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後遺障害8級の認定基準と慰謝料|用を廃したとは

後遺障害8級の認定基準と慰謝料|用を廃したとは

この記事で分かること

  • 後遺障害8級の慰謝料相場(自賠責基準・弁護士基準)
  • 労働能力喪失率45%の逸失利益の計算方法
  • 8級に認定される主な症状
  • 7級・9級との違い
  • 認定のポイントと異議申し立て

後遺障害8級は関節の用廃や脊柱の運動障害など、重い器質的障害が中心の等級で、慰謝料は弁護士基準で約830万円が目安です。労働能力喪失率は45%とされ、逸失利益と合わせると賠償の総額は数千万円規模になることもあります。この記事では慰謝料・逸失利益の相場と計算方法、認定される症状やポイント、7級・9級との違いまで弁護士の視点で解説します。

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肩が上がらない。ひざが曲がらない。骨折した部分が今も安定しない。こうした症状が残ったとき、どの等級に認定されるのかは関節がどれだけ動くかという一点で決まります。そして8級は、その判定において最も重い区分にあたります。

ただ、認定通知に書かれているのは「一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの」といった条文の言葉だけです。自分の状態がなぜこの評価になったのか、あるいはなぜならなかったのか、そこからは読み取れません。この記事では、判定の物差しを具体的な数値まで開いたうえで、認定を受けるために何が必要かを弁護士の視点から整理します。

後遺障害8級とはどのような等級か

後遺障害の等級表は、自動車損害賠償保障法施行令に二種類が置かれています。要介護の後遺障害だけを集めた別表第一と、それ以外をすべて収めた別表第二です。8級が定められているのは後者で、要介護の8級というものはありません。

8級の労働能力喪失率は45パーセントとして扱われます。自賠責保険の限度額は819万円。これは政令で固定された金額であり、自賠責から支払われる上限を示したものにすぎません。加害者側の任意保険を通じて受け取る賠償の総額は、これを大きく上回ります。

8級で最も多く問題になるのは、手足の関節と脊柱の障害です。骨折の治療を終えたあとに可動域の制限が残った、骨がうまくつかなかった、背骨に固定術を受けた。そうした経過をたどった方が対象になります。

言い換えれば、8級は目に見える形で機能が失われた状態を評価する等級です。痛みやしびれといった自覚症状が中心の12級や14級とは、立証の性質が根本的に違います。数値と画像がそろえば認められ、そろわなければ認められない。そういう世界だとお考えください。

この違いは、準備の仕方にも直結します。自覚症状を訴えるより、測定の精度を上げるほうが結果につながる。8級を目指すのであれば、まずここを押さえてください。

等級が決まるまでの手続き全体については、次の記事で確認できます。

通院の実績を入れるだけで、目安の額が分かります。

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※ 簡易計算です。実際の金額は治療実日数・後遺障害の有無・休業損害などにより異なります。任意保険基準は各社非公開のため業界平均値で算出しています。

後遺障害8級に該当する10の類型

別表第二の8級には、次の10が定められています。

  • 一眼が失明し、または一眼の視力が0.02以下になったもの
  • 脊柱に運動障害を残すもの
  • 一手の親指を含む二本の指、または親指以外の三本の指を失ったもの
  • 一手の親指を含む三本の指、または親指以外の四本の指の用を廃したもの
  • 一下肢を5センチメートル以上短縮したもの
  • 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  • 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
  • 一上肢に偽関節を残すもの
  • 一下肢に偽関節を残すもの
  • 一足の足指の全部を失ったもの

10のうち8つまでが、手足または脊柱に関するものです。7級までの等級が視覚・聴覚・脳といった幅広い領域を含んでいたのに対し、8級以下は整形外科的な障害が中心になるという特徴があります。

そのため、認定を受けるうえで向き合う相手も変わります。上位等級では脳神経外科や内科の所見が鍵を握りますが、8級では整形外科の医師とどう連携するかが結果を左右します。

補足
上肢の三大関節とは肩・ひじ・手首、下肢の三大関節は股・ひざ・足首のことです。8級に該当するのは、このうちどれか一つの関節が使いものにならなくなった場合。二つの関節であれば6級、片方の腕や脚すべてであれば5級と、範囲が広がるにつれて等級が上がります。

