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内縁関係 (事実婚)の解消にも発生!?慰謝料が発生する4つのケース

この記事で分かること

  • 内縁関係や事実婚の成立を証明できれば、慰謝料を請求できる!
  • 内縁関係や事実婚が法的に認められるためには、「婚姻の意思」が必要
  • 重婚的内縁関係の場合は、自分が慰謝料を請求されるケースも

内縁関係や事実婚の解消の際にも、離婚と同じく慰謝料が発生します。ただし、内縁関係や事実婚の成立が法的にも認められることが必要です。

法律上「内縁関係」(事実婚)と認められれば、慰謝料を請求できる

一般的に「内縁関係」というと、「事実上は夫婦として生活しているものの、婚姻届を提出していないために法律上は婚姻関係には至っていない」状態をいいます。内縁関係が法律的にも認められると、その関係が破綻した場合には慰謝料の請求権などが認められることになります。

「内縁関係」と認められるための2つの条件

法的に内縁関係が認められるには、以下2つの条件を満たす必要があります。

  1. お互いに婚姻の意思があること
  2. お互いの婚姻意思にもとづいた共同(同居)生活があること

たとえ長く同居生活を送っていたとしても、どちらか一方に結婚する意志がなければ単なる同棲とみなされ、内縁の関係とはいえません。逆に、結婚式を挙げるなどしてお互いの結婚の意思が確認できていれば、同居期間が短くても内縁関係と認められる場合があります。

「内縁関係」が認められることで発生する効果

法律的に内縁関係が認められ夫婦同然の生活を送っていても、婚姻届を提出していない以上、戸籍や姓が変わることはありません。そのため、内縁関係の夫婦間で相続権は発生せず、その夫婦の間に生まれた子どもは非嫡出子となります。

ただし、内縁関係の場合でも実質的には夫婦として生活しているので、婚姻関係にある夫婦と同様、お互いに以下のような義務が発生します。

  1. 同居する義務
  2. 協力し合って夫婦生活を送っていく義務
  3. 自分と同じ水準の生活ができるように一方を援助する義務(扶助義務)
  4. 貞操を守る義務

よって、これらの義務に違反し、内縁関係の解消に至った場合は、婚姻関係にある夫婦と同じように慰謝料などを請求することも可能です。しかし、①の同居義務に関しては、同居すること自体が内縁関係成立の一要素となっていることもあり、慰謝料が発生するかについて個々の事情を考慮し、慎重に検討する必要があります。

「事実婚」でも慰謝料を請求できる?

現在では、内縁関係と事実婚は同じものであると解釈することも増えています。しかしより厳密にいえば、両者はそれぞれ異なる概念を持つものです。

内縁関係とは、お互いに婚姻届を出す意思はあるものの、何らかの事情があって届出ができない状態をいいます。それに対して、事実婚は実質的に夫婦として生活を共にする意思はあるものの、意図的に婚姻届を出さず「法律婚」を回避する状態をいいます。

そのため、事実婚の場合は「2人の共同生活に対して法的な保護を受けることを自ら望まない」と解釈することもでき、慰謝料の請求などが認められないケースがあります。

しかし最近では、男性も女性も個々に仕事を持っている場合が多く、姓が変わることによる不利益を避けたいなどの理由から、事実婚を選択する人も増えてきています。そのような背景から、事実婚の場合でも「内縁関係」がある程度成立していると判断され、慰謝料を請求する権利などが認められつつあります。

ワンポイントアドバイス
内縁関係や事実婚であっても、法律婚の場合と同じように慰謝料の請求が可能です。夫婦間で話し合いがまとまらない場合は、家庭裁判所の「内縁関係調整調停」の利用を検討してみましょう。

内縁関係(事実婚)で慰謝料を請求する際に注意したい2つのポイント

内縁関係にある相手に慰謝料を請求する際に、気をつけたいポイントが2つあります。それらのポイントとは一体何なのかについて、詳しく見ていきましょう。

【ポイント1】婚姻関係にある夫婦に比べると少額となるケースが多い

裁判で認められる慰謝料額の相場は、婚姻関係にある夫婦の場合で300万円前後、内縁関係にある夫婦の場合で50~200万円程度です。もちろん、婚姻関係にある場合も内縁関係にある場合も、慰謝料の金額はさまざまな事情を考慮して決定されるため、一概にいくらとはいえません。しかし、内縁関係での慰謝料が300万円を超えることはまれなケースであり、婚姻関係にある夫婦と比較すれば、慰謝料は少額となるケースが多くなっています。

内縁関係にある夫婦の慰謝料額を決定する際に考慮される事情には、以下のようなものが挙げられます。

  • 内縁関係が破綻するに至った経緯
  • 同居期間の長短
  • 共同生活の密度
  • お互いの経済状況(扶養関係の有無)
  • 夫婦としての関係がどれだけ社会的に認められていたか

