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「交通事故に強い」とは、具体的に何を指すのか
事務所のページを見比べていると、どこにも似た言葉が並んでいます。交通事故に注力、豊富な実績、増額に自信あり。読み比べても差が分かりません。それもそのはずで、こうした表現は誰でも書けるからです。
では、本当に強い弁護士とそうでない弁護士の差は、どこに現れるのでしょうか。答えは、交渉の押しの強さではありません。差が出るのは、後遺障害の等級を取りにいく力、医学的な資料を読む力、計算の細部を詰める力。つまり、地味で技術的な部分です。
想像してみてください。同じ事故、同じ症状の二人がいたとします。片方は等級が認定され、もう片方は非該当だった。この差は、症状の重さではなく、審査に回った資料の中身から生まれていることがあります。誰に頼んだかで結果が変わる、というのはこういう場面です。
この記事では、専門性が外から見えにくい理由を説明したうえで、強さの正体を六つに分けて示します。そのうえで、相談の場でどう確かめればよいかまでお伝えします。
先にお伝えしておくと、ここで挙げる六つがすべての事案で問題になるわけではありません。後遺症が残らない見込みであれば、確かめるべき点は変わります。自分の事案でどこが焦点になるのかを踏まえて読んでください。
また、ここで扱うのは「何ができる相手か」を見分ける話です。どうやって候補を集め、比べ、契約まで進めるかという手順は別の問題になりますので、そちらは分けて考えてください。この記事は、判断の中身についてのものです。
なぜ外から見分けにくいのか
そもそも、なぜ専門性が分かりにくいのでしょうか。理由は二つあります。
専門表示に制限がある
弁護士の広告には、業界内で定められた指針があります。専門分野をうたう表示については、客観的な裏づけが難しいことなどから、慎重な取扱いが求められてきました。そのため、多くの事務所は「専門」ではなく「注力」「力を入れている」といった言い回しを選びます。
結果として、実際に取扱いが多い事務所も、そうでない事務所も、似たような表現を使うことになります。表示の上では差が出にくい構造になっているのです。
この制限には理由があります。専門性を客観的に測る仕組みがない以上、表示を自由に認めれば、実態を伴わない宣伝が広がりかねません。依頼する側を守るための制限が、結果として見分けにくさを生んでいる。そういう構図です。
そのため、表示の言葉づかいから読み取れることは限られます。「専門」と書いていないから経験が浅い、ということにはなりませんし、「注力」と書いてあるから多く扱っているとも言えません。表示は入口にすぎないと考えてください。
結果を数字で比べにくい
医師であれば手術件数のような指標がありますが、弁護士の場合、扱った件数や結果を外部から検証する仕組みがありません。掲載されている解決事例も、事務所が選んで載せているものです。
うまくいかなかった事案が載ることは、まずありません。掲載されている事例は、その事務所が扱った案件の中でも良い部類だと考えるのが自然です。だからといって参考にならないわけではなく、読み方を変えればよいのです。
受賞歴や書籍の出版といった要素も、同じように扱ってください。ないよりはある方がよいのでしょうが、実際に自分の事案を担当する弁護士の経験とは別の話です。判断の中心はあくまで、相談での説明の中身に置くべきです。
だからこそ、表示された言葉ではなく、説明の中身で判断する必要があります。以下に挙げる六つは、その判断の手がかりになります。
いずれも、相談の場で質問すれば答えが返ってくる事柄です。専門的な内容だから聞いても分からない、と構える必要はありません。答え方が具体的かどうかを見るだけで、十分に手がかりになります。
強さの正体1:後遺障害の等級を取りにいける
交通事故の賠償で、金額を最も大きく動かすのが後遺障害の等級です。等級が認定されるかどうか、認定されるとしてどの等級かで、賠償の規模が変わります。
