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債権・債務とは?意味と種類、生まれ方と消え方を解説

債権・債務とは?意味と種類、生まれ方と消え方を解説

この記事で分かること

  • 債権は資産、債務は負債
  • 債権者は債権執行できるが、限界がある
  • 債権も債務も、契約書が根拠であることを忘れずに

債権債務関係は、契約の根幹であり、あなたが何を得られるのか、逆にあなたがどんな支払いをしなければいけないのかを定義したものです。そして、権利を侵害された場合の救済制度は有限ですから最善の手を選ぶことが求められます。債権回収の際は法律のプロである弁護士に相談しましょう。そもそも「支払いがされない≠債務不履行」の可能性さえあり得るのですから。

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「債権」と「債務」、正しく説明できますか

契約書を読んでいると、「債権者」「債務者」「債務の履行」といった言葉が何度も出てきます。取引先との交渉でも、「この債務はまだ弁済期にない」「債権を譲渡したい」といった言い回しを耳にすることがあるでしょう。なんとなく意味は分かるけれど、正確に説明しようとすると言葉に詰まる。そういう方は少なくありません。

債権とは、特定の相手に対して、何かをしてもらうよう求める権利です。ひと言でいえば「請求できる権利」です。債務とは、特定の相手に対して、何かをしなければならない義務です。同じ一つの関係を、権利の側から見れば債権、義務の側から見れば債務と呼びます。

債権と債務の考え方は、売買、請負、貸し借り、賃貸借など、ビジネスのあらゆる取引の土台になっています。この仕組みを理解しておくと、契約書を読むときも、取引先との間でトラブルが起きたときも、自分の立場や取るべき行動がはっきり見えてきます。債権回収も、この債権と債務の関係を正しく理解するところから始まります。

この記事では、債権回収の相談を受けている弁護士の立場から、債権と債務の意味、種類、どのように生まれ、どのように消えるのか、債務が守られなかったときに債権者にできること、2020年の民法改正で変わった点までを、具体例を交えて分かりやすく説明していきます。

法律の言葉は難しく聞こえますが、債権と債務は、日常の取引の中で誰もが持っているものです。コンビニで買い物をするときも、家を借りるときも、会社で働くときも、そこには必ず債権と債務があります。まずは、身近な取引を思い浮かべながら読み進めてみてください。

債権と債務の意味

債権と債務は、表と裏の関係にあります。一つの関係を、どちらの側から見るかの違いです。ある人が別の人に対して何かを求める権利を持っているとき、求められる側はそれに応じる義務を負っています。

用語 意味 例(商品の売買)
債権 特定の相手に、特定の行為を求める権利 売主が買主に代金の支払いを求める権利
債務 特定の相手に、特定の行為をする義務 買主が売主に代金を支払う義務
債権者 債権を持つ人 代金を請求する売主
債務者 債務を負う人 代金を支払う買主

債権と債務は、特定の人と人との間の関係です。債権者は、債務者に対してしか権利を主張できず、債務者と関係のない第三者に支払いを求めることはできません。この「特定の相手に対する権利」という性格が、債権の最も基本的な特徴です。

一つの取引に二つの債権が生まれる

多くの取引では、当事者の双方が、債権者でもあり債務者でもあります。一方だけが債権者という取引は、贈与などに限られます。商品の売買で考えると、売主は買主に代金の支払いを求める債権を持ち、同時に、買主に商品を引き渡す債務を負っています。買主は、売主に商品の引渡しを求める債権を持ち、同時に、代金を支払う債務を負っています。

当事者 持っている債権 負っている債務
売主 代金の支払いを求める債権 商品を引き渡す債務
買主 商品の引渡しを求める債権 代金を支払う債務

債権回収というときは、このうち、お金の支払いを求める債権(金銭債権)を、相手に実際に払ってもらうことを指します。

会社の帳簿の上の債権と債務

会社の帳簿では、債権は売掛金、貸付金、未収金などとして資産の側に、債務は買掛金、借入金、未払金などとして負債の側に計上されます。売掛金が多いのに現金が少ない会社は、債権の回収が滞っている可能性があります。決算書を見るときは、債権と債務の中身と金額に注目すると、会社の資金繰りの状況が見えてきます。

