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家が傾いてきたら、誰に責任を問えるのか
念願の新築の家に住み始めて数年、ドアが閉まりにくくなり、床に置いたビー玉が転がるようになった。外の基礎を見ると、ひびが入っている。調べてもらうと、地盤が沈んで家が傾いていることが分かった。修理には多額の費用がかかるという。地盤沈下による家の傾きは、住まいの安全と資産の価値を大きく損なう深刻な問題です。
地盤沈下の原因は、決して一つではありません。もともと地盤が弱い土地だったのに、地盤の改良が不十分だった。造成の際の盛土が十分に締め固められていなかった。隣の土地の工事の影響を受けた。原因によって、責任を問う相手や、使える手段が変わります。
地盤沈下の問題を解決するには、何よりもまず原因を突き止めることが欠かせません。そのうえで、売主、建設会社、地盤の調査や改良を行った会社、近隣の工事の施工者など、責任を負う可能性のある相手を見きわめ、請求の期限を守って対応する必要があります。傾きに気づいたら、早めに専門家の調査を受け、記録を残すことが、解決への第一歩です。
この記事では、不動産や建築のトラブルの相談を受ける弁護士の立場から、地盤沈下の原因と見分け方、原因ごとの責任を問う相手、請求の期限と保証の制度、調査と修理の方法、自然災害による地盤の被害までを説明していきます。
地盤沈下は、建物の見た目だけでなく、住む人の健康にも影響することがあります。わずかな傾きでも、長く暮らすうちに、めまいや肩こり、睡眠の不調を訴える人もいます。住まいの安全と家族の健康を守るためにも、異変に気づいたら早めに対応することが大切です。
地盤沈下による家の傾きのサイン
地盤沈下によって家が傾くと、次のようなサインが現れることがあります。一つでも当てはまれば、注意が必要です。
- ドアや窓、ふすまが閉まりにくい、勝手に開いたり閉まったりする
- 床に置いたボールやビー玉が転がる
- 壁や天井、基礎にひび割れが生じる
- 壁と床、壁と天井の間にすき間ができる
- 家の中にいると、めまいや頭痛、平衡感覚の違和感を覚える
- 外構のコンクリートや塀にひびが入る、傾く
こうしたサインは、少しずつ現れることが多く、住んでいる人は慣れてしまって気づきにくいこともあります。季節の変わり目などに、ドアの開け閉めや床の傾きを意識して確かめる習慣をつけておくと、早く異変に気づけます。
傾きの原因は地盤とは限らない
家の傾きの原因は、地盤沈下だけではありません。建物の構造の欠陥、木材の乾燥による変形、シロアリの被害による土台の劣化などで、家が傾くこともあります。原因によって、責任を問う相手や修理の方法が変わるので、地盤の問題と決めつけず、専門家に総合的に調べてもらうことが大切です。
家全体が均等に沈む場合と不同沈下
ひと口に地盤沈下といっても、建物全体が均等に沈む場合と、建物の一部だけが沈んで傾く不同沈下があります。建物全体が均等に沈む場合は、建物への影響が比較的小さいこともありますが、不同沈下では、建物が傾き、構造に大きな負担がかかります。住宅で問題になるのは、主にこの不同沈下です。
自分で傾きを確かめる方法
床の傾きは、ホームセンターなどで手に入る水平器や、スマートフォンの傾きを測るアプリで、おおよそ確かめることができます。部屋の複数の場所で測り、どの方向に傾いているかを記録しておきましょう。ただし、正確な測定と原因の判断には、専門家の調査が必要です。自分で測った結果は、専門家に相談する際の参考資料として使います。
傾きを放置するリスク
家の傾きを放置すると、建物の構造に負担がかかり続け、ひび割れが広がったり、雨漏りの原因になったりすることがあります。傾きが進むと、修理の費用も大きくなります。また、請求の期限が過ぎてしまうと、売主や建設会社に責任を問えなくなるおそれもあります。気づいたら、早めに専門家に相談しましょう。
傾きの目安
