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交通事故の慰謝料の計算方法|提示額を検証する手順

交通事故の慰謝料の計算方法|提示額を検証する手順

この記事で分かること

  • 交通事故の慰謝料について保険会社にすべて任せにしてしまうと慰謝料が減額される可能性がある
  • 交通事故の慰謝料には入通院慰謝料・後遺障害慰謝料・死亡慰謝料の3つの種類がある
  • 自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準のうちどの基準で算出するかによって慰謝料額が異なる
  • 自賠責保険基準は慰謝料を算出する計算式が存在するが任意保険基準は公表されていない
  • 弁護士基準では過去の裁判例を参考に交通事故の慰謝料を算出し請求していく
  • 自賠責基準の入通院慰謝料の計算式は2つあり、どちらか金額が低い方が適用される
  • 弁護士基準の入通院慰謝料は他覚症状の有無によって慰謝料額が変動する
  • 後遺障害慰謝料は、認定された等級によって算出される
  • 死亡慰謝料は被害者本人と遺族に支払われる

交通事故の慰謝料の計算方法には、自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準の3つがあります。3つのうちどの基準をもとに算出するかによって大きく慰謝料額が異なってきます。慰謝料の算出方法について理解し、個々のケースに適した算出方法で慰謝料を受け取ることが大切になってきます。

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示談金の提示を受けて、その計算が正しいのかを自分で確かめたい。そう考えたとき、必要になるのは金額の一覧ではなく、どの数字がどこから来ているのかという計算の道筋です。

慰謝料は、決められた要素を組み合わせて算定されます。要素が何で、どの数字を当てはめるのかが分かれば、提示された金額を自分で検証できます。この記事では、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、死亡慰謝料それぞれの計算の仕組みを、実務で使われている手順に沿って解説します。

慰謝料の計算に必要な三つの情報

どの慰謝料を計算するときも、出発点になるのは次の三つです。手元の資料から拾えるものばかりなので、まず確認してください。

情報 どこで確認するか 何に使うか
治療期間 初診日と症状固定日。診断書や診療報酬明細書に記載 入通院慰謝料の基礎
実通院日数 診療報酬明細書の通院日。整骨院の分は別に数える 入通院慰謝料の調整
後遺障害等級 認定通知。非該当なら等級なし 後遺障害慰謝料と逸失利益の基礎

この三つがそろえば、計算の出発点が固まります。

入院がある場合は、入院日数と通院日数を分けて把握しておきます。算定の際、この二つは別に扱われるためです。転院した場合は、それぞれの医療機関ごとに日数を確認してください。

確認しておきたいこと
診療報酬明細書は、相手方の保険会社が治療費を支払っている場合、被害者の手元に届いていないことがあります。求めれば写しをもらえるので、通院日数を正確に数えるために取り寄せておいてください。

計算を始める前に整理しておくこと

手元の資料から数字を拾うとき、いくつか注意すべき点があります。ここを取り違えると、計算そのものがずれます。

治療期間の始期と終期

始期は事故日ではなく初診日です。事故から受診までに日数が空いていると、その分は治療期間に入りません。逆にいえば、事故当日か翌日に受診しておくことが、期間を確保する意味でも大切になります。受診が遅れると、症状と事故の結びつき自体を争われる原因にもなります。

終期は症状固定日です。相手方の保険会社が治療費の支払いを止めた日ではありません。ここを混同すると、期間が実際より短く計算されます。

通院日数の数え方

診療報酬明細書には、その月に受診した日が記載されています。これを月ごとに合計したものが実通院日数です。

整骨院に通った分の扱いは見落とされがちです。医療機関の明細書には現れません。別に施術証明書を取り寄せて数える必要があります。医師の同意を得て通っているのであれば、通院日数に算入できるのが通常です。同意を得ずに施術だけを続けていると、その分が対象から外されることがあります。

物損事故のままだと計算に入らない

人身事故として届け出ていなければ、そもそも慰謝料の請求ができません。治療費や通院日数がいくらあっても、計算の対象外になります。

ケガをしているのに物損として処理されている場合は、診断書を警察に提出して切り替えを済ませてください。切り替えが難しい場合でも、人身事故証明書入手不能理由書という書面で対応できるケースもあります。

