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後遺障害9級は、14ある等級のなかで最も類型の多い等級です。定められている項目は17。視力、視野、まぶた、鼻、咀嚼と言語、聴力、脳や内臓、手足の指、顔の傷あと、生殖機能まで、身体のあらゆる部位が並びます。
これだけ幅広い障害が同じ等級に置かれているのは、労働能力への影響という一点で横並びに評価されているからです。逆にいえば、ご自身がどの類型に当たるかによって、そろえるべき資料も交渉の争点も丸ごと変わります。弁護士の立場から、順にほどいていきます。
もうひとつ、9級には知っておくと役に立つ特徴があります。関節が動かしにくいという症状で9級になることは、原則としてないという点です。この理由は記事の途中で詳しく説明しますが、ご自身の症状が関節の可動域に関わるものであれば、まずそこを押さえておいてください。
後遺障害9級とはどのような等級か
後遺障害の等級表は、自動車損害賠償保障法施行令に二種類あります。要介護の後遺障害を扱う別表第一と、それ以外を収めた別表第二です。9級が置かれているのは後者だけで、要介護の9級というものはありません。
労働能力の喪失率は35パーセントとして扱われます。自賠責保険の限度額は616万円。この金額は政令で固定されており、自賠責から支払われる上限を示したものです。加害者側の任意保険を通じて受け取る賠償の総額は、これを上回るのが通常です。
9級の位置づけは、働けるが、就ける仕事の幅がかなり狭まった状態といえます。まったく就労できない3級とも、軽易な仕事に限られる7級とも違い、9級では相応の職種を選べば勤務を続けられると考えられています。ただし、事故前と同じ働き方に戻ることは想定されていません。
他の等級とどう違うのかを一覧で見たい方は、次の記事をご覧ください。
後遺障害9級に該当する17の類型
全体像を先に見渡してみてください。
目に関するもの
- 両眼の視力が0.6以下になったもの
- 一眼の視力が0.06以下になったもの
- 両眼に半盲症、視野狭窄または視野変状を残すもの
- 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
耳・鼻・口に関するもの
- 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
- 咀嚼および言語の機能に障害を残すもの
- 両耳の聴力が、1メートル以上の距離では普通の話し声を聞き取れない程度になったもの
- 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を聞き取れない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を聞き取ることが困難な程度になったもの
- 一耳の聴力を完全に失ったもの
脳・内臓に関するもの
- 神経系統の機能または精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
- 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
手足の指に関するもの
- 一手の親指、または親指以外の二本の指を失ったもの
- 一手の親指を含む二本の指、または親指以外の三本の指の用を廃したもの
- 一足の第一指を含む二本以上の足指を失ったもの
- 一足の足指の全部の用を廃したもの
その他
- 外貌に相当程度の醜状を残すもの
- 生殖器に著しい障害を残すもの
9級には三大関節の類型が存在しない
ここは意外と知られていない特徴です。8級と10級には、肩・ひじ・手首・股・ひざ・足首といった三大関節の機能障害が定められています。ところが9級には、それがありません。
関節の可動域による判定は、次の三段階だけで構成されています。
| 状態 | 可動域(健側との比較) | 等級 |
|---|---|---|
| 関節の用を廃したもの | 10パーセント程度以下 | 8級 |
| 関節の機能に著しい障害を残すもの | 2分の1以下 | 10級 |
| 関節の機能に障害を残すもの | 4分の3以下 | 12級 |
つまり、腕や脚の関節が動かしにくいという症状だけで9級になることは、原則としてありません。9級に該当するのは指の障害であって、三大関節の障害ではないのです。
これを知らないまま「肩が半分しか上がらないのだから9級だろう」と考えて申請すると、10級という結果に戸惑うことになります。制度としてそもそも9級の枠が用意されていない、というだけの話なのですが、通知にはその説明が書かれていません。
「相当な程度に制限される」とは何を指すか
17類型のうち、判断が最も分かれるのが脳・内臓の障害です。基準となる文言は「服することができる労務が相当な程度に制限される」というもの。上下の等級と並べると輪郭が見えてきます。
| 等級 | 労働能力に関する要件 | 自賠責の限度額 |
|---|---|---|
| 3級 | 終身労務に服することができない | 2,219万円 |
| 5級 | 特に軽易な労務以外の労務に服することができない | 1,574万円 |
| 7級 | 軽易な労務以外の労務に服することができない | 1,051万円 |
| 9級 | 服することができる労務が相当な程度に制限される | 616万円 |
7級までは「これ以外の仕事はできない」という否定形で書かれています。9級だけが「制限される」という表現です。この違いは大きく、9級では就ける仕事の範囲が狭まってはいるものの、選択肢が残っていることを意味します。
7級との分かれ目
実務で争いになるのは、この境界です。判断材料になるのは、復職後の実態にほかなりません。
配置転換や業務の軽減を受けたうえで勤務を続けられているなら9級。それでも継続できず、担当できる業務が軽作業だけに絞られてしまったなら7級を検討する。おおまかにはそういう見立てになります。
ただし、肩書きや所属で判断するわけではありません。同じ部署に籍を置いたまま、実際には周囲が仕事を肩代わりしている。そうした状態であれば、外形とは異なる評価を求める余地があります。
11級・12級との境界
下方向にも境目があります。脳や内臓の障害について、9級の下に位置するのは12級です。文言は「胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの」が11級、神経系統については「局部に頑固な神経症状を残すもの」が12級となります。
9級と12級を分けるのは、就ける職種そのものが狭まっているか、それとも特定の作業に支障が出ているだけかという点です。痛みやしびれのために重い物を持てない、長時間の運転がつらいといった支障であれば12級の領域。記憶や判断の障害によって選べる仕事が限られてしまうなら9級の領域、というのがおおまかな見方になります。
復職の経過が判断を左右する
労働能力の程度は、検査値からは直接には読み取れません。だからこそ、実際に働いてみた経過が重要な材料になります。
どの部署に戻り、どんな業務を任され、何ができて何ができなかったのか。周囲がどれだけ補助し、勤務時間や役割にどんな変更が加えられたのか。こうした事実を時系列で整理しておくと、審査での説得力が違ってきます。
復職を試して続かなかった場合も、その経過自体が資料になります。試したうえで難しかったという事実は、机上の評価より重く受け止められるものです。
視覚と聴覚に関する類型
9級は感覚器の障害が多く含まれる等級でもあります。それぞれ判定の物差しが異なります。
視野の障害
9級で初めて登場するのが視野の障害です。三つの概念が並んでいます。
- 半盲症。視野の左右どちらか半分、または上下どちらかが見えなくなる状態です
- 視野狭窄。視野の周辺部分が失われ、見える範囲が中心に向かって狭まった状態です
- 視野変状。視野のなかに、部分的に見えない領域が生じた状態です
判定には視野計による検査が必要になります。両眼に生じている場合が9級、一眼だけであれば13級として評価されます。頭部外傷のあとに物にぶつかりやすくなった、車の運転で見落としが増えたという自覚があれば、視野の検査を受けておくことをおすすめします。
視野の障害は、本人が気づきにくいという厄介な性質を持っています。脳が欠けた部分を補って認識してしまうため、見えていないという自覚が生まれにくいのです。眼球そのものに損傷がなくても、脳の視覚経路が傷つけば視野は欠けます。頭部を強く打った事案では、視力だけでなく視野も調べておくのが安全です。
まぶたと鼻の障害
両眼のまぶたに著しい欠損が残った場合も9級です。著しい欠損とは、まぶたを閉じたときに角膜を完全に覆えない状態を指します。目を保護する機能が失われるため、乾燥や感染のリスクが続くことになります。
鼻については、欠損があり、かつ機能に著しい障害が残った場合が9級です。ここでいう機能の障害とは、鼻での呼吸が困難になった、あるいは臭いを感じられなくなった状態を意味します。欠損を伴わず嗅覚だけを失った場合は、別の等級として評価されます。
聴力の障害
聴力については、純音聴力検査と語音聴力検査の数値で判定されます。条文にある「1メートル以上の距離では普通の話し声を聞き取れない」という表現は、この検査値を日常の感覚に置き換えたものです。
この二つは測るものが違います。純音聴力検査は周波数ごとに聞こえる最小の音量を、語音聴力検査は言葉としてどれだけ聞き分けられるかを調べます。音は拾えているのに言葉として判別できない、という結果が出ることもあるため、両方の実施が必要です。
注目したいのが、一耳の聴力を完全に失った場合も9級という点です。片方が正常に聞こえていても、まったく聞こえない耳が一つあれば9級に該当します。音の方向が分からない、騒がしい場所で会話が拾えないといった支障が生じるためです。
聴力の測定値は日によって変動するため、期間を空けて複数回受けておく必要があります。一度の記録だけでは、たまたまその日の数値と判断されかねません。
外貌の醜状と生殖器の障害
外貌に相当程度の醜状を残すもの
外貌とは、頭部、顔面、首といった日常的に露出する部分を指します。傷あとの程度に応じて、三つの等級に振り分けられます。
- 著しい醜状を残すもの……7級
- 相当程度の醜状を残すもの……9級
- 単に醜状を残すもの……12級
9級の相当程度に該当するのは、頬などに長さのある線状の傷あとが残った場合が典型です。判定にあたっては面接調査が行われ、実際に傷あとを確認したうえで程度が決められます。
醜状の等級は、傷あとの種類と大きさで細かく分かれます。線状痕なのか、面積のある瘢痕なのか、組織の陥没があるのか。同じ「顔の傷」でも、形状によって評価が変わるということです。診断書には、位置と長さ、幅、深さまで記載してもらってください。
面接には、傷あとを隠さない状態で臨んでください。化粧や髪型で覆ったまま出向くと、実態より軽く見られる恐れがあります。あわせて、受傷直後から治癒の過程まで写真を撮っておくと、主張の裏づけになります。
なお、傷あとが目立たなくなるまでには時間がかかります。症状固定を急ぐと、赤みが引く前の状態で判定を受けることになり、逆に時間を置きすぎると事故との関係が薄れて見えます。時期の見極めについては、形成外科の医師に相談しておくと判断しやすくなります。
外貌の醜状と逸失利益の関係については、こちらで詳しく扱っています。
生殖器に著しい障害を残すもの
相談の場でも切り出しにくい類型ですが、賠償の対象として明確に定められています。生殖機能が失われた、または著しく損なわれた場合が該当します。
具体的には、生殖器そのものを失った場合のほか、機能が働かなくなった場合も含まれます。骨盤の骨折に伴って神経が損傷し、機能に障害が残るというケースもあり、外見上の変化がなくても対象になり得ます。
この類型は、労働能力への影響という観点だけでは評価しきれません。将来の家族計画に関わる問題であり、慰謝料の増額事由として主張していくことになります。医学的な検査結果とあわせて、その方の年齢や生活状況を踏まえた説明が必要です。
症状の性質上、ご本人から医師に伝えづらいこともあると思います。ただ、診断書に記載がなければ審査の対象にはなりません。話しにくい内容であれば、書面で伝えるという方法もあります。
後遺障害9級の認定で必要になる医証
審査は書類だけで行われます。何を用意すべきかは、残った障害の部位によって大きく変わります。
- 脳・脊髄の障害。頭部のMRIやCTによる画像所見、受傷時の意識障害の記録、神経心理学的検査の結果、そして就労状況を示す資料
- 胸腹部臓器の障害。領域ごとの検査値と、それが勤務にどう影響しているかを示す資料
- 視覚の障害。矯正視力の測定値、視野計による検査結果
- 聴覚の障害。純音聴力検査と語音聴力検査の結果を、期間を空けて複数回
- 手指・足指の障害。切断部位を示す画像、残存部分の可動域の測定値
- 外貌の醜状。傷あとの位置と長さを記録した写真
指の障害の判定
手指を「失った」といえるのは、親指については指節間関節、それ以外の指については近位指節間関節、つまり手前から二つ目の関節より根元で失った場合です。
「用を廃した」と評価されるのは、末節骨の長さの半分以上を失った場合か、関節の可動域が健側の2分の1以下に制限された場合になります。関節の測定は他動値、つまり検査者が動かしたときの角度が基準です。
9級の類型を細かく見ると、失った場合と用を廃した場合とで本数の要件が違うことに気づきます。親指を含む二本を失えば8級ですが、用を廃しただけなら9級。親指単独であれば、失って9級、用を廃して10級。切断か機能喪失か、そして何本かという二つの軸で細かく刻まれているのです。
足指についても同様です。第一指を含む二本以上を失えば9級、足指の全部の用を廃した場合も9級となります。歩行時のバランスに影響が出るため、靴の履き方や歩容の変化も記録しておくと役立ちます。
神経心理学的検査で調べること
脳の障害を主張する場合、画像だけでは足りません。実際にどの機能がどれだけ損なわれているかを、数値で示す必要があります。
調べる対象は、知能、記憶、注意、遂行機能、言語といった領域です。事故前の学歴や職歴から推定される水準と比べて、どれだけ低下しているかを見ます。検査には時間がかかるうえ、実施できる医療機関が限られることもあるため、早めに主治医へ相談しておくとよいでしょう。
あわせて、日常生活状況報告書も欠かせません。検査室での数値と、実際の生活での支障は必ずしも一致しないからです。ご家族や同僚から見た変化を、具体的な場面とともに書き残してください。
診断書の記載まで踏み込める弁護士かどうかは、次の記事にまとめてあります。
後遺障害9級で請求できる賠償
請求の対象になるのは、次のような項目です。
- 後遺障害慰謝料。障害を抱えて生きていくことへの精神的な補償です
- 逸失利益。労働能力喪失率35パーセントを基礎に、将来の収入減を補償します
- 装具・器具の費用。補聴器、義指、眼鏡などが対象になります
- 将来の手術費用。傷あとの修復手術が見込まれる場合に請求できます
逸失利益をめぐる典型的な対立
9級で頻繁に起きるのが、次のやり取りです。復職して以前と同じ給与を得ている。だから損害は生じていない。保険会社からそう説明され、逸失利益をゼロと提示されるケースです。
しかし、収入が保たれている理由を掘り下げると事情が見えてきます。同僚が仕事を引き受けてくれている。本人が痛みを押して働いている。会社が待遇を据え置いてくれている。こうした要因で成り立っているのであれば、損害がないことにはなりません。
主張の材料になるのは次のような事実です。
- 担当から外れた業務の内容と、それを誰が引き継いだか
- 残業や出張ができなくなったこと
- 昇進や昇給の見込みが変わったこと
- 転職した場合に同等の条件を得られる見通しが立たないこと
いま減っていないことと、将来にわたって減らないことは別の問題です。この区別を丁寧に説明していく必要があります。
事故のあとに心的外傷後ストレス障害が残った場合の扱いは、こちらの記事で解説しています。
喪失期間が短く区切られることがある
もうひとつ争われやすいのが、何年分を補償するかという点です。9級のなかでも、神経症状を中心とする類型では、期間を短く見積もる提案を受けることがあります。症状は時間とともに慣れていくものだ、という理屈です。
ただし9級には、器質的な損傷を前提とする類型が多く含まれます。指を失った、聴力を失った、視野が欠けた。こうした障害が時間とともに軽くなることはありません。類型の性質に応じて、期間を短縮すべきでない理由を示すことが必要になります。
家事に従事している方の場合
収入がないことを理由に逸失利益を否定されることがありますが、家事労働には経済的な価値が認められています。統計上の平均賃金を基礎として算定するのが実務の考え方です。
9級の類型でいえば、視野が欠けて調理中に危険が増した、聴力を失って来客や電話に気づけない、指を失って包丁や洗濯ばさみが扱いにくいといった支障が生じます。どの家事にどれだけ時間がかかるようになったのかを記録しておくと、主張の裏づけになります。
ご自身のケースでどのくらいになるか、下の計算ツールで見当をつけてみてください。
脊柱の運動障害や関節の用廃であれば8級となります。判定の基準は次の記事で扱っています。
9級の申請から認定結果への対応まで
手続きはおおむね次の順に進みます。
- 回復の見通しを主治医と共有し、症状固定の時期を決める
- 類型ごとに必要な検査が済んでいるかを点検し、不足があれば追加を依頼する
- 後遺障害診断書を作成してもらい、記載内容を確認する
- 画像、検査結果、就労状況の資料を添えて申請する
- 認定結果と理由を確認し、次の対応を決める
11級や12級にとどまった場合
まず認定理由を精読してください。なぜその等級にとどまったのかが、簡潔な文章のなかに書き込まれています。読み違えると、的外れな資料を集めることになりかねません。
類型ごとに、補うべきものは違います。脳の障害であれば就労実態を示す資料、聴力であれば検査の再実施、視野であれば検査方法の見直し、醜状であれば傷あとの記録。何が足りなかったのかを見極めてから動いてください。
関節の機能に著しい障害が残った場合は10級です。可動域による段階はこちらをご覧ください。
後遺障害9級で弁護士に相談する意義
9級の難しさは、類型の多さに由来します。17もの項目があるということは、それだけ立証の道筋が分かれるということです。視野の検査を受けていない、聴力を一度しか測っていない、就労実態の資料を集めていない。どれか一つ欠けるだけで、結論が変わりかねません。
加えて、9級は働けている等級です。それゆえに賠償を軽く見積もられやすく、逸失利益を否定する反論を受けやすい位置にあります。これを覆すには、収入が維持されている理由を具体的に説明する作業が要ります。