住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づく技術的な基準では、床や壁の傾きが1000分の6以上ある場合は、構造耐力上主要な部分に欠陥がある可能性が高いとされています。1000分の6とは、1メートルあたり6ミリの傾きです。これより小さい傾きでも、生活に支障が出ることがあり、1000分の3以上であれば、欠陥の可能性が一定程度あるとされています。
地盤沈下の主な原因
地盤沈下の原因は、大きく次のように分けられます。原因によって、責任を問う相手が変わるので、原因の見きわめが大切です。
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 軟弱な地盤 | もともと田んぼや沼地だった土地など、地盤が弱いのに、十分な対策をとらずに家を建てた |
| 盛土の締め固めの不足 | 造成の際に盛った土が十分に締め固められておらず、時間とともに沈んだ |
| 地盤の調査の誤り | 地盤の調査が不十分で、弱い地盤を見落とした |
| 地盤の改良の不足 | 地盤の改良の工事が必要だったのに、行わなかった、または不十分だった |
| 近隣の工事の影響 | 隣の土地の掘削や、くい打ち、地下水のくみ上げの影響を受けた |
| 自然災害 | 地震による液状化、豪雨による土砂の流出 |
原因の見きわめ方
地盤沈下の原因を見きわめるには、家を建てたときの地盤調査の結果と、実際の地盤の状態を比べます。追加のボーリング調査などで地盤の層を調べ、盛土の厚さや、軟弱な層の深さを確かめます。沈下が始まった時期と、近隣の工事の時期との関係を調べることで、近隣の工事の影響かどうかを判断する手がかりにもなります。
地盤沈下が起きやすい時期
盛土や軟弱な地盤による沈下は、家を建ててから数年のうちに現れることが多いといわれています。建物の重さによって、少しずつ地盤が締め固められ、弱い部分が沈んでいくためです。新築から数年の間は、傾きのサインに特に注意しておきましょう。
地盤の調査と改良
本来、住宅を建てる前には、地盤の強さを調べる地盤調査を行い、必要に応じて地盤の改良の工事を行うのが一般的です。地盤調査は、地盤調査の会社や建設会社が行い、その結果をもとに、表層の改良、柱状の改良、鋼管のくいの打設などの方法で地盤を補強します。調査の方法や解析が不十分だと、弱い地盤を見落とし、必要な改良が行われないことがあります。
地下水のくみ上げ
工場や施設による地下水の大量のくみ上げによって、広い範囲の地盤が沈下することもあります。かつては都市部で大きな問題になり、現在は多くの地域で地下水のくみ上げが規制されています。広い範囲の地盤沈下は、個々の住宅の欠陥とは別の問題として、自治体の対策の対象になります。
地盤の改良の方法
| 方法 | 内容 | 向いている地盤 |
|---|---|---|
| 表層改良 | 地表から浅い部分の土にセメント系の固化材を混ぜて固める | 軟弱な層が浅い地盤 |
| 柱状改良 | 地中にセメント系の柱をつくり、建物を支える | 軟弱な層がやや深い地盤 |
| 鋼管くい | 鋼管のくいを固い地盤まで打ち込み、建物を支える | 軟弱な層が深い地盤 |
地盤の状態に合わない改良の方法を選んだり、施工が不十分だったりすると、改良をしていても沈下が起きることがあります。
外構部分の沈下
見落とされがちなのが外構です。建物の下の地盤は改良していても、駐車場や庭などの外構部分の地盤は改良していないことがあります。この場合、建物は沈まなくても、外構のコンクリートや塀が沈んだり、ひびが入ったりすることがあります。外構部分の沈下が、建物の欠陥にあたるかどうかは、契約の内容や、外構の工事を誰が行ったかによって判断が分かれます。
原因ごとの責任を問う相手
地盤沈下の責任を問う相手は、原因と、家を手に入れた経緯によって変わります。建てたのか、買ったのか、新築か中古かによって、使える手段も違います。
| 場面 | 責任を問う主な相手 | 根拠 |
|---|---|---|
| 建売住宅や中古住宅を買った | 売主 | 契約不適合責任 |
| 注文住宅を建てた | 建設会社 | 請負契約の契約不適合責任 |