関節の「用を廃した」とは何を指すか

8級を理解する鍵は、この一語にあります。判定の基準は明確で、関節の可動域が健側の10パーセント程度以下になった場合を指します。

健側とは、けがをしていない反対側のこと。左ひざを痛めたなら右ひざが健側です。同じ方法で両方を測り、患側がどれだけ動くかを角度で比較します。ほとんど動かない、あるいは完全に固まってしまった状態が「用を廃した」に当たると考えてください。

可動域による三段階

関節の機能障害は、動く範囲に応じて三つに分かれます。等級もそれに対応します。

状態 可動域(健側との比較) 等級 自賠責の限度額
関節の用を廃したもの 10パーセント程度以下 8級 819万円
関節の機能に著しい障害を残すもの 2分の1以下 10級 461万円
関節の機能に障害を残すもの 4分の3以下 12級 224万円

注意していただきたいのは、患側の可動域が健側の4分の3を上回った場合、可動域制限そのものは後遺障害として評価されないという点です。痛みが残っていても、動く範囲が保たれていれば、この枠組みでは拾えません。その場合は神経症状として別の等級を検討することになります。

数値がどのくらいの感覚に当たるか

パーセントで示されても、実感としてつかみにくいと思います。ひじを例にとって、おおよその目安を挙げてみます。

健康なひじは、曲げ伸ばしを合わせておよそ145度の範囲で動きます。これが4分の3以下、つまり110度程度までしか動かなくなると12級。2分の1以下、およそ70度台になると10級。10パーセント程度以下、つまり15度ほどしか動かない、ほぼ固まった状態であれば8級です。

こうして並べると、8級がいかに重い状態を指しているかが分かると思います。日常の動作でいえば、髪を洗う、顔を洗う、口元まで手を運ぶといった動きが成り立たなくなる水準です。

逆にいえば、「かなり動かしづらい」という程度では8級には届きません。ご自身の感覚と等級が食い違うと感じたときは、まず実際の角度を確認してみてください。

用を廃したと評価される三つのパターン

可動域が10パーセント以下という数値のほかにも、用を廃したと扱われる場合があります。

  1. 関節が強直した場合。骨同士が癒合して完全に動かなくなった状態です。肩関節については、骨性強直をレントゲンで確認できることが求められます
  2. 完全弛緩性麻痺、またはこれに近い状態。神経の損傷により、自力ではまったく動かせなくなった場合です
  3. 人工関節または人工骨頭を挿入置換し、可動域が健側の2分の1以下に制限された場合

二つ目の弛緩性麻痺については、可動域そのものではなく神経の状態が判定の対象になります。腕神経叢の損傷や坐骨神経の断裂など、麻痺の原因が特定できていることが前提です。筋電図による検査で、神経の伝わり方に異常があることを示す必要があります。

この類型では、可動域を測ろうとしても意味がありません。他動では動くけれども自分ではまったく動かせない、という状態だからです。判定の枠組みが違うことを理解しないまま可動域だけを記録すると、実態と噛み合わない資料になってしまいます。

人工関節を入れた場合の特則
三つ目は、8級を考えるうえで極めて重要です。人工関節や人工骨頭を挿入した場合、通常より緩やかな基準が適用されます。可動域が健側の2分の1以下なら8級、2分の1を超えていれば10級。つまり、人工関節を入れたのであれば、最低でも10級には該当するという扱いです。この特則を知らずに申請すると、本来より低い評価にとどまる恐れがあります。

肩や股のように主要運動が複数ある関節では、判定の仕方がやや複雑になります。用を廃したと評価されるには、いずれの主要運動もまったく動かない、またはこれに近い状態であることが必要です。

どの動きを測るのか

関節ごとに、判定の中心となる主要運動が決まっています。ここを取り違えると、測定そのものが無意味になりかねません。

関節 主要運動 参考運動
肩 屈曲、外転・内転 伸展、外旋・内旋
ひじ 屈曲・伸展 基準値の定めなし
手首 屈曲・伸展 橈屈、尺屈
股 屈曲・伸展、外転・内転 外旋、内旋
ひざ 屈曲・伸展 基準値の定めなし
足首 屈曲・伸展 基準値の定めなし

ひじ、ひざ、足首のように主要運動が一つだけの関節は、判定が比較的わかりやすいといえるでしょう。一方、肩と股は複数の主要運動があるため、どれを基準にするかで結論が変わることがあります。

参考運動が結論を変えることがある

見落とされやすいのが参考運動の扱いです。主要運動の可動域が基準をわずかに上回ってしまい、あと少しで等級に届かない。そうした場合に、参考運動の制限が基準を満たしていれば、その等級が認められることがあります。

たとえば肩の屈曲と外転が健側の55パーセント程度で、10級の基準である2分の1をわずかに超えていたとします。このとき、外旋や内旋といった参考運動が2分の1以下に制限されていれば、10級として評価される余地が出てきます。

診断書に参考運動の欄が空欄のまま提出されている例は少なくありません。主要運動が基準の境界付近にある場合は、参考運動も必ず測ってもらってください。

脊柱の運動障害と下肢の短縮

関節以外にも、8級には特徴的な類型があります。

脊柱に運動障害を残すもの

背骨の障害は、変形と運動障害で扱いが分かれ、程度に応じて三段階になっています。

  • 脊柱に著しい変形または運動障害を残すもの:6級
  • 脊柱に運動障害を残すもの:8級
  • 脊柱に変形を残すもの:11級

8級の運動障害に該当するのは、脊椎の圧迫骨折や脱臼が残っていて可動域が制限された場合、あるいは頸部や胸腰部を固定する手術を受けた場合などです。判定には、レントゲンやCTによる画像と、可動域の測定値の両方が要ります。

ここでいう可動域は、頸部と胸腰部それぞれについて測定します。前後屈、左右屈、回旋といった動きを計測し、参考可動域角度と比べてどれだけ狭まっているかを見ます。手足の関節と違って左右の比較ができないため、統計的な基準値との対比になる点が特徴です。

固定術を受けた方は、手術の記録を必ず取り寄せておいてください。どの椎体をどの範囲で固定したかが、等級を分ける材料になります。頸椎か胸腰椎か、何椎間を固定したかによって、運動障害の程度の評価が変わります。

なお、圧迫骨折による変形が残っている場合には、運動障害とは別に変形障害としての評価もあり得ます。両方に該当する場合には、より重いほうの等級が適用されます。画像に変形が写っているなら、その点も診断書に記載してもらってください。

一下肢を5センチメートル以上短縮したもの

骨折した脚が癒合する過程で短くなってしまうケースもあります。短縮の長さによって、等級は次のように分かれます。

  • 5センチメートル以上:8級
  • 3センチメートル以上:10級
  • 1センチメートル以上:13級

測定は、骨盤の出っ張った部分から内くるぶしまでの距離を、左右それぞれについて計測して比較します。1センチ違えば等級がふたつ変わる領域なので、測定は慎重に行う必要があります。

脚の長さが変わると、歩き方にも影響が出ます。腰や反対側の脚に負担がかかり、二次的な症状につながることも珍しくありません。補高した靴が必要になる場合には、その費用も賠償の対象として請求できます。

偽関節を残すもの

骨折した骨が癒合せず、本来動かないはずの部位に異常な可動性が残った状態です。8級に該当するのは偽関節が残っている場合。これに著しい運動障害を伴い、常時硬性補装具を必要とする状態であれば7級に上がります。

骨折の治療経過と後遺障害の結びつきは、こちらの記事でも扱っています。

後遺障害8級の認定で必要になる医証

審査は提出された書類だけで行われます。実際にどれだけ不自由でも、資料に現れていない事実は判断されません。

可動域の測定で押さえるべきこと

  1. 健側と患側の両方を測る。患側だけの数値では比較ができず、判定できません
  2. 他動値を記録する。検査者が動かしたときの角度が原則の基準です。自分で動かした角度だけでは足りません
  3. 主要運動を漏らさない。肩なら屈曲と外転、ひじなら屈曲と伸展というように、関節ごとに測るべき運動が決まっています
  4. 参考運動も記録しておく。主要運動の数値が基準をわずかに上回った場合、参考運動の制限で等級が認められることがあります
  5. 複数回測定する。体調や痛みの程度で数値が動くため、一度きりの記録では実態を反映しないことがあります

