2020/2/7 1,156view

少額訴訟で債権回収する方法と効果的なケース

この記事で分かること
  1. 少額訴訟は60万円以下の金銭債権を回収するための簡易な裁判制度
  2. 低コスト・短期間で終了するのがメリット
  3. 相手が少額訴訟に反対したら通常訴訟に移行するなど、デメリットもあるので注意!

弁護士に依頼することなく低コスト・スピーディーな解決が期待できる少額訴訟は、まさに庶民の味方。しかしその利用は、相手次第である点に注意が必要です。もしも相手が少額訴訟に納得してくれず、通常の裁判をしたいと希望すれば、そうせざるを得なくなってしまうのが大きなデメリット。相手から少額訴訟を拒否された場合に備えて、事前に弁護士に相談しておくことをお勧めします。

少額訴訟とは~債権回収に有効?どんな手続き?

60万円以下の金銭債権のみを対象とする簡単・スピーディーな裁判

少額訴訟とは、その名前の通り「60万円以下の少額の金銭の支払いを求める」ための、簡易裁判所限定の裁判手続きです(民事訴訟法第368条第1項)。
たとえば「知り合いに貸したお金30万円が帰ってこない」「勤務先に未払いの給料25万円を請求したい」などの場合に利用できます。
比較的小規模な法律トラブルを迅速に解決することを目的とした制度なので、普通の裁判よりも簡略化された手続きである点が特徴。そのため、弁護士に依頼しなくても簡単・スピーディーに法律トラブルの解決を図ることができるのです。

原則1回の期日で審理が終わり、即日判決!

通常の裁判では、裁判官が事実関係・法律関係を慎重に整理して判決を下すため、時間をかけて審理を進めていきます。そのため、1~2年かかるケースも多いです。
しかし少額訴訟ではスピードを重視しているため、原則として1日で全ての審理を終了、即日判決を下します(民事訴訟法第370条第1項、第374条第1項)。審理にかかる時間は、2時間ぐらいと考えていただいて良いでしょう。
そのため、最初の時点で全ての証拠・証人が揃っていることが条件となります。

少額訴訟判決に納得できない場合は、異議申立てのみ可能

少額訴訟の判決に不服がある当事者は、判決から2週間以内に、異議を申し立てることができます(民事訴訟法第378条第1項)。
異議申立てがあった時には、少額訴訟は通常の訴訟に移行し、審理・判決をやり直すことになります。この判決の対しては、通常の裁判のように控訴することができないとされています。
通常の訴訟は3審制で、ひとつの事件について上限3回まで訴訟を求めることができます。1審に納得いかない場合は「控訴」で上級裁判所に不服を申し立て、2審にも納得いかない場合にはさらに上の裁判所に「上告」できるのです。
しかし少額訴訟では、慎重・正確な判断よりもスピーディーなトラブル解決を重視しているため、このように簡略化された手続きとなっています。

ワンポイントアドバイス
少額訴訟は60万円以下のお金の支払いのみを求めることができます。簡単・スピーディー・低コストでトラブル解決をしたい方、証拠が手元に揃っている方にはお勧めです。しかしその反面、正確性・慎重さが犠牲にされがちな点には注意が必要です。

債権回収で少額訴訟の利用が適しているのはどんなケース?

60万円以下のお金を請求するケース

少額訴訟は、通常の訴訟に比べて簡易・スピーディーなので、あまり大規模・複雑な事件は向いていないと言えます。
冒頭で説明した通り、少額訴訟で求めることができるのは、60万円以下の金銭の支払いのみ。建物の明け渡し、物の引き渡しなど、“お金以外のモノ・権利”を求めることはできません。
ちなみに“60万円”には利息・違約金の金額は含まれませんので、これらを差し引いた請求金額が60万円以下であれば大丈夫です。
また60万円以下の金銭債権が2つある場合には、少額訴訟を2つ起こすことも可能と考えられます(ただし年10回の上限あり)。