資料がそろわないとき

相手方の保険会社が治療費を直接支払っている場合、明細書は保険会社に届いており、被害者の手元にはありません。この場合、保険会社に写しを求めるのが最も早い方法です。

応じてもらえない場合は、医療機関に直接依頼して開示を受けることもできます。手数料はかかりますが、事故によって生じた出費として請求の対象になります。

症状固定日が記載されているか

後遺障害診断書には、症状固定日を記入する欄があります。ここが空欄のまま提出されることがあり、その場合は最終の受診日が終期として扱われます。

治療期間の終わりを画する重要な日付なので、記載されているかを確かめてください。医師によっては、いつを症状固定とするかの相談に応じてもらえます。

複数の医療機関にかかった場合

整形外科と脳神経外科の両方に通った、途中で転院したという場合、それぞれから明細書を取り寄せて合算します。同じ日に二つの医療機関を受診していれば、通院日数としては1日と数えます。

入通院慰謝料の計算

治療のために入院や通院を強いられたことに対する補償です。三つの基準それぞれで、計算の方法が違います。

治療期間と通院日数の両方が要る

入通院慰謝料の算定には、期間と日数の両方が必要です。どちらか一方だけでは計算できません。

期間が長くても通院が少なければ調整が入り、通院が多くても期間が短ければそれ以上は伸びません。両方をそろえて初めて、本来の水準に届くという構造になっています。

入院と通院で扱いが分かれる

入通院慰謝料という名前のとおり、この項目は入院と通院の両方を対象にします。ただし、同じ1日でも入院と通院では評価が違います。

弁護士基準の算定表は、入院期間と通院期間を別の軸に置いた構造になっています。入院があるほうが高い水準になり、入院期間が長いほど額は上がります。骨折で手術を受けたような事案では、この差が大きく効いてきます。

自賠責基準では入院と通院を区別せず、合計した日数で計算します。基準によって、同じ入院の重みが違うということです。

三つの基準で計算方法そのものが違う

入通院慰謝料でまず押さえておきたいのは、基準ごとに計算の考え方そのものが違うという点です。金額の高低だけの問題ではありません。

自賠責基準は日額に日数を掛ける単純な計算。弁護士基準は期間の組み合わせで表から読み取る方式。任意保険基準は非公開のため、外から検証できません。同じ事案でも、計算の出発点が違えば結論が揃わないのは当然です。

自賠責基準は日額に日数を掛ける

もっとも単純な計算です。告示で定められた日額4,300円に、対象日数を掛けます。

対象日数は、次の二つを比べて少ないほうを採ります。

  • 治療期間。初診日から症状固定日までの日数
  • 実通院日数の2倍

3か月の治療期間で通院が30日なら、通院日数の2倍が60日、治療期間が90日。少ないほうの60日が対象です。通院が50日なら、2倍は100日で治療期間の90日を超えるため、90日が上限になります。

この仕組みから分かるのは、週2回以上通っていないと、対象日数が通院日数の2倍で頭打ちになるということです。通院の頻度が低いほど、慰謝料は目減りします。

任意保険基準は各社の非公開基準

相手方の保険会社が使う基準ですが、内容は公表されていません。かつて各社共通の基準がありましたが、現在は会社ごとに独自のものを持っています。

そのため、提示された金額がどう計算されたのかを外部から検証することはできません。担当者に計算の根拠を尋ねても、詳細を示されないことが通常です。

弁護士基準は算定表を使う

入院期間を横軸、通院期間を縦軸にした表を用います。該当する交点の額が慰謝料になる、という形です。

表は二種類あり、ケガの性質で使い分けられます。

使う表 対象
重傷用 骨折、脱臼、脳や内臓の損傷など、他覚的所見のあるケガ
軽傷用 むちうち、打撲など、画像で異常を示しにくいケガ

同じ治療期間でも、重傷用のほうが高い水準になります。骨折しているのに軽傷用で計算されていないか、提示を受けたら確かめてください。

治療期間が長期に及ぶ場合

算定表には上限があり、通院が一定の期間を超えると額の伸びは緩やかになります。半年を過ぎたあたりから、月あたりの増え方は小さくなっていく構造です。

つまり、長く通えばその分だけ比例して増えるわけとは限りません。症状が続いているなら通院を保つべきですが、慰謝料を増やす目的だけで通院を延ばしても、効果は限られます。

