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強制執行の1種「債権執行」とは?手続き内容と流れを解説

この記事で分かること

  • 債権執行で差し押さえられる債権の範囲は意外と広い
  • 競売がいらないので不動産執行に比べて債権執行は安価で手早い
  • 債権回収の確実性を上げたいなら債権譲渡担保契約もおすすめ

不動産は抵当権がすでについている、めぼしい動産がないとなれば差し押さえるべきは債権です。債権はすでに明確な金額が決まっているため競売をするときのように時間がかかりません。ただし、債権者同士の競合など考えるべき点はあります。できれば債権譲渡担保契約も

債権執行とは債権で債権を回収すること!?

債権執行とは不動産や動産のように債権を差し押さえる手続きです。債務者がなんらかの債権を持っているとき、あなたから見た債務者に対して債務を持っている人のことを第三債務者と呼びます。

債権者A←債務者B(Cとの関係において債権者)←第三債務者C(Bとの関係において債務者)

わかりやすく説明すればAさんがBさんに対して債権執行をすることで第三債務者であるCさんから直接お金を支払ってもらうことや裁判所に供託してもらうことができるようになります。基本的には債権者がAさんだけなら自由に取り立てができ、債権者が複数人いる場合は供託となります。

ここで債権執行の主な対象を紹介します。

売掛金

取引先の会社もどこかと商売をしているわけですから売掛金があるはずです。取引先が複数いる場合は複数の債権に対して債権執行を行いましょう。その方が債権回収の実行力も高まります。

給与

給与や賞与は個人が会社に対して持つ債権です。よって給与や賞与、その他報酬の差し押さえは債権執行によって行います。離婚の慰謝料や養育費を回収するためにも配偶者の給与を差し押さえる場合があります。

給与を差し押さえる場合は会社が第三債務者となるため会社から直接支払ってもらいますが、その金額は最大で手取り額の4分の1までです。

銀行預金

銀行預金もお金を好きな時に引き出す権利があるため債権と言えます。よって債権執行をする場合は銀行が第三債務者となります。つまり差し押さえ命令があれば直接銀行からお金を引き出すことができるようになります。

ちなみに現金は動産執行を用いて差し押さえます。

ワンポイントアドバイス
債権執行をする場合は売掛金や給与、銀行預金など様々な債権を対象にできます。相手の財産状況を調べた上で有効な選択をしましょう。特に預金は引き出されて処分される危険性があるので慎重に差し押さえを行なってください。

債権執行手続きの流れを紹介

債権執行手続きはこのような流れで行われます。

  1. 申し立て
  2. 差し押さえ
  3. 取り立て

1.申し立て

申し立ては債務者の住所を管轄する裁判所で行います。申立書には住所や名前のほか債務者および第三債務者の情報、請求する債権の金額や債権の内容を記載します。

申し立てに必要な書類はこちらです。

  • 申立書(当事者目録、請求債権目録、差押債権目録)
  • 債務名義の正本および送達証明書
  • 資格証明書(法人)
  • 返信用の切手
  • 収入印紙(申し立て手数料4000円)

競売や物件調査が必要だった不動産執行に比べて書類が少なく手数料が非常に安いです。ただし、申し立て手数料については債務者一人につきこの料金ですから複数の債務者から債権回収する場合は手数料も上がります。

書類は郵送可能ですが誤字脱字があった場合自分で直さなければいけません。余裕があれば直接裁判所へ出向いた方が良いでしょう。

債務名義とは

債務名義とは、債権執行をするための根拠のことを言います。財産権を制限することは債務者の生活を脅かすのでそう簡単には執行できないのです;。

債務名義としての効力を持つものにはこのような書類があります。「裁判したらお金を払ってもらえる」というのは勘違いでその結果をもとに強制執行をしなくてはいけません。

  • 確定判決
  • 仮執行文付きの判決
  • 公正証書
  • 和解調書、調停証書
  • 支払督促

担保権を実行する場合は債務名義を必要としないのですが、債権の場合は質権を設定できます。

2.差し押さえ

申し立てが受け入れられれば長くても3日ほどで債権差し押さえ命令が出されます。債権差押命令は債務者と第三債務者に通知されます。

これで債権者は債権執行をできるのですが、その債権が今も残っているとは限りません。例えば預金がすでに引き落とされていたり、失業していたりなどしていた場合は債権執行を取り下げるしかないので必ず財産調査と仮差押を忘れずに行いましょう。