証拠資料がある程度手元に揃っており、すぐに提出できる

少額訴訟の全ての審理は原則として1日で終了しますので、それまでに証拠資料や証人が揃っている必要があります。
たとえば契約書、録音データ、動画、画像、メッセージ(メール・SNSなど)履歴などが証拠として提出されます。
証人がいる場合には、必ず審理の日に予定を空けておいてもらいましょう。

関係者が少なく、内容が複雑すぎない

1日で審理が終わるので、内容が複雑すぎるトラブル・関係者が多いトラブルは少額訴訟に適さないと考えられます。
たとえば二者間でのお金の貸し借りなどは、単純なトラブルなので、少額訴訟に適していると言えるでしょう。

原告・被告がともに弁護士に依頼しない

弁護士に少額訴訟を依頼してはいけないということはありませんが、費用対効果が低いと言わざるを得ません。
そのため、原告・被告がともに弁護士に依頼しない場合のみ少額訴訟が有効と考えられます。
もし仮に少額訴訟で訴えた相手(被告)が弁護士を立ててきた場合、相手は通常訴訟への移行を希望する可能性が高いでしょう。
相手がわざわざ高いお金をかけて弁護士に依頼したということは「あなたの訴えに納得がいかないので、簡易・スピーディーな解決よりも正確性を重視して争っていく」という姿勢を示したことになります。
相手が弁護士を立ててきたら、こちらも誰か弁護士に依頼しないと互角に戦うことはまず難しいでしょう。
結局のところ、少額訴訟の利用は相手次第であることは否めません。

ワンポイントアドバイス
少額訴訟を利用できるケースは、実はかなり限られています。モノや権利を求めることはできませんし、関係者が多い複雑な事件の解決にも適していません。せっかく少額訴訟を提起しても、相手が反対すれば利用できない点には注意しましょう。

少額訴訟による債権回収の基本的な流れ

相手の住所地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出

少額訴訟は、相手の住所・所在地を管轄している簡易裁判所に提起します。
簡易裁判所の窓口には少額訴訟用の訴状用紙が置かれているので、そちらに必要事項を記入しましょう。

この訴状用紙は、請求内容に応じたフォーマットが揃っています。

  • 貸金請求
  • 売買代金請求
  • 給料支払請求
  • 敷金返還請求
  • 損害賠償(交通事故による物損)請求
  • 金銭支払(一般)請求

など、ご自分の状況に合わせて適切な用紙を選択しましょう。

記入方法や少額訴訟の手続きが分からない場合は、相談窓口にいる職員に聞けば丁寧に教えてくれます。
訴状の作成枚数は、裁判所提出用に1通、自分控えとして1通、訴える相手の人数分です。
少額訴訟にかかる費用は、印紙代・郵便切手代など全て合わせて約1万円程度。必要な書類は、訴状・登記事項証明書(相手が法人の場合のみ)・訴状副本(コピー)・証拠資料です。

期日の連絡・事前聴取・相手からの答弁書提出

訴状が簡易裁判所に受理されると、審理・判決をする期日の連絡が当事者に届きます。
前述の通り、少額訴訟では1日で審理が終了しますから、それまでに証拠書類の提出、証人の用意、事実関係の確認などの準備を行っておきましょう(裁判所からの指示もあります)。
相手(被告)が少額訴訟を無視しなければ、期日までに答弁書(注:あなたの訴状への反論)が提出されるでしょう。

相手が少額訴訟に反対すれば通常の民事訴訟に移行

少額訴訟を提起したからといって、必ず少額訴訟を利用できるとは限りません。
相手が通常訴訟を希望する場合、行方不明の場合、裁判所が判断した場合などには、通常の民事訴訟に移行することになります。
相手(被告)が通常の訴訟を希望できるのは、「期日で弁論をするまで」の間とされています(民事訴訟法第373条第1項)。

法廷で1回だけ審理が行われる

少額訴訟の審理は、約2時間で終了します。原告・被告・裁判官・書記官が参加します。
提出された証拠書類の確認、証人尋問などを行い、即日判決が下されます。
通常の裁判と同じく、少額訴訟でも和解(注:当事者の話し合いによりお互い譲歩する)をすることも可能です。
支払いを求める判決が下された場合でも、被告の支払能力に応じて、裁判官が分割払いを命じるケースもあります。

