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深夜まで働いた分、きちんと出ていますか
終電を逃すまで働いた。夜勤明けにふらつきながら家路についた。それなのに、給与明細を見ても深夜の割増らしい項目が見当たらない。そんな覚えはないでしょうか。
明細をじっくり見る機会は、そう多くないかもしれません。振り込まれた額だけを確かめて、内訳までは追わない。忙しく働いていればなおさらです。けれども、その内訳にこそ確かめるべきものが潜んでいます。
夜勤を何年も続けてきた方であれば、積み重なった額は決して小さくありません。ひと月あたりでは気づかない程度の差でも、年単位で見れば大きな金額になります。確かめる価値は十分にあります。
深夜の時間帯に働いた場合、通常の賃金に上乗せして支払われるべき部分があります。これを深夜手当や深夜割増と呼びます。名前は職場によってさまざまですが、法律で定められた仕組みです。
呼び方が違っても、中身は同じです。深夜勤務手当、夜間手当、深夜割増賃金。明細に並ぶ名前はさまざまですが、法律が求めているのはひとつの上乗せです。名前に惑わされず、中身で判断してください。
逆に、同じ名前がついていても中身が違うこともあります。夜勤手当という名前でも、割増ではなく別の趣旨で支給されている場合があります。名前と中身は必ずしも一致しないと心得ておきましょう。
ところが、この部分が支払われていない職場は少なくありません。しかも、働く側が気づいていないことが少なくありません。残業代は意識していても、深夜の上乗せまでは見ていない。そういう方がほとんどでしょう。
会社の側も、意図して外しているとは限りません。給与の計算を担う人が仕組みを正しく理解していないまま、長年同じ処理を続けている。そうした職場も実際にあります。誰も指摘しないまま積み重なっていきます。
ですから、確かめること自体を後ろめたく思う必要はありません。制度が正しく運ばれているかを尋ねるのは、働く人として当たり前のことです。会社にとっても、早く気づけるほうが傷は浅くて済みます。
ここで押さえておきたいのは、深夜の割増は残業代とは別に発生する上乗せ分だという点です。残業代が支払われているから深夜分も込みだろう、という理解は正しくありません。
この違いを知らないまま、明細に並ぶ数字をなんとなく眺めている方は多いものです。逆にいえば、仕組みを知っただけで、取り戻せる部分が見つかることもあります。まずは知ることから始めましょう。
しかも、この仕組みには見落とされやすい特徴があります。所定の時間内に働いていても、その時間帯が夜であれば上乗せの対象になります。残業をしていなくても発生する、という点は覚えておいてください。
たとえば、はじめから夜勤として組まれているシフトがそうです。定時どおりに働いて定時に帰っても、その勤務が夜の時間帯にかかっていれば上乗せが必要になります。残業ゼロでも対象になります。
この点を知らないと、残業がないから何も請求できないと思い込んでしまいます。実際には、毎回の夜勤に上乗せが生じています。回数が重なれば、その総額は相当なものになります。
夜勤のある職場で働く方、シフト制で遅い時間を任されている方、繁忙期に深夜まで残ることがある方。いずれの方にも関わる話です。自分の明細を思い浮かべながら読み進めてみてください。
医療や介護の現場、警備や運送、宿泊や飲食。夜を支える仕事は数多くあります。そうした職場で働く方ほど、この仕組みを知っておく意味は大きいといえるでしょう。
製造の交代勤務や、コールセンターの夜間対応、清掃や設備の保守もそうです。社会が眠っている時間に動いている仕事は、想像以上に幅広くあります。自分の働き方が当てはまるかどうかを確かめてみてください。
この記事では、深夜手当とはどのような仕組みなのか、残業と重なった場合はどう計算されるのか、どこで見落としが起きやすいのか、そして支払われていないと気づいたときにどう動けばよいのかをお伝えします。
あわせて、夜間の勤務が続くときに使える制度や、会社への伝え方も取り上げます。賃金の話だけでなく、働き方そのものを見直すきっかけにしていただければと思います。