相談するタイミング
症状固定を迎える前が理想です。必要な検査が行われているか、診断書に書くべきことが漏れていないか、就労状況の資料がそろっているか。どれも認定の後では取り返しがつきません。
治療の打ち切りを告げられた段階でご相談いただければ、まだ対応の余地があります。
費用の面では、加入している自動車保険に弁護士費用特約が付いていないか調べてみてください。ご本人の契約に加え、同居のご家族や別居している未婚の子の契約も対象になる場合があります。
- 半盲症
- 視野の左右または上下のいずれか半分が見えなくなった状態。脳の視覚経路が損傷した場合に生じます。
- 視野狭窄
- 視野の周辺部分が失われ、見える範囲が中心に向かって狭まった状態を指します。
- 併合
- 複数の後遺障害が残った場合に、それぞれの等級を組み合わせて全体の等級を決める取り扱いです。
後遺障害9級に関するよくある質問
片耳がまったく聞こえなくなりましたが、反対側は正常です
一耳の聴力を完全に失った場合、それだけで9級に該当します。もう一方が正常でも変わりません。音の方向が判別できない、雑音のある場所で会話が聞き取れないといった支障が生じるためです。純音聴力検査と語音聴力検査の結果をそろえて申請してください。
肩の可動域が半分以下ですが、9級になりますか
単独では9級になりません。三大関節の機能に著しい障害を残すものは10級として評価されます。ただし他にも障害が残っている場合、併合によって9級と判定される可能性があります。残っている症状はすべて申告してください。
顔に傷が残りましたが、どの等級になるか分かりません
傷あとの長さや位置によって、7級、9級、12級のいずれかに分かれます。判定は面接調査を経て行われるため、事前に自分で確定させることは困難です。写真を撮って記録を残し、診断書にも傷あとの状態を記載してもらったうえで申請することをおすすめします。
複数の部位に障害が残りました
併合という取り扱いによって、全体の等級が決まります。単独では10級と12級であっても、組み合わせることで9級と評価されることがあります。軽く感じる症状も申告から漏らさないでください。
症状固定はどのくらいの時期を目安にすればよいですか
類型によって変わります。指の切断のように状態が確定している障害であれば比較的早く判断できますが、脳の障害や傷あとについては時間の経過を見る必要があります。共通していえるのは、保険会社から時期を示されても、決めるのは主治医だということです。治療費の打ち切りを告げられても、そのまま症状固定を受け入れる必要はありません。
労災保険からも給付を受けています。調整はどうなりますか
通勤中や業務中の事故であれば、労災の障害給付と加害者への損害賠償を並行して進められます。ただし同じ性質の損害を二重に受け取ることはできず、労災から支払われた分は賠償額から差し引かれる仕組みです。ただ、労災でしか受け取れない給付も存在するので、併用する価値は十分にあります。請求の順序で最終的な手取りが変わることもあるので、早めに整理しておくとよいでしょう。
まとめ
後遺障害9級は、17という最多の類型を抱える等級です。視力、視野、まぶた、鼻、咀嚼と言語、聴力、脳と内臓、手足の指、外貌の醜状、生殖機能。それぞれ判定の物差しがまったく違います。
そして9級には、三大関節の可動域による類型が含まれていません。腕や脚が動かしにくいという症状だけで9級になることは、原則としてないのです。認定通知に9級とあれば、それが単独の類型によるものか、複数を併合した結果なのかを確かめてください。
まずはご自身がどの類型に当たるのかを見極めること。そこが定まれば、集めるべき資料も、交渉で守るべき論点も見えてきます。判断に迷う段階でも、状況の整理からご一緒できます。
9級についてもうひとつお伝えしておきたいのは、この等級が軽く扱われやすい位置にあるということです。働けている、日常生活も送れている。そう見えるぶん、賠償の交渉では譲歩を求められやすくなります。
けれども、片耳が聞こえないまま何十年も過ごすこと、視野の一部が欠けたまま運転を続けること、指を失った手で仕事をこなし続けること。その負担は生涯にわたって積み重なっていきます。示談で決める金額は、その全部を含んだものです。
提示を受けたら、その計算がどんな前提に立っているのかを確かめてください。喪失率をいくつで見積もっているか。補償の期間をどこで区切っているか。補聴器や義指の買い替え、将来の手術の費用は入っているか。ひとつずつ潰していく作業が、後々の後悔を防ぎます。
あなたの慰謝料はいくら?3基準で比較診断
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