ギプス固定の期間はどう扱うか

骨折などでギプスを装着していた期間は、実際に通院していなくても入院に準じて扱われることがあります。固定されて動けない以上、通院そのものが困難だからです。

入院に準じて扱われれば、その期間は通院より高い水準で算定されます。この扱いが認められるかは事案によりますが、主張しなければ考慮されません。いつからいつまで固定していたのかを、診療録で示せる状態にしておく必要があります。

通院が長期で頻度が低い場合の調整

弁護士基準でも、通院の間隔が空きすぎている場合には調整が入ります。軽傷用の表を使う事案では、実通院日数の3.5倍程度を治療期間とみなして算定することがあります。

半年通院していても、実際に通ったのが20日程度であれば、この調整によって水準が下がります。期間の長さより、通い続けた実態が見られるということです。

通院日数が慰謝料をどう左右するかは、次の記事でさらに掘り下げています。

後遺障害慰謝料の計算

治療を終えても症状が残り、後遺障害の等級が認定された場合に請求できます。

計算は等級を当てはめるだけ

入通院慰謝料と違い、計算式はありません。認定された等級に対応する額が、そのまま慰謝料になります。年齢や性別、収入によって変わることもありません。

等級の区分は1級から14級まで。数字が小さいほど、重い障害を指します。労働能力喪失率で見ると、1級が100パーセント、7級が56パーセント、12級が14パーセント、14級が5パーセント。慰謝料についても、この喪失率の差に沿って水準が開いていきます。

この等級ごとの額にも、基準による差があります。同じ等級であっても、自賠責基準と弁護士基準では数倍の開きが生じ、等級が重くなるほど差は金額として広がります。

併合されると等級が繰り上がる

複数の部位に後遺障害が残った場合、それぞれの等級を組み合わせて全体の等級を決める併合という取り扱いがあります。それぞれ単独なら12級と13級であっても、合わせて11級と判断される例も見られます。

等級がひとつ繰り上がれば、慰謝料も逸失利益も水準が変わります。自覚として軽い症状も、必ず申告に含めてください。

等級が取れるかどうかが分岐点

非該当であれば、後遺障害分の慰謝料は請求できません。逸失利益も同様です。症状が残っていても、認定されなければゼロという扱いになります。

等級ごとの位置づけと、自分がどこに当たるかを確かめる手順は次の記事にまとめました。

逸失利益も忘れずに

後遺障害が認定されると、慰謝料とは別に逸失利益を請求できます。多くの事案では、こちらのほうが金額として大きくなります。

計算式は、基礎収入に労働能力喪失率と喪失期間に応じた係数を掛けるという形です。喪失率は等級ごとに定まっていますが、基礎収入と喪失期間は事案ごとの判断になり、争点になりやすい部分です。

逸失利益の組み立て方については、次の記事で詳しく扱っています。

死亡慰謝料の計算

死亡事故では、亡くなった本人の慰謝料と、遺族固有の慰謝料の両方が発生します。

自賠責基準は固定額の積み上げ

本人分として400万円が定められています。遺族分は人数に応じて段階的に決まり、1人で550万円、2人で650万円、3人以上なら750万円となります。被扶養者がいた場合には、さらに200万円が上乗せされます。これらはいずれも、告示によって定まった額です。

遺族として数えられるのは、配偶者と子、それに父母です。養子縁組をした親子、内縁関係の配偶者、認知を受けた子や胎児も対象に入ります。

弁護士基準は立場で区分される

亡くなった方が家庭でどんな立場にあったかによって水準が変わります。生計の中心だった方、配偶者や母親にあたる方、それ以外という三つの区分が置かれています。生計を支えていた立場であるほど高い水準になります。

告示で定まった自賠責の額に対して、弁護士基準ではかなり高い水準になります。

本人分と遺族分は別の権利

本人の慰謝料は、亡くなった方が受けた精神的苦痛に対するもので、相続人が引き継いで請求します。遺族固有の慰謝料は、家族を失った遺族自身の苦痛に対するものです。

この二つは性質の異なる権利なので、両方をあわせて請求できます。相続の割合とは切り離して、遺族それぞれが自分の分を求められると理解しておいてください。

死亡逸失利益の計算

死亡事故では、慰謝料と並んで死亡逸失利益が大きな項目になります。計算式は、基礎収入から生活費控除率を差し引いた額に、就労可能年数に応じた係数を掛けるというものです。