| 地盤の調査や改良に問題があった | 地盤の調査・改良の会社 | 契約上の責任、不法行為 |
| 造成した土地の盛土に問題があった | 土地の売主、造成業者 | 契約不適合責任、不法行為 |
| 隣の土地の工事の影響 | 工事の施工者(注文者にも責任が及ぶことがある) | 不法行為 |
責任を問う相手を見きわめるには、家を手に入れたときの契約書と、地盤の調査や改良の記録をまず確かめます。誰がどの工事を担当したのかが分かれば、責任を問う相手の見当がつきます。
売主と建設会社が同じ会社の場合
建売住宅では、売主の不動産会社が自ら家を建てていることも、別の建設会社に工事を依頼していることもあります。売主と建設会社が同じ会社であれば、その会社に請求すればよいのですが、別の会社の場合は、まず契約の相手である売主に請求し、必要に応じて建設会社の責任も問うことになります。
建設会社や売主への請求
建てた家や買った家が、地盤沈下によって傾いた場合、建設会社や売主に対して、修理(建物の傾きの修正や地盤の補強)、代金の減額、損害の賠償、契約の解除を求めることができます。建物の基礎は、品確法の10年の保証の対象である構造耐力上主要な部分にあたるため、新築住宅であれば、引渡しから10年の間、責任を問えます。
地盤の調査や改良の会社への請求
地盤の調査や改良に問題があった場合は、その会社にも責任を問えることがあります。ただし、地盤の調査や改良の会社と直接契約していたのは建設会社であることが多く、施主が直接責任を問うには、不法行為などの根拠が必要になります。建設会社に請求し、建設会社から地盤の会社に責任を問う形になることもあります。
損害として請求できるもの
- 傾きの修正と地盤の補強の費用
- 傾きによって壊れた内装や設備の修理の費用
- 修理の間の仮住まいの費用と引越しの費用
- 原因の調査の費用
- 修理をしても残る建物の価値の下落(事案による)
- 精神的な苦痛に対する慰謝料(事案による)
建設会社が地盤の会社の責任を主張する場合
建設会社に請求すると、「地盤の調査や改良は専門の会社に任せていた」と、責任を地盤の会社に転嫁しようとすることがあります。けれども、施主との契約の相手は建設会社であり、建設会社は、下請けの会社の仕事についても責任を負うのが原則です。施主としては、建設会社に請求し、建設会社と地盤の会社の間の責任の分担は、両社の間で解決してもらうことになります。
住宅紛争審査会の利用
住宅瑕疵担保責任保険がついた新築住宅であれば、弁護士会の住宅紛争審査会の手続きを利用して、売主や建設会社との紛争の解決を図ることができます。弁護士と建築士が紛争処理委員として関わり、専門的な判断を踏まえて、あっせんや調停を行います。裁判所の訴訟と比べて、費用と時間の負担を抑えられる点が魅力です。
造成業者への請求
造成された分譲地の盛土に問題があった場合、土地の売主が造成業者とは別の会社であることもあります。この場合、買主は、売主に契約不適合責任を問うとともに、造成業者に不法行為の責任を問うことが考えられます。造成の工事の記録や、造成の許可の書類は、自治体の開発の担当課で確かめられることがあります。
近隣の工事の影響
隣の土地で大規模な掘削や、くい打ちなどの工事が行われた後に、家が傾いた場合は、工事の施工者に不法行為の責任を問うことが考えられます。工事と沈下との因果関係を示すには、工事の前の家の状態の記録が重要です。隣で工事が始まる前に、家屋調査を受けておきましょう。
請求の期限と保証の制度
| 根拠 | 期限 |
|---|---|
| 契約不適合責任(一般) | 不適合を知った時から1年以内に通知。請求の権利は知った時から5年、引渡しから10年で時効 |
| 新築住宅の10年保証(品確法) | 構造耐力上主要な部分の欠陥は、引渡しから10年 |
| 不法行為による損害賠償 | 損害と加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年 |
期限を守るためには、傾きに気づいた段階で、売主や建設会社に書面で知らせておくことが大切です。原因がまだはっきりしなくても、不具合があることを通知しておけば、1年の通知の期限を守れます。
