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宅地建物取引業法とは?平成29年改正についてもわかりやすく解説!

この記事で分かること

  • 宅地建物取引業法とは宅地・建物の取引に関する法律
  • 平成29年の法改正のポイントは「取引の促進」と「建物状況調査」
  • 「建物状況調査」とは、契約成立前に行う建物の構造調査のこと

物件を売買したい、建物の媒介業をしたいといった時にお世話になるのが「宅地建物取引業法」です。ここでは、宅地建物取引業法の基礎から最近の法改正まで、簡単な解説を致します。

宅地建物取引業法とは

宅地建物取引業法と聞くと、なにやら難しい感じが並んでいるように思われるかもしれませんが、「宅地」と「建物」の取引に関して定められたのが「宅地建物取引業法」です。宅建業法と略して呼ばれることが多いです。

制定の背景

敗戦し、焼け野原となった戦後の日本では、復興の気運が高まっていました。住むところも満足ではない中で、宅地建物の需要が急増し、不動産仲介会社も増加しました。当時は宅地・建物の取引を規制する宅建業法がなく、詐欺や恐喝の犯罪行為も頻繁に行われていました。宅建業法は、このような背景の中で制定されました。

宅地建物取引業法の目的

宅建業法の第一条「目的」にあるように、宅建業法は、免許制度を実施し、宅地・建物の取引に必要な規制を設けることによって、公正な取引を確保することを目的としています。これによって、宅建業の健全な発達を促進し、購入者の利益を保護するとも記載されています。宅地と建物の取引を健全な形で行い、以前のような犯罪の多発する状態に陥らせないという意志が、ここには表れています。

宅地建物取引業とは

宅建業とは、その名の通り、宅地と建物の取引(売買・賃借・交換)に関わる「事業」のことを意味しています。他人の宅地・建物を代理人や仲介人となって扱う場合も、宅建業と見なされます。宅建業を営むには、宅建業法で定められた通り、免許が必要となりますが、自宅を売る場合や、自ら大家となって賃借する際には免許がいりません。

なぜ自分で賃借する場合に免許がいらないのか

宅地と建物の取引が「事業」と見なされるためには、①不特定多数を相手に取引をし、②繰り返し取引を行う必要があります。たとえば昔かったマンションを売るといった場合や、転勤の際に自宅を他人に貸すといった場合には、「事業」と見なされないため、免許が必要ありません。宅建業の免許とは、あくまでも宅建業を営む際に必要な免許なのです。

宅地建物取引業法とは、宅地・建物の取引事業に関する法律

宅地建物取引業法は、宅地や建物の取引を事業として行う場合に適応される法律だということができます。しかし、何が「事業」にあたるかは、「社会通念上そのように考えられる」という程度しか定められておらず、明確な定義はありませんが、上の①、②に当てはまる場合は「事業」と見なされます。宅地や建物は、決して安いものではありません。宅建法があるおかげで、安心して取引をすることができます。

ワンポイントアドバイス
宅建業を営む際に必要となる免許を、宅地建物取引業免許と言います。この免許や、免許を取るための試験を通称「宅建」といい、「宅建をもっている」とか、「宅建を受ける」などと言います。合格率はそれほど高くありませんが、専門学校もあるので、免許取得を考えている方は早めの準備を心がけたほうがよいでしょう。

宅地建物取引業法の改正について

宅地・建物の正常な取引を目的とする宅建業法は、時代の移り変わりによって出てきた問題に適応したり、以前には気づかなかった問題に対処するために、定期的に改正されています。たとえば過去には、名義貸しの規制やクーリングオフ制度の導入が行われ、またバブル景気に対応するために、免許保持者の増員等の改正が行われました。最近では平成29年(西暦2017年)に改正されましたが、いったいどのような点が改正されたのでしょうか。

平成29年改正の背景と目的

もし、一世帯につき住宅が一つあれば、すべての住宅に無駄なく人が住んでいると言えます。しかし、現在は人口減少社会であり、この住宅が余りつつあるという状態にあります。この余りつつある住宅を有効活用するために、取引しやすい体制を整えようと考えられ、今回の法改正は行われたようです。公布自体は平成28年(西暦2017年)の6月に行われたものですが、実際の施行は平成29年(一部は平成30年)の4月1日からとなっています。この内容について、簡単にみてみましょう。

平成29年改正の内容

  • 売買に関する情報提供の充実(平成30年4月1日から)
  • 媒介契約時の報告義務の創設
  • 宅建業者に対する重要事項説明の簡素化
  • 弁済を受けることができる者の限定
  • 研修の実施
  • 従業者名簿の記載事項の変更

