強制退去にかかる費用はどのくらい?手続きごとの費用と節約する方法

この記事で分かること
  1. 支払いに応じない家賃滞納者は、最終的に強制退去させる必要がある
  2. 強制退去の費用を家賃滞納者に請求できるが、回収が期待できないことも多い
  3. 費用がかかっても弁護士に依頼した方が、スピーディーに解決する可能性

強制退去の手続きは、まず任意交渉をして、次に賃貸借契約の解除通知、明け渡し訴訟、強制執行と進んでいきます。 各手続きにはそれぞれ大小の費用が発生しますが、家賃滞納者からの回収は期待できないことも多いです。しかし費用を自己負担しても早めに強制退去を完了した方が、損失を最小限に抑えることに繋がるでしょう。

強制退去までにかかる費用の相場は?

家賃滞納を続ける入居者を強制退去させたい場合、強制退去までにかかるおおまかな費用感はまず押さえておきたいところです。
実際の入居者の強制退去は、法的に定められた手続きの流れに沿って行う必要があります。
この記事では、強制退去までの一連の手続きの中で、それぞれどのくらいの費用がかかるかを解説していきます。

任意交渉

いきなり強制退去を求めるのはNG!まずは家賃支払いのお願いを

すでに家賃を滞納している入居者であっても、いきなり契約解除をして追い出すようなことはできません。日本の法律では、賃貸借契約の借主の権利が強く保護されています。
まずは、滞納者とその連帯保証人(保証会社)に対して、任意で「家賃を支払ってください」と交渉する必要があります。
この段階では、手紙や電話などを活用します。訴訟に発展した場合の証拠として、任意交渉の記録も残しておくことをお勧めします。

この手続きにかかる費用

  • 郵便切手代、通話料金

この段階で発生するのは、家賃支払いの交渉を行うための通信費のみ、大きな費用が発生することはまずありません。

ワンポイントアドバイス
まずは任意交渉での円満解決を目指してみましょう。強制退去を完遂するまでにはそれなりな期間と段取り、費用が発生します。交渉で問題解決できるのであれば、それに越したことはありません。

内容証明郵便で催促・契約解除通知

任意交渉に応じてもらえない場合は、次に内容証明郵便で支払いの催促を行いましょう。
内容証明郵便とは、郵便局が“誰が誰宛てにいつどんな文書を送ったのか”を証明してくれる郵便物です。証拠として有効なので、弁護士も頻繁に活用しています。

内容証明郵便による、滞納家賃の支払い催促の送付

最初は「滞納家賃をいつまでに支払ってください。支払ってもらえなければ賃貸借契約を解除します」という旨の内容証明郵便を送ります。
内容証明郵便で賃貸借契約解除を予告するのは、強い姿勢で家賃支払いを促すことが目的ですが、賃貸借契約解除を予告した事実の証拠を残すため、という意味合いもあります。
調停や裁判に進んだ場合、貸主として入居者に対して正当な形で催促を行ったことの証明となり、入居者からの「一方的に契約解除された」と主張されたとしても、この証拠をもって否定することができます。

内容証明郵便による賃貸借契約解除通知の送付

賃貸借契約解除予告を含む催促を行っても、家賃を支払ってくれない場合には、実際に内容証明郵便で「賃貸借契約解除通知」を郵送します。
賃貸借契約解除通知が滞納者のもとに届けば、これで賃貸借契約が終了します。
賃貸借契約が終了すると、もはや滞納者を部屋に住まわせる理由が無くなるので、強制退去の条件が整ったことになります。

この手続きにかかる費用

  • 郵便料金 80円
  • 一般書留の加算料金 435円
  • 内容証明の加算料金 440円※2枚目以降260円増
  • 配達証明 320円

謄本1枚の内容証明を送る場合 1回 1,275円

内容証明郵便の作成が難しい場合は弁護士に依頼を

内容証明郵便は誰でも作成して郵送できるので、ご自分で手続きをした方が安上がりではあります。
しかし「作成するのが難しそう」「弁護士名義で本気度をアピールしたい」などと思われる場合は、弁護士に依頼してみるのもひとつの方法です。

弁護士に依頼する場合にかかる費用
50,000~100,000円
※金額は法律事務所によって異なります

ワンポイントアドバイス
滞納家賃の支払い催促と、支払いがなかった場合の賃貸借契約解除通知には、それぞれ内容証明郵便を使用します。内容証明郵便をご自分で作成される場合は、上記の通りかなり安上がりになります。しかし強制退去においては、滞納家賃の損失を最小限にとどめるためにも、スピード感が重要です。難しいと感じたら、無理せず弁護士に依頼しましょう。

明け渡し請求訴訟を提起する

賃貸借契約解除ができたら明け渡し訴訟を提起

内容証明郵便で賃貸借契約解除通知を送ったら、次に裁判所で明け渡し訴訟の提起を行います。訴訟を提起せずに、ご自分で滞納者の家財道具を撤去して追い出すことは認められていません(自力救済の禁止)。
訴訟は非常に難しい専門的な手続きですので、弁護士に依頼されることを強くお勧めします。

明け渡し訴訟に必要な書類

明け渡し訴訟に必要な書類は、以下の通りです。

  • 不動産登記謄本
  • 固定資産評価額証明書
  • 予納郵便切手
  • 収入印紙
  • 証拠書類

この手続きにかかる費用

  • 弁護士の着手金20万円前後
  • 弁護士の報酬金30万円前後
  • 訴額に応じた収入印紙代:1万以下が目安
  • 予納郵便切手:約6,000円

金額相場 小計 516,000円程度
※小計金額はおおよその相場です。弁護士にかかる費用は法律事務所によって異なります。

ワンポイントアドバイス
訴訟手続きからは非常に高度な専門知識を要しますので、たとえ費用がかかっても弁護士に依頼されることを強くお勧めします。弁護士費用の金額や報酬体系、支払い方法は法律事務所によって異なりますので、複数の事務所に直接問い合わせをしてから比較検討しましょう。

強制執行の申立て

勝訴判決に基づき、強制執行は別途申立てる

明け渡し訴訟を提起して勝訴判決を得ることができたら、強制執行(法律の力で強制的に判決内容を実現する手続き)が可能な段階に入ります。
判決を受けて滞納者が自主的に退去してくれる可能性もありますが、そうでない場合には強制執行を申立てるしかありません。強制執行申立ての手続きについても、引き続き弁護士に依頼しましょう。

執行官、運送業者、解錠技術者立会いの大掛かりな作業

強制執行は、“執行官”と呼ばれる裁判所の職員のほか、運送業者や解錠技術者などに作業の協力をしてもらう必要があり、大変な労力を要する手続きです。
運び出された家財道具や諸々の荷物は倉庫で保管されます。借主やその家族が引き取りにこない場合には、家主の自己負担で廃棄しなければならない可能性もあります。

この手続きにかかる費用

  • 執行官に納める予納金 6万円前後
  • 解錠技術者費用 2万円~
  • 荷物の運搬費用約 10万円~50万円前後
  • 廃棄費用 約2~4万円
  • 強制執行申立ての弁護士費用 5~10万円前後
  • 明け渡し実現の弁護士報酬 10~20万円前後

金額相場 小計 手続費用25万~42万円+運搬費10万〜50万円 程度
※小計金額はおおよその相場です。弁護士にかかる費用は法律事務所によって異なります。

法律事務所によっては訴訟提起から強制執行申立て、明け渡し実現までの費用がセットになっている場合もあり、トータルで依頼することで報酬金額を抑えられる場合もあります。

ワンポイントアドバイス
弁護士費用とは別で、家財の搬出・運搬費用によっても、金額は大きく変化します。
あらかじめ強制執行の可能性が見込まれるようなケースでは、借主側との交渉を穏便に進める上でも、早い段階で弁護士に相談するのが得策でしょう。

強制退去までの対応はお金をかけて弁護士に依頼すべき?

任意交渉から内容証明郵便による賃貸借契約解除までは自力で行うことも可能ですが、慣れていない人にとっては難しく感じられるかもしれません。
こちらが円満解決を目指しても応じてくれなさそうな手強い滞納者を相手にする場合は、最初から弁護士に依頼した方がスピーディーな解決が期待できます。
家賃滞納トラブルは、時間が経過するほど損失が膨らんでいくリスクがあります。弁護士に依頼するとたしかに費用はかかりますが、その分時間の短縮に繋がるため、滞納による損失を最小限に抑えることができるでしょう。

ワンポイントアドバイス
今後も滞納家賃の回収が見込めない入居者は、一刻も早く出て行ってもらうのが大切。そうすれば、次の入居者から家賃収入を得ることができるようになります。弁護士に依頼すれば費用はかかりますが、早期の解決を期待できます。滞納期間が長引くほど損失は増えていく一方ですから、スピード感を重視されてみてはいかがでしょうか。

強制退去の費用を節約する方法

家賃滞納者に立ち退き料を払って任意で出て行ってもらう

裁判を起こして強制執行をかけると、お金がかかります。前述の通り裁判を起こすまでには複数のステップを経なければならず、ようやく強制退去の段階にたどり着いた頃には、家賃滞納による損失がかなりの額に増えているでしょう。
裁判を起こしても滞納家賃を回収できる見込みが少ないのであれば、早い段階で立ち退き料を自己負担して任意退去してもらうというのもひとつの選択肢です。

なるべく負担が少ない報酬体系の弁護士を選ぶ

法律事務所によっては、初期費用の負担が少ない報酬体系を採用していたり、分割払いに応じているところもあります。
まとまった金額をすぐに支払うのは難しいけれども一刻も早く弁護士に依頼したい、という方は、なるべく初期負担が少ない弁護士を探してみましょう。

ワンポイントアドバイス
前述の通り、裁判や強制執行をするにも、お金がかかります。それならば、任意交渉の段階で立ち退き料を自己負担して任意退去してもらうのもひとつの方法です。家賃滞納者の経済状況を見ながら、慎重に判断しましょう。

強制退去の手続きや費用が心配なら、弁護士に相談を

強制退去は、各ステップで様々な費用が発生します。明け渡し訴訟の段階からは高度に専門的な手続きになるので、弁護士に依頼した方が良いでしょう。
なお裁判所で訴訟を提起したからといって、必ず訴訟費用や滞納家賃を回収できるとは限りません。訴訟は決して万能な手続きではなく、“ない袖は振れぬ”が原則。任意交渉の段階で立ち退き料を支払って退去してもらったほうが、結果的に安上がりになるかもしれません。任意交渉の段階でもトラブルや困ったことがあれば、弁護士に気軽に相談してみましょう。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談