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事故が原因で退職した場合、何を請求できるのか
ケガのために職場を離れることになった。この状況で相談に来られる方は、たいてい同じ問いを抱えています。仕事を失ったこと自体に対して、何か補償はないのか。
収入が途絶えるという事実に加えて、積み上げてきたものを手放す感覚が重なります。金額の問題だけではない、という気持ちは当然のものです。
ただ、賠償という制度が拾えるのは、そのうち金銭に置き換えられる部分に限られます。この線引きを知っておくと、どこで交渉すべきかが見えてきます。
先に整理しておきます。退職したこと自体を理由とする慰謝料は、原則として認められません。一方で、退職によって失われた収入は、休業損害や逸失利益という形で請求できる余地があります。つまり、精神的な打撃への賠償としては扱われないが、経済的な損失としては扱われる、ということです。
そして金額でいえば、後者のほうがはるかに大きくなります。慰謝料の枠で争って得られるものより、収入に関する費目を丁寧に組み立てたほうが、結果として受け取れる額は増えます。
想像してみてください。工場で働いていて、通勤中に事故に遭った。腰を痛めて重い物を持てなくなり、職場に戻っても以前の作業はできない。配置転換の話も出たが折り合わず、結局は辞めることになった。収入は途絶え、次の仕事も決まっていない。
この状況で相手方に事情を伝えても、「退職は当社と関係ありません」と返されることがあります。では、何をどう主張すればよいのか。そこを整理するのが、この記事の目的です。
結論を先に言えば、退職という出来事を一括りにせず、時期ごとに費目を分けて主張することになります。在職中に休んだ分、退職後で治療中の分、症状固定より後の分。それぞれ根拠が違います。
この記事では、退職の前後でどの費目が問題になるのか、退職後の収入減をどこまで請求できるのか、そして事故と退職のつながりをどう示すのかを説明します。まだ辞めるかどうか迷っている段階の方にも、読んでおいていただきたい内容です。
辞めてからでは選べなくなる手続きがいくつもあります。判断の前に一度目を通しておくだけで、取れる選択肢が変わります。
休業損害の基本的な仕組みについては、総論の記事にまとめてあります。日額の出し方や証明書の扱いは、そちらをご覧ください。
退職したこと自体への慰謝料は原則認められない
納得しにくい部分だと思いますので、理由から説明します。
慰謝料の対象になるもの
交通事故の慰謝料は、ケガをして治療を受けたことによる精神的な苦痛、そして後遺症が残ったことによる精神的な苦痛に対して支払われます。算定の枠組みも、通院した期間や後遺障害の等級を基礎に組み立てられています。
つまり、慰謝料の額は「どれだけつらかったか」で個別に決まるものではありません。通院の実態と等級という、外から確認できる要素で計算されます。ここに退職という事情を持ち込む余地が、制度として用意されていないのです。
退職という出来事は、この枠組みの外にあります。仕事を失ったつらさが小さいという話ではなく、慰謝料という費目がそれを拾う設計になっていない、ということです。
まったく例外がないわけでもありません。加害者の行為が著しく悪質だった場合などには、慰謝料の増額が認められることがあります。ただし、退職したことそのものを理由とする増額は、期待しにくいのが実情です。
裏を返せば、退職の事情は慰謝料ではなく、収入に関する主張の中で活かすべきものだということです。同じ事実でも、どの費目に結びつけるかで扱いが変わります。
では、どこで評価されるのか
失われた収入として評価されます。退職前に休んだ期間は休業損害、退職後の減収は事案によって休業損害または逸失利益。金額としては、こちらのほうがはるかに大きくなるのが通常です。
とくに逸失利益は、将来にわたる損害を一括で算定するものですから、金額の桁が変わります。争うべき場所はここだと考えてください。
退職した方の事案では、賠償の総額に占める収入関連の割合が大きくなります。慰謝料の数万円を争うより、基礎収入や期間の主張を組み立てるほうが実益があります。
ですから、慰謝料の枠で争うより、収入に関する費目を丁寧に組み立てるほうが、実際に受け取れる金額は増えます。
退職前に休んだ期間の休業損害
まず、在職中に休んだ期間です。ここは通常の休業損害として扱われます。
勤務先に休業損害証明書を作成してもらい、事故前三か月の給与から日額を求め、休んだ日数を掛ける。この流れは、退職したかどうかに関係なく同じです。
有給を使って休んだ日も対象になります。給与は減っていなくても、本来自由に使えた権利を事故のために消費させられたと考えられるためです。証明書には、有給を充てた日が分かるように記載してもらってください。
退職にあたって残っていた有給を消化した場合も、その一部が事故による休業と重なっているなら、整理して主張できます。どの日がどの理由によるものかを分けておいてください。
注意したいのは、退職してしまうと証明書を依頼しにくくなる点です。在職期間の給与記録は勤務先に残っていますので、辞めた後でも作成は可能です。ただ、連絡自体が取りづらくなりますし、担当者が代わっていることもあります。
辞めることを考えている段階なら、先に証明書の作成を依頼しておいてください。源泉徴収票も、あわせて受け取っておくと後が楽になります。
年の途中で退職した場合、その年の源泉徴収票は発行までに時間がかかることがあります。いつ必要になるのかを伝えて、段取りを相談しておきましょう。
退職後の収入減はどこまで請求できるか
ここが最大の論点です。退職した後、収入がなくなった期間について、どこまで補償されるのか。
症状固定までの期間
まだ治療が続いており、就労できない状態にあるなら、症状固定の日までは休業損害として請求できる余地があります。退職したから対象外、ということにはなりません。
相手方は「退職したのだから、そもそも失う給与がない」と主張してくることがあります。しかし、退職に至ったこと自体が事故の結果なのですから、その論法は順序が逆です。
この反論をするには、事故と退職のつながりを示せていることが前提になります。だからこそ、次の節で扱う立証の準備が効いてくるわけです。
ただし、退職後は勤務先がありませんので、「働けなかった」ことを別の形で示す必要があります。医師の見解、症状の経過、就労できない状態が続いていたことを裏づける記録が材料になります。
ここでも通院の継続が効いてきます。退職して収入が途絶えると、治療費の負担を惜しんで通院をやめてしまう方がいます。しかし通院が途切れると、就労できない状態だったことを示す材料まで失われます。健康保険を使えば窓口の負担は抑えられますので、続ける方法を探してください。
退職すると健康保険の扱いも変わります。任意継続にするのか、国民健康保険に切り替えるのか、家族の扶養に入るのか。手続きを怠ると無保険の期間が生じますので、離職の前に確認しておいてください。
基礎となる収入
退職前の給与が基礎になるのが原則です。事故がなければ、その勤務先で働き続けていたと考えられるためです。
相手方から、退職後は無収入なのだから損害もない、という主張がなされることがあります。しかし、収入がゼロになったのは事故によるものです。この点は、混同されやすいところです。
退職前の給与が分かる資料は、必ず手元に残しておいてください。給与明細、源泉徴収票、雇用契約書。これらがなければ、基礎となる金額そのものを示せなくなります。
退職時に会社へ返却する書類と、自分の手元に残すべき書類は別です。返す前に、写しを取っておくことをおすすめします。
就労可能になった後
治療が終わり、働ける状態に戻ったのであれば、そこから先の無収入期間は原則として損害に含まれません。就職活動に要する期間をどこまで見るかは、事案によって判断が分かれます。
年齢や職種によって、次の仕事が決まるまでの時間は変わります。実際に就職活動をしていた記録が残っていれば、その期間を主張する材料になります。応募した先や面接の記録を残しておいてください。
後遺症が残り、以前と同じ仕事に就けないのであれば、話は逸失利益に移ります。
時期ごとに使う費目
| 時期 | 費目 | 前提 |
|---|---|---|
| 在職中に休んだ期間 | 休業損害 | 勤務先の証明書と給与実績 |
| 退職後、症状固定まで | 休業損害 | 就労できない状態が続いていたこと |
| 症状固定より後 | 逸失利益 | 後遺障害の等級が認定されること |
| 転職後の収入減 | 逸失利益 | 後遺症との結びつき |
どの時期の話をしているのかを取り違えると、議論がかみ合いません。相手方とのやり取りでも、期間を区切って主張してください。
表のとおり、症状固定を境に費目が切り替わります。どこで区切るかは医師の判断によりますので、相手方から固定を打診されても、その場で同意しないでください。
事故と退職のつながりをどう示すか
相手方が必ず争ってくるのが、この点です。「事故とは関係なく辞めたのではないか」という主張です。
示すべき三つのこと
組み立ての柱は、次の三点になります。
- どの身体機能が、どの程度失われたのか
- その機能が、担当していた業務にどう不可欠だったのか
- 配置転換や勤務時間の調整では対応できなかったこと
二つ目が要になります。「腰を痛めた」だけでは足りません。一日のうちどれくらいの時間、どの程度の重量を扱っていたのか。具体的に示すことで、就労の継続が困難だったことが伝わります。
