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不良債権とは?発生を防ぐ与信管理と回収・貸倒れ処理

不良債権とは?発生を防ぐ与信管理と回収・貸倒れ処理

この記事で分かること

  • 不良債権は誰もが抱えるリスクを持つ
  • 不良債権はすぐに回収すること
  • 回収できない不良債権は、価値を失う

債権は時効が到来するまでずっとその権利を持ち続けることができます。いわば資産と言えるでしょう。しかし、返ってくる見込みのない不良債権を優良債権同じ価値で見ることはできないし債権が焦げ付いてしまえば価値がゼロになってしまいます。債権回収は債務者に余力があるうちに決着をつけてください。

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「売上はあるのに、お金が入ってこない」を放置しない

決算書を見ると売上は伸びているのに、手元の資金はいつも足りない。売掛金の一覧を見ると、何か月も前の請求がいくつも残っている。担当者に聞けば「先方には何度も連絡しています」と言うが、入金の見通しは立っていない。こうした回収の見込みが立たなくなった債権が、不良債権です。

不良債権は、会社の資金繰りを静かにむしばみます。目に見える損失として表れにくいため、気づいたときには大きく膨らんでいることもあります。帳簿の上では資産として計上されていても、実際にはお金に換えられないので、仕入れの代金も、従業員の給料も払えません。売上が伸びているのに資金が足りなくなる、いわゆる黒字倒産の多くは、不良債権を抱え込んだことが原因です。

不良債権への対応は、大きく二つに分かれます。一つは、不良債権にならないよう、早めに兆しをつかんで回収に動くこと。もう一つは、回収できなくなった債権を、会計と税務の上で適切に処理し、損失を確定させることです。回収に手を尽くしたうえで、回収できない部分は貸倒れとして処理し、経営の実態を正しく帳簿に映すことが求められます。

この記事では、債権回収の相談を受ける弁護士の立場から、不良債権とは何か、発生を防ぐための与信管理、不良債権になりかけた債権の回収方法、回収できない債権の会計と税務の処理までを説明していきます。

不良債権は、どの会社にも生まれうるものです。大切なのは、生まれたときに早く気づき、手を打つこと、そして回収できない部分を先送りせずに処理することです。そのための考え方と具体的な手段を、順に見ていきましょう。

不良債権とは|回収の見込みが立たなくなった債権

不良債権という言葉は、もともと金融機関の貸付金について使われてきました。バブル経済の崩壊後、銀行の不良債権問題として広く知られるようになった言葉です。銀行などの金融機関では、法律に基づいて、返済が滞っている貸付金などを区分して開示することが求められています。

区分 内容
破産更生債権およびこれらに準ずる債権 借り手が破産、会社更生、民事再生などに入っている債権
危険債権 借り手の経営が破綻には至っていないが、財政状態が悪く、返済を受けられない可能性が高い債権
要管理債権 返済が3か月以上遅れている貸付金や、返済の条件を緩めた貸付金

一般の会社にとっての不良債権は、もっと広い意味で使われます。法律で定められた定義があるわけではありません。支払期日を過ぎても入金がなく、回収の見通しが立たない売掛金や貸付金、未収金などを、一般に不良債権と呼んでいます。

一般の会社でも、この区分の考え方は参考になります。取引先が倒産手続に入った債権、経営が危うく支払いが滞っている債権、支払いが3か月以上遅れている債権というように、回収の見込みの程度で自社の債権を分けてみると、どこから手を打つべきかが見えてきます。

一般の会社で不良債権になりやすいもの

  • 支払期日から長く入金のない売掛金、工事代金
  • 分割払いの途中で支払いが止まった債権
  • 取引先の倒産、夜逃げ、連絡不能で宙に浮いた債権
  • 取引先から品質や金額について争われ、支払いを拒まれている債権
  • 関係会社や役員、従業員に貸したまま返済のない貸付金

なかでも注意したいのが、関係会社や役員への貸付金です。身内への貸付けは、返済を強く求めにくく、帳簿の上に長年残り続けることがあります。金融機関から融資を受けるときにも、こうした貸付金は資産として評価されにくく、会社の信用を下げる原因になります。