そして、この等級は書面審査で決まります。審査する側は本人に会いません。カルテ、画像、検査の結果、後遺障害診断書。判断の材料になるのは、この書面に記された内容だけです。
ここが、他の争点と決定的に違うところです。示談交渉であれば、後から主張を足すことができます。しかし等級の審査は、提出された時点の資料で判断が下されます。準備の段階で決着がついているようなものなのです。
この性質は、依頼の時期にも関わってきます。すでに診断書ができあがり、申請も済んでいる段階で相談を受けても、できることは限られます。等級を焦点にするなら、症状固定の前に相談しておくのが理想です。
準備が結論を分ける
症状が同じでも、資料の作り方によって結論が変わることがあります。必要な検査を受けているか、症状の経過がカルテに残っているか、診断書に日常生活への支障が具体的に書かれているか。こうした条件がそろって、初めて症状の重さが伝わります。
逆に言えば、症状が重くても資料が薄ければ、審査には伝わりません。本人がどれだけつらい思いをしていても、書面に現れなければ評価の対象になりません。理不尽に感じられる可能性がありますが、書面審査とはそういう仕組みです。
だからこそ、症状を書面に載せる作業に価値が生まれます。ここを丁寧にやるかどうかで結果が変わる以上、任せる相手を選ぶ意味も大きくなるわけです。
強い弁護士は、症状固定の前からこの準備に関わります。診断書ができあがってから相談を受けても、記載を後から変えるのは簡単とは限りません。だからこそ、逆算して動けるかどうかが力量の差になります。
逆算とは、目指す等級の判断基準から出発して、いま何が足りないかを割り出す作業です。基準を知らなければ逆算はできません。この点が、交通事故を日常的に扱っているかどうかで大きく分かれるところです。
基準は公開されているものですから、調べれば読めます。ただ、条文や通達の文言を読むことと、目の前の症状がその基準に当てはまるかを判断することは別の作業です。判断の経験があるかどうかが問われます。
申請方法の判断ができる
等級の申請には、相手方の保険会社に手続きを委ねる方法と、こちらで資料をそろえて請求する方法があります。どちらが適しているかは、症状の性質によって変わります。この判断を根拠とともに説明できるかどうかも、目安になります。
手間のかからない方法を一律に勧める事務所には、少し注意が必要です。手間を惜しむことが依頼者の不利益につながる場面があるからです。事案ごとに使い分けているかどうかを、聞いてみてください。
強さの正体2:医学的な資料を読める
交通事故の弁護士は、医師ではありません。それでも、資料を読む力は求められます。
画像と症状の関係を追える
画像に写る所見と、本人が訴える症状が結びつくかどうか。ここが等級判断の中心になるケースもあります。所見があるのに検査が足りていない、逆に検査はしたが結果の意味が資料に反映されていない。こうした穴を見つけられるかどうかが、力量の差です。
もちろん、弁護士が診断を下すわけではありません。求められているのは、資料の中で何が主張の裏づけになり、何が足りないのかを判断する力です。読めるからこそ、医師に何を尋ねればよいかも分かります。
この力は、相談の場でも表れます。持参した診断書や検査結果を見て、その場で不足を指摘できるかどうか。書類を預かって後日回答します、という対応が悪いわけではありませんが、目の前で読み解ける相手であれば、それだけ場数を踏んでいると考えられます。
ですから、相談には手元の資料を持参してください。診断書、検査の結果、通院の記録。実物があれば、質問への答えも具体的になります。何も持たずに口頭で症状を伝えるだけでは、一般論しか返ってきません。
脳への損傷が疑われる事案では、この読み込みがとりわけ重要になります。画像上の変化と、記憶や判断力の低下といった症状のつながりを示す必要があるからです。
こうした事案では、受傷直後の記録が後になって効いてきます。意識の状態がどうだったか、搬送時にどんな所見があったか。当時は誰も等級のことなど考えていない段階の記録が、判断の土台になります。だからこそ、早い段階で資料を確保しておく意味があるのです。
