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追突事故で慰謝料が出ないケースも?~慰謝料の相場と適切な対応を解説!~
この記事で分かること
- 追突事故の過失割合は基本的に10:0だが、被害者側にも非があれば損害賠償金の減額あり
- 慰謝料を請求できる追突事故は死亡事故と傷害事故で、物損事故では請求できない
- 慰謝料をアップしたいなら弁護士に依頼して弁護士会の基準で請求することが大切
弁護士会の基準によると、一家の支柱が亡くなった死亡事故の慰謝料相場は2,700〜3,100万円となります。物損事故では慰謝料を請求できませんが、後日けがが発覚した場合は、診断書を添えて速やかに警察に届け出ます。過失0の場合は保険会社が交渉を代行してくれない場合もあるので、弁護士に相談して対応すると適切な慰謝料を請求できます。
追突事故の実態
警察庁の統計によると、平成27年に全国で起こった追突事故の件数は19万件で、事故件数全体の3分の1を占めています。つまり車を運転する人なら誰でも追突事故に巻き込まれる可能性が高いのです。まずは追突事故の実態について紹介します。
追突事故の原因と傾向
追突事故はドライバーのちょっとした気の緩みや不注意で起こりうる、身近な事故です。交通事故の中では比較的軽微な事故という印象が強いかもしれませんが、自動車の大きさやスピードによっては被害者が死亡する重大事故になることもあります。
追突事故のよくあるパターン
追突事故でよくあるのは、赤信号の手前でスピードをゆるめたり停止した車に後続車が衝突するパターンです。青信号に変わった際、前の車が発進すると思い込んで追突する場合もあります。このほか追突事故は渋滞中にも起こりやすく、徐行だからと気をぬいていたらいつの間にか前の車が停車していて追突してしまうのです。
大型トラックの追突事故は重大事故の傾向
大型トラックは乗用車に比べて追突事故を起こしやすい傾向があります。大型トラックは運転席が高い位置にあり路面がよく見えるため車間距離に錯覚が生まれ、ドライバーが想定しているよりも前の車との距離を詰めてしまう傾向があるのです。しかも大型トラックの追突は被害者が死亡・重体するといった重い結果を生みやすい傾向があります。
追突事故の過失割合
交通事故は、加害者が一方的に悪いケースばかりとは限りません。事故発生の背景に被害者にも何らかの非があることも多いです。その場合、事故の「過失割合」に応じて損害賠償額を相殺することになります。
追突事故は基本的に10:0
交通事故の中でも追突事故は過失割合が10:0、つまり被害者に過失がないと判断されるケースが多くなっています。俗に言う「もらい事故」です。例えば赤信号で停車しているところに後続車がわき見運転で追突してきた場合は、被害者側には何の落ち度もなく、損害賠償額は減額されません。
被害者側に過失があるケース
一方、次のようなケースでは被害者側にも一定の非があると考えられます。例えば被害者が合理的な理由なく急ブレーキをかけた場合、過失割合は7:3です。このほか、被害者が駐車や駐停車が禁止の場所に車を止めて追突された場合や、飲酒運転・無免許などの違反をしていた場合も被害者側に事故の責任の一端があります。そして過失割合に応じて損害賠償額が減額されるのです。
追突事故の慰謝料の相場
加害者に請求できる損害賠償請求のうち、「慰謝料」は精神的・肉体的苦痛に対する賠償です。しかし追突事故ならどんなケースでも慰謝料が受け取れるわけではありません。事故の種類別の慰謝料請求の可否と慰謝料額の相場について説明します。
慰謝料が請求できるケース
慰謝料が請求できるのは、追突事故によって被害者がけがを負う、あるいは亡くなったケースです。慰謝料を算出する基準は、強制(自賠責)保険、任意保険、弁護士会の3つがあり、後者になるほど慰謝料の相場が高くなります。
被害者がけがをした
傷害事故の慰謝料は、強制保険の場合は1日あたり4,200円に日数をかけた金額となります。日数は「治療期間」か「実際に通院した日数の2倍」のいずれか短い方を採用します。例えば治療期間2か月、実通院日数20日の場合、慰謝料は168,000円となります。一方、弁護士会の基準では入院・通院の日数に応じて慰謝料の相場が決まっており、通院のみで2か月治療した場合、57〜31万円となっています。
被害者に後遺障害が残った
被害者がけがを負い、しばらく治療をしても後遺症が残った場合、後遺障害の等級が認定されれば、後遺障害に対する慰謝料が上乗せされます。最も症状が重い後遺障害1級の場合、強制保険の基準では1,100万円、弁護士会の基準では2,700〜3,100万円です。
被害者が死亡した
加害者の車が大型トラックだった場合など、衝撃の大きい事故では被害者が死亡することもあります。強制保険の基準では、亡くなった被害者本人に対する慰謝料は350万円、遺族に対する慰謝料は請求者の数に応じて増額され、請求者が3名以上なら750万円となります。一方、弁護士会の基準では、被害者本人が一家の支柱だった場合の慰謝料は2,700〜3,100万円としています。
慰謝料が請求できないケース
一方、同じ追突事故でも、被害の様態によっては加害者に慰謝料が請求できないケースもあります。また、事故直後はけががないと思っていても、数日経ってから痛みが出てきた場合など、事故の被害が変わった場合は、慰謝料請求にどのような影響があるのでしょうか。
物損事故の場合
追突で車は破損したもののドライバーはけがを負わない物損事故だった場合、慰謝料は発生しません。たしかに「家族の思い出が詰まった車が壊された」といったケースでは、被害者は精神的に大きな苦痛を受けますが、慰謝料請求の対象にはならないのです。
後から痛みが出てきた場合は?