不良債権が会社に与える影響

影響 内容
資金繰りの悪化 売上を計上していても現金が入らず、支払いに回せない
税金の先払い 売上として計上した分に、法人税や消費税がかかっている
金融機関の評価の低下 回収の見込みの低い債権が多いと、融資の審査で不利になる
担当者の負担 督促の手間が本業を圧迫する
経営判断の誤り 帳簿の資産が実態より多く見え、判断を誤らせる

見落とされがちなのが、税金の先払いです。売上を計上した時点で、法人税の課税の対象になり、消費税も納めています。代金を回収できなければ、受け取っていないお金に税金を払ったことになります。貸倒れの処理をきちんと行えば、この負担を取り戻すことができます。

不良債権かどうかを判断する目安

自社の債権が不良債権にあたるかどうかは、次のような目安で判断するとよいでしょう。支払期日から3か月以上入金がない、相手と連絡がとれない、相手が支払いを拒んで争っている、相手の経営が破綻している、分割払いが止まっている。一つでも当てはまれば、回収の方針を見直す時期です。

不良債権が生まれる原因

不良債権は、ある日突然生まれるわけではありません。振り返ってみると、どこかの段階で防げたはずのものがほとんどです。多くの場合、取引の始まりや、支払いが遅れ始めた段階での対応に、原因があります。

段階 よくある原因
取引を始めるとき 相手の信用を確かめずに取引を始めた。取引の上限額を決めていなかった
契約を結ぶとき 支払期日、遅延損害金、期限の利益の喪失などを契約書で定めていなかった
取引の途中 売掛金が増え続けているのに、取引の条件を見直さなかった
支払いが遅れ始めたとき 督促が遅れた。相手の言い訳を信じて納品を続けた
時間がたってから 時効を迎えた。相手が倒産し、財産が残っていなかった

なかでも大きいのが、支払いが遅れ始めた段階での対応の遅れです。「長年の取引先だから」「次の注文で取り返せるから」と様子を見ているうちに、相手の経営はさらに悪化し、ほかの債権者に先を越され、最後には回収できなくなります。

督促が途切れる理由

督促が途切れる原因として多いのは、担当者の異動や退職です。取引の経緯を知っている担当者がいなくなると、後任者は督促のきっかけをつかめず、債権は放置されます。また、営業担当者が督促を担っている会社では、取引先との関係を気にして強く請求できないこともあります。督促の役割を、営業から切り離して経理や管理部門に持たせることが、途切れを防ぐ一つの方法です。

原因の多くは、仕組みで防げるものです。契約書のひな形を整える、督促の基準を決める、支払いの遅れを毎月確かめる、といった基本を押さえるだけで、不良債権の発生は大きく減ります。

不良債権を防ぐための与信管理

不良債権への一番の対策は、そもそも不良債権を生まないことです。回収に費用をかけるより、予防に手間をかけるほうが、ずっと効率的です。そのための仕組みが与信管理です。与信とは、相手を信用して、代金を後払いにすることをいいます。与信管理は、どの相手に、いくらまで後払いを認めるかを決め、その範囲を守ることです。

与信管理というと大げさに聞こえるかもしれませんが、中小企業でも、取引先ごとに「後払いを認めるのはいくらまで」という上限を決め、それを超えそうになったら上長が判断する、という簡単な仕組みから始められます。上限を決めておくだけで、一社への売掛金が膨らみすぎるのを防げます。

取引を始める前に

  • 相手の登記簿で、設立の時期、資本金、役員の変化、本店の移転を確かめる
  • 決算書を出してもらえる相手なら、売上、利益、借入れの状況を見る
  • 信用調査会社の情報を利用する
  • 取引の上限額(与信枠)を決め、それを超える場合は担保や保証を求める

新しい取引先との最初の取引は、少額から始めるのも有効な方法です。何回か取引を重ね、支払いが期日どおりに行われることを確かめてから、取引の額を増やしていけば、万一のときの損失を小さく抑えられます。

