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不良債権とは?個人事業主や中小企業も備えておくべき不良債権の基礎知識

この記事で分かること

  • 不良債権は誰もが抱えるリスクを持つ
  • 不良債権はすぐに回収すること
  • 回収できない不良債権は、価値を失う

債権は時効が到来するまでずっとその権利を持ち続けることができます。いわば資産と言えるでしょう。しかし、返ってくる見込みのない不良債権を優良債権同じ価値で見ることはできないし債権が焦げ付いてしまえば価値がゼロになってしまいます。債権回収は債務者に余力があるうちに決着をつけてください。

不良債権とは?

不良債権とは回収が難しい債権、回収できる可能性が低い債権のことを言います。基本的には金融機関で使われる表現ですが、一般社会においても不良債権は発生しやすいです。

債権は権利だが、権利が実現できると限らない

債権は、実体のない権利です。そのため物理的に減らすこともできないし変質してしまうこともありません。そのため、債権は資産として計上されるのが常識です。

しかし不良債権は額面通りのお金を取り戻すことを期待できない債権ですから、ちゃんと返ってくる優良債権と同じように扱うことは非常に危険です。緊急度の高いものには早急に対応し、回収額が少なくなる場合や、全く回収できない場合も考慮しなくてはいけません。

債権は人権に劣後するからです。

手持ちのない債務者に対して、債権を実行することはできない

手持ちのない人から差し押さえることはできないし、強制的に債務労働させることも憲法の認めるところではありません。つまり不良債権は実現できない権利=紙切れになるリスクが高いのです。

ゆえに債務者が財産を持っているうちの債権回収が大事です。債務者が破産すれば債権そのものが無くなってしまいます。

不良債権はどんな時に発生する?

こちらでは不良債権とは何か?という点をイメージしやすいよういくつかの例を紹介します。

借金が返ってこない

個人間でよくあるトラブルですね。そもそも借金とは自分の生活をより良くするために行うものですから、返すための収入増を見込めない場合にお金を借りても債務者の経済を圧迫するだけです。

したがって、個人間の借金は原則的にすべきではありません。返済計画がしっかりしていなければ不良債権になります。

法人間でも多いトラブルです。無計画な返済プランでの貸し借りをした場合や、急な情勢変化があった場合などに不良債権が生じやすいです。

代金を払ってもらえない

万引きや食い逃げとはまるで違います。大きな取引の場合は掛け取引で行われることが多く、料金が後払いです。もちろん、どの企業もお金の出入りは絶えず行われています。

傾いている企業であればそもそも資力が足りなくて売掛金を払えないという事態が起きるし、普通の企業でさえ取引先の入金タイミングがずれてしまえば売掛金の支払いができなくなってしまいます。

家賃が入ってこない

家賃滞納によって生じる未払金も、不良債権になりやすいです。だからこそ貸す側にとって家賃滞納は3ヶ月ほどしか許されないようです。

地代についても家賃と同じですね。

給料が支払われない

会社の経営が不能になると、社員に給与を払うことすらできなくなります。残業代の未払いだけであっても規模が大きくなれば会社を圧迫するようです。

労働基準法では労働者が手厚く守られていますが、やはり企業にお金がなければ給与債権を満足させることも困難です。

請負についても同様で、取引先に財産がなければ報酬を受け取れない可能性があります。

ワンポイントアドバイス
このように、不良債権はありふれた原因で起こるものであり、むしろ完璧な経営をできる会社など数えるほどしかありません。個人には言及するまでもないでしょう。

ちなみに、不良債権は債務者の状況を見るだけでなく債権者の目利きを見る指標にもなります。例えば銀行の不良債権比率は低いほど優れた投資先を見つけられていることを意味するわけです。

不良債権を速やかに対処する流れを紹介

不良債権を速やかに対処しなければ、再建価値が大きく下落し、しまいには債務者から一銭も支払いを受けられないことが考えられます。

繰り返しますが、債権回収は債務者の財産があるうちに行いましょう。

相手に請求する

まず、期限を過ぎた債権に関して支払いを請求しましょう。この時点で次のようなことがあれば債権回収のしようがなくなります。

  • 夜逃げなど行方をくらまされた
  • 財産を隠されてしまった
  • 倒産や個人の債務整理などがあった
  • 既に時効が完成していた(時効は債権によって幾つか種類があります。)