検査項目の不足に気づける
症状の種類ごとに、認定の判断で参照される検査があります。それが実施されていなければ、どれだけ症状が重くても書面には現れません。何が足りないかに気づき、症状固定の前に補えるかどうか。ここに経験の差が出ます。
検査には時期の問題もあります。症状固定の後に受けても、その時点の状態しか示せません。経過を追った記録が求められる症状であれば、治療中から計画的に受けておく必要があります。
計画的にというのは、いつどの検査を受けるかを見通しておくという意味です。通院のたびに何となく受けるのではなく、認定の判断に必要なものから順に押さえていく。この段取りを立てられるかどうかも、力量のうちです。
目に見えない症状ほど、この点が効いてきます。心的な負荷による症状が問題になる事案では、経過の記録と診断の裏づけをどう積み上げるかが焦点になります。
この領域では、本人が症状を言葉にしにくいという難しさもあります。眠れない、人混みが怖い、運転ができなくなった。こうした変化を、いつからどの程度と記録に残していく作業が必要です。伝え方の助言まで含めて関われる事務所かどうかが問われます。
強さの正体3:非該当を覆す手立てを持っている
申請しても、期待した等級がつかないことがあります。非該当という結論が出ることもあります。ここで終わりにするかどうかが、大きな分かれ目です。
結論に納得できない場合、異議を申し立てる道があります。ただし、提出済みの資料をそのまま繰り返しても、結論は動きません。何が足りなかったのかを読み解き、新しい検査結果や医師の意見を加えて、判断の前提を変えることが求められます。
異議の申立てに回数の制限はありませんが、繰り返せばよいというものでもありません。一度目でどこまで詰められるかが結果を左右します。だからこそ、最初の申請の段階で資料をそろえておくことが、結局は近道になります。
期間の制約もあります。時間が経つほど、追加の検査を受けても事故との関係を示しにくくなりますし、時効の問題も出てきます。異議を申し立てるかどうかは、結果が出てから速やかに判断すべきことがらです。
結果の読み方が出発点になる
認定の通知には、判断の理由が示されています。この記載を読み込めば、どの点が足りないと判断されたのかが見えてきます。ここを読み解けるかどうかで、次の一手が変わります。
理由の記載は、必ずしも詳しいものわけではありません。短い一文から、審査する側が何を見ていたのかを推し量る作業になります。この読み取りは、同種の事案を何件も見ていなければ難しいところです。
判断の理由に納得できない場合には、別の手続きを使う道もあります。どの手段を選ぶかによって、必要な準備も変わります。選択肢を並べて説明できる相手かどうかを、確かめておいてください。
読み違えたまま同じ主張を繰り返しても、結果は動きません。逆に、不足していた部分を正確に補えれば、結論が変わることがあります。この作業を経験している事務所かどうかは、確認しておく価値があります。
重い等級ほど審査は厳しくなる
上位の等級になるほど、求められる裏づけは厳格になります。介護の必要性や、労働能力の喪失の程度について、資料で示さなければなりません。こうした事案を扱った経験があるかどうかは、率直に尋ねてよい事柄です。
尋ねること自体に遠慮はいりません。経験が少なくても正直に答え、そのうえでどう取り組むかを示せる相手であれば、判断材料になります。困るのは、答えをはぐらかされて実態が見えない場合です。
重い等級が問題になる事案では、介護の実情をどう示すかも論点になります。誰がどれだけの時間を割いているのか、将来にわたってどう続くのか。生活の実態を資料に落とす作業が求められます。
ご家族にとっては、日々の負担を数字や言葉に置き換えること自体がつらい作業になります。何をどう記録すればよいかを具体的に示し、負担を減らしながら進められるかどうか。ここにも、扱ってきた件数の差が出ます。
強さの正体4:計算の細部を詰められる