取引の途中で

  • 取引先ごとに売掛金の残高と支払期日を一覧にして、毎月確かめる
  • 支払いが遅れたら、その日のうちに連絡する
  • 年に一度は与信枠を見直し、相手の状況の変化を反映させる
  • 残高確認書を送り、相手に署名してもらって残高と時効を管理する
ワンポイントアドバイス
与信管理は、営業部門だけに任せず、経理部門と情報を共有する仕組みにしておくことが大切です。営業担当者は売上を優先して取引を続けたがる傾向があるため、支払いの遅れを経理部門が把握して、出荷を止めるかどうかを判断できる体制にしておくと、不良債権の拡大を防げます。

決算書で見たいポイント

取引先から決算書を出してもらえる場合は、売上の推移、利益が出ているか、借入れが増えていないか、純資産がマイナスになっていないかを確かめます。とくに、売上が伸びているのに現金が減っている、売掛金や在庫が急に増えている、といった変化は、資金繰りが苦しくなっている兆しです。数字の読み方に不安があれば、顧問税理士に見てもらうとよいでしょう。

取引先の情報は、営業の担当者が日ごろの訪問や電話で得ていることも多いものです。担当者が見聞きした変化、たとえば社員の数が減った、社長が不在がちになった、といった情報を、経理や管理部門に伝える仕組みを作っておくと、兆しを早くつかめます。

危険の兆しをつかむ

取引先の経営悪化には、いくつかの典型的な兆しがあります。支払いの遅れが繰り返される、支払いの方法を手形や分割に変えてほしいと言ってくる、担当者や経理の人が頻繁に替わる、急に大口の注文が入る、事務所を移転する、といった変化です。こうした兆しに気づいたら、与信枠を下げる、前払いに切り替える、担保を求めるといった手を早めに打ちます。

前払いや担保への切り替え

危険の兆しがある取引先との取引を続ける場合は、条件を見直します。代金の一部を前払いにしてもらう、納品と同時に現金で払ってもらう、代表者の保証や担保を求める、といった方法です。取引先の側も、取引を打ち切られるよりはと、条件の変更に応じることが少なくありません。条件を見直す話し合いは、支払いの遅れが小さいうちに始めるほど、うまくいきやすくなります。

与信管理の仕組みは、取引先に対して失礼だと感じる必要はありません。取引先の側も、自社の取引先に対して同じような管理をしているはずです。与信の上限や支払条件をきちんと決めておくことは、互いに安心して取引を続けるための土台になります。

不良債権になりかけた債権の回収

支払いが止まった債権も、早い段階であれば回収できる可能性が十分にあります。あきらめて放置するのが、最もよくない対応です。相手の状況に応じて、次のような手段を選びます。

相手の状況 主な手段
払う意思はあるが、資金が足りない 分割払いの合意(公正証書にしておく)、担保や保証の追加、相殺、代物弁済
払う力はあるのに払わない 内容証明郵便での請求、支払督促、訴訟、差押え
経営が危うく、財産が失われそう 仮差押えで財産を押さえ、訴訟から差押えへ
相手が取引先への売掛金を持っている その売掛金の債権譲渡を受ける、差し押さえる
相手が破産などの手続きに入った 債権の届出、担保や相殺による回収

関係会社や役員への貸付金

関係会社や役員への貸付金は、身内であるだけに、返済の約束があいまいになりがちです。まずは、借用書や金銭消費貸借契約書を作り、返済の期日と方法を決めます。返済が難しい場合は、役員報酬から計画的に返してもらう、関係会社の財産で代物弁済を受ける、といった方法を検討します。回収の見込みがなくても、身内に対する債権の放棄は、税務の上で寄附金や役員への給与とみなされることがあるので、処理の前に税理士に相談してください。

早い段階での分割払いの合意

相手に払う意思がある段階で、分割払いの合意をしておくことは、不良債権化を防ぐ有効な手段です。合意書には、残高を相手が認める一文、毎月の支払額と支払日、支払いを怠ったときに残りを一括で請求できる条項を入れます。可能であれば、強制執行を受け入れる文言を入れた公正証書にしておくと、支払いが止まったときにすぐに差押えに進めます。