住宅瑕疵担保責任保険
新築住宅の売主や建設会社は、10年の保証を確実に果たすため、住宅瑕疵担保責任保険への加入などが義務づけられています。地盤沈下によって基礎や構造に欠陥が生じた場合も、保険の対象になることがあります。売主や建設会社が倒産していても、保険の法人に直接請求できます。
保険の請求の流れ
住宅瑕疵担保責任保険を使う場合は、まず売主や建設会社に修理を求め、売主や建設会社が保険の法人に保険金を請求するのが通常の流れです。売主や建設会社が倒産している場合や、正当な理由なく修理に応じない場合は、住宅の所有者が保険の法人に直接請求できます。保険の証書に記載された保険の法人の連絡先を確かめておきましょう。
地盤保証
建設会社や地盤の改良の会社が、民間の地盤保証の制度に加入していることもあります。地盤保証は、地盤の調査や改良が適切でなかったために不同沈下が生じた場合に、建物の修理の費用を一定の期間、一定の金額まで補償するものです。家を建てたときに受け取った書類の中に、地盤保証の証書がないかを確かめましょう。
地盤保証を使うときの注意
地盤保証には、補償の期間や金額の上限、補償の対象になる傾きの基準などの条件があります。保証の期間が過ぎていたり、傾きが基準に満たなかったりすると、補償を受けられないこともあります。保証の書類で条件を確かめ、保証の会社に早めに連絡しましょう。
中古住宅の場合
中古住宅では、売主の契約不適合責任の期間が短く定められていたり、責任を負わない特約がついていたりすることが多くあります。ただし、売主が地盤沈下や家の傾きを知りながら告げなかった場合は、特約があっても責任を免れません。前の所有者のときに家を建てた建設会社への請求や、保険の利用ができないかも確かめましょう。
調査と修理の方法
調査の流れ
- 傾きのサインに気づいたら、日付とともに写真や動画で記録する。
- 水平器やレーザーの測定器で、床や壁の傾きを測る。
- 建築士や地盤の専門家に調査を依頼し、傾きの程度と原因を調べてもらう。
- 家を建てたときの地盤調査の報告書、地盤改良の工事の記録、設計図書を集める。
- 調査の結果をもとに、修理の方法と費用を見積もってもらう。
記録の取り方
傾きのサインに気づいたら、日付の分かる写真や動画で記録を残します。ドアの閉まり具合、ひび割れの位置と長さ、床の傾きの測定の結果などを、定期的に記録しておくと、傾きが進んでいるかどうかも分かります。ひび割れには、日付と長さを書いたシールを貼っておくと、変化を追いやすくなります。
調査を依頼する専門家
地盤沈下の調査は、建築士のほか、地盤の調査を専門とする会社や、地盤の技術者に依頼します。建物の傾きの測定と、地盤の状態の調査の両方が必要になるので、両方に対応できる専門家を選ぶか、建築士と地盤の専門家に分けて依頼します。売主や建設会社と利害関係のない、中立の専門家を選ぶことが大切です。
主な修理の方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 鋼管の圧入 | 建物の基礎の下に鋼管を打ち込み、建物を持ち上げて傾きを直す |
| 薬液の注入 | 地盤に薬液や樹脂を注入して、地盤を固めたり建物を持ち上げたりする |
| 土台の持ち上げ | 基礎と土台の間で建物を持ち上げ、傾きを調整する |
| 建て替え | 傾きが大きく、修理では対応できない場合に、地盤を改良して建て替える |
どの方法を選ぶかは、傾きの程度、地盤の状態、建物の構造によって大きく変わります。費用も方法によって大きく違うので、複数の業者から見積もりを取って、内容と費用を比べましょう。
修理の費用の考え方
傾きの修正の費用は、建物の大きさや傾きの程度、選ぶ方法によって大きく変わります。地盤の補強を伴う工事は、費用が高額になることもあります。売主や建設会社に請求する場合は、複数の業者の見積もりを示し、合理的な方法と費用であることを説明できるようにしておきましょう。
修理の後の確認