可動域制限の原因を示す

数値だけでは足りません。なぜ動かないのかという医学的な裏づけが求められます。

骨の変形、関節面の不整合、癒着、神経の損傷。こうした原因がレントゲンやCT、MRIで確認できることが必要です。画像に異常がないまま可動域だけが制限されていると、努力していないだけではないかと疑われ、評価が下がる恐れがあります。

リハビリの記録が意味を持つ

可動域の制限が固定的なものであることを示すには、治療の経過そのものが資料になります。どれだけの期間リハビリを継続し、どの時点から改善が止まったのか。この推移が記録されていれば、これ以上は回復しないという判断に説得力が生まれます。

逆に、リハビリをほとんど受けないまま症状固定を迎えると、まだ改善の余地があったのではないかと見られかねません。通院の間隔が空きすぎている場合も同様です。治療を続けた事実そのものが、後遺障害を裏づける材料になるとお考えください。

手術記録と入院期間

骨折の治療では、観血的手術、つまり切開して骨を固定する処置を受けることが多くあります。この手術記録には、骨折の部位や程度、使用した固定材、術後の見通しといった情報が詳しく記されています。

後遺障害診断書だけでは伝わらない情報がここに含まれているため、申請の際には手術記録も添えておくと安心です。転院している場合は、最初に搬送された病院の記録も取り寄せておいてください。

注意
記載が薄いまま提出すると、実際より軽く評価されてしまいます。後遺障害診断書の可動域の欄が空欄のまま出てくることは珍しくありません。作成を受け取ったら、角度が記入されているか、健側の数値も入っているか、必ず確かめてください。抜けがあれば、追記を相談することができます。

事前認定に任せた場合にどんな不利が生じうるかは、次の記事で触れています。

後遺障害8級で請求できる賠償

請求の対象になるのは、次のような項目です。

  • 後遺障害慰謝料。回復しない障害を抱えて生きていくことへの精神的な補償です
  • 逸失利益。労働能力喪失率45パーセントを基礎に、将来の収入減を補償します
  • 装具の費用。硬性補装具、装具付きの靴、杖などが対象です
  • 将来の手術費用。人工関節の入れ替えや、偽関節に対する骨移植が見込まれる場合に請求できます
  • 家屋改造費。手すりの設置など、生活上の必要性が認められれば対象になります

人工関節は入れ替えを前提に考える

人工関節には耐用年数があり、若い年齢で挿入した場合には生涯のうちに数回の入れ替えが必要になります。この再置換手術の費用と、その際の休業損害は、将来の損害として請求できる項目です。

再置換は、初回の手術より難易度が上がるといわれます。骨の状態によっては入れ替えができず、別の術式を選ばざるを得ないこともあります。そうした見通しも含めて、主治医から説明を受けておくと安心です。

示談の段階でこれが抜け落ちていると、後から追加で求めることはできません。医師に将来の見通しを確認し、意見書の形で残しておくことをおすすめします。手術の時期や回数まで正確に予測することはできませんが、必要になる可能性が高いという医学的な見解があれば、交渉の材料になります。

逸失利益で争われる点

8級は、関節の機能を失っていても働き続けられる方が多い等級です。そのため、実際には減収がないという理由で逸失利益を否定される場面が出てきます。

ただ、収入が保たれているのは、職場の配慮や本人の努力によることがほとんどです。担当から外れた業務、できなくなった動作、将来の転職で不利になる見込み。こうした事情を具体的に示すことで、減収の有無だけで判断すべきではないと主張していくことになります。

測り直したうえで異議申立てを行う場合の進め方は、こちらにまとめました。

労働能力喪失期間をめぐって

もうひとつ争点になりやすいのが、何年分を補償するかという点です。8級のように器質的な損傷が残る等級では、原則として就労可能とされる年齢までが対象になります。

ただ、保険会社から期間を短く区切った提示を受けることがあります。関節の障害は慣れによって支障が軽くなる、という理屈が持ち出される場合です。これに対しては、可動域の制限が回復しない性質のものであること、加齢とともにむしろ負担が増すことを示して反論する流れになります。

とくに人工関節を挿入した方については、年齢を重ねるほど再置換のリスクが高まります。将来にわたって症状が残り続けることの裏づけとして、医師の見解を得ておくと交渉が進めやすくなります。

職種による影響の違い

同じ8級でも、仕事の内容によって受ける打撃はまったく違います。立ち仕事、重量物の運搬、高所での作業といった身体を使う職種では、就労の継続そのものが難しくなることがあります。

一方、デスクワーク中心であれば業務への影響は限定的に見える可能性があります。しかし通勤の負担、長時間同じ姿勢を保つ苦痛、緊急時の避難といった場面での支障は残ります。職務の具体的な内容に即して、何ができなくなったのかを説明することが、喪失率を守るうえで有効です。

また、家事に従事している方についても逸失利益は認められます。収入がないことを理由に否定されることがありますが、家事労働には経済的な価値があるというのが実務の考え方です。肩やひざの可動域が制限されれば、洗濯物を干す、風呂を掃除する、買い物の荷物を運ぶといった作業に支障が出ます。どの家事にどれだけ時間がかかるようになったかを記録しておくと、主張の裏づけになります。

ご自身の状況を入力すると、おおまかな見通しが立ちます。まずは下のツールをお試しください。

偽関節に著しい運動障害を伴い、常時補装具を要する状態であれば7級です。その差はこちらで扱っています。

8級の申請から認定結果への対応まで

準備の流れは次のとおりです。

  1. 主治医と回復の見通しを共有し、症状固定の時期を決める
  2. 可動域の測定、画像検査が済んでいるかを点検し、不足があれば追加を依頼する
  3. 後遺障害診断書を作成してもらい、記載内容を確認する
  4. 画像、検査結果、手術記録を添えて申請する
  5. 認定結果と理由を確認し、次の対応を決める

10級や12級にとどまった場合

8級を想定していたのに10級だった、というのは頻出のパターンです。この場合、争点は可動域の数値そのものか、その測り方にあります。

確認すべきは次の点です。測定が他動値で行われていたか。健側の数値が記録されていたか。主要運動をすべて測っていたか。人工関節を挿入しているのに特則が考慮されていないのではないか。可動域制限の原因を示す画像所見が添付されていたか。

とくに多いのが、健側の記録が欠けているケースです。患側だけを測って「屈曲90度」と書かれていても、健側が何度なのかが分からなければ比較のしようがありません。参考可動域角度で代用されることもありますが、その人本来の可動域が標準より広かった場合、実態より軽く評価されてしまいます。

指の障害や感覚器の障害であれば9級として評価される例も見られます。類型はこちらで扱っています。

再測定を依頼するときの注意

可動域を測り直す場合、同じ医療機関に依頼するか、別の医療機関を選ぶかで迷うことがあります。基本的には、経過を把握している主治医に依頼するのが自然です。初診からの推移を知っている医師のほうが、症状の一貫性を説明しやすいためです。

依頼するときは、前回の測定に何が足りなかったのかを伝えてください。健側を測っていない、他動値の記録がない、参考運動が空欄になっている。具体的に示せば、医師も対応しやすくなります。

なお、症状固定からあまりに時間が経ってから測り直すと、その間の変化との区別が難しくなります。認定結果を受け取ったら、対応の要否を早めに判断しておくのが賢明です。

注意
合意の効力は強く、あとから追加請求するのは簡単ではありません。とくに8級では、将来の手術費用や装具の買い替えが抜けたまま提示されることがあります。示された条件を鵜呑みにせず、内訳まで目を通すことをおすすめします。

後遺障害8級で弁護士に相談する意義

8級の事案は、数値がすべてを決めるように見えて、実は準備の仕方で結論が動きます。

可動域は測り方ひとつで数値が変わります。手順のどこかが欠けていれば、実態より軽い評価を受けてしまいます。人工関節の特則のように、知らなければ主張しようがない論点もあります。

そして、認定を受けた後も交渉は続きます。逸失利益を減収の有無で判断されないよう、将来の手術費用を落とされないよう、ひとつずつ根拠を示していく作業が必要です。

相談のタイミング

症状固定より前の段階が理想です。この時期をいつに置くかで、その後の請求の組み立てが変わります。可動域が改善する余地が残っている段階で区切ってしまうと、リハビリの経過が記録に残りません。

費用については、特約が使えるかどうかは、保険会社に問い合わせればすぐ分かります。ご本人の契約に付いていなくても、同居のご家族の契約を確認してみる価値があります。

健側
けがをしていない反対側の部位。関節の機能障害は、患側との比較によって判定されます。
強直
骨と骨が癒合するなどして、関節がまったく動かなくなった状態。用を廃したものと評価されます。
主要運動と参考運動
関節ごとに定められた、判定の中心となる動きと補助的な動き。主要運動が基準をわずかに上回る場合、参考運動が考慮されるケースもあります。

提示額と比べる前に、まず自分で試算しておくと判断しやすくなります。

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後遺障害8級に関するよくある質問

人工関節を入れましたが、日常生活にあまり支障がありません

それでも等級の対象になります。人工関節や人工骨頭を挿入置換した場合、可動域が健側の2分の1以下であれば8級、それを超えていれば10級として評価されます。支障の自覚が乏しくても、挿入した事実そのものが判定の基礎になるとお考えください。

可動域を測るとき、痛くて動かせない部分はどう扱われますか

原則として、検査者が動かした角度である他動値が用いられます。痛みのために自分では動かせなくても、他動で動くのであればその数値が記録されます。ただ、痛みそのものは神経症状として別に評価される余地がありますので、症状として診断書に残してもらってください。

脚が短くなりましたが、歩けているので問題ないと言われました

歩行できるかどうかと等級の判定は別です。短縮の長さが5センチメートル以上であれば8級に該当します。3センチメートル以上なら10級、1センチメートル以上でも13級です。実際に計測してもらったうえで判断してください。

複数の関節に障害が残った場合はどうなりますか

それぞれの等級を組み合わせて全体の等級を決める併合という取り扱いがあります。一つの関節では8級でも、他にも障害があれば7級以上と評価される可能性があります。小さく思える症状も、申告から漏らさないようにしてください。

症状固定はどのくらいの時期が目安になりますか

骨折を伴う事案では、骨が癒合してからリハビリを経て、機能の回復が頭打ちになるまで待つのが通常です。関節の可動域は、時間をかけたリハビリによって少しずつ改善することがあるため、早い段階で区切ると本来より重い評価を受ける一方、治療の機会を失うことにもなります。医学的な見通しに基づいて、主治医と相談しながら決めてください。

労災保険からも給付を受けていますが、どう調整されますか

通勤中や業務中の事故であれば、労災保険の障害給付と加害者への損害賠償を並行して進められます。ただし同じ性質の損害を二重に受け取ることはできず、労災から支払われた分は賠償額から差し引かれます。一方で労災には賠償にない給付もあるため、両方を使う意味はあります。手続きの順序によって最終的な手取りが変わるので、早めに整理しておくと安心です。

まとめ

後遺障害8級は、関節の用を廃した状態を中心とする等級です。判定の基準は明確で、可動域が健側の10パーセント程度以下。ただし人工関節を挿入した場合には2分の1以下という緩やかな基準が適用されます。

数値で決まる領域だからこそ、測り方が結論を左右します。他動値で測ったか、健側と比較したか、主要運動を網羅したか。そして、なぜ動かないのかを画像で示せているか。この四つが揃っていなければ、実態より低い評価になりかねません。

いま手元にある後遺障害診断書を開いて、可動域の欄を確認してみてください。角度が記入されているか、健側の数値が入っているか。そこを見るだけでも、次にとるべき行動が見えてきます。

もうひとつ、8級の事案でお伝えしておきたいことがあります。関節の障害は、時間が経つほど生活への影響が積み重なる性質を持っています。当初は何とかこなせていた動作が、加齢とともに難しくなる。反対側の関節に負担がかかり、そちらにも症状が出てくる。人工関節であれば、いずれ入れ替えの手術が必要になります。

示談で決める金額は、そうした先々の負担まで含んだものです。目の前の提示が妥当かどうかを判断するには、これから何が起きるのかを医師に確認したうえで、必要な項目が算入されているかを点検しなければなりません。

迷ったときは、認定結果と提示書を手元に置いてご相談ください。どこに不足があるのかを整理するところから、ご一緒できます。

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