交通事故では、当日は何ともなかったのに翌朝になると急に身体中が痛み出すという現象がよく起こります。この際問題となるのは、本当は人身事故なのに警察が物損事故として処理しているため、このままでは慰謝料が請求できないという点です。速やかに医師に診断書を書いてもらい警察に提出し、物損から人身への切り替え手続きを行う必要があります。
追突事故の慰謝料アップの方法と注意点
交通事故の加害者が刑事処分を受ける可能性がある場合、情状酌量のために示談交渉を急かされる場合があります。しかし、被害者側は慰謝料など損害賠償の内容に納得がいかなければ、早期の示談成立に応じる必要はありません。
慰謝料アップの方法
追突事故の慰謝料をアップする方法は、ひとつは示談交渉を弁護士に依頼して弁護士会基準で請求することです。もう一つは、後遺障害が残る可能性がある場合は、等級認定に有利になるよう治療開始時から計画的に行動しておくことです。
示談交渉を弁護士に依頼して慰謝料アップ
示談交渉で保険会社の担当者が提示してくる慰謝料額は、弁護士会の基準より低く抑えられているケースがほとんどです。弁護士会の基準は、過去の裁判で実際に請求が認められた金額を考慮して設定された、妥当な金額です。このため示談交渉を弁護士に依頼すれば慰謝料アップが期待できます。さらに被害者は示談交渉に時間や労力をとられる煩わしさから解放されます。
後遺障害で等級認定がとれれば慰謝料アップ
後遺障害の等級認定を検討しているなら、通院初期から対策をしておくことで、等級を得て慰謝料額が上がる可能性が出てきます。例えば、事故とけがの因果関係をはっきりさせるために事故直後に病院を受診しておく、定期的に病院に通う、病院で後遺症を医学的に証明できる検査や画像診断を行ってもらうなど、適切な等級認定に役立つ材料を意識して集めておくことが大切です。どのような対策をとればいいかわからなければ、弁護士に相談してみてください。
追突事故の示談に関する注意点
追突事故が「もらい事故」で被害者に過失がない場合、一見示談交渉に有利に思えますが、思わぬ落とし穴が潜んでいます。適切な慰謝料をもらうにはどう対応すればいいのでしょうか。また、もし示談成立後に後遺障害が発覚した場合、慰謝料はどうなるのでしょうか。
過失割合10:0の場合、保険会社が代理人になってくれない
過失割合が10:0で被害者側に過失がない場合、被害者の保険会社は示談交渉の代理人になってくれません。この場合、被害者本人が加害者側の保険会社からやってくる示談交渉のプロに対抗するのは大変で、慰謝料の金額も足元を見られてしまうかもしれません。そこで覚えておきたいのが「弁護士特約」です。これは保険会社が限度額の範囲内で被害者の弁護士費用を負担してくれるという便利な特約なので、加入している場合はぜひ活用を検討してみてください。
もし示談成立後に後遺障害が発覚したら
後遺障害があれば慰謝料が加算されますが、もし示談交渉が成立した後に後遺障害が現れた場合はどうなるのでしょうか。成立した示談の内容は原則として変更することができませんが、示談後の後遺障害は例外的に損害賠償請求が可能になっています。しかし、事故から数か月以上経過していると、事故と後遺症の因果関係をめぐって双方がもめやすいため、訴訟に発展する可能性もあります。
追突事故での慰謝料についての詳細は弁護士に相談を
たとえ自分に一切過失がなくても、ひとたび追突事故に巻き込まれれば、示談交渉が待ち受けています。うまく交渉するためには、交通事故についての知識や経験が必要になってきます。加害者側の保険会社の言いなりにならず、適切な慰謝料を受け取りたい方は、交通事故に強い弁護士に相談してみてください。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない