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人身傷害保険とは?交通事故での補償と使い方

この記事で分かること

  • 人身傷害保険の仕組みと過失割合に関係ない補償
  • 治療費・休業損害・慰謝料など補償される範囲
  • 搭乗者傷害保険・自賠責・対人賠償との違い
  • 請求の流れと約款基準が裁判基準より低い注意点
  • 無保険やひき逃げなど人身傷害保険が役立つ場面

人身傷害保険は、交通事故でケガをしたり亡くなったりしたときに、過失割合に関係なく自分や家族の損害を補償してくれる保険です。この記事では、人身傷害保険の仕組みや補償される範囲、搭乗者傷害保険や自賠責保険との違い、請求の流れ、そして約款基準が裁判基準より低いという注意点までを弁護士の視点で解説します。無保険やひき逃げの事故など、特に役立つ場面もあわせて紹介します。

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人身傷害保険とは?まず押さえたい基本

交通事故にあったとき、相手から十分な賠償を受けられるとは限りません。相手が無保険だったり、こちらにも過失があったり、そもそも加害者が誰だか分からない事故もあります。そんなとき、あなた自身やご家族を守ってくれるのが「人身傷害保険」です。名前は聞いたことがあっても、どんなときに使えて、何が補償されるのかまでは、意外と知られていません。

人身傷害保険は、自動車保険に付けられる補償のひとつで、交通事故でケガをしたり亡くなったりした場合に、過失割合に関係なく保険金を受け取れるのが大きな特徴です。相手との示談を待たずに、治療費や休業損害などをカバーできるため、被害者にとって心強い備えになります。この記事では、人身傷害保険の仕組みから、補償の範囲、使い方、注意点まで、弁護士の視点でわかりやすく解説していきます。

「自分の保険なのに使うと損なのでは」「等級が下がるのでは」と心配される方もいますが、そうとは限りません。あなたの状況に合った使い方を知っておくことで、いざというときに無駄なく補償を受けられます。まずは基本から見ていきましょう。

交通事故にあった直後は、誰でも気が動転してしまうものです。痛みや不安に加えて、相手とのやり取り、保険の手続き、仕事や生活への影響など、考えなければならないことが一度に押し寄せます。そんなとき、自分にどんな備えがあるのかを把握しているかどうかで、その後の安心感は大きく変わります。人身傷害保険は、まさにそうした「もしものとき」に、あなたとご家族の生活を金銭面から支えてくれる存在です。多くの方が自動車保険に付けているにもかかわらず、自分が加入していることに気づかず使わないまま終わってしまうケースもあります。この記事を読んで、いざというときにきちんと活用できるよう、仕組みを理解しておきましょう。

過失割合に関係なく補償されるのが最大の特徴

人身傷害保険の最も大きな特徴は、自分の過失割合に関係なく、損害の実額が補償される点です。通常、交通事故の賠償では、自分にも過失があるとその分だけ受け取れる金額が減ってしまいます。これを過失相殺といいます。ところが人身傷害保険なら、たとえ自分の過失が大きい事故でも、契約で定められた基準に従って、自分の損害をしっかり填補してもらえます。

たとえば、過失割合が自分7割・相手3割という事故では、相手からの賠償は大きく減ってしまいます。しかし人身傷害保険に入っていれば、自分の治療費や休業損害を、過失割合に左右されずに受け取れます。この「過失に関係なく」という点が、被害者の生活を守るうえで非常に重要なのです。

もう少し具体的に考えてみましょう。仮に自分の損害が総額300万円だったとして、過失割合が自分7割・相手3割だとします。相手に賠償を求める場合、過失相殺によって、相手から受け取れるのは原則として損害額の3割にあたる90万円ほどにとどまります。残りの210万円は、自分の過失分として自己負担になってしまうのです。ところが人身傷害保険があれば、約款の基準に従って、自分の過失分も含めた損害を補償してもらえます。過失の大きい事故ほど、相手への請求だけでは大きく不足するため、人身傷害保険の存在が生活を立て直すうえで決定的な意味を持つのです。