賠償額は、複数の計算の積み重ねで決まります。この計算のどこを争えるかを知っているかどうかが、金額に直結します。
将来の減収をどう見積もるか
後遺症が残ると、将来にわたって収入が減ると考えられます。この損害をどう算定するかは、争いになりやすい領域です。基礎となる収入をどう捉えるか、影響がどれくらいの期間続くと見るか。ここで主張が分かれます。
相手方は、影響が続く期間を短く見積もろうとする例も見られます。症状の性質によっては、一定の期間で回復するという前提が持ち出されるのです。これに対して、実際の生活への支障を示して反論できるかどうかで、金額が変わります。
若い方の事案、収入が安定していない方の事案、症状の性質から影響の程度が争われる事案。どれも、当てはめ方によって結論が動きます。
家事に従事している方の事案も、算定の考え方が問題になりやすい類型です。収入という形で表れない労働をどう評価するか。ここを丁寧に主張できるかどうかで、結論に差が生じます。
兼業で家事も担っている方の場合は、さらに扱いが複雑になります。どちらを基礎に算定するのか、両方を考慮できるのか。こうした細かい論点を把握しているかどうかが、金額に表れます。
相手方は、当然これらの論点を承知しています。こちらが気づかなければ、その前提のまま計算された金額が提示されるだけです。争点にすら上がらないまま終わる。これが、依頼先によって結果が変わる典型的な形です。
割合の掛け方まで確認する
こちらにも過失がある場合、その割合の分だけ賠償額が減らされます。ただし、減らし方には考え方があり、どの損害を対象にどう計算するかによって、最終的な金額が変わることがあります。
すでに支払われている治療費との関係、自賠責から支払われる部分との調整。こうした細部を詰められるかどうかは、外からは見えにくいものの、手取りに確実に効いてきます。
過失割合そのものを争うのとは別に、割合が確定した後の計算にも論点があるということです。この二段構えを意識している事務所は、それほど多くありません。説明の中でこの点に触れられるかどうかも、一つの目安になります。
強さの正体5:訴訟を現実の選択肢として扱える
示談交渉で決着がつかないとき、次にどうするか。ここでの構えが、交渉そのものにも影響します。
訴訟を起こす用意があるかどうかは、相手方にも伝わります。裁判になれば裁判所の基準で判断されますから、その見込みを前提とした話し合いに移ります。逆に、示談以外の選択肢を持たない代理人であれば、交渉の材料が乏しくなります。
もっとも、これは脅しをかけるという話ではありません。訴訟になった場合の見込みを踏まえて、双方が着地点を探る。その計算が成り立つかどうかという話です。訴訟を扱った経験がなければ、その見込み自体を語れません。
進むべきかどうかを判断できる
もっとも、訴訟が常に最善というわけではありません。期間がかかりますし、こちらの主張が通らないこともあります。見込みと負担を比べたうえで、進むべきか和解で終えるべきかを依頼者と一緒に決められるかどうか。これも力量のうちです。
「とりあえず裁判にしましょう」と言う代理人も、「裁判は大変ですからやめましょう」と言う代理人も、どちらも判断を放棄しています。条件を示して選ばせてくれる相手を選んでください。
判断の材料としては、認められそうな金額の幅、かかる期間、こちらの負担、そして途中で和解する可能性。この四つが示されれば、依頼者としても決めやすくなります。
外貌に残った症状のような領域
顔や身体に傷が残った場合の評価は、面接による調査が行われることもあり、扱いに独特の難しさがあります。等級の分かれ目や、労働への影響をどう主張するかで結論が変わりますから、こうした事案の経験があるかどうかは尋ねておく価値があります。
この領域は、症状の性質上、本人が人に話しにくいという事情も伴います。どこまで踏み込んで聞き取るか、どう記録に残すか。配慮を伴う進め方ができるかどうかも、選ぶうえでの要素になります。
強さの正体6:医療機関との連携ができる
資料を整えるには、医師の協力が欠かせません。ここでの立ち回りにも差が出ます。
