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支払督促から仮執行宣言付支払督促、強制執行までの流れを徹底紹介!

この記事で分かること

  • 支払督促は裁判なしでの強制執行を可能にしてくれる
  • 仮執行宣言付支払督促がされてから2週間後に強制執行できる
  • 支払督促は異議申し立てによって訴訟になるデメリットがある

支払督促を申し立て、それに対して相手が異議申し立てをしなければ仮執行宣言の申し立てが可能になります。そして仮執行宣言付支払督促に対しても異議申し立てがなければ強制執行ができます。うまくいけば1ヶ月ほどで解決できる大きなメリットの反面、異議申し立てによって訴訟に移行するデメリットがあるので支払督促をするときは弁護士と相談した方が賢明です。

支払督促とは?

支払督促とは。裁判を得ずに強制執行できる制度のことを指します。

貸したお金や後払いの売り上げを払ってくれない債務者に対しては何らかの対策が必要です。これらを総称して債権回収と呼びます。

支払督促は、債権回収の方法の中ではかなり負担が少ないという特徴があります。

支払督促は裁判に出向かなくてよいし手数料も安い

支払督促は文字通り支払いを督促する手続きであるため訴訟のように弁論や陳述をする必要がありません。ただ債務者の住所を管轄する裁判所へ督促を申し立ててその結果を待つのみです。

また、手数料は訴訟の半分と決められているため負担が少ないです。

仮執行宣言付支払督促は債務名義になる

支払督促が通れば、仮執行宣言の申し立てをすることで仮執行宣言を付与してもらえます。仮執行宣言付支払督促は債務名義として使えるためうまくいけば裁判も交渉もなしに財産の差し押さえおよび強制執行ができます。

債務名義とは

債務名義とは債権や債務を確定させるもので、強制執行をする上で欠かせない書類です。例えば確定判決や執行文付の和解調書や調停調書などがあります。このような債務名義なしに強制執行を認めると私たちの財産権が大幅に制限されるでしょう。

だから強制執行という強い手段をするには相当の根拠が求められます。

支払督促は簡単な手続きだからよく使われ、悪用されることもある

支払督促は簡単な手続きであることから債権回収の手段としてよく利用されます。およそ3割の事件で支払い督促が採用されているようです。

その反面で支払督促は悪用されることもあります。支払督促は裁判でないためその債務の正当性どころか債務の存在すら詳細に調べません。あくまで債務者の異議申し立てによってその内容を争います。したがって様式さえ正しければ架空請求さえ可能です。

あなたの家族や知り合いに、覚えのない支払督促が届いたときはすぐに異議申し立てをするよう教えてあげましょう。

ワンポイントアドバイス
支払督促の申し立ては郵送で行えるため債権者は裁判所に行かずして手続き可能です。しかも仮執行宣言が付与されればそれを元に強制執行ができるので数ある債権回収方法のうちもっとも手早い手段と考えられます。

支払督促を申し立てて強制執行するまでの流れ

支払督促は相手が異議申し立てをしなければそのまま強制執行まで持っていける手続きですがそれまで債権者が何もしなくて良いわけではありません。支払督促はこのような流れで行われます。

  1. 支払督促の申し立て
  2. 仮執行宣言の申し立て
  3. 強制執行の申し立て

1.支払督促の申し立て

支払督促は債務者の住所を管轄する簡易裁判所に申し立てます。申し立てる際は実際に裁判所へ出向かなくても郵送で手続き可能です。

支払督促を申し立てるときはこのような書類が必要です。

  • 支払督促申立書
  • はがき
  • 申立手数料(収入印紙)
  • 登記簿謄本(法人)
  • 資格証明書(法人)

弁護士に委任する場合は委任状が必要になります。

申立は裁判所書記官によって審査され、様式不備がなければ債務者へ支払督促が送達されます。債務者は支払督促の内容に異議がある場合、異議申し立てを行います。

相手に届かない場合もありますが、この時は新しい住所や勤務先を突き止めて送る必要があります。再送に必要な郵便切手は申立人が用意します。

ちなみに支払督促はただ相手に督促するだけの手続きですから証拠が必要ありません。そもそも支払督促しただけでは相手の権利が制限されないのです。

2.仮執行宣言の申し立て

支払督促をしてから2週間以内に異議申し立てがなかった場合、仮執行宣言の申立ができるようになります。この時点で支払督促手続きは終了です。

仮執行宣言の期限は支払督促を債務者が受領してから30日以内です。この期限を過ぎた場合は再び支払督促を申し立てなければいけません。

仮執行宣言を申し立てる時は仮執行宣言申立書を裁判所に提出し、当事者の数×1050円の手数料を納めます。申し立てないように問題がなければ裁判所書記官が仮執行宣言付支払督促を債務者に送達します。