生活費控除率は、亡くなった方の立場によって変わります。扶養家族が多いほど控除率は低く設定され、その分だけ逸失利益は大きくなります。生計を支えていた立場であることを示す資料が、そのまま金額に効いてきます。

遺族が請求できるのは慰謝料と逸失利益だけではありません。葬儀費用も損害として認められ、実際にかかった額のうち相当な範囲が対象になります。

むちうちの事案で計算がどう動くか

もっとも相談の多いむちうちを例に、計算がどこで変わるのかを追ってみます。

治療期間の終期をどこに置くか

むちうちでは、相手方の保険会社が3か月から6か月あたりで治療費の打ち切りを打診してくることが多くあります。ここで通院をやめれば、その日が治療期間の終わりとして扱われます。

ただ、症状固定を判断するのは主治医です。打ち切り後も健康保険を使って通院を続け、実際に医師が症状固定と判断した日を終期とすることができます。治療期間が1か月違えば、入通院慰謝料もその分だけ変わります。

どちらの算定表を使うか

むちうちは通常、軽傷用の表で算定されます。ただし、画像所見や神経学的検査で他覚的な裏づけがある場合には、重傷用の表を主張する余地があります。ここは事案ごとの判断になります。

通院日数が少ないと減額される

むちうちで半年通院していても、実際に通ったのが20日程度であれば、軽傷用の表による調整が入ります。実通院日数の3.5倍程度を治療期間とみなして算定するため、期間そのもので計算した場合より水準が下がります。

相手方の保険会社は、この調整を前提に提示してくることがあります。逆にいえば、症状が続いている間は通院を保つことが、そのまま慰謝料の確保につながります。

後遺障害が認定されるかどうか

むちうちで症状が残った場合、14級9号または12級13号が認定される可能性があります。認定されれば後遺障害慰謝料と逸失利益が加わり、賠償の規模が変わります。

12級と14級では労働能力喪失率が14パーセントと5パーセント。慰謝料の水準にも開きがあります。判断を分けるのは、症状を医学的に証明できるか、説明できるにとどまるかという点です。

むちうちで認定を目指す場合の考え方は、次の記事で扱っています。

提示された計算を検証する手順

ここまでの仕組みを踏まえると、届いた提示書を自分で点検できます。次の順に確かめてください。

  1. 内訳を出してもらう。項目ごとに分解されていないと検証できません
  2. 入通院慰謝料の欄を見る。日額に日数を掛けた形なら、自賠責基準に近い計算です
  3. 治療期間と実通院日数が、診療報酬明細書の記載と一致しているか照合する
  4. 後遺障害慰謝料が、認定された等級に対応する水準になっているか確かめる
  5. 逸失利益の基礎収入、喪失率、喪失期間の内訳を確認する
  6. 下の計算ツールで弁護士基準の見込みと比べる

ご自身の治療の状況を入れると、おおよその水準を確かめられます。ツールの結果と提示額に開きがあれば、そこが交渉の材料になります。

交通事故 慰謝料の3基準比較シミュレーター

1か月
3か月

自賠責基準

¥120,000

任意保険基準

¥150,000

弁護士基準

¥530,000

弁護士に依頼した場合の増額目安 +¥410,000

※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。

計算ツールの結果をどう使うか

ツールで出るのは、入力した条件にもとづく機械的な算定結果です。実際の交渉では、ここに個別の事情による調整が加わります。

それでも、提示額との差を見るには十分な材料になります。差が数万円なら計算の細部の違い、数十万円以上なら基準そのものが違う可能性が高い。この見当がつくだけでも、次の判断がしやすくなります。

差が出やすい三つの箇所

実務で提示額と弁護士基準の算定額に開きが出るのは、たいてい次の三つのいずれかです。

箇所 何が起きているか
入通院慰謝料の基準 自賠責基準に近い水準で計算されている
治療期間の終期 打ち切り日で区切られ、その後の通院が算入されていない
逸失利益の前提 喪失期間が短く設定されている、基礎収入が低く見積もられている