医師が扱うのは治療であって、賠償の手続きとは限りません。認定の審査でどんな記載が重視されるかまで、日ごろから意識しているとは限らないのです。そこで、必要な項目をこちらで整理し、筋道立てて伝える作業が生まれます。
依頼のしかたに配慮がある
医師に検査や記載を依頼する場面では、伝え方への配慮が要ります。診療の方針に立ち入る形になれば、協力を得にくくなります。何が必要で、なぜ必要なのかを筋道立てて説明できるかどうか。ここは経験がものを言う部分です。
医師との関係が悪くなると、いちばん困るのは依頼者本人です。治療を続けながら資料も整えていく以上、協力関係を保つことが前提になります。強く出れば通るという話ではありません。
意見書の作成を依頼する場合も同じです。争点を絞って、答えてほしい事項を明確にしなければ、使える資料になりません。
依頼の文面をどう組み立てるかにも、経験が出ます。何を尋ねるかだけでなく、どういう順序で尋ねるか。医師が答えやすい形になっているかどうかで、返ってくる内容の厚みが変わります。
症状の説明のしかたを助言できる
依頼者本人が診察で症状をどう伝えるかも、記録の質に影響します。「変わりません」とだけ答え続けると、経過が残りません。どの動作で痛むのか、生活のどこに支障が出ているのか。こうした伝え方の助言ができる事務所は、資料の作られ方を分かっているということです。
高次の機能に関わる症状のように、本人が自覚しにくい領域では、家族からの情報が重要になります。誰に何を記録してもらうかまで設計できるかどうかが、結果を左右します。
家族が気づいた変化を日々書き留めておく、といった地道な作業が資料になります。こうした助言が最初の段階で出てくるかどうかは、その事務所が何を重く見ているかを示しています。
後遺障害の等級が金額に与える差
「交通事故に強い」かどうかが最も表れるのは、後遺障害の等級をめぐる場面です。等級が一つ違うだけで、慰謝料も逸失利益も大きく変わります。むちうちで14級が認定されるか非該当かは、その典型です。
| 結果 | 賠償への影響 |
|---|---|
| 非該当 | 後遺障害分の慰謝料と逸失利益が計上されない |
| 14級 | 後遺障害慰謝料と、一定期間の逸失利益が加わる |
| 12級 | 14級より慰謝料が上がり、逸失利益の対象期間も長くなる |
この差を生むのは、提出された資料の中身です。検査結果、経過診断書の記載、症状の一貫性、日常生活への支障の具体性。資料をどう整えるかを知っているかどうかが、実力の差として表れます。
実績の聞き方
「実績があります」という説明だけでは判断できません。相談の場で、次のように具体的に尋ねてみてください。
- 私と似た症状で、どの等級が認定された例がありますか
- 非該当から等級を得た経験はありますか
- 後遺障害の申請は、事務所の中で誰が担当しますか
- 医師に意見書を依頼した経験はどのくらいありますか
- 訴訟まで進んだ案件は年間どのくらいありますか
相談の場で確かめる方法
ここまでの六つを、どう確かめればよいのでしょうか。次の質問が有効です。
- 私の症状で、認定に必要な検査はそろっていますか
- 等級を取りにいくために、いまから準備できることは何ですか
- 申請はどちらの方法で進めるべきですか。その理由も教えてください
- 非該当だった場合、次にどう動きますか
- この事案で、訴訟まで進む可能性はどれくらいありますか
一番目と二番目への答えが具体的であれば、その領域を日常的に扱っている可能性が高いと考えて差し支えありません。「診断書ができてから考えましょう」という答えが返ってくる場合は、逆算して動く発想が薄いの可能性があります。
三番目の申請方法についても、理由を聞くことが大事です。どちらの方法にも利点と欠点があり、事案によって適した選択が変わります。理由を示さずに一方だけを勧める説明には、注意しておいてよいでしょう。
四番目も重要です。非該当の可能性に触れずに「大丈夫です」とだけ答える説明より、そうなった場合の手順まで示す説明のほうが、備えがあります。
解決事例の読み方