物権との違い

債権とよく比べられるのが物権です。二つの違いを知っておくと、債権の性格がよりはっきりします。物権は、物を直接支配する権利で、所有権や抵当権などがあります。物権は誰に対しても主張できるのに対し、債権は特定の相手にしか主張できません。たとえば、自分の車を盗まれた場合、所有権に基づいて、誰が持っていても返還を求められます。一方、車を売る約束をした相手が約束を破っても、請求できるのはその相手に対してだけです。

債権の力|請求できる、受け取れる、強制できる

債権には、法律によって与えられたいくつかの力があります。債務者に支払いを求める力、債務者が支払ったものを自分のものとして受け取っておける力、そして債務者が支払わない場合に、裁判所の手続きで強制的に実現させる力です。この最後の力があるからこそ、債権は単なる約束ではなく、法律で守られた権利になっています。ただし、強制的に実現させるには、判決などの債務名義が必要です。

債権の種類

債権は、求める内容によっていくつかの種類に分けられます。種類によって、債務の果たし方や、果たされなかったときの扱いが違います。

種類 内容 例
金銭債権 お金の支払いを求める債権 売掛金、貸金、家賃、給料、損害賠償金
特定物債権 特定の物の引渡しを求める債権 この中古車、この土地を引き渡してもらう権利
種類債権 一定の種類と数量の物の引渡しを求める債権 米10キロ、部品1,000個を納めてもらう権利
作為債権 何かをしてもらうことを求める債権 工事をしてもらう、ウェブサイトを作ってもらう権利
不作為債権 何かをしないことを求める債権 競合する店を出さない、秘密を漏らさないことを求める権利

このうち、債権回収で扱うのは主に金銭債権です。金銭債権には、お金には個性がないため、どのお金で払っても同じで、支払いが不可能になることはない、という特徴があります。そのため、相手が「お金がないから払えない」と言っても、債務が消えることはありません。

利息を求める債権

お金の貸し借りでは、元本の返済を求める債権とは別に、利息の支払いを求める債権も生まれます。個人間の貸し借りでは、利息の約束をしなければ利息は生じないのが原則ですが、会社どうしの貸し借りでは、約束がなくても法定利率による利息を請求できます。利息を求める債権も金銭債権の一つで、元本とともに回収の対象になります。

特定物債権の特徴

特定物債権は、その物でなければならない債権です。たとえば、中古車の売買では、売主はその車を引き渡さなければならず、同じ車種の別の車で代えることはできません。売主は、引き渡すまでの間、その車を大切に保管する義務を負います。

どこで支払うか|持参債務と取立債務

債務をどこで果たすかも、法律で決められています。特に約束がなければ、特定の物の引渡しは、債権が生まれたときにその物があった場所で、それ以外の債務は、債権者の現在の住所で果たすのが原則です。お金の支払いは、債務者が債権者のもとに持っていく持参債務が原則ということになります。実務では、振込先の口座を指定して、そこに振り込んでもらう形が一般的です。振込手数料をどちらが負担するかは、契約で決めておかなければ、原則として債務者の負担になります。

金銭債権と、ほかの債権の関係

物の引渡しや、仕事をしてもらうことを求める債権も、相手がそれを果たさなければ、損害賠償という形で金銭債権に変わります。たとえば、納期までに部品を納めてもらえず、別の業者から高い値段で買わざるを得なかった場合、その差額の賠償を求める金銭債権が生まれます。債権回収の対象は、最初から金銭債権だったものだけではありません。

債権はどのように生まれるか

債権が生まれる原因は、民法で主に四つに整理されています。契約だけが債権の生まれる原因ではありません。

発生原因 内容 例
契約 当事者の合意によって生まれる 売買、請負、金銭の貸し借り、賃貸借、雇用
事務管理 頼まれていないのに他人のために事務を処理した場合 留守中の隣家の水漏れを修理し、費用を立て替えた
不当利得 法律上の理由なく利益を得て、他人に損失を与えた場合 誤って振り込まれたお金を受け取った
不法行為 故意や過失によって他人に損害を与えた場合 交通事故、名誉毀損、商品の欠陥による事故

ビジネスで生まれる債権の多くは、契約によるものです。日々の注文や発注も、一つ一つが契約です。契約は、口頭でも成り立つのが原則ですが、後で内容をめぐって争いにならないよう、契約書を交わしておくことが大切です。

契約が成り立つのは、当事者の意思が合致したときです。見積書を出し、相手が注文書を返してきた時点や、メールで「この条件でお願いします」と返事をもらった時点で、契約は成立していると考えられます。どの時点で合意が成立したのかを示す記録を残しておくと、後で契約の成立そのものを争われたときに役立ちます。

契約書に書いておきたいこと

  • 誰と誰の間の契約か(当事者の正確な名前と住所)
  • 何を、いくらで、いつまでにするのか(債務の内容、代金、期限)
  • 代金をいつ、どのように払うのか(支払期日と方法)
  • 約束が守られなかったときにどうするか(遅延損害金、解除、損害賠償)

いつまでに果たすか|期限の種類

債務をいつまでに果たすかは、期限の決め方によって変わります。

期限の決め方 例 遅れたことになる時
確定期限 「3月31日までに支払う」 その日を過ぎたとき
不確定期限 「商品が売れたら支払う」 期限が来たことを知った時、または請求を受けた時のいずれか早い時を過ぎたとき
期限の定めなし 支払いの時期を決めていない 請求を受けた時を過ぎたとき

期限を決めていない取引では、請求をしない限り、相手は遅れたことになりません。遅延損害金を請求したいなら、書面で支払いを求め、その日付を記録しておく必要があります。

不当利得と不法行為による債権

契約がなくても、債権が生まれることがあります。誤って二重に振り込んだ代金は、受け取った相手に対して、不当利得として返還を求める債権になります。取引先の従業員の不注意で自社の倉庫が壊された場合は、不法行為による損害賠償を求める債権が生まれます。こうした債権も、契約による債権と同じように、請求し、払われなければ裁判所の手続きで回収できます。

契約書がない取引の債権

継続的な取引では、個々の注文ごとに契約書を作らず、発注書と納品書のやり取りだけで取引していることも多いでしょう。この場合も、発注書と、それに応じて納品した記録があれば、売買契約が成り立ち、代金を求める債権が生まれていることを示せます。取引の基本的な条件は、取引基本契約書にまとめておくと、個々の取引で争いが起きにくくなります。

債務が守られなかったとき|債務不履行

債務者が約束どおりに債務を果たさないことを、債務不履行といいます。債権回収が必要になるのは、この債務不履行が起きたときです。債務不履行には、主に次の三つの形があります。

形 内容 例
履行遅滞 期限を過ぎても債務を果たさない 支払期日を過ぎても代金を払わない、納期を過ぎても納品しない
履行不能 債務を果たすことができなくなった 売る約束をしていた中古車が、事故で全損した
不完全履行 債務を果たしたが、内容が不十分 納めた商品の一部が不良品だった、数量が足りなかった

相手が自分の債務を果たすまで払わなくてよい場合

売買のように、双方が債務を負う契約では、相手が自分の債務を果たすまで、こちらも自分の債務を果たさなくてよい、と主張できることがあります。これを同時履行の抗弁といいます。たとえば、売主が商品を納めていないのに、買主に代金の支払いを求めても、買主は「商品を納めてくれたら払う」と言えます。代金を請求する前に、自分の側の債務がきちんと果たされているかを確かめておくことが大切です。

納めた商品に問題があったとき|契約不適合責任

納めた商品の種類や品質、数量が、契約の内容に合っていなかった場合、買主は、売主に対して、修理や代わりの品の引渡し、代金の減額、損害賠償、契約の解除を求めることができます。2020年の改正前は「瑕疵担保責任」と呼ばれていたもので、改正後は「契約不適合責任」として整理されました。