総額だけを見ていると、どこで差がついたのかが分かりません。項目ごとに分解して照合することが、検証の第一歩になります。

計算以前に確かめるべきこと

金額の計算が正しくても、前提が違えば結論は変わります。次の点も点検してください。

  • 治療期間の終期が、実際の症状固定日と一致しているか。打ち切り日で区切られていないか
  • 整骨院に通った日が、通院日数から除かれていないか
  • 過失割合の前提が妥当か。差し引かれた額の根拠が示されているか
  • 既払い金として何がいくら控除されているか

算定表そのものの読み方は、こちらの記事で解説しています。

計算した額をそのまま受け取れるとは限らない

算定した金額から、いくつかの調整を経て最終的な受取額が決まります。ここを知らずに計算だけしても、提示額との差が説明できません。

調整には順序がある

過失相殺と既払い金の控除は、行う順序が決まっています。まず損害額の合計に過失割合を掛け、そこから既払い金を差し引くという順です。

この順序を逆にすると結果が変わるため、提示書の計算がどちらの順で行われているかは確認しておく価値があります。とくに過失割合が大きい事案では、差が生じます。

過失相殺による減額

被害者側にも過失があると判断されると、損害額の合計にその割合が掛けられます。慰謝料も逸失利益も、すべての項目が対象です。過失が3割なら、受け取れるのは7割になります。

既払い金の控除

相手方の保険会社が病院に治療費を直接支払っていた場合、その額は損害額に含めたうえで、最後に既払い金として差し引かれます。示された金額が想定より少ないと感じたら、この控除が効いていないか確かめてみてください。

注意が必要なのは、過失割合がある事案です。損害額全体に過失相殺をかけたうえで既払い金を引くため、過失が大きいと既払い分が受取額を上回り、返還を求められることもあります。

遅延損害金という上乗せ

賠償金には、事故日から支払いまでの期間に応じた遅延損害金が付きます。示談交渉の段階では計上されないことがほとんどですが、訴訟になれば認められるのが通常です。

解決までに長い期間がかかった事案では、この上乗せが無視できない額になることがあります。交渉が長引いているなら、頭の片隅に置いておいてください。

他の給付との調整

労災保険から給付を受けている場合、同じ性質の損害については二重に受け取れません。労災から支払われた分は賠償額から控除されます。健康保険を使った場合も、保険者が負担した分は最終的に加害者側へ請求される仕組みです。

慰謝料以外に計算すべき損害

示談金の総額は慰謝料だけではありません。次の項目も、それぞれ計算の仕方が決まっています。

項目 計算の基礎
治療費 実費。ただし必要性と相当性が問われる
通院交通費 実費。公共交通機関の運賃、自家用車のガソリン代
休業損害 事故前の収入をもとにした日額 × 休業日数
逸失利益 基礎収入 × 労働能力喪失率 × 喪失期間の係数
付添看護費 日額 × 付添日数。職業付添人か家族かで異なる
入院雑費 日額 × 入院日数

休業損害を請求できる人

給与所得者だけが対象わけではありません。自営業者、家事に従事している方、アルバイトやパートの方、就職が内定していた学生も、それぞれの立場に応じた形で請求できます。

立場 基礎になる資料
給与所得者 勤務先が作成する休業損害証明書、源泉徴収票
自営業者 前年の確定申告書
家事従事者 統計上の平均賃金を基礎とする
パート・アルバイト 給与明細、休業損害証明書
就職内定者 内定通知、予定されていた給与額

家事従事者については、収入がないことを理由に否定されることがありますが、家事労働には経済的な価値が認められています。男性であっても、主に家事を担っているのであれば同様です。

通院交通費の算定

公共交通機関を使った場合は運賃の実費、自家用車の場合は距離に応じたガソリン代として計算するのが一般的です。駐車場代も、必要な範囲で認められます。

タクシーを使った場合は、公共交通機関の利用が困難だった事情を示すことが求められます。骨折で歩行が難しかった、目的地まで公共交通機関がなかったといった理由があれば、実費が認められます。

治療費で争われる場面

治療費は実費が原則ですが、必要性と相当性が問われます。相手方の保険会社から、過剰診療ではないか、症状に対して治療が長すぎるのではないかと指摘されるケースもあります。