電話や訪問での請求に対処しない場合は、法的手段も検討します。

その旨を伝えることと、請求をした証拠を残すこと、そして消滅消滅時効を止めるために内容証明郵便を用いて請求書を送ってください。内容証明郵便は郵便物の内容を郵便局が証明してくれます。

示談、和解による債権回収

私的な話し合いによって債権回収を図れるならそれが一番早いのですが、不良債権の度合いによっては示談の余地がない場合も少なくありません。

示談を選んだ場合は、その結果を和解書として合意し、さらに公正証書や裁判上の和解とすることで強制執行をしやすくします。とはいえ、強制執行やむなしという場合であれば和解を求めるより他の方法で債務名義を取得した方が良いでしょう。

支払督促による債権回収

支払督促は裁判所に申し立てることで行えます。これは、相手が債務を承認する場合に限り強制執行を可能にする便利な手続きである一方、相手が異議を申し立てた場合に通常訴訟が始まります。

この訴訟は債務者の住所を管轄する裁判所で行われます。ここも債権者が考慮すべきポイントです。

調停による債権回収

裁判所で話し合う調停の手続きも、合意をするという点では和解と変わりませんが、調停調書を調停委員が作成する点で和解と大きく異なります。調停委員が間に入る分中立的な議論ができるといえ、お互いの合意が前提となる点に注意が必要です。

調停調書があればそれを根拠に強制執行できます。

訴訟による債権回収

訴訟は裁判官による判決で法律関係を確定させる手続きです。つまり、訴訟で勝てば債権が公に認められたこととなります。しかし、判決には財産を差し押さえる効果はなく強制執行の手続きを新たに申し立てることを忘れてはいけません。

差し押さえによる債権回収

確定判決などの債務名義をもとに行う差し押さえを強制執行、抵当権などの担保に基づいて行う差し押さえを担保権の実行と言います。

どちらも相手が持っている財産を差し押さえて債権の充当に充てる手続きです。最も効果的な手段ですが費用がかかること、無視力の相手には効果がないことに注意が必要です。

ワンポイントアドバイス
債権者は通常の請求から財産の差し押さえまで幾つかの手段を用いて不良債権の回収を図ることができます。しかし、人権が債権に優先することから財産のない債務者からの回収は困難です。

不動産や船舶など大きな財産を持っていると差し押さえやすいです。

不良債権の回収が難しくなるケースと、難しい中でもできること

不良債権を回収できなければ、債権の根拠となる契約書はただの紙切れになってしまいます。そうならないよう不良債権が難しいケースと、その中でもできることを紹介します。

不良債権の回収が難しいケース

不良債権の回収が難しいケースを平たく言えば次の2つに大別されます。

  • 債務者の消息がない場合
  • 債権回収が人権侵害につながる場合

前者は、夜逃げや高飛びが挙げられます
後者は、生活の困窮が挙げられます。

これらの状況を回避するためには、相手の財産をよく見ておくことが大事で、債務者の行方を追える状況を作っておきたいです。

債権額が多ければ探偵を雇うことも良いかもしれません。逆に金額が少なければ費用倒れになります。

不良債権の回収ができなかった場合は?

不良債権の回収ができなかった場合は、回収できなかった債権を損失として計算することができます。事実上回収不能でなくとも、売掛債権であれば取引停止後1年以上弁済がない場合に損金算入できます。

給与債権の場合は厚生労働省に立替払いの請求をすることである程度の補償を受けられる場合があります。

不良債権で悩まないためにできること

不良債権で悩まないためにできることは、信用ある取引をすることです。
例えば次のことが対策になります。

  • 抵当権を設定しておく
  • 債権に譲渡担保を設定しておく
  • 保証人・連帯保証人を設定する
  • 相手の財政状況を徹底的に調べ上げる
  • 相手の取引履歴を調べておく

信用できる相手ならそれでよし、信用できなくても担保や保証人など他に信じられるものがあれば取引ができます。

ワンポイントアドバイス
不良債権を回収するのは難しく、債務者が支払い不能になれば打つてなしです。債権者はその意識を持ち、注意深い取引が求められます。

不良債権は焦げ付く前に回収しよう

債権回収の方法に迷ったら弁護士に相談を

不良債権を回収できるのは、債務者に財産があるときだけです。債務者に財産がなくなってしまえば、幾ら正当性があっても何もできません。債権回収を検討しているなら1日も早く行動してください。

債権回収を弁護士に相談するメリット
  • 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
  • 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
  • スピーディーな債権回収が期待できる
  • 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
  • 法的見地から冷静な交渉が可能
  • あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談