種類や品質が契約に合っていないことを買主が知った場合、知った時から1年以内に売主に通知しなければ、原則としてこれらの請求はできなくなります。売主の立場からは、代金を請求したときに、買主から品質の不満を理由に支払いを拒まれることがあるので、納品や検収の記録を残しておくことが、代金の回収を守ることにつながります。

債務不履行のときに債権者ができること

相手が債務を果たさないとき、債権者には、次のような手段があります。

  1. 債務を果たすよう求める(履行の請求)。応じなければ、裁判所の力で強制的に実現する(強制執行)。
  2. 債務不履行によって生じた損害の賠償を求める。
  3. 一定の期間を定めて催促し、それでも果たされなければ契約を解除する。
  4. 相手に対して自分が負っている債務と差し引く(相殺)。

お金の支払いが遅れた場合は、損害の証明をしなくても、遅延損害金を請求できます。契約で率を定めていなければ、法定利率の年3%で計算します。

2020年の民法改正で変わった点

2020年4月の民法改正で、債務不履行に関するルールがいくつか見直されました。

  • 契約の解除には、債務者の落ち度(帰責事由)が必要なくなった。相手に落ち度がなくても、債務が果たされなければ契約を解除できる
  • 損害賠償を請求するには、引き続き債務者の落ち度が必要だが、落ち度がなかったことは債務者の側が示さなければならない
  • 履行不能になった場合、債権者は債務の履行を求めることができないことが明文化された
  • 法定利率が年5%から年3%に引き下げられ、3年ごとに見直す仕組みになった
ワンポイントアドバイス
取引先が債務を果たさないとき、どの手段をとるかは、取引を続けたいかどうかで変わります。取引を続けたいなら履行の請求と遅延損害金、取引をやめたいなら契約の解除と損害賠償、というように、目的に合わせて手段を選びましょう。

契約を解除する手順

相手が債務を果たさない場合に契約を解除するには、原則として、相当の期間を定めて催促し、その期間内に果たされなかったときに、解除の通知をします。ただし、債務を果たすことがもはやできない場合や、相手がはっきりと拒んでいる場合などは、催促をせずにすぐに解除できます。解除の通知は、後で争いにならないよう、内容証明郵便で送るのが確実です。

債務不履行が起きたら、まず相手に事情を確かめ、記録を残すことから始めます。いつまでに何をすべきだったのか、実際にどうだったのか、相手がどう説明したのかを書き留めておけば、請求や解除、損害賠償のどの手段を選ぶにしても、その根拠を示せます。

債権と債務はどのように消えるか

債権と債務は、次のような理由で消えます。いつ、どの理由で消えたのかを記録しておくことが、後の争いを防ぎます。

消える理由 内容
弁済 債務者が約束どおりに債務を果たす。最も一般的な消え方
代物弁済 本来の支払いに代えて、別の物を給付する
相殺 互いに負っている同じ種類の債務を、対当額で差し引いて消す
更改 古い債務を消して、新しい債務に置き換える
免除 債権者が債務者に対して、債務を免除する
混同 債権者と債務者が同じ人になる(相続や会社の合併など)
消滅時効 一定の期間、権利を使わずにいると、債務者が時効を主張して消える

弁済を受けたら受取証書を渡す

債務者は、支払いと引き換えに、受取証書(領収書)の交付を求めることができます。債権者の側でも、受け取った額と日付、どの債務に充てたかを書いた領収書を渡しておくと、後で支払いの有無や額をめぐる争いを防げます。振込で支払いを受けた場合は、振込の記録が支払いの証拠になります。

免除と更改の使いどころ

免除は、債権者が一方的に債務を消すもので、相手の同意はいりません。回収の見込みがない債権を整理するときや、和解の中で一部を免除して残りを確実に払ってもらうときに使われます。更改は、古い債務を消して新しい債務に置き換える契約で、たとえば、滞っている売掛金を消して、新たに返済期日を定めた貸付金に切り替える場合などです。更改をすると、古い債務についていた保証や担保は原則として消えるので、使うときは注意が必要です。