この段階でも債務者は異議申し立てができます。

3.強制執行の申し立て

仮執行宣言付支払督促を送達してから2週間、異議申し立てがなければ強制執行ができます。判決の場合は仮執行宣言が出ていても確定判決によってその内容が変わることがあるのですが支払督促の場合は内容を蒸し返すことができません。

強制執行を申し立てる時は仮執行宣言付支払督促の正本を提出しましょう。

強制執行は財産を選んで行うこと

ここまでご覧になればどの手続きにも申立が必要なことがわかります。強制執行についても債務名義があれば自動的に行われるわけではありません。しかも強制執行をする時は財産の内容に合わせた手続きをしなければいけないのです。

大きく分けて不動産執行、動産執行、債権執行があります。不動産執行の場合は不動産を調査するための高い予納金が必要です。動産執行の場合は財産を指定しなくて良いものの差し押さえに出向く必要があります。債権執行の場合は第三債務者からの取り立ても必要になります。

債務者の財産状況に合わせてどの財産を差し押さえるか考えましょう。

差し押さえた財産は換金する

財産を差し押さえた後はそれをお金に換えます。不動産や動産であれば競売にかけ、債権であればそのまま第三債務者にお金を払ってもらうのです。債権者平等の原則に基づき強制執行で得られたお金は山分けされます。

ワンポイントアドバイス
支払督促をする場合に気をつけるべきことは仮執行宣言の申し立てができる期限です。ここを間違えるとかえって手間になってしまうでしょう。また、手続き先が債務者の住所を管轄する裁判所であることもご注意ください。

仮執行宣言付支払督促とは?取得しても安心できない理由は?

支払督促は手続きが早い反面、失敗しやすい手続きです。

こちらでは支払督促を選ぶ上で無視できないデメリットを紹介します。

異議申し立てされれば通常訴訟へ移行

支払督促は証拠がなくても申し立てられる反面、異議申し立てがあれば訴訟となります。異議申し立てが受理された場合は債務者の住所を管轄する裁判所で訴訟が行われますから交通の面で非常に面倒なことになります。

そもそも相手が支払督促を受け入れてくれなさそうであれば根気よく交渉するか支払督促せずに裁判を起こしてしまった方が賢明です。ちなみに訴訟に発展した場合でも相手の出方次第では和解による解決が可能です。

異議申し立ての期間が過ぎたのに訴訟に持ち込まれることも

支払督促に付与されるのは仮執行宣言でありあくまで「仮」です。つまり確定判決と同じ執行力をもつものの確定判決と同じ既判力までは持たないのです。

既判力とは一度決められた内容を覆せない力のことですが、支払督促の異議申し立て期間を過ぎた場合は請求異議の訴えが可能です。とはいえ、請求内容で争えるならすぐに異議申し立てが出されるはずなので債務者に相当の理由がない限りその可能性は高いと言えません。

よって支払督促の正しさは確定判決が出るまで確定せず、あくまで「訴訟を起こされただけでは強制執行を妨げられない」という認識で構わないでしょう。

債務者に督促異議を取り下げてもらうには交渉力が鍵となる

債務者が督促異議を申し立てた時はそれを取り下げてもらうように交渉することが効果的です。そもそもこちらに落ち度がなければ相手の督促異議は時間稼ぎや嫌がらせの意図しかありません。

そこで、こちらから督促異議の取り下げについて支払いが債務者にとって無理のないように務めることや訴訟のリスクが高いことを材料に良い形の合意を引き出して支払督促を取り下げてもらいます。

多少相手に譲歩しても支払督促の取り下げをしてもらえればいざという時に素早く強制執行ができます。この時財産状況を聞き出せばより実行力を高められるでしょう。

ワンポイントアドバイス
支払督促には確定判決のような既判力がありません。よって仮執行宣言付支払督促に異議申し立てがされなかった時でも訴訟されるかもしれないという点を忘れないでください。

支払督促の使いどころに迷ったら弁護士に相談しよう

支払督促は極めて勝算の高い事件に対しては効果的ですが、債務の存在や内容を争う余地があるなら却って手間のかかる手段となってしまいます。

支払督促は上手く使えば非常に早く強制執行できるようになるので支払督促を使うタイミングやそれをしっかり押し通す方法を弁護士と話し合いましょう。

債権回収を弁護士に相談するメリット
  • 状況にあわせた適切な回収方法を実行できる
  • 債務者に<回収する意思>がハッキリ伝わる
  • スピーディーな債権回収が期待できる
  • 当事者交渉に比べ、精神的負担を低減できる
  • 法的見地から冷静な交渉が可能
  • あきらめていた債権が回収できる可能性も
上記に当てはまるなら弁護士に相談