職務内容が分かる資料があれば、なお有効です。求人票、業務分掌、作業手順書。自分が何をしていたのかを外から確認できる形にしておくと、説明の精度が上がります。
残しておきたい記録
退職の経緯は、後から再現するのが難しいものです。次のような記録が残っていれば、主張の裏づけになります。
- 診断書、就労制限に関する医師の記載
- 職場に配置転換や勤務軽減を相談したやり取り
- 会社からの回答や、対応が難しい旨の連絡
- 退職に至る面談の記録
- 離職票や退職証明書の記載内容
とくに二つ目と三つ目は、意識していないと残りません。口頭のやり取りだけで進めず、メールやメッセージなど文字で残る形にしておいてください。
面談の後に「本日ご相談した件ですが」と要点を送っておくだけでも、記録になります。身構えて作る必要はありません。
職場との関係が悪くなることを心配される方もいます。ただ、事実の確認を求めているだけですから、角が立つ話ではありません。淡々と記録に残しておいてください。
事故の前から転職を考えていた場合
事故の前に転職活動をしていた、退職の意思を伝えていた。こうした事情があると、つながりの主張は難しくなります。
ただし、まったく認められなくなるわけでもありません。事故がなければ次の職場で働き始めていたはずだ、という形で組み立てる余地は残ります。内定が出ていたのであれば、その条件を示すことになります。
また、転職を考えていたとしても、実際に辞める時期が事故によって早まったのであれば、その差は主張できます。事情を隠すより、正確に説明したうえで組み立てるほうが結果につながります。
後遺障害が認定された場合の逸失利益
症状固定の後も働く力が戻らないのであれば、逸失利益という費目で扱われます。
これは、後遺障害の等級に応じて、将来にわたってどれくらい収入が減ると見込まれるかを算定するものです。等級が認定されなければ、原則として発生しません。
この点が、退職した方にとっては大きな分かれ目になります。現に働けなくなっていても、等級が付かなければ将来分の損害は認められにくいのです。だからこそ、症状固定の前に必要な検査を受けておくことが重要になります。
どの検査が必要かは、症状の部位と性質によって変わります。判断がつかないようなら、固定を打診された段階で一度相談してみてください。
基礎収入の取り方
退職前の給与が基礎になるのが通常です。退職して現在は無収入だとしても、その額で算定されるわけではありません。
ここを取り違えて、現在の収入がゼロだから損害もゼロだと説明されることがあります。基礎にするのは事故の前の収入だという点を、はっきり伝えてください。
ただし、事故の前の収入が一時的に低かった場合や、若く今後の昇給が見込まれた場合には、統計上の平均賃金を基礎とする主張も考えられます。
とくに若い方の場合、これから収入が上がっていくことが見込まれます。事故当時の給与だけで将来を判断するのは実態に合わない、という主張の余地があります。
勤続年数が浅い方や、非正規から正社員への転換が予定されていた方も同様です。事故がなければどうなっていたかを、資料で示せるかが鍵になります。
労働能力がどれだけ失われたか
等級ごとに目安が定められていますが、実際の職業との関係も考慮されます。同じ等級でも、身体を使う仕事と机に向かう仕事とでは、受ける影響が違うからです。
現に退職に至ったという事実は、影響の大きさを示す材料になります。等級が比較的軽くても、その仕事を続けられなかったのであれば、その点を主張してください。
現実に退職に至ったという事実は、書面で示せる数少ない材料です。離職票や退職証明書は、必ず保管しておいてください。
あわせて、在職中の評価や勤務状況が分かる資料もあると有効です。事故の前は問題なく働けていたことを示せれば、退職の原因が事故にあったという主張が通りやすくなります。
等級は提出された書面だけで判断されます。必要な検査を受け、症状の推移をカルテに残しておくことが欠かせません。心身の不調が続いているなら、その点も診察の場で伝えてください。
解雇された場合・退職を強いられた場合
自分から辞めたのではなく、辞めさせられたという場合もあります。
解雇には制限がある
ケガで働けないことを理由とする解雇が、常に認められるわけではありません。労働法上、解雇には合理的な理由と社会通念上の相当性が求められます。療養中の解雇については、さらに制限が及ぶ場面もあります。
ただし、休業が長期に及び、復職の見込みが立たない場合には、解雇が認められることもあります。制度があるから必ず守られる、というものではありません。
解雇をめぐる争いは、交通事故の賠償とは別の手続きになります。両方を同時に抱えると負担が大きくなりますので、優先順位を決めて進めることをおすすめします。
解雇の効力を争うには期間の制約もあります。どちらを先に進めるかは、状況を整理したうえで判断してください。