時効に注意する

債権回収で特に注意したいのが、消滅時効です。2020年4月以降に生じた債権は、原則として、権利を使えることを知った時から5年、権利を使える時から10年で時効を迎えます。支払期日の決まった売掛金や貸金であれば、支払期日から5年と考えておけばよいでしょう。時効を迎える前に、相手に債務を認めてもらうか、裁判所の手続きをとる必要があります。

債権回収の視点から見た債権の強さ

同じ額の金銭債権でも、回収のしやすさは債権によって大きく違います。債権の「強さ」を左右するのは、主に次の三つです。

要素 強い債権 弱い債権
証拠 契約書、納品書、相手が認めた書面がある 口約束だけで、記録がない
債務名義 判決や公正証書があり、すぐに差押えができる 差押えまでに訴訟などが必要
担保 抵当権や連帯保証があり、優先して回収できる 担保がなく、ほかの債権者と同じ順位

証拠、債務名義、担保のうち、証拠は取引の中で日々残していくもの、債務名義は支払いが止まった後に手に入れるもの、担保は取引の始まりに確保しておくものです。それぞれ準備すべき時期が違うので、取引の段階に応じて意識しておきましょう。

債権者平等の原則

担保を持たない一般の債権者は、債務者の財産から回収する場面で、互いに平等に扱われるのが原則です。これを債権者平等の原則といいます。債務者が破産すれば、一般の債権者は、残った財産から債権額に応じて按分された配当を受けるだけです。先に取引を始めた債権者や、額の大きい債権者が優先されるわけではありません。

この原則のもとで、ほかの債権者より先に回収するには、担保を取っておくか、相手が破産する前に差押えなどで回収を終えておくか、相殺できる関係を作っておく必要があります。債権回収の実務は、この平等の原則の中で、いかに早く確実に回収するかの工夫だといえます。

時効を迎えた債権でも、相手が時効を主張しない限り、請求することはできます。また、時効が完成する前に相殺できる状態にあった債権は、時効が完成した後でも相殺に使えます。時効の仕組みを知っておくと、あきらめかけた債権を生かせることもあります。

保証と連帯債務|債務者が複数いる場合

一つの債務について、複数の人が責任を負う場合があります。回収の相手が増えれば、それだけ回収の可能性も広がります。債権回収では、誰にどこまで請求できるかを知っておくことが大切です。

形 内容 債権者が請求できる範囲
保証 主たる債務者が払わないときに、保証人が代わりに払う 主たる債務者に先に請求するよう求められることがある
連帯保証 保証人が主たる債務者と同じ立場で責任を負う 主たる債務者と保証人のどちらにも、全額を請求できる
連帯債務 複数の債務者が、それぞれ全額について責任を負う どの債務者にも、全額を請求できる

会社どうしの取引では、取引先の代表者に連帯保証人になってもらうことがよくあります。連帯保証人がいれば、会社が払わなくても、代表者個人に全額を請求できます。

保証人に請求するときの注意

保証人に請求するときは、保証の範囲を確かめます。継続的な取引の債務をまとめて保証する根保証では、保証の上限額(極度額)の範囲でしか請求できません。また、主たる債務者の支払いが遅れたことを、保証人に知らせる必要がある場合もあります。保証契約書を見直し、請求できる範囲と手続きを確かめてから請求しましょう。

債権者代位権と詐害行為取消権

債務者が自分の財産を守るための手続きをとらない場合や、債権者を害するために財産を減らした場合に、債権者が介入する権利もあります。債務者が第三者に対して持っている権利を、債務者に代わって行使する債権者代位権と、債務者が債権者を害することを知りながらした財産の処分を取り消す詐害行為取消権です。どちらも、債務者の財産を守って、債権の回収を確保するための制度です。

ここまで見てきたように、債権は、生まれ方も、強さも、消え方もさまざまです。債権回収の手段を選ぶときは、自分の債権がどのように生まれ、どんな証拠と担保に支えられているのかを確かめることが出発点になります。

債務者の財産に頼らずに回収の確実さを高めるには、保証人をつけるほかに、抵当権などの担保を取っておく方法もあります。担保があれば、債権者平等の原則の例外として、担保に取った財産からほかの債権者より先に回収できます。取引の規模が大きくなったら、担保の確保を考えてください。

具体例で考える|取引の中の債権と債務

ここで、ある取引の中で、債権と債務がどのように生まれ、消えていくかを、時間の流れに沿って追ってみます。

ある家具メーカーが、ホテルから客室用の家具100セットの注文を受け、代金を2,000万円とする売買契約を結びました。納期は3月末、代金は納品の翌月末に一括で支払う約束です。この時点で、家具メーカーは、家具を納める債務と、代金2,000万円を受け取る債権を持ち、ホテルは、家具を受け取る債権と、代金を支払う債務を負っています。

家具メーカーは3月末に家具を納め、家具を納める債務は弁済によって消えました。ところが、4月末の支払期日を過ぎても、ホテルからの入金はありません。ホテルの債務は履行遅滞になり、家具メーカーは、代金に加えて、5月1日から年3%の遅延損害金を請求できるようになりました。

家具メーカーは、ホテルに対して別の取引で、客室の改装工事の代金300万円を支払う債務を負っていました。そこで、ホテルに対する代金債権のうち300万円分を、この工事代金の債務と相殺しました。相殺によって、双方の300万円分の債権と債務が消え、家具メーカーの債権は1,700万円になりました。

残りの1,700万円について、ホテルは分割払いを申し出てきました。家具メーカーは、残高を認める一文と、支払いが遅れたら残りを一括で払う条項を入れた合意書を交わしました。ホテルが債務を認めたことで、時効もこの日から数え直しになっています。一つの取引の中でも、弁済、履行遅滞、相殺、承認と、債権と債務はさまざまに動いていくのです。

この例から分かるように、債権回収は、取引の中で生まれた債権と債務の動きを正しく把握することから始まります。自社がどの相手に、どんな債権を持ち、同時にどんな債務を負っているか。その全体を把握していれば、相殺のような手段にも気づけますし、時効や遅延損害金の管理も的確にできます。

債権と債務の管理のポイント

  • 取引先ごとに、債権(売掛金など)と債務(買掛金など)の両方を一覧にしておく
  • 支払期日と時効の完成日を記録し、期日の管理を徹底する
  • 相手が債務を認めた記録(入金、支払いの約束、残高確認書)を保管する
  • 契約書で、支払期日、遅延損害金、期限の利益の喪失、解除の条件を定めておく

法律の仕組みを完全に理解する必要はありませんが、自社の取引に関わる債権と債務の基本を押さえておくことで、トラブルが起きたときに慌てずに済みます。判断に迷う場面では、早めに弁護士に相談してください。

債権・債務に関するよくある質問

「債権者」と「債務者」は、どちらがお金を払う側ですか

お金の支払いについていえば、お金を払ってもらう側が債権者、お金を払う側が債務者です。ただし、取引の中では、同じ人が別の債務については債務者になることもあります。商品の売主は、代金については債権者ですが、商品の引渡しについては債務者です。

口約束でも債権は生まれますか

生まれます。契約は、書面がなくても当事者の合意だけで成り立つのが原則です。ただし、保証契約のように、書面でしなければ効力がないものもあります。口約束の場合は、後で内容を証明するのが難しくなるため、メールなどで記録を残しておくことが大切です。

債務者が「お金がない」と言えば、債務はなくなりますか

なくなりません。お金の支払いの債務は、お金がないことを理由に免れることはできません。債務者が払わない場合、債権者は、裁判所の手続きを使って債務者の財産を差し押さえることができます。債務者が破産して免責を受けた場合は、原則として請求できなくなります。

債権は、ほかの人に譲ることができますか

できます。債権は、原則として自由に譲渡できます。譲り受けた人は、債務者に対して支払いを求めることができます。ただし、債務者やほかの債権者に譲渡を主張するには、通知などの手続きが必要です。

債務不履行と不法行為は、どう違いますか

債務不履行は、契約などで負っていた債務を果たさなかったことによる責任です。不法行為は、契約の有無にかかわらず、故意や過失で他人に損害を与えたことによる責任です。同じ出来事が両方にあたることもあり、どちらで請求するかによって、時効の期間などが変わります。

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