掲載されている事例を見るときは、金額の大きさではなく、争点の書き方を見てください。どの等級が問題になり、何を主張して、どこが認められたのか。この流れが書かれている事例は、実際に手を動かした記録です。
具体的には、次の点が書かれているかを見てください。
- どの部位に、どんな症状が残ったのか
- 争点は等級だったのか、過失割合だったのか
- どんな資料を追加し、何を主張したのか
- 相手方の主張はどういうもので、どこが変わったのか
- 示談で終わったのか、訴訟まで進んだのか
逆に、金額だけが並んでいる事例からは、何も読み取れません。同じ金額でも、事故の内容や後遺症の程度によって意味がまるで違うからです。
事例の数の多さにも、あまり意味はありません。掲載する数は事務所の方針次第です。数より、一件あたりの記述の深さを見てください。争点と対応が具体的に書かれた事例が数件あるほうが、金額だけの事例が数十件並んでいるより参考になります。
争点別に、確かめるべき点は変わる
| 争点 | 確かめること |
|---|---|
| 後遺障害の等級 | 必要な検査、診断書の記載、申請方法の判断、非該当時の進め方 |
| 過失割合 | 修正できる要素、必要な資料、割合確定後の計算の扱い |
| 休業損害 | 働き方に応じた算定の考え方、裏づけ資料の作り方 |
| 将来の減収 | 基礎となる収入の捉え方、影響が続く期間の主張 |
| 治療の継続 | 打ち切りへの対応、医師との連携のしかた |
すべてを一度に確かめる必要はありません。自分の事案で焦点になりそうな行だけを見て、その点を集中的に尋ねてください。
示談交渉と訴訟のどちらを選ぶか
保険会社の提示に納得できないとき、交渉を続けるか、紛争処理センターなどの機関を使うか、訴訟に進むかという選択があります。それぞれ、かかる時間と得られる額の見込みが違います。
| 手段 | 期間の目安 | 特徴 |
|---|---|---|
| 示談交渉 | 1〜3か月 | もっとも早い。増額の幅は交渉力に左右される |
| 紛争処理センター | 3〜6か月 | 費用がかからず、中立の立場であっせんを受けられる |
| 調停・訴訟 | 半年〜1年以上 | 裁判所の基準で判断される。遅延損害金が加算される場合もある |
訴訟を選べば必ず有利になるわけではありません。争点や証拠の状況を見て、どの手段が見合うかを判断できることが、実力のひとつです。
「強い」だけでは足りないこと
ここまで技術的な側面を挙げてきましたが、それだけで選ぶのも危うい面があります。
解決までには数か月から一年以上かかります。その間、症状の変化や生活の困りごとを伝え続けることになります。話しにくい相手であれば、大事なことほど言わずに終わってしまいます。そして、伝えられなかった事情は資料に残りません。
つまり、話しやすさは技術の外にある要素ではなく、資料の質に直結する条件なのです。専門性と相性は、どちらかを選ぶものではありません。
連絡の取りやすさも同じです。症状に変化があったとき、保険会社から予期しない連絡が入ったとき。すぐに相談できる体制かどうかは、資料を整えるうえでも実質的な条件になります。
相談してから依頼するまでの流れ
- 電話やメールで相談を申し込み、事故の概要を伝える
- 面談またはオンラインで、見通しと費用の説明を受ける
- 複数の事務所を比べる場合は、同じ条件で試算してもらう
- 納得できたら委任契約を結び、着手金の扱いを確認する
- 保険会社に受任の通知が送られ、連絡の窓口が移る
契約を急がされる場合は、いったん持ち帰って構いません。その場で決めなければならない理由は、通常ありません。
専門分野をうたっていない事務所はどうか
交通事故を前面に出していなくても、経験を積んでいる事務所はあります。反対に、広告で大きく打ち出していても、担当者によって経験の差があることもあります。看板ではなく、面談での受け答えで判断するのが確実です。
費用の説明で見るべき点
| 確認する点 | なぜ見るのか |
|---|---|