相手が倒産したときに確かめること

取引先が破産や民事再生の手続きに入った場合でも、あきらめる前に確かめたいことがあります。相手に払う自社の債務があれば、相殺による回収ができないか。納めた商品が相手の倉庫に残っていれば、動産売買の先取特権で優先して回収できないか。代表者が保証人になっていれば、保証人に請求できないか。こうした手段を確かめたうえで、残りについて債権を届け出ます。

回収にかける費用とのつり合い

すべての不良債権に、訴訟や差押えまでの手を尽くせるわけではありません。限られた人手と費用を、どこに振り向けるかの判断が必要です。請求額が小さい債権に多額の弁護士費用をかければ、回収できても赤字になります。債権ごとに、回収できる見込みと、かかる費用と時間を比べ、力を入れる債権を選ぶことが大切です。

額の大きい債権や、相手に財産がある債権は、弁護士に依頼して法的な手段を尽くします。額が小さく、相手に財産がない債権は、内容証明郵便で請求し、それでも回収できなければ、貸倒れとして処理することを検討します。

回収の手段を選ぶときに、忘れてはならないのが時効です。支払期日から時間がたっている債権ほど、時効の完成が近づいています。時効が迫っている債権は、まず内容証明郵便で時効の完成を遅らせ、その間に支払督促や訴訟を起こすか、相手に債務を認めてもらう必要があります。

不良債権を整理する手順

不良債権が複数たまっている場合は、次の手順で整理していくと、回収と処理を効率よく進められます。一度に片づけようとせず、優先順位をつけて進めるのがこつです。

  1. 支払期日を過ぎた債権をすべて洗い出し、取引先、金額、支払期日、最後の入金日、督促の状況を一覧にする。
  2. 取引先ごとに、登記簿や信用情報で現在の状況(営業中、倒産、連絡不能など)を確かめる。
  3. 時効の完成日を計算し、時効が近いものから優先して手を打つ。
  4. 金額と回収の見込みに応じて、法的手段を尽くす債権と、書面の請求にとどめる債権を分ける。
  5. 回収の手続きを進め、結果を一覧に記録していく。
  6. 回収できないことが明らかになった債権は、貸倒れの要件を確かめて処理する。

整理の過程で、督促の記録や、取引先の状況を確かめた資料をきちんと残しておくことが大切です。これらは、回収の交渉で使うだけでなく、税務の上で貸倒れを認めてもらうための証拠にもなります。

取引先ごとの一覧の作り方

一覧には、取引先の名前、請求書ごとの金額と支払期日、最後に入金があった日、督促をした日とその内容、相手の反応、時効の完成日、回収の方針の欄を設けます。表計算ソフトで作り、毎月の締めの後に更新するのが現実的です。支払期日からの経過日数で色分けしておくと、手を打つべき債権がひと目で分かります。

社内の体制を見直す

不良債権を整理したら、同じことを繰り返さないよう、社内の体制を見直します。支払いの遅れを誰が、いつ確かめ、どの段階で誰が督促するのか、どこまで遅れたら出荷を止めるのか、弁護士に相談する基準は何か。こうしたルールを文書にしておくと、担当者が替わっても対応が途切れません。

不良債権の整理は、会社の規模によっては一度に大きな損失を計上することになり、決算の数字に影響します。金融機関に対しては、整理の理由と、今後の与信管理の改善策を説明できるようにしておくと、かえって経営の健全さを評価してもらえることもあります。

不良債権を売却するという選択

回収に手間がかかる債権を、第三者に売却して早めに現金化する方法もあります。自社で回収を続けるか、売却するかは、費用と時間を比べて判断します。売却すれば、回収の手間や費用から解放され、売却価格と帳簿の額の差を損失として確定させることができます。

売却先 扱える債権
債権回収会社(サービサー) 金融機関の貸付債権、リース債権、クレジット債権など、法律で定められた債権
一般の債権の買い手 一般の売掛金など(回収を業として行うことには法律の制限がある)

売却の価格は、回収の見込みに応じて大きく下がるのが通常です。また、一般の会社の売掛金は、サービサーが扱える債権に含まれないことが多く、買い手が見つかりにくいという事情もあります。売却を考える場合は、買い手が回収を適法に行えるかどうかも確かめてください。