深夜手当とはどのような割増か
まず、仕組みの輪郭から整理していきましょう。ここを押さえておくと、自分の明細を読み解けるようになります。
法律は、夜の一定の時間帯に働かせる場合、通常の賃金に割増を上乗せするよう会社に求めています。この時間帯は、原則として夜十時から翌朝五時までとされています。
夜九時に終わる勤務なら対象になりませんし、夜十一時まで働いたなら夜十時以降の一時間分が対象になります。時間帯で切り分けて考えるのが基本です。
朝方の勤務も同じ考え方です。早朝に出社する仕事であれば、朝五時より前の部分が対象になります。夜だけの話ではないという点を、あわせて覚えておいてください。
なぜ上乗せが必要なのでしょうか。夜間の労働は、体への負担が昼間とは比べものにならないからです。生活のかたちも崩れます。その負担に見合う対価を払わせることで、むやみな夜間労働を抑える狙いもあります。
眠るべき時間に働けば、体の調子は狂います。家族と過ごす時間もずれていきます。目に見えにくいこの負担を、せめて賃金の形で埋め合わせようという考え方が、この仕組みの根にあります。
だからこそ、この上乗せは働く人のために用意されたものだといえます。会社の温情で支払われるものではなく、法律が受け取るべきものとして定めた部分です。遠慮する筋合いのものではありません。
上乗せの割合は法律で定められており、会社の裁量で下げることはできません。この点は誤解されがちです。うちはそういう決まりだから、という説明で片づけられている職場がありますが、法律の定めを下回る取り決めは効力を持ちません。
就業規則に書いてある、入社のときに同意した。そう言われても同じです。働く人に不利な形で法律の水準を下回る定めは、その部分について効力を失います。同意したから諦めるしかない、ということにはなりません。
この考え方は、労働の分野を貫く大原則です。個々の合意より法律の水準が優先される。立場の弱い側が不利な約束をさせられることを防ぐための仕組みだと理解してください。
もうひとつ知っておきたいのが、管理監督者とされている方にも深夜の割増は支払われるという点です。時間外の割増については対象から外れる立場でも、深夜の部分は別に扱われます。
時間の縛りを受けない立場だとしても、夜に働くことによる体への負担は変わりません。ですから、この部分だけは切り離して扱われています。制度の趣旨を知れば、納得のいく話だと思います。
この点を知らずに、管理職だから何も出ないと思い込んでいる方が多くいます。深夜まで及ぶ勤務が続いているなら、その分だけでも請求できる余地があることを覚えておいてください。
店舗や施設の責任者として、閉店後の作業や夜間の対応を担っている方は少なくありません。役職がついたことで一切の割増が消えたと説明されているなら、その説明が正しいかを確かめる価値があります。
また、アルバイトやパートで働く方も、当然に対象です。雇われ方によって扱いが変わるものではありません。学生アルバイトの深夜シフトも、同じように上乗せの対象になります。
短期間だから、掛け持ちだから、という理由で外れることもありません。働いた時間帯が夜にかかっていれば、その分の上乗せを受け取る権利があります。遠慮する必要はまったくありません。
残業と深夜が重なるとどうなるか
ここからが、少しややこしい部分です。ゆっくり読み進めてください。
働いた時間が、その日の決められた時間を超えた場合、時間外の割増が発生します。これがいわゆる残業代です。そして、その時間帯が夜にかかっていれば、深夜の割増も重ねて発生します。
この二つは、発生する理由が違います。前者は長く働いたことに対するもの、後者は夜に働いたことに対するもの。理由が違う以上、片方を払ったから他方は不要という理屈は成り立ちません。
会社から、残業代のなかに含めていると説明されることがあります。その場合は、どの部分がどちらの上乗せにあたるのかを示してもらってください。示せないのであれば、含まれているという説明は根拠を欠きます。