相手との示談を待たずに受け取れる

交通事故の賠償金は、通常、示談がまとまってから支払われます。けれども示談交渉は長引くことも多く、その間の治療費や生活費に困ってしまうことがあります。人身傷害保険なら、相手との示談を待たずに、自分の保険会社から先に保険金を受け取れます。治療が長引いている段階でも、必要な費用を確保しながら、落ち着いて治療や交渉に専念できるのです。

相手側との示談交渉は、過失割合や金額をめぐって意見が対立すると、数か月から場合によっては年単位で長引くこともあります。その間、相手からは一円も支払われないというのが原則です。収入が減っているのに治療費がかさむ、という状況では、家計が一気に苦しくなってしまいます。人身傷害保険は、こうした示談成立までの空白期間を埋めてくれます。先に自分の保険から補償を受けておけば、お金の心配に追われて不利な条件で示談を急いでしまう、といった事態も避けられます。腰を据えて適正な賠償を求めるための、いわば時間的な余裕を生んでくれる保険でもあるのです。

人身傷害保険で補償される範囲

では、人身傷害保険では具体的に何が補償されるのでしょうか。補償される項目を知っておくことで、いざというときに何を請求できるのかが見えてきます。ここで整理しておきましょう。

治療費・休業損害・慰謝料などが対象

人身傷害保険で補償されるのは、交通事故によるケガで生じた損害全般です。主な項目としては、次のようなものが挙げられます。

  • 治療にかかった費用(入院費・通院費・手術費など)
  • 仕事を休んだことによる収入の減少(休業損害)
  • ケガの痛みや精神的な苦痛に対する慰謝料
  • 通院のための交通費
  • 後遺障害が残った場合の逸失利益や後遺障害慰謝料
  • 亡くなった場合の死亡保険金

このように、ケガの治療から、働けなくなった分の補償、さらには後遺障害や死亡まで、幅広くカバーされるのが人身傷害保険です。ただし、補償の金額には契約で定めた上限があり、その範囲内での支払いになります。契約時に設定した保険金額がいくらかは、確認しておくとよいでしょう。

支払基準は約款で決まっている

注意したいのは、人身傷害保険の保険金は、それぞれの保険会社の約款で定められた基準で計算されるという点です。この基準は、裁判で認められるような金額(いわゆる弁護士基準・裁判基準)よりも低めに設定されていることが一般的です。つまり、人身傷害保険から支払われる金額が、本来受け取れるはずの賠償額の満額とは限らないのです。この点は、後で詳しく触れる注意点にもつながります。

交通事故の慰謝料には、大きく分けて自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準という三つの基準があり、同じケガでも、どの基準で計算するかによって金額が大きく変わります。人身傷害保険の約款基準は、このうち低めの水準に位置することが多いのです。そのため、相手に過失がある事故では、人身傷害保険だけで満足してしまうと、弁護士を通じて相手にきちんと請求すれば受け取れたはずの金額との間に、差が生まれることがあります。とはいえ、相手が無保険だったり自分の過失が大きかったりする事故では、そもそも相手から十分な賠償が受けられないため、人身傷害保険の補償が何よりの支えになります。要は、自分の事故がどういう状況かによって、人身傷害保険の使いどころが変わってくるということです。

歩行中や自転車の事故でも使えることがある

人身傷害保険は、自分が運転している車の事故だけでなく、契約内容によっては、歩行中や自転車に乗っているときに車にはねられた事故などでも使える場合があります。「車に乗っていないから関係ない」と思い込まず、自分の契約がどこまでをカバーしているのかを確認しておくことが大切です。家族が契約者の保険で、同居の家族として補償の対象になっていることもあります。

たとえば、横断歩道を歩いているときに車にはねられた、自転車で通勤中に車と接触したといった、車に乗っていない場面の事故でも、契約の型によっては人身傷害保険が使えることがあります。これは「人」に着目した補償が付いているタイプの契約です。自分自身が契約していなくても、同居している家族が契約している人身傷害保険の対象に入っていて、自分の事故で使えるというケースもあります。意外と見落とされがちなポイントなので、交通事故にあったら、自分や同居家族の自動車保険に人身傷害保険が付いていないか、その補償範囲はどこまでかを、一度しっかり確認してみてください。使えるはずの補償を見逃さないことが大切です。