とくに争いになりやすいのが、整骨院の施術費、鍼灸やマッサージの費用、個室に入院した場合の差額ベッド代の三つです。いずれも、医師の指示や医学的な必要性があれば認められますが、なければ自己負担になることがあります。

入院雑費と付添看護費

入院した場合、日用品費や通信費として入院雑費が認められます。領収書がなくても、日額を定めて入院日数分を請求するのが実務の扱いです。

付添看護費は、医師が付き添いの必要性を認めた場合や、被害者が幼児や高齢者である場合に認められます。職業付添人に依頼した場合はその実費、家族が付き添った場合は日額を定めて算定します。家族が付き添っても請求できるという点は、見落とされがちです。

休業損害の日額に注意

給与所得者の場合、事故前3か月の収入を90日で割って日額を出すのが一般的です。ただし、この計算方法だと賞与が反映されず、実態より低くなることがあります。

自営業の方は確定申告書が基礎になりますが、申告額が実収入より低い場合には争いになりやすい部分です。家事に従事している方も、統計上の平均賃金を基礎として請求できます。

三つの基準がなぜ存在し、提示がどれによるものかを見抜く方法は、こちらの記事にまとめました。

具体的な数字が気になる方は、こちらで確かめられます。

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※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。

交通事故の慰謝料計算に関するよくある質問

通院を週1回にしていました。慰謝料は減りますか

自賠責基準では、対象日数が実通院日数の2倍で頭打ちになるため、目減りします。弁護士基準でも、通院の間隔が空いている場合には実通院日数をもとにした調整が入る例も見られます。症状が続いているのであれば、可能な範囲で通院の頻度を保ってください。

整骨院に通った分は慰謝料の対象になりますか

医師の指示や同意を得たうえで通っているのであれば、対象として扱われるのが通常です。ただし、医師の診察を受けずに施術だけを続けていると、必要性を否定されることがあります。整形外科での受診を軸に据えてください。

入院と通院の両方がある場合はどう計算しますか

弁護士基準では、入院期間と通院期間の組み合わせで額が決まる表を使います。入院があるほうが高い水準になります。自賠責基準のほうは入院と通院を分けず、まとめた日数で算定する仕組みです。

症状固定日はどう決まりますか

これ以上治療を続けても改善が見込めないと主治医が判断した日です。相手方の保険会社が治療費の支払いを打ち切った日ではありません。打ち切り後も健康保険を使って通院を続け、実際に症状固定を迎えた日を終期とすることができます。

過失割合があると慰謝料はどう変わりますか

慰謝料を含む損害額の合計に対して、被害者側の過失割合の分が差し引かれます。慰謝料を除外して計算されるわけではありません。過失を2割と判断されれば、手にできるのは損害額の8割にとどまります。損害額が大きいほど、この1割の差が生む金額も大きくなります。

健康保険を使って治療した場合、慰謝料は減りますか

減りません。健康保険を使っても、通院した事実は変わらないためです。むしろ、相手方の保険会社が治療費の支払いを打ち切った後は、健康保険に切り替えて通院を続けることで治療期間を確保できます。その際は第三者行為による傷病届の提出が要ります。加入先に手続きを確認しておいてください。

自分で計算した額と提示額が違う場合、どうすればよいですか

まず、どの項目で差が出ているのかを特定してください。慰謝料の基準の違いなのか、治療期間の取り方なのか、過失割合なのか。原因によって、争い方が変わります。差の理由が分からないまま「もっと払ってほしい」と伝えても、交渉は動きません。

まとめ

慰謝料の計算は、要素を分解してしまえば難しいものとは限りません。入通院慰謝料は治療期間と通院日数、後遺障害慰謝料は等級、死亡慰謝料は立場と遺族の人数。それぞれ何を基礎にしているかが分かれば、提示された金額を自分で検証できます。

ただし、計算の仕組みを知ることと、その金額を実際に受け取れることは別です。弁護士基準で算定した額を受け取るには、多くの場合、代理人を立てる必要があります。

まずは手元の資料から治療期間、通院日数、等級を拾い出し、下のツールで見込みを立ててみてください。提示との差が見えたところが、交渉の出発点になります。

三つの基準がなぜ存在し、提示がどれによるものかを見抜く方法については、あわせてご確認ください。

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※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。

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