債権執行は債権者が指定したもののみ対象となるため、債務者が隠していた債権が明らかになった場合はもう一度申し立てしなくてはいけなくなります。

3.取り立て

債権者平等の原則に則り、複数の債権者がいる場合は差し押さえた債権から得られたお金を分け合うことになります。一人の場合は直接取り立てができるのですが複数人の場合は第三債務者が裁判所に供託して、各債権者が配当を受ける形になります。

取り立ての結果については取立届あるいは取立完了届を裁判所へ提出します。これ以上債権回収が不可能と判断される場合は取下げ書を提出します。

第三債務者が支払いを拒む時はあなたが債権者として第三債務者を相手に法的手段をとります。

転付命令の申し立てはメリットばかりではない

債権執行で他の債権者と競合したくない時は差し押さえ命令と一緒に転付命令の申立を行います。転付命令の申し立てをすることで債権回収の権利を独占できますが、転付命令を申し立てた場合は「取り立ての結果に問わず債権額が弁済されたものとみなす」というデメリットがあります。

例えば100万円預けてあるはずの口座を差し押さえたところ実際には5万円しか入っていなかったとします。この場合、実際に得られるのは5万円ですが債権者には100万円弁済されたものと扱われます。

ワンポイントアドバイス
債権執行は不動産執行に比べて手続きが簡単で安価です。しかし債権回収の実現性は第三債務者の動向によるため安定性が十分解いてない点に注意してください。また、申立人以外に債権者がいる場合は差し押さえた債権を山分けすることになります。

法的手続きを簡単にする債権譲渡担保とは?

担保とは本来ものにつけられるものですが、民法においては質権の設定が認められています。これを債権質と呼びます。質権を設定しておけば債務不履行があった場合に第三債務者からの取り立てが可能になります。

しかし、質権は範囲が明確に定められるため将来発生する債権を対象にできないし証書を発行する手間もあります。そこで用いられるのが譲渡担保です。

譲渡担保は法律で決められていないものの判例で認められた概念です。質権が占有を移動させるのに対し譲渡担保は占有はそのままで所有権のみ移動させます。

債権に譲渡担保を用いれば将来の債権まで回収できるし債権執行が必要ありません。

債権譲渡の登記をするためには1件あたり7500円かかります。

債権譲渡担保を設定するための注意点

債権譲渡担保という概念は法律にありません。しかし、債権を一旦移動させている時点で債権譲渡として扱われます。よって第三債務者への通知および承諾が必要となります。

また、債権譲渡が二重に行われた時は陶器によって債権の持ち主が確定します。債権譲渡担保を設定する時は忘れずに再建譲渡投機ファイルへの記録をしてください。データとしての登録も可能です。

ワンポイントアドバイス
債権回収をスムーズにしたいなら債権譲渡担保の設定もおすすめです。債権譲渡担保があれば債務不履行があった時すぐに譲渡された債権を行使でき、しかも他の債権者と競合する心配がありません。

債権執行の方法でお悩みなら弁護士に相談を

債権執行が選択肢になる時点で話し合いでの解決は難しいはず。弁護士に相談すれば債権執行の根拠となる書類がない場合も訴訟についてのサポートを受けられます。債権回収の目的はあくまでお金を取り戻すことですから債務者および第三債務者の実態を突き止める上でも弁護士が役立つでしょう。

債権回収を弁護士に相談するメリット
  • 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
  • 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
  • スピーディーな債権回収が期待できる
  • 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
  • 法的見地から冷静な交渉が可能
  • あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談