人身傷害保険と他の保険との違い

自動車保険には、人身傷害保険のほかにも、似たような補償がいくつかあります。混同しやすいので、それぞれの違いを整理しておきましょう。違いがわかると、自分がどの補償を使えばよいのか判断しやすくなります。

搭乗者傷害保険との違い

人身傷害保険とよく似た補償に、搭乗者傷害保険があります。どちらも車に乗っていた人のケガを補償する点では共通していますが、性質が異なります。人身傷害保険が、実際にかかった損害の額を計算して支払う「実損填補型」であるのに対し、搭乗者傷害保険は、ケガの部位や入通院日数に応じて、あらかじめ決められた定額を支払う「定額型」です。両方に加入していれば、それぞれから保険金を受け取れることもあります。

イメージとしては、人身傷害保険が「実際に損した分をきっちり計算して払う」保険、搭乗者傷害保険が「ケガの程度に応じて決まった額をすぐ払う」保険だと考えると分かりやすいでしょう。搭乗者傷害保険は、損害額の確定を待たずに比較的早く受け取れることが多く、当面のまとまったお金として役立ちます。一方、人身傷害保険は実際の損害をカバーするため、最終的な補償額は搭乗者傷害保険より手厚くなることがあります。この二つは性質が違うので、片方を使ったらもう片方が使えなくなるわけではなく、両方から受け取れるのが一般的です。自分の契約にどちらが付いているかを確認し、両方ある場合はどちらも忘れずに請求しましょう。

搭乗者傷害保険のくわしい仕組みについては、こちらの記事で解説しています。あわせて読むと、二つの違いがよりはっきりわかります。

自賠責保険との違い

すべての車に加入が義務づけられている自賠責保険も、交通事故のケガを補償します。ただし、自賠責保険は被害者を救済するための最低限の補償で、支払われる金額には限度があります。また、自賠責保険は基本的に、事故の加害者側が被害者に賠償するための保険です。一方、人身傷害保険は、自分や家族のための保険で、自分の保険会社から受け取るものです。立場と役割が違うのです。

自賠責保険は、あくまで被害者が最低限の補償を受けられるようにするためのものなので、補償される金額の上限が決まっています。重いケガや後遺障害が残るような事故では、自賠責保険の限度額だけでは損害を到底カバーしきれないことが多いのです。その不足分を埋める役割を担うのが、任意で加入する人身傷害保険や、相手の対人賠償保険ということになります。つまり、自賠責保険は土台、人身傷害保険はその上に積み増す備え、というイメージです。両者は競合するものではなく、組み合わせて使うことで、はじめて十分な補償につながります。

自賠責保険から受け取れる慰謝料の相場については、こちらの記事が参考になります。

対人賠償保険との違い

対人賠償保険は、自分が事故を起こして相手にケガをさせてしまったときに、相手への賠償を補償する保険です。つまり、加害者になったときに使う保険です。これに対して人身傷害保険は、自分や家族がケガをしたときに使う、被害者側の補償です。同じ自動車保険でも、誰のための補償なのかという点で、まったく役割が異なります。

人身傷害保険の使い方と請求の流れ

実際に人身傷害保険を使うときは、どのような流れになるのでしょうか。手続きの全体像を知っておくと、いざというときに慌てずに済みます。

まずは保険会社に連絡する

交通事故にあったら、できるだけ早く自分が加入している保険会社に連絡しましょう。人身傷害保険を使いたい旨を伝えると、必要な手続きや書類について案内してもらえます。事故の状況やケガの程度を伝え、保険会社の指示に従って進めていきます。連絡が遅れると手続きに時間がかかることもあるので、早めの連絡を心がけてください。