| 報酬金の基礎 | 回収額の総額か、増額分かで負担が大きく変わる |
| 自賠責分の扱い | 自賠責から支払われる分を報酬の対象にするかどうか |
| 訴訟に進んだときの追加費用 | 着手金が追加で必要になる事務所もある |
| 日当と実費の目安 | 出張や期日の回数で総額が変わる |
| 特約を使う場合の精算方法 | 上限を超える見込みがあるかどうか |
実力があっても、費用の体系が自分に合わなければ、手元に残る額は増えません。腕と費用の両方を見て判断してください。
治療中に相談する意味
交通事故に強い弁護士に相談する価値がもっとも高いのは、治療を続けている時期です。通院の頻度や、医師への症状の伝え方、検査を受けるかどうかといった判断が、後の等級認定に直結するからです。
提示額を受け取ってから相談しても、できることは限られます。すでに通院の実績は確定しており、資料も出そろっているからです。実力が結果に表れるのは、材料がまだ動かせる段階です。治療中であっても、遠慮なく相談してください。
担当者が変わることもある
事務所によっては、相談を受けた弁護士と、実際に担当する弁護士が異なることがあります。また、事務員が窓口となって連絡を取る体制の事務所もあります。誰が担当し、どこまで弁護士が直接関わるのかは、契約の前に確かめておくと、後の食い違いを防げます。
途中で担当者が変わる場合もあります。変更の可能性と、その際の引き継ぎの方法についても聞いておくと安心です。
よくある質問
「交通事故に注力」と書いてあれば信頼できますか
その表示だけでは判断できません。専門表示には制限があるため、取扱いの多い事務所も少ない事務所も似た表現を使います。解決事例の書き方や、相談での説明の具体性で判断してください。
後遺障害に強いかどうかは、どう確かめればよいですか
自分の症状で必要な検査は何か、診断書にどんな記載が要るかを尋ねてみてください。具体的に答えられるかどうかが手がかりになります。非該当だった場合の進め方まで説明できれば、なお安心です。
大手の事務所のほうが強いのですか
規模と強さは別の話です。大手には体制が整っている利点がありますが、担当する弁護士の経験がそのまま規模に比例するわけわけではありません。実際に担当する方が誰で、どんな事案を扱ってきたかを確認してください。
強い弁護士に依頼すれば必ず等級は認定されますか
必ずとは言えません。等級は基準に沿って判断されるもので、症状がその基準に達していなければ認定されません。できるのは、症状を正確に資料へ反映させることです。そこに差が出ます。
医学的な知識は弁護士にどこまで必要ですか
診断を下す知識は不要ですが、資料を読み、何が足りないかに気づく程度の理解は必要です。検査の名称と意味、画像所見と症状の関係、診断書の記載事項。この範囲を把握しているかどうかが分かれ目です。
近くに強い弁護士がいない場合はどうすればよいですか
遠方の事務所でも依頼できます。手続きの多くは書面と電話で進みますし、面談を伴わない形で対応している事務所もあります。訴訟に進んだ場合の出頭の扱いだけ、事前に確認してください。
相談だけして、依頼は別の事務所にしてもよいですか
かまいません。複数の事務所で説明を聞き比べれば、どこまで踏み込んで答えられるかの差が見えてきます。同じ質問をぶつけて、返ってくる中身を比べる。これが最も確実な見分け方です。
そのとき、相談を受けた側にどこへ依頼したかを伝える義務はありません。断りの連絡を入れるかどうかも、こちらの判断で構いません。比べること自体は、依頼者に認められた当然の行動です。
途中から強い弁護士に代えることはできますか
できます。ただし、診断書が作成された後や、等級の審査が終わった後では、動かせる範囲が狭まります。代えるかどうか迷っているなら、判断は早いほうが選択肢が残ります。
あなたの慰謝料はいくら?3基準で比較診断
自賠責基準
¥120,000
任意保険基準
¥150,000
弁護士基準
¥530,000
※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。