つまり、夜遅くまで残業した場合、二つの割増が重なることになります。時間外であることによる上乗せと、深夜であることによる上乗せ。この二つは別の理由で発生するものですから、どちらか一方でよいということにはなりません。
重なるとはいえ、同じ時間を二重に数えるわけではありません。その時間について、二つの理由による上乗せをそれぞれ加える、という意味です。ここを取り違えると計算が合わなくなりますので、注意してください。
計算の細部は複雑になりますが、働く側がすべてを自力で組み立てる必要はありません。まずは重なりが生じているかどうかを見抜くことが大切です。細かい計算は、弁護士に任せて構いません。
ところが実務では、この重なりが見落とされがちです。残業代は計算されているのに、深夜の部分が加えられていない。そうした明細を、私たちは数え切れないほど見てきました。
とくに、給与の計算を昔からの様式のまま続けている職場では起こりやすい誤りです。担当者が代わっても処理はそのまま引き継がれ、誰も疑わないうちに長い年月が過ぎていきます。
小さな会社では、経営者自身が計算をしていることもあります。専門の知識がないまま手探りで運用していれば、抜けが生じるのも無理はありません。責めるより、正すことを考えましょう。
休日の勤務が夜にかかった場合も同じです。休日であることによる上乗せと、深夜であることによる上乗せが重なります。夜勤が休日にあたる職場では、確認しておきたい点です。
ここでいう休日とは、法律が定める休日を指します。会社が定める休みの日と必ずしも一致しない点には注意が必要です。就業規則でどの日が休日とされているかを確かめておきましょう。
- 所定の時間内でも、夜の時間帯なら深夜の上乗せが必要。
- 残業が夜にかかれば、時間外と深夜の上乗せが重なる。
- 休日の勤務が夜にかかれば、休日と深夜の上乗せが重なる。
- 管理監督者とされる立場でも、深夜の上乗せは対象になる。
- アルバイトやパートも、雇用の形にかかわらず対象になる。
自分の明細を見るときは、深夜という言葉が入った項目があるかを確かめてください。見当たらない場合、そもそも計算されていない可能性があります。
基本給に含まれていると説明されることもあります。しかし、含まれていると言うなら、どの部分がいくらにあたるのかを示せなければなりません。示せないのであれば、支払い済みだという主張は通りにくくなります。
この考え方は、固定の残業代をめぐる場面と同じです。あらかじめ含めておく形をとるのであれば、どこまでが何の対価なのかを明らかにしておく必要がある。あいまいなままでは認められにくいものです。
項目があっても安心はできません。その額が実際の深夜勤務に見合っているかどうかは、別の話だからです。定額で毎月同じ額が入っているような場合は、とくに注意が要ります。
数か月分の明細を並べて、夜勤の回数と手当の額を見比べてみてください。回数が増えた月に額が増えていないのなら、時間に応じた計算がされていない可能性が高いといえます。
深夜の割増は、ほかの割増と重なると率が足し合わされます。
| 働いた時間帯 | 割増率 |
|---|---|
| 所定の勤務時間内の深夜(夜勤のシフトなど) | 25%以上 |
| 時間外労働が深夜に及んだ | 50%以上(時間外25%+深夜25%) |
| 月60時間を超える時間外労働が深夜に及んだ | 75%以上(50%+25%) |
| 法定休日の労働が深夜に及んだ | 60%以上(休日35%+深夜25%) |
夜勤専従で雇われていて、深夜の時間帯そのものが所定の勤務時間であっても、25%の割増は必要です。「最初から夜の仕事として時給を高くしている」という説明があっても、時給のうちどこまでが深夜の割増かが区別されていなければ、割増を払ったことにはなりません。
見落とされやすい場面
次に、深夜の割増が支払われないまま見過ごされやすい場面を挙げていきます。心当たりがないか、確かめてみてください。
ひとつ目は、夜勤手当という名目の定額が支払われている場合です。一回いくらという形で支給されていると、それで足りていると思い込みがちです。しかし、実際の深夜の時間数に見合っているかは別問題です。
忙しい月も、そうでない月も同じ額が並んでいるなら、いちど立ち止まってください。実際に働いた深夜の時間は月ごとに違うはずです。それなのに額が動かないのであれば、時間に応じた計算がされていない疑いがあります。
ふたつ目は、シフトが日をまたぐ場合です。夜から翌朝までの勤務では、どこまでが前日の勤務でどこからが翌日なのか、計算が複雑になります。この処理を誤っている職場は少なくありません。
日をまたぐ勤務は、ひと続きの勤務として扱うのが基本です。日付が変わったところで区切ってしまうと、時間外の計算がずれてしまいます。夜勤の明細に違和感があるなら、この点を疑ってみてください。
とくに、翌朝まで続く長い夜勤では、途中に休憩が挟まることもあります。その休憩が本当に自由な時間だったのかどうかも、あわせて振り返ってみる価値があるでしょう。
みっつ目は、仮眠や待機の時間が挟まる場合です。夜の間に仮眠を取る決まりでも、呼び出しに応じる必要があるなら、その時間は労働時間にあたる可能性があります。眠っていたから対象外、とは限りません。
実際、仮眠室で待機していた時間が労働時間だと認められた例もあります。判断の分かれ目は、その時間に本当に解放されていたかどうかです。呼ばれれば起きて対応する前提だったのなら、自由な時間とはいえません。
警備や介護、宿泊の現場では、こうした時間が長く組まれていることがあります。仮眠として扱われている時間の実態がどうだったか、いちど思い返してみてください。
よっつ目は、変則的な勤務の仕組みを採っている場合です。仕組みが複雑になるほど、計算の誤りは紛れ込みやすくなります。会社自身も気づいていないことがあります。
期間を平均して労働時間を調整する仕組みや、始業と終業を働く人に委ねる仕組みを採っている職場では、時間外の計算そのものが特殊になります。ただ、どの仕組みであっても深夜の上乗せは別に必要です。
夜の勤務が続くときに知っておきたいこと
深夜の勤務は、お金の話だけでは済みません。体と生活への負担が大きいからこそ、法律はいくつかの守りを用意しています。
まず、時間の長さそのものに歯止めがあります。会社が働く時間を延ばすには、あらかじめ取り決めを結び、届け出ておく必要があります。この手続きなしに深夜まで働かせることは、本来許されません。
この取り決めは、職場に掲示されるなどして働く人が見られる状態に置かれているはずです。見た覚えがないのであれば、そもそも手続きが踏まれていない可能性もあります。確かめてみる価値はあるでしょう。
次に、健康を守るための仕組みがあります。夜間の勤務が一定以上に及ぶ方には、通常より手厚い健康の確認が求められます。職場で案内を受けていないなら、その点も気にかけてみてください。
深夜の勤務が続く方は、定期の健診に加えて確認を受けられる場合があります。案内がないまま何年も過ぎているようであれば、会社に尋ねてみてください。自分の体を守るための仕組みです。
さらに、深夜の勤務を制限できる場合もあります。小さな子どもを育てている方や、家族の介護にあたっている方は、申し出によって深夜の勤務を免れられる仕組みが設けられています。
この申し出をしたことを理由に、不利な扱いをすることは許されません。シフトを減らされる、評価を下げられる。そうした扱いを受けたなら、それは別の問題として対応できます。安心して申し出てください。
また、年齢による制限もあります。一定の年齢に達していない方については、深夜の時間帯に働かせること自体が原則として認められていません。学生アルバイトの働かせ方には、この点の確認が必要です。
もし高校生が深夜のシフトに入れられているのなら、それは賃金以前の問題です。ご本人が言い出しにくい場合もありますから、周りの大人が気づいて声をかけることも大切だと思います。
体調を崩してしまってからでは、取り返しがつかないこともあります。眠れない、食欲が落ちた、気分が沈む。そうした変化を感じているなら、賃金の話と並行して働き方そのものを見直す必要があります。
無理を重ねた末に働けなくなってしまえば、取り戻せるはずだった賃金よりずっと大きなものを失います。体の変化に気づいたら、まず休むこと。その判断を後回しにしないでください。
支払われていないと気づいたら
明細を確かめて、どうも支払われていないようだと気づいた。そのとき、何から始めればよいのでしょうか。
最初にすべきは、記録を集めることです。いつ、何時から何時まで働いたのか。この記録がなければ、どれだけの上乗せが必要だったかを示せません。
深夜の割増を求める場合、とくに大切なのが時間帯です。何時間働いたかだけでなく、そのうちどの部分が夜の時間帯にかかっていたか。この点まで押さえられる形で記録してください。
シフト表が手元にあるなら、それが有力な材料になります。夜勤の予定が書かれた表、当番の割り振り、勤務の交代を伝える連絡。日々の何気ないやり取りが役に立ちます。
掲示されていた表を控えておく、共有された連絡を保存しておく。在職中であれば難しくない作業です。辞めてから集めようとすると急に難しくなりますので、思い立ったときに手をつけてください。
手書きで書き写すだけでも構いません。大切なのは、いつどの勤務に入っていたかをたどれる形にしておくことです。完璧を目指さず、続けられる方法を選んでください。
実際の出退勤の時刻も押さえておきたいところです。予定より延びた日、早く呼ばれた日。予定表だけでは分からない部分は、自分で記録しておくとよいでしょう。
とくに、引き継ぎに時間がかかって予定より遅くなる日は多いはずです。その積み重ねは、月単位で見ると小さくありません。終わった時刻をその日のうちに残す習慣をつけてください。
そして、給与明細をそろえてください。何が支払われ、何が支払われていないのか。それを読み解くには、一定の期間分をまとめて見る必要があります。
手元にない月があっても諦めないでください。会社は賃金に関する記録を一定期間保存する義務を負っています。開示を求める対象になりますので、まずは残っている分から整理してみましょう。
- シフト表や勤務の割り振りが分かる資料を集める。
- 実際に働いた時刻を、日ごとに整理する。
- 給与明細をそろえ、深夜に関する項目の有無と額を確かめる。
- 就業規則や賃金規程で、深夜の扱いがどう定められているかを見る。
- 不足があると分かったら、会社に説明を求める。
ここで大切なのが、就業規則や賃金規程を見ることです。会社がどのような定めを置いているのかが分かれば、支払われている手当が何に対応するものかを判断できます。
就業規則は、働く人が見られる状態に置かれていなければなりません。どこにあるか分からない場合は、会社に尋ねて構いません。見せてもらえないのであれば、その対応自体が問題を含んでいます。
夜勤手当という項目があっても、それが深夜の割増として支払われているとは限りません。単なる慰労の意味で支給されているなら、割増とは別に計算し直す必要があります。
判断の手がかりは、その手当がどう決まっているかです。時間に応じて動くのであれば割増の性質を持ちますし、回数や役割に応じた定額であれば別の性質のものと見るのが自然でしょう。
会社への伝え方と請求の進め方
不足がありそうだと分かったら、次は会社にどう伝えるかです。ここでの進め方が、その後を左右します。
まず、いきなり請求という形をとらず、確認から入る方法があります。深夜の割増はどのように計算されているのか。この問い合わせなら、角を立てずに済みます。
問い合わせの際は、口頭ではなく記録の残る形にしておくとよいでしょう。どのような説明を受けたのかが残っていれば、後で話が食い違ったときの支えになります。ひと手間ですが、意味のある工夫です。
会社が誤りに気づいて是正する例もあります。悪意ではなく、単に処理を誤っていただけという場合が意外に少なくありません。指摘を受けて計算を見直した、という結末も珍しくありません。
その場合、過去の分もさかのぼって支払われることがあります。指摘したのが自分だけでも、同じ職場の同僚全員に是正が及ぶこともあります。声を上げる意味は、自分の取り分だけにとどまりません。
誰かが気づかなければ、その職場の誤りはこの先も続きます。あなたが確かめることが、後から入ってくる人を守ることにもつながる。そう考えると、少し気持ちが軽くなるかもしれません。
それでも改まらない場合や、過去にさかのぼって支払いを求めたい場合は、正式な請求に進みます。書面で求め、応じなければ話し合いの場を設けるよう働きかけていきます。
話し合いでも解決しないときは、労働審判などの手続きを検討することになります。手続きに進むかどうかは、不足の大きさと見込みを踏まえて判断します。ここは弁護士と相談したい場面です。
ここで気に留めていただきたいのが、賃金を請求する権利には期限があるという点です。法改正で以前より延びたとはいえ、過ぎた分は取り戻せません。夜勤を長く続けてきた方ほど、目減りは大きくなります。
迷っている間にも、いちばん古い月の分から順に消えていきます。まだ請求すると決めていない段階でも構いませんので、どこまでさかのぼれるのかだけは早めに確かめておいてください。
在職のまま請求すべきか、退職を待つべきか。この悩みもよく聞きます。シフト制の職場では、請求後に入れてもらえるシフトが減るのではという不安もあるでしょう。
この不安は、決して的外れなものではありません。そのため、いきなり正式な請求から入らず、確認から始めるという選び方にも意味があります。自分の望みと状況に合わせて進め方を決めましょう。
そうした不利益な扱いは本来許されませんが、実際の職場の空気まで法律が守ってくれるわけではありません。それゆえ、進め方は事情に合わせて選ぶ必要があります。
もし請求を機にシフトを減らされたり、嫌がらせを受けたりした場合は、それ自体が別の問題になります。いつ何が起きたのかを記録に残しておけば、後から対処する手がかりになります。
ひとりで抱え込まず、早い段階で弁護士に相談してみてください。どれくらいの不足があるのか、どの順序で進めるべきか。見通しが立つだけでも、気持ちの負担はずいぶん軽くなります。
相談の際には、給与明細とシフト表を持っていくとよいでしょう。この二つがあれば、おおよその見立てはその場で立ちます。全部そろっていなくても構いませんので、あるものを持ち込んでください。
夜に働くことは、それだけで大きな負担を背負うことです。その負担に対する対価は、あなたが受け取るべきものとして法律に書かれています。受け取り損ねていないか、いちど確かめてみてください。
まずは、直近の給与明細を手に取るところから始めましょう。深夜に関する項目があるか、その額は夜勤の回数と釣り合っているか。その確認だけなら、今日この場でもできるはずです。
深夜手当に関するよくある質問
深夜手当は、残業代とは別に支払われるのですか
別に発生します。深夜の割増は、その時間帯に働いたこと自体に対する上乗せだからです。残業が夜にかかった場合は、時間外であることによる上乗せと、深夜であることによる上乗せが重なります。どちらか一方でよいということにはなりません。残業代が支払われているから深夜分も込みだろう、という理解は正しくないので注意してください。
もともとの勤務時間が夜でも、深夜手当は出ますか
出ます。深夜の割増は、残業をしているかどうかとは関係なく発生する仕組みだからです。夜十時から翌朝五時までの時間帯にかかっていれば、所定の勤務であっても上乗せが必要です。夜勤専従の方も当然に対象になりますし、アルバイトやパートで働く方も、雇われ方によって扱いが変わることはありません。
管理職なので何も出ないと言われました
その説明は正しくありません。管理監督者とされる立場の方は時間外の割増の対象から外れますが、深夜の部分は別に扱われ、支払いが必要です。この点を知らないまま、何も出ないと思い込んでいる方が多くいます。深夜まで及ぶ勤務が続いているのであれば、その分だけでも請求できる余地がありますので、明細を確かめてみてください。
夜勤手当が定額で出ていれば、それで足りていますか
必ずしもそうとは限りません。一回いくらという形の支給が、実際の深夜の時間数に見合っているかは別の問題だからです。まず就業規則や賃金規程を見て、その手当が深夜の割増として定められているのか、それとも慰労の意味で支給されているのかを確かめてください。割増とは別のものであれば、計算し直す必要があります。