回収の手段を尽くすか、売却するか、貸倒れとして処理するか。この判断は、債権の額、相手の状況、回収にかかる費用、税務の扱いを総合して行う必要があります。弁護士と税理士に同時に相談し、回収と処理の方針をまとめて決めると、無駄のない整理ができます。

回収できない債権の会計と税務

手を尽くしても回収できない債権は、帳簿の上で損失として処理します。この処理を適切に行うことも、不良債権への対応の大切な一部です。会計と税務では、扱いが少し異なります。

貸倒引当金

回収できないおそれがある債権について、将来の損失に備えて見積もり額を計上しておくのが、貸倒引当金です。会計の上では、債権の回収の見込みに応じて、適切な額を引き当てることが求められます。ただし、税務の上で損金として認められる範囲は、中小法人などに限られています。

会計の上では、相手が破産の手続きに入った債権など、回収の見込みがほとんどない債権については、全額を引き当てることもあります。引き当てた額は、実際に貸倒れが確定した時点で、貸倒損失に置き換えます。

貸倒損失として認められる場合

税務の上で、債権を貸倒損失として損金にできるのは、主に次の三つの場合です。

場合 内容
法律上の貸倒れ 相手の会社更生や民事再生の計画、特別清算の協定などで債権が切り捨てられた場合や、債務者の債務超過が続いて弁済を受けられないため、書面で債権を免除した場合
事実上の貸倒れ 相手の資産の状況や支払い能力から見て、債権の全額が回収できないことが明らかになった場合(担保がある場合は、担保を処分した後)
形式上の貸倒れ 取引を停止してから1年以上たった売掛金などで、備忘価額(1円など)を残して損金にする場合(担保のある債権を除く)

とくに、事実上の貸倒れは、全額が回収できないことが明らかでなければ認められず、一部でも回収の見込みがあると否定されます。相手の破産手続が終わった、相手が行方不明で財産もない、といった事情を、資料で示せるようにしておくことが大切です。

貸倒れの処理のために残しておきたい資料

  • 取引の契約書、請求書、納品書など、債権があったことを示す書類
  • 督促の記録(督促状の控え、内容証明郵便、電話のメモ)
  • 相手の状況を示す資料(登記簿、破産手続の通知、所在の調査の結果)
  • 訴訟や差押えなど、回収の手続きの記録と結果
  • 債権を免除した場合の通知書の控え

貸倒引当金の二つの考え方

税務の上の貸倒引当金には、相手ごとに回収の見込みを見て個別に引き当てる方法と、過去の貸倒れの実績をもとに債権全体に一定の率で引き当てる方法があります。相手が破産の手続きに入った、債務超過が長く続いているといった事情があれば、その相手の債権について個別に引き当てることになります。どちらも、損金として認められるのは中小法人などに限られる点に注意してください。

形式上の貸倒れは、継続的な取引をしていた相手との取引を止めてから1年以上たった場合に使える処理で、担保を取っている債権には使えません。また、一度だけの取引で生じた債権や、貸付金には使えない点にも注意が必要です。

どの場合にあたるかの判断は、個別の事情によって分かれます。相手が破産の手続きに入っていても、手続きが終わって配当が確定するまでは、全額が回収できないとは言い切れないため、事実上の貸倒れとして処理できる時期に注意が必要です。

債権を放棄するときの注意

回収できない債権を、相手に対して放棄することもあります。放棄は、債権の免除とも呼ばれます。ただし、相手に支払う力があるのに放棄すると、相手に利益を与えたものとして、税務の上で寄附金とされ、損金として認められないことがあります。放棄する場合は、相手の債務超過の状況などを確かめ、放棄の通知は内容証明郵便などで残しておきます。

債権の免除の通知は、相手に確かに届いたことを示せるよう、内容証明郵便で送るのが一般的です。免除する額と、免除の理由(相手の債務超過が続いていることなど)を書いておき、その裏付けとなる相手の決算書などの資料も保管しておきます。

消費税の扱い

課税された売上に対する売掛金が貸倒れになった場合は、その売掛金に含まれていた消費税額を、貸倒れになった課税期間の消費税額から差し引くことができます。貸倒れの事実を示す書類は、保存しておく必要があります。

会計と税務の処理は、会社の決算に直接影響します。貸倒れの処理を先送りすると、実態より利益が多く見え、払わなくてよい税金を払い続けることにもなります。反対に、要件を満たさないまま処理すると、税務調査で否認されるおそれがあります。処理の時期と方法は、顧問税理士と相談して決めてください。

具体例で考える|不良債権を整理したケース

ある機械部品の商社は、決算の準備の中で、支払期日から1年以上入金のない売掛金が、12社分で合計1,800万円残っていることに気づきました。担当者の異動や退職が重なり、督促が途絶えていたものもありました。

商社は弁護士に相談し、12社の状況を一社ずつ確かめました。登記簿や信用調査の情報から、営業を続けている会社が7社、破産の手続きに入っている会社が3社、事務所を閉めて連絡がとれない会社が2社だと分かりました。

営業を続けている7社には、弁護士名の内容証明郵便で請求しました。そのうち5社は分割払いに応じ、公正証書を作りました。2社は代金を争ってきたため、1社は訴訟で、1社は調停で解決しました。破産の手続きに入っている3社には債権を届け出て、わずかながら配当を受けました。連絡がとれない2社は、財産がないことを確かめたうえで、事実上の貸倒れとして処理しました。

最終的に、1,800万円のうち1,100万円ほどを回収し、残りは貸倒れとして損失を確定させました。そのうえで、商社は与信枠の設定と、支払いの遅れを経理部門が毎月確かめる仕組みを整えました。翌年からは、支払期日から3か月以上入金のない売掛金は、ほとんど生じていません。

別の例も挙げておきます。ある設備工事の会社では、社長の親族が経営する関係会社に、10年以上前から貸し付けた2,000万円が帳簿に残っていました。返済は途絶え、関係会社は債務超過が続いていました。弁護士と税理士が相談し、関係会社の債務超過の状況を資料で確かめたうえで、関係会社の財産の一部を代物弁済で受け取り、残りについては書面で債権を免除しました。債務超過が続いて弁済を受けられないことを示せたため、免除した額は貸倒れとして認められました。身内への貸付金も、手順を踏めば適切に整理できる例です。

二つの例に共通しているのは、回収の手段を尽くしたうえで、回収できない部分を資料に基づいて処理したことです。回収と処理を切り離さず、一連の流れとして進めることで、会社の帳簿は実態に近づき、経営の判断もしやすくなります。

不良債権に関するよくある質問

何か月入金がないと不良債権になりますか

一般の会社では、決まった基準はありません。金融機関の区分では、返済が3か月以上遅れている貸付金は要管理債権とされます。一般の会社でも、支払期日から3か月を一つの目安として、回収の方針を見直すとよいでしょう。

不良債権は、いつまでに処理すればよいですか

回収の見込みがない債権を帳簿に残し続けると、会社の実態が正しく表れず、金融機関からの評価も下がります。回収に手を尽くしたうえで、貸倒れの要件を満たしたら、その事業年度のうちに処理するのが基本です。時期を誤ると、税務の上で損金として認められないこともあります。

時効にかかった債権は、どう処理しますか

相手が時効を援用すれば、債権は消えるので、貸倒れとして処理することになります。ただし、時効を理由に処理するまで放置していたことは、回収の努力を尽くしていなかったと見られることもあります。時効を迎える前に、回収の手を打つことが大切です。

不良債権の回収を弁護士に頼むと、費用倒れになりませんか

請求額が小さい債権は、費用とのつり合いを慎重に考える必要があります。複数の債権をまとめて依頼する、内容証明郵便の作成だけを依頼する、といった方法で費用を抑えることもできます。まずは、債権ごとの回収の見込みを弁護士に相談してみてください。

貸倒れとして処理した後に、相手から入金がありました

貸倒れとして処理した債権が後から回収できた場合は、回収した額を、回収した事業年度の益金(収入)として計上します。消費税も、貸倒れの際に差し引いた分を、回収した期に戻す処理が必要です。貸倒れの処理をしても、相手に対する請求の権利そのものは、債権を免除していない限り残っています。

債権回収を弁護士に相談するメリット
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