「自分が被害者なのに、なぜ自分の保険会社に連絡するのか」と疑問に思うかもしれません。けれど、人身傷害保険はあくまで自分が契約している保険なので、その保険を使うには自分の保険会社への連絡が出発点になります。事故直後は気が動転していることも多いものですが、警察への連絡と病院での受診を済ませたら、なるべく早い段階で保険会社にも一報を入れておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。どの補償が使えそうか、どんな書類が要るのかも、この段階で確認しておくとよいでしょう。

必要な書類をそろえて請求する

人身傷害保険を請求するには、いくつかの書類が必要になります。一般的には、保険金請求書、交通事故証明書、ケガの診断書や診療報酬明細書、休業損害があれば収入を証明する書類などです。保険会社から案内された書類をそろえて提出すると、内容が確認され、約款の基準に従って保険金が計算されます。

書類をそろえるうえで大切なのは、通院の記録や領収書をきちんと残しておくことです。治療費や通院交通費は、実際にかかった額を証明できてはじめて補償の対象になります。領収書を紛失してしまうと、本来受け取れるはずの分を請求できなくなることもあります。また、休業損害を請求する場合は、勤務先に作成してもらう休業損害証明書や、源泉徴収票などが必要になることが多いです。これらの書類は、事故からある程度時間が経つと集めにくくなることもあるため、早めに準備を進めておくと安心です。何をそろえればよいか分からないときは、保険会社の担当者に確認しながら進めれば、漏れなく手続きできます。

保険金が支払われる

提出した書類をもとに損害額が確定すると、保険金が支払われます。治療が続いている場合は、治療が終わってから最終的な金額が決まることが多いですが、内払いといって、治療途中でも一部を先に受け取れる扱いがある保険会社もあります。生活費に困っているときは、内払いができるか保険会社に相談してみるとよいでしょう。

支払いまでの期間は、ケガの程度や手続きの進み具合によって変わります。軽いケガで治療が早く終われば、比較的短期間で支払われることもありますが、後遺障害が残るような重い事故では、症状固定を待ってから後遺障害の等級を確定させ、その上で逸失利益などを計算するため、解決までに時間がかかります。長期化しそうなときほど、内払いの制度を上手に使って、当面の生活費や治療費を確保しておくことが大切です。相手との示談がまとまっていなくても、自分の保険から先に受け取れるという人身傷害保険の特性が、ここでも被害者の生活を支える力になります。

人身傷害保険を使うときの注意点

便利な人身傷害保険ですが、使うにあたって知っておきたい注意点もあります。これを押さえておかないと、本来受け取れるはずの金額を取りこぼしてしまうことがあります。

約款基準は裁判基準より低いことが多い

先にも触れたとおり、人身傷害保険の保険金は約款で定められた基準で計算され、これは裁判で認められる弁護士基準よりも低めであることが一般的です。つまり、人身傷害保険だけで解決してしまうと、相手に対してきちんと請求すれば受け取れたはずの金額より、少ない補償で終わってしまう可能性があるのです。とくに後遺障害が残るような重い事故では、その差が大きくなることがあります。

相手に過失がある事故では、人身傷害保険からの支払いと、相手への損害賠償請求を、どう組み合わせるのが有利かを慎重に考える必要があります。損害賠償の決まり方や、弁護士に依頼することで増額できる仕組みについては、こちらの記事が参考になります。

相手への請求権との関係に注意

人身傷害保険から保険金を受け取ると、その分について、保険会社が加害者に対して請求する権利を引き継ぐことがあります。これを代位といいます。そのため、人身傷害保険を使う順番や、相手への請求とのバランスによっては、最終的に自分の手元に残る金額が変わってくることがあります。どう進めるのが最も有利になるかは、専門的な判断が必要な場面も多いのです。

少し難しい話になりますが、ここはお金の手残りに直結する大切なポイントです。相手に過失がある事故で、先に人身傷害保険から保険金を受け取った場合、その後に相手から賠償を回収できる範囲が、保険会社の代位によって制限されることがあります。逆に、相手への請求を先に進めてから、不足分を人身傷害保険で補うという順番にすると、自分の手元に残る金額が多くなるケースもあります。どちらが有利になるかは、過失割合や損害の内訳によって変わるため、一概には言えません。だからこそ、相手に過失がある事故では、保険金を受け取る前に弁護士へ相談し、最も有利な進め方を確認しておくことをおすすめします。何も考えずに先に人身傷害を使ってしまうと、後から「順番を変えれば、もっと受け取れたのに」と気づいても手遅れになることがあるのです。

等級への影響は契約による

「自分の保険を使うと等級が下がって、保険料が上がるのでは」と心配される方も多いでしょう。人身傷害保険を使った場合に等級が下がるかどうかは、契約の内容や保険会社によって異なります。ノーカウント事故として扱われ、等級に影響しない場合もあります。使う前に、自分の契約ではどうなるのかを保険会社に確認しておくと安心です。

なお、弁護士に依頼する際の費用が心配な方は、自動車保険に付帯していることの多い弁護士費用特約を確認してみてください。これを使えば、弁護士への相談や依頼にかかる費用を、自己負担を抑えながらまかなえることがあります。弁護士費用特約の仕組みについては、こちらの記事でくわしく解説しています。

こんなときこそ人身傷害保険が役立つ

人身傷害保険が特に力を発揮するのは、相手からの賠償が期待できない、あるいは不十分な場面です。具体的にどんなケースで役立つのか、見ていきましょう。

自分の過失が大きい事故

自分の過失割合が大きい事故では、相手からの賠償が過失相殺で大きく減ってしまいます。こうしたとき、過失割合に関係なく補償される人身傷害保険があれば、自分の損害をしっかりカバーできます。過失の大きい事故ほど、人身傷害保険のありがたみが増すといえます。

たとえば、優先道路でない側から交差点に進入してしまった、センターラインをはみ出してしまったなど、自分の側に大きな過失がある事故では、ケガをしても相手にはほとんど請求できないことがあります。こうした場面で人身傷害保険がなければ、治療費も休業損害も大半を自分でかぶることになってしまいます。逆に、人身傷害保険に入っていれば、自分に過失があっても約款の基準で損害を補償してもらえるため、安心して治療に専念できます。「自分が悪い事故だから、もう何も受け取れない」とあきらめる前に、自分の人身傷害保険が使えないかを必ず確認してください。

相手が無保険・ひき逃げの事故

相手が任意保険に入っていなかったり、ひき逃げで加害者が分からなかったりする事故では、相手から賠償を受けるのが非常に難しくなります。こうした場合でも、人身傷害保険に入っていれば、自分の保険から補償を受けられます。相手の支払い能力に左右されないのは、大きな安心材料です。

現実には、任意保険に加入していないドライバーは一定数存在します。相手が無保険だと、いくら相手に過失があっても、相手にお金がなければ実際に賠償を受け取るのは困難です。裁判で勝っても、相手に資力がなければ回収できないこともあります。ひき逃げで加害者が見つからなければ、そもそも請求する相手すらいません。こうした、自分ではどうしようもない状況で頼りになるのが人身傷害保険です。相手の事情に関係なく、自分の契約に基づいて確実に補償を受けられるため、泣き寝入りを避けられます。万が一に備えるという保険本来の役割が、最も発揮される場面だといえるでしょう。

無保険の相手との事故で賠償を受ける方法については、こちらの記事でくわしく解説しています。

単独事故やもらい事故

電柱に衝突するような単独事故では、そもそも相手がいないため、賠償してくれる相手もいません。また、完全に相手が悪いもらい事故でも、相手の対応が悪く支払いが滞ることがあります。こうした場面でも、人身傷害保険は自分や同乗者のケガを補償してくれます。相手の有無や対応に関係なく使えるのが、人身傷害保険の強みです。

困ったときは弁護士に相談を

人身傷害保険は心強い備えですが、相手に過失がある事故では、保険金の受け取り方ひとつで最終的な金額が変わることもあります。どう進めるのが自分にとって有利なのか、判断に迷うときは、弁護士に相談するのがおすすめです。