売買に関する情報提供の充実

住宅の取引が活発にならず、流通が増加しない理由は、住宅の売買が個人間で行われることが多く、住宅の情報が不明瞭かつ不正確であることが原因だと考えられています。住宅の質に関して十分に説明されず、また問題が見つかった場合でも、情報の真偽に関して責任を問いづらいといったことが、住宅の流通を滞らせてきたのです。これに対して今回の法改正では、専門家による「建物状況調査(インスペクション)」を義務付けることによって、住宅の情報の明確化と、その情報の責任者を明瞭にすることが試みられました。

具体的には、1)「売買または交換」を宅建業者が媒介(仲介)する場合、建物状況調査業者をあっせんすること、2)「売買または交換、賃借」の契約が成立するまでの間に、建物状況調査の概要や関連書類の保存状況等を重要事項として説明すること、3)「売買または交換」の契約が成立したときに、建物の主要部分等の耐久性や劣化状況について、当事者の双方が確認した事項を記載すること、が設けられています。

媒介契約時の報告義務の創設

すみやかに取引を行うために、宅建業者は、取引の申込みがあったときに遅延なく所有者に連絡しなければならないことになりました。これによって、所有者が取引状況をすぐ理解できるようになりました。

宅建業者に対する重要事項説明の簡素化

取引の効率化は、取引数を増加させます。今回の法改正では、さらなる効率化を目指して、宅建業者が宅地・建物の取得者、借主となる場合の重要事項説明は書面だけで済ますことができるようになりました。

弁済を受けることができる者の限定

通常、営業保証金や弁済業務保証金は、何らかの事故によって起きた多額の債務から、消費者を守るものとして知られています。しかし、これらは一般消費者に加え、宅建業者自体も対象となっており、事情を知っている宅建業者が先に還付請求をして、一般消費者の救済が遅れる、あるいは救済されないといった事態も起きていました。今回の法改正では、一般消費者が安心して取引できるように、宅建業者が還付の対象からはずされました。

研修の実施

質の高い情報に基づく営業は、流通を促進すると考えられています。従業員全体の質向上のために、1)宅地建物取引業保証協会が、宅建業者を社員にもつ一般社団法人に対し、研修費の助成を行うことができること、2)それらの一般社団法人は体系的な研修を行うよう努めること、という旨が新しく記載されました。

ワンポイントアドバイス
この法改正によって、「建物状況調査(インスペクション)」の需要が高まることが見込まれています。以下にも見ていきますが、今後の傾向を理解するためにも、「建物状況調査」について調べておきましょう。

法改正をうけて、不動産取引はどのように変化するか

以上の法改正によって、特に「建物状況調査」の重要性が認知されることで、取引の流れが変化すると考えられています。一般的な流れとしては、「売却・購入の申し込み」→「媒介契約の締結」→「要望に応じ建物状況調査の実施」→「重要事項の説明」→「売買契約の締結」→「物件の引き渡し」という順序になるでしょう。特に「建物状況調査」の有無が、従来とは異なる点です。

建物状況調査とは

インスペクションと横文字で書かれることも多いです。既存の建物の状況に関して、専門的な知見を有する者が調査することを意味しています。具体的には、建物の基礎、外壁等の部位毎に生じているひび割れ、雨漏り等の劣化事象などを調査します。これによって建物に関する客観的な情報を得ることができ、安心して取引ができるようになります。

「建物状況調査」は誰がおこなう?

建物状況調査は、業者によっても変化しますが、中古戸建で5~6万円程度と言われています。しかしこの調査は、買主、売主、宅建業者の誰が行うべきでしょうか。可能性から言えば、誰でもよいのですが、中古物件の流通が盛んな外国では、基本的に買主が行っているようです。これには、買主が実施する方が、客観的な結果が得られること、また一度調査を行っても、時間がたってしまうとまた新しい調査が必要になるため、買主が購入する直前に行う方が効率的だといった理由があるようです。

「建物状況調査」の利点

建物状況調査には、購入する建物の状態を事前に知り、購入するかどうかを合理的に判断できるという利点があります。また、客観的な情報に基づいて、価格の交渉を行うこともできるでしょう。さらに、調査の結果を踏まえて、どのような保険に加入するかを検討し、購入後のトラブルを予防することも可能となります。

ワンポイントアドバイス
建物状況調査で分かるのは、目視や計測でわかる情報です。すべての状態を完璧に把握するものではありません。もし不安な場合は、購入後に気づいた瑕疵の修繕費用を補填してくれる「既存住宅売買瑕疵担保保険」の検討をおすすめいたします。

宅地建物取引業法を知ろう

宅建業法は、戦後の混乱期に不公平な取引が増加したことを踏まえて制定されました。それから何度か、公正な取引を目指して様々な改正が行われましたが、今回の法改正は、既存住宅の流通を促進し、経済効果を得るためになされたと言われています。住宅ストックを有効活用し、ライフステージごとに適切な建物に住むことが簡単になれば、経済的にも豊かな生活を実現すると考えられてのことです。宅地や建物の取引は、人間の生活に欠かせないものです。この機会に一度勉強しなおしてみてはいかがでしょうか。

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