特に、同居期間が短い場合や共同生活の実態が明らかでない場合などは、慰謝料が認められたとしても、少額となるケースが多いようです。

【ポイント2】重婚的内縁関係では自分が慰謝料を支払う側になることも

ある男性A男さんがある女性B子さんと婚姻関係にありながら、別の女性であるC子さんと同居しているケースを考えてみましょう。A男さんにはB子さんと離婚してC子さんと再婚する意思があり、C子さんにもA男さんと結婚する意志がある場合、2人はすでに同居しているので、A男さんとC子さんの間には内縁関係が成立します。しかし、A男さんは別居しているとはいえB子さんと現在も婚姻関係にあるため、A男さんはいわば「重婚」の状態です。このときのA男さんとC子さんの関係を、「重婚的内縁関係」といいます。

法律では基本的に、公序良俗に反するとして重婚を認めていません。しかし、重婚的内縁関係にある場合も、一方的に内縁関係を解消されたなどの事情があれば、重婚的内縁関係にある相手へ慰謝料を請求することは可能です。重婚が違法でありながら重婚的内縁関係でも慰謝料の請求が認められるのは、「夫婦がお互いの貞操を守る義務に違反したこと」と「内縁関係を解消することで損害を被った人を保護する」こととは別々に考えるべきだ、とされているからです。

ただし、A男さんとB子さんが結婚生活を継続できなくなった原因がA男さんとC子さんの不倫にあるのならば、A男さんとC子さんは、B子さんから慰謝料を請求されても、支払いを拒むことはできないので注意しましょう。

ワンポイントアドバイス
内縁関係の慰謝料請求では、「夫婦としての関係がどれだけ社会的に認められていたか」も重要なポイントの1つです。家族や友人・知人、職場関係の人などから内縁関係を認める証言が得られれば、慰謝料の金額などについて自分が有利になるように進められます。

内縁関係(事実婚)でも慰謝料請求が認められる具体的な4つのケース

内縁関係は法律上、婚姻と同等の関係とみなされています。そのため基本的には、婚姻関係にある夫婦に慰謝料請求が認められるケースでは、内縁関係でも同様に慰謝料の請求が認められると考えられます。具体的には、以下のような4つのケースがあります。

【ケース1】相手から一方的に内縁関係を解消された

内縁関係は婚姻関係と異なり、関係解消に双方の合意は必要ありません。どちらか一方が内縁関係を終わらせたいと思えば、内縁関係が終了することになります。
しかし、内縁関係が継続できないことと、慰謝料を請求することはまったく別の問題です。単に「別れたいから」などの理由で一方的に内縁関係を解消された場合、内縁関係の解消にともなう損害や精神的苦痛に対して慰謝料を請求することが可能です。

【ケース2】内縁関係の相手からDVを受けていた

婚姻関係にある場合、相手からの暴力は「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当し、離婚が正当に認められる要因となるとともに、暴力によって受けた苦痛に対する慰謝料を請求できます。内縁関係は「婚姻に準ずる関係」なので、婚姻関係のときと同様に、DVを受けた内縁関係の相手から慰謝料を請求することが可能です。

【ケース3】内縁関係の相手に浮気された

内縁関係は「婚姻に準ずる関係」であるため、内縁関係にある男女には互いに貞操を守る義務があります。相手が貞操義務に違反して浮気した場合は、内縁関係であっても慰謝料を請求することが可能です。また、内縁関係の破綻の原因が相手の浮気にある場合は、浮気相手にも慰謝料を請求できます。

【ケース4】内縁関係にある相手の両親や親族からいじめを受けていた

婚姻関係の場合、配偶者の両親や親族によるいじめ(家からの追い出し、言葉の暴力など)も、ケース2と同様に「婚姻を継続しがたい重大な事由」に当たります。

内縁関係も婚姻関係と同様に考えられるため、相手の両親や親族からのいじめが内縁関係の解消に至った原因であれば、内縁関係の相手に慰謝料を請求することが可能です。またこのケースでは、相手の両親や親族に対しても慰謝料を請求できます。

ワンポイントアドバイス
内縁関係の慰謝料は個々の事情を考慮して決められるため、もちろん、ここでご紹介したケース以外でも慰謝料が認められることはあります。悩んだり迷ったりしたら、弁護士などの専門家に相談してみましょう。

内縁関係(事実婚)の慰謝料請求では「婚姻の意思」が最大のポイント!

内縁関係にある相手への慰謝料請求が認められるためには、まず何よりも内縁関係を証明することが必要です。中でも、慰謝料を請求したいときに特に重要となるのは、①の婚姻の意思です。なぜなら、慰謝料の支払いを迫った際に、「一緒に住んでいても自分には結婚する気はなかった」などといい、相手が内縁関係の成立を認めないケースが多いからです。

相手の言い逃れを防ぐためには、弁護士や行政書士などの専門家に依頼し、「内縁関係証明書(内縁カップルの合意を記した文書)」を作成しておくのがベストです。内縁関係証明書がない場合でも、続柄に「夫(未届)」「妻(未届)」と記された住民票や、「内縁の妻(夫)」や「配偶者」などと記されたマンションの契約書などがあれば、確実に内縁関係の成立を証明できるでしょう。

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