この問題は、交通事故の賠償とは別の枠組みで扱われます。解雇が無効だという主張と、賠償の請求は、それぞれ別に検討することになります。
退職を勧められた場合
勧奨に応じるかどうかは、本人の判断です。応じる義務はありません。
応じると決めた場合も、離職の理由をどう記載するかは確認してください。会社都合として扱われるかどうかで、失業給付の条件が変わります。
離職票の記載は、後から直すのが簡単ではありません。受け取ったら、内容をその場で確認してください。心当たりと違う理由が書かれているなら、その時点で申し出るべきです。
離職理由は、失業給付の待期期間や給付日数にも関わります。生活設計に直結する部分ですから、記載の確認は必ず行ってください。
記載に納得できない場合は、ハローワークに申し出て確認を求めることもできます。会社の記載がそのまま確定するわけではありません。
ケガによる離職であれば、給付の条件が緩和される扱いを受けられる場合もあります。手続きの窓口で、事故によるものである旨を伝えてください。
診断書の提出を求められることもありますので、写しを一部余分に用意しておくと手続きが滞りません。
労災を使っている場合
通勤中や業務中の事故で労災の給付を受けている場合、療養のために休んでいる期間とその後の一定期間は、解雇が制限される定めがあります。該当しそうなら、労働基準監督署に相談してみてください。
労災の給付には、過失による減額がありません。自分の側にも落ち度がある事故では、この違いが手取りに響きます。
転職して収入が下がった場合
辞めた後、別の仕事に就いたが、以前より収入が下がった。この差額はどう扱われるのでしょうか。
後遺症のために以前と同じ働き方ができず、その結果として収入が下がったのであれば、差額は逸失利益の中で評価されます。等級が認定されていることが前提になります。
一方、後遺症とは関係なく、たまたま条件の低い職場に移ったという場合は、その差額を請求するのは難しくなります。転職の理由と、身体の状態との結びつきが問われます。
収入が下がったこと自体は、給与明細や源泉徴収票で簡単に示せます。難しいのは、その原因が後遺症にあると説明する部分です。ここに資料を集中させてください。
医師の見解に加えて、前職と現職の業務内容を並べて示すと分かりやすくなります。何ができなくなったから、どの職種を選べなかったのか。この筋道が通っていれば、主張として成り立ちます。
資格や免許が必要な仕事であれば、説明はさらに明確になります。運転を伴う職種で運転が難しくなった、といった事情は分かりやすい例です。
逆に、事務職のように身体への負荷が小さい職種では、説明の組み立てに工夫が要ります。痛みによる集中力の低下や、長時間の着座が難しいといった支障を、具体的に示すことになります。
転職の際に、症状のために選べなかった職種があるなら、その経緯を記録しておいてください。応募を見送った求人の条件や、面接での説明が材料になることもあります。
新しい職場で配慮を受けている場合は、その内容も記録しておきましょう。作業の制限や勤務時間の短縮があるなら、それ自体が影響の大きさを示します。
退職を決める前に確認しておくこと
まだ迷っている段階なら、先に確かめておきたいことがあります。辞めた後では選べなくなる選択肢があるからです。
- 休職の制度があるか。就業規則を確認する
- 傷病手当金を受けられるか。健康保険の加入状況を確認する
- 労災の対象になる事故か。通勤中や業務中なら該当する可能性がある
- 配置転換や勤務時間の短縮で続けられないか、会社に相談する
- 休業損害証明書と源泉徴収票を、在職中に受け取っておく
- 医師に、就労の可否と復帰の見込みを確認する
四番目は、賠償の面でも意味があります。会社に相談したという事実が残っていれば、他に手段がなかったことを示せます。相談もせずに辞めてしまうと、配置転換で対応できたのではないかという反論を受けやすくなります。
六番目も忘れないでください。医師が復帰可能と考えているのに本人が辞めてしまうと、事故との結びつきを説明しにくくなります。
逆に、医師が就労は難しいと判断しているのであれば、その見解を書面にしてもらってください。後の主張の柱になります。
会社を辞めずに済ませる選択肢
経済的な事情から、辞めるほかないと感じている方もいるでしょう。ただ、当面の生活を支える仕組みはいくつかあります。
休職と傷病手当金
就業規則に休職の制度があれば、雇用を維持したまま療養できます。健康保険に加入していれば、一定の条件で傷病手当金を受けられることもあります。
ただし、相手方からの賠償と同じ期間について二重に受け取ることはできず、調整が行われます。それでも、支払いが遅れがちな時期を乗り切る手段としては有効です。