傾きの修正の工事の後は、再び傾きを測定し、修正が十分かどうかを確かめます。地盤の補強が不十分だと、時間がたつと再び沈下することもあるので、修理の後も一定期間、傾きの変化を見守ることが大切です。修理の保証の内容と期間も、工事の前に確かめておきましょう。
集めておきたい資料
- 売買契約書または工事請負契約書
- 地盤調査の報告書と、地盤改良の工事の記録
- 設計図書、建築確認の書類
- 住宅瑕疵担保責任保険や地盤保証の証書
- 傾きや損傷の写真、測定の記録
自然災害による地盤の被害
人の手による原因とは別に、自然災害による被害もあります。地震による液状化や、豪雨による土砂の流出など、自然災害によって地盤が沈下し、家が傾くこともあります。
自然災害による被害か、地盤の調査や改良の不備による被害かの区別が難しいこともあります。同じ地域でほかの住宅が被害を受けていないのに、自分の家だけが傾いた場合は、地盤の調査や改良に問題があった可能性も考えられます。
液状化とは
液状化は、地震の揺れによって、水を多く含んだ砂の地盤が液体のようになる現象です。埋め立て地や、もとは川や沼だった場所などで起こりやすく、建物が傾いたり沈んだりする被害が生じます。液状化の被害を受けた住宅では、地盤の改良と建物の傾きの修正が必要になり、費用も大きくなります。
自然災害の場合の責任
自然災害による地盤の被害は、原則として、誰かの落ち度によるものではないため、売主や建設会社の責任を問うことはできません。ただし、液状化のおそれのある土地であることを知りながら説明しなかった場合や、必要な対策を怠っていた場合は、責任を問える余地があります。災害の規模と、事前の説明や対策の内容によって判断されます。
また、地盤が弱いことを知りながら、その説明をせずに土地や住宅を売った場合は、自然災害をきっかけに被害が表に出たとしても、売主の説明義務違反を問える余地があります。
保険と公的な支援
自然災害による建物の被害は、地震保険や火災保険で補償されることがあります。地震による液状化で家が傾いた場合は、地震保険の対象になります。被害が大きい場合は、被災者生活再建支援制度などの公的な支援を受けられることもあります。自治体に被害の程度を認定してもらう罹災証明書が、支援を受けるための基本になるので、早めに申請しましょう。
地震保険の補償の範囲
地震保険は、地震や噴火、津波による建物や家財の損害を補償する保険で、火災保険とセットで加入します。液状化による建物の傾きや沈下も、一定の基準を満たせば補償の対象になります。補償の額は、損害の程度の区分に応じて決まるので、保険の内容を事前に確かめておきましょう。
土地を買う前の確認
自治体が公表している液状化の危険度のマップや、土地の成り立ちを示す地図で、土地が液状化しやすい場所か、もともと田んぼや沼地だったかを確かめることができます。土地を買う前や家を建てる前に、こうした情報を確かめておくと、地盤のリスクを見きわめられます。
地盤沈下を防ぐために家を建てる前・買う前にできること
地盤沈下のトラブルは、起きてから対応するより、家を建てる前、買う前の確認で、そのリスクを小さくすることができます。
| 場面 | できること |
|---|---|
| 土地を選ぶとき | 古い地図や土地の成り立ちの資料で、もとの地形を確かめる。自治体の地盤や液状化のマップを見る |
| 家を建てるとき | 地盤調査の方法と結果の説明を受け、改良の工事の必要性と方法を確かめる |
| 建売住宅を買うとき | 地盤調査の報告書と地盤改良の記録を見せてもらう。地盤保証の有無を確かめる |
| 中古住宅を買うとき | 建物状況調査で、床の傾きや基礎のひび割れを確かめる |
| 造成地の土地を買うとき | 切土か盛土か、盛土の厚さ、造成の時期を確かめる |
こうした確認は、家を建てたり買ったりする前でなければできないことも多いものです。とくに造成地では、見た目では地盤の良し悪しが分からないので、書類による確認を欠かさないようにしましょう。
切土と盛土
