせることもできません。代表者が連帯保証人になっていれば、代表者個人に対する債務名義を取ることで、同じ手続きを使えるようになります。

財産開示手続を何度も申し立てられますか

一度財産開示の期日で陳述した相手については、原則として3年間は申し立てられません。ただし、相手が財産の一部を隠していたことが分かった場合や、新しく財産を取得したことが分かった場合、勤務先を辞めた場合などは、3年以内でも申し立てられます。

調べても財産が見つからなかった場合、損失として処理できますか

財産開示や情報取得を尽くしても回収できなかった記録は、税務上、貸倒れとして損失に計上する際の資料になります。貸倒れと認められるには一定の事情が必要なので、顧問税理士と相談しながら、手続きの記録を保管しておいてください。

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