雇用が続いていること自体にも意味があります。社会保険に入り続けられますし、復帰の可能性も残せます。辞める前に、制度の有無だけでも確認してください。
相手方からの先払いを求める
休業損害は、示談を待たずに区切って支払われることがあります。生活に支障が出ているなら、その旨を伝えて先に支払ってもらえないか相談してください。
自分の保険を使う
人身傷害保険に加入していれば、相手方との交渉とは別に、損害の実額を受け取れる場合があります。相手方の対応が滞っていても、こちらの手続きは進められます。
自分の契約に付いていなくても、同居している家族の保険から使える場合があります。証券を見比べてみてください。
相手方とのやり取りそのものが負担になっている場合は、窓口を移すことも検討してください。
相談の時期が結果を左右する
この類型で時期が効いてくるのは、退職という判断が取り消せないからです。
辞めた後に「こう進めておけばよかった」と分かっても、戻せません。休職制度を使えたかもしれない、配置転換を相談しておけばよかった、離職理由の記載を確認しておくべきだった。こうした後悔は、事前に一度話を聞いていれば避けられます。
すでに辞めてしまった後でも、できることは残っています。ただ、選べる幅は確実に狭くなります。迷っている段階で相談するほうが、得られるものは多くなります。
費用が気になる場合は、弁護士費用特約の有無を確認してください。本人の契約に付いていなくても、同居する家族の保険から使えることがほとんどです。相談だけなら無料で応じている事務所も多くあります。
依頼するかどうかは別として、判断材料を得てから決める。この順序をおすすめします。
よくある質問
退職したこと自体への慰謝料はもらえないのですか
原則として認められません。慰謝料は、ケガをして治療を受けたことや、後遺症が残ったことによる精神的苦痛に対して支払われるものだからです。退職による経済的な損失は、休業損害や逸失利益として扱われます。
自己都合で退職すると賠償で不利になりますか
書面上の理由が「一身上の都合」になっていると、事故とのつながりを説明しにくくなります。ただし、それだけで請求できなくなるわけではありません。就労が困難だった事実を、医師の見解や職場でのやり取りで示すことになります。
退職後どのくらいの期間まで休業損害が認められますか
症状固定の日までが目安です。それ以降の減収は、後遺障害が認定されていれば逸失利益として扱われます。就労可能な状態に戻った後の無収入期間は、原則として含まれません。
後遺障害が認定されなかった場合はどうなりますか
逸失利益は原則として発生しません。ただし、症状固定までの休業損害は請求できます。認定結果に納得できない場合は、異議を申し立てる道もあります。
事故の前から転職を考えていました
つながりの主張は難しくなりますが、不可能ではありません。転職先が決まっていたのであれば、その条件を基礎に、働き始められなかった損害として構成する余地があります。
転職して給料が下がりました。差額は請求できますか
後遺症のために以前と同じ働き方ができず、その結果として下がったのであれば、逸失利益の中で評価されます。等級が認定されていることが前提です。
会社から退職を勧められています
応じる義務はありません。労災を使っている場合は、療養中の解雇が制限される定めもあります。判断する前に、就業規則と自分の状況を確認してください。
退職後に再就職しましたが、また辞めることになりました
後遺症のために就労が続かなかったのであれば、その経緯も主張の材料になります。復職を試みたが続けられなかったという事実は、労働能力がどれだけ失われたかを示す具体的な証拠です。短期間で辞めたことを不利に考えず、経緯を記録しておいてください。
職場からの指摘や、実際にできなかった作業の内容が残っていれば、なお有力です。勤務期間が短くても、記録の価値は変わりません。
失業給付を受けると、賠償が減りますか
失業給付は、働く意思と能力があることを前提とする制度です。一方、休業損害は働けなかったことに対する賠償ですから、両者は前提が食い違います。どちらを受けるかで扱いが変わることがありますので、受給を検討する段階で相談してください。
なお、就労できる状態に戻っているのであれば、失業給付を受けながら就職活動を進めること自体に問題はありません。判断が難しいのは、まだ治療中の時期です。
退職する前に相談したほうがよいですか
そのほうが選択肢は多く残ります。休職制度の利用、配置転換の相談、証明書の取得。いずれも在職中のほうが進めやすいものばかりです。辞めると決めていても、手順を確かめてからのほうが安心です。
あなたの慰謝料はいくら?3基準で比較診断
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。