斜面を造成した分譲地では、もとの地面を削った切土の部分と、土を盛った盛土の部分が混在していることがあります。盛土の部分は、切土の部分より沈下しやすく、一つの敷地の中に切土と盛土の境目があると、不同沈下が起きやすくなります。造成の計画図があれば、敷地のどの部分が盛土なのかを確かめられます。
地盤調査の説明を受ける
注文住宅を建てる場合は、建設会社から、地盤調査の方法、結果、改良の工事の必要性について説明を受けましょう。調査の結果、改良が不要とされた場合も、その判断の根拠を確かめておくことが大切です。不安があれば、別の地盤の専門家に意見を求める方法もあります。
具体例で考える|新築の建売住宅が傾いたケース
造成地の建売住宅が傾いた例を見てみましょう。ある夫婦は、造成されたばかりの分譲地で、新築の建売住宅を購入しました。入居から3年ほどたったころ、寝室のドアが閉まりにくくなり、床にビー玉を置くと転がるようになりました。外の基礎にもひびが見つかりました。
夫婦はすぐに、売主の不動産会社に連絡しましたが、売主は「地盤調査をきちんと行い、問題はなかった」と言って、対応を渋りました。夫婦は弁護士に相談し、弁護士は、建築士と地盤の専門家に調査を依頼しました。調査の結果、床の傾きは1000分の7を超えていて、原因は、分譲地の造成の際の盛土が十分に締め固められておらず、建物の一方の側の地盤が沈下したことだと分かりました。地盤調査の報告書も、盛土の厚さを考慮していないものでした。
建物の基礎は品確法の10年の保証の対象であり、引渡しから3年しかたっていませんでした。弁護士は、調査報告書をもとに、売主に、傾きの修正と地盤の補強、修理の間の仮住まいの費用、調査の費用の賠償を求めました。売主は、報告書の内容を示されると、責任を認め、鋼管の圧入による傾きの修正と地盤の補強の工事を、自社の負担で行うことで合意しました。
夫婦が異変に気づいた早い段階で専門家の調査を受け、原因を特定したことが、売主の責任を明らかにし、10年の保証の期間内に解決することにつながった例です。
この例では、地盤調査の報告書が盛土の厚さを考慮していなかったことが、原因の特定の決め手になりました。専門家の調査で、家を建てたときの記録と実際の地盤の状態を比べることの大切さが分かります。
弁護士に相談するタイミング
売主や建設会社が責任を認めない場合、原因をめぐって争いがある場合、請求の期限が迫っている場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士は、協力する建築士や地盤の専門家と連携して調査を進め、売主や建設会社との交渉、住宅紛争審査会の手続き、訴訟を任せることができます。
地盤沈下は、住まいの根本に関わる問題です。一人で悩まず、専門家の力を借りながら、原因の特定と責任の追及を進めていきましょう。
地盤沈下に関するよくある質問
少しの傾きでも、責任を問えますか
傾きが1000分の3未満の場合は、法律上の欠陥とは認められにくいのが一般的です。ただし、傾きが小さくても、ひび割れや建具の不具合など、生活に支障が生じている場合は、その原因によって、責任を問える余地があります。まずは専門家に調査を依頼して、傾きの程度と原因を確かめましょう。
家を建てて10年以上たっています。もう請求できませんか
品確法の10年の保証の期間はすでに過ぎていますが、不法行為による責任は、不法行為の時から20年、損害と加害者を知った時から3年の間であれば、問える可能性があります。建物としての基本的な安全性を欠く欠陥であれば、設計者や施工者に不法行為の責任を問えることもあります。
隣の家の工事の後に家が傾きました
その場合は、工事の施工者に、工事と傾きとの因果関係を示して、損害の賠償を求めることになります。工事の前の家屋調査の記録があれば、工事の前後の状態を比べることができます。記録がない場合は、専門家に調査を依頼して、工事の影響を明らかにしてもらいましょう。
傾いた家を売ることはできますか
売ることはできますが、傾きがあることを必ず買主に伝える必要があります。傾きを隠して売ると、後で契約不適合責任や損害の賠償を求められます。修理をしてから売るか、傾きを前提に価格を下げて売るかを、不動産会社と相談して決めましょう。