勝ったのに相手が支払ってくれない場合、強制執行も可能に

支払いを命じる判決が下されたにもかかわらず相手がそれに従わない場合、通常の訴訟と同じく相手の財産(銀行口座など)に強制執行をかけることができます。
この手続きは、「少額訴訟債権執行」と呼ばれています。
「少額訴訟債権執行」は、少額訴訟を行ったのと同じ簡易裁判所に別途申立てをしなければなりません。

強制執行に必要書類は、以下の3つです。

  • 少額訴訟債権執行申立書(簡易裁判所で入手)
  • 少額訴訟の確定判決書(債務名義正本)
  • 送達証明書(注:少額訴訟の結果が相手に送達されたことを証明する書類)

強制執行にかかる費用は、収入印紙代・郵便切手代・送達証明書取得費用・登記簿謄本取得費用など全て合わせて約1万円です。
強制執行の手続きについても、簡易裁判所の職員に聞けば丁寧に教えてくれます。

ワンポイントアドバイス
少額訴訟を提起するには、まず相手の住所地を管轄する簡易裁判所で訴状を作成しましょう。簡易裁判所には少額訴訟の訴状のフォーマットが用意されていますから、職員に記入方法を確認しながらその場で作成できます。少額訴訟が受理されたら、期日までになるべくたくさんの証拠書類を揃えておきましょう。

少額訴訟で債権回収を行う場合の注意点

少額訴訟を起こしたけど、相手に無視されたらどうなる?

相手が少額訴訟を無視してきたら、どうなるのでしょうか?
少額訴訟を起こしたのに相手が答弁書を提出せず、期日にも裁判所に来なかった場合には、法律上「訴えの内容を認めた」ことになり、あなたの“勝ち”とする判決が下されることになります(民事訴訟法第159条)。

少額訴訟の訴訟費用(印紙代・郵便切手代など)は請求できる?

印紙代・郵便切手代などの訴訟費用は、少額訴訟を含む全ての民事訴訟において相手(被告)に請求することができます(弁護士費用は自己負担です)。
ただし、訴状に「訴訟費用は被告の負担とする」とあらかじめ書いておかなければなりません。

相手の住所が不明な場合は、少額訴訟を起こせる?

前述の通り、少額訴訟は“相手の住所地”を管轄する簡易裁判所で提起します。簡易裁判所で受理された訴状は、必ず相手の住所に送達されることになっています。
そのため、そもそも相手の住所が不明である場合には、少額訴訟をすることができませんので注意が必要です。

少額訴訟はひとりにつき年10回まで!

同じ簡易裁判所で少額訴訟を利用できる回数には、年10回の上限があります。
もともとこの利用制限は、消費者金融などの貸金業者が少額訴訟制度を独占的に濫用することを防止するために設定されたもの。
個人で年10回利用される方は実際のところほとんどいないでしょうが、念のため知っておきましょう。

ワンポイントアドバイス
少額訴訟は小規模な法律トラブルを解決するための手続きで、住所不明の相手・多数の相手がいる訴訟など、特殊な条件での訴訟で使うには不向きです。複雑な内容のトラブル解決は、少額訴訟で自己解決しようとせず、まず弁護士に相談する方がスムーズでしょう。

少額訴訟を利用する場合でも、弁護士に相談すべき?

弁護士に依頼しなくてもカンタン・スピーディーにお金を回収できる少額訴訟。一見便利な制度ですが、その利用は“相手の合意次第”である点に注意が必要です。
せっかく少額訴訟を提起したのに相手が反対してきた、相手が弁護士を立ててきた、など思わぬトラブルが発生する可能性はゼロではありません。
少額訴訟の利用について不安なことがあれば、弁護士に相談されることをお勧めします。初回無料で法律相談を受け付けている弁護士も多いので、少額訴訟をご検討されている方でも気軽に相談してみましょう。

債権回収を弁護士に相談するメリット
状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
スピーディーな債権回収が期待できる
当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
法的見地から冷静な交渉が可能
あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談