最も有利な進め方を提案してもらえる

人身傷害保険からの支払いと、相手への損害賠償請求を、どの順番でどう組み合わせるか。これは過失割合やケガの程度によって変わる、専門的な判断です。弁護士に相談すれば、あなたの事故の状況に応じて、最も多くの補償を受けられる進め方を提案してもらえます。自己判断で進めて損をしないためにも、専門家の力を借りる価値があります。

保険会社との交渉を任せられる

保険会社から提示される金額は、約款基準で計算された、必ずしも満額とは限らないものです。弁護士が間に入ることで、裁判基準に基づいた適正な金額を求めて交渉でき、結果的に受け取れる金額が増えることもあります。保険会社とのやり取りに不安があるなら、弁護士に任せることで、精神的な負担も大きく減らせます。

保険会社の対応に困ったときの対処法については、こちらの記事も参考になります。

人身傷害保険についてよくある質問

最後に、人身傷害保険についてよく寄せられる質問にお答えします。あなたの疑問に近いものがあれば、参考にしてください。

人身傷害保険を使うと保険料は上がりますか

契約内容や保険会社によって異なります。人身傷害保険を使っても、ノーカウント事故として扱われ、翌年の等級や保険料に影響しない場合があります。ただし、同じ事故で他の補償も使った場合は、そちらの影響で等級が下がることもあります。心配なときは、使う前に自分の契約ではどう扱われるのかを保険会社に確認しておきましょう。

相手から賠償を受けられる場合でも人身傷害保険は使えますか

使えます。相手に過失がある事故でも、人身傷害保険を併用できます。ただし、人身傷害保険からの支払いと相手への損害賠償請求をどう組み合わせるかで、最終的に受け取れる金額が変わることがあります。とくに相手に過失がある場合は、先に人身傷害を使うか、相手に請求してから不足分を使うかなど、進め方の工夫で結果が変わるため、弁護士に相談するのがおすすめです。

家族の事故でも自分の人身傷害保険は使えますか

契約内容によりますが、記名被保険者の配偶者や同居の親族などが補償の対象に含まれていることが多くあります。そのため、家族が交通事故にあったときに、自分が契約している人身傷害保険を使える場合があります。また、契約によっては、家族が歩行中や自転車に乗っているときの事故もカバーされることがあります。自分の契約がどこまでをカバーしているか、一度確認しておくとよいでしょう。

人身傷害保険だけで示談を終わらせても問題ありませんか

注意が必要です。人身傷害保険の支払基準は、裁判で認められる弁護士基準より低めであることが一般的です。そのため、相手に過失がある事故で人身傷害保険だけで解決してしまうと、本来受け取れたはずの金額より少ない補償で終わる可能性があります。とくに後遺障害が残るような重い事故では差が大きくなりやすいため、示談を結ぶ前に弁護士に確認してもらうと安心です。

治療費が足りなくなりそうです。先に保険金をもらえますか

保険会社によっては、治療途中でも保険金の一部を先に受け取れる内払いの扱いがあります。治療が長引いて生活費や治療費に困りそうなときは、内払いができるかどうかを保険会社に相談してみてください。相手との示談を待たずに自分の保険から受け取れるのが、人身傷害保険の大きなメリットです。

まとめ:人身傷害保険を正しく理解して備えよう

人身傷害保険は、交通事故でケガをしたり亡くなったりしたときに、過失割合に関係なく、自分や家族の損害を補償してくれる心強い保険です。相手との示談を待たずに保険金を受け取れるため、治療費や生活費に困らずに済むのが大きなメリットでした。治療費、休業損害、慰謝料、後遺障害、死亡まで幅広くカバーし、相手が無保険やひき逃げの事故、自分の過失が大きい事故、単独事故など、相手からの賠償が期待できない場面で特に力を発揮します。

一方で、人身傷害保険の支払基準は裁判基準より低いことが多く、相手に過失がある事故では、保険金の受け取り方によって最終的な金額が変わることもあります。だからこそ、どう進めるのが有利かは慎重に判断する必要があります。自分の契約内容を確認したうえで、迷ったときは弁護士に相談しながら、人身傷害保険を上手に活用してください。正しく理解して備えておくことが、いざというときにあなたとご家族を守ることにつながります。

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