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交通事故によるむち打ちとは?~慰謝料相場はどのくらい?~
この記事で分かること
- むち打ちは首を痛めるだけでなく神経や血管を損傷し後遺症が残る恐れもある怖い症状
- むち打ちは傷害部分と後遺障害に慰謝料 相場が高いのは弁護士会基準
- 後遺障害の慰謝料で損しないためには、事故直後から医療機関を定期的に受診することが重要
交通事故で大きく首を揺さぶられても、当日はむち打ちの自覚症状がなく、翌日〜数日後に突然痛みが出る場合があります。最悪の場合は後遺症も残ります。むち打ちの慰謝料は傷害部分と後遺障害の2種類があり、いずれもより高額な慰謝料を得たい場合は弁護士への相談がおすすめです。整骨院等ではなく医療機関を受診し、症状の変化をこまめに医師に伝えておくことも、示談交渉で有利になるポイントです。
交通事故で発症する「むち打ち」とは?
かつてシートベルト着用が義務化されていなかった時代は、ドライバーや同乗者は衝突で体が前に投げ出されることでけがを負っていました。しかし現在はシートベルトによって体が固定されているケースが多く、頭部に衝撃が集中する「むち打ち」になる人が増えています。
むち打ちとは
むち打ちとは、交通事故で自動車が衝突したときの衝撃で首がむちのように前後に大きく揺さぶられて発症する症状を指します。医学的な正式名称ではなく、むち打ちの中にも様々なタイプがあります。
事故当日は気づかない場合も
交通事故でけがを負った直後、裂傷や骨折なら被害者本人が痛みを感じやすいのですが、むち打ちは自覚する痛みがないこともあります。事故直後は被害者が興奮状態になっていて痛みに気づかないのです。しかし翌日や数日後に急に首に痛み出して慌てて病院に行くと、実はむち打ちになっていた、という話はよくあります。交通事故に遭ったら必ず医療機関を受診しておきましょう。
むち打ちのタイプ
むち打ちと聞いてまず思い浮かぶのは、首をネックカラーで固定した姿ではないでしょうか。むち打ちと呼ばれる症状の7〜8割は、頚椎周辺の筋肉や靭帯などが傷ついている「頚椎捻挫」に分類されます。このほかにも、頚椎が歪んで神経が圧迫される、頚椎に沿う血管の血流が悪化する、脊髄や神経が損傷するなどのタイプがあります。
むち打ちの症状と治療
「むち打ち=首の痛み」というイメージが一般的ですが、むち打ちのタイプによっては思わぬ場所に症状が出ます。事故から数日経って以下のような症状が出た場合、むち打ちが原因かもしれません。
むち打ちの症状
もっとも多い頚椎捻挫の場合は、首や肩に痛みが出たり、痛みに伴い首や肩が動かしづらくなります。また、神経が圧迫された場合は腕にも痛み・しびれが出たり、後頭部や顔面にも痛みを感じることがあります。このほか、血流の悪化でめまい・頭痛・吐き気・耳鳴りが起こったり、脊髄や神経の損傷では歩行や排泄といった下半身の機能に弊害が出る可能性もあるのです。
後遺症が残る場合も
むち打ちになったら、整形外科や整骨院・接骨院に通って治療するのが一般的です。炎症が起こっている初期の場合は冷やしますが、炎症が治まった後は赤外線などを使って患部を温める温熱療法などで回復を目指します。治療にかかる期間は人それぞれで、しばらく治療を行っても回復がストップし(症状固定)、完治せず後遺症が残る場合もあるのです。症状が重いと事故前にできていた仕事や活動ができなくなってしまうケースもあります。
むち打ちの慰謝料の相場
交通事故の損害賠償請求において、むち打ちの慰謝料は2種類あります。傷害部分に対する慰謝料と、後遺傷害が残った場合の慰謝料です。金額の算出方法は「強制(自賠責)保険」「任意保険」「弁護士会」の3つの基準があります。任意保険の基準は各社が独自に定めているため統一基準はありませんが、弁護士会の基準より低額と考えてください。
傷害部分に対する慰謝料
まず、症状固定までの障害部分に対する精神的・肉体的苦痛の慰謝料についてです。治療で通院した期間が同じでも、慰謝料相場は弁護士会基準のほうが数十万円高くなるのが一般的です。
強制(自賠責)保険の基準
強制保険の慰謝料は入通院1日につき4,200円と定められています。これに日数をかけて慰謝料の金額を算出するのですが、日数は「実通院日数×2」か「治療期間」の少ないほうで計算します。例えば実通院日数が 30日、治療期間が3ヶ月なら、慰謝料の相場は4,200円×(30日×2)=25万2,000円となるのです。
弁護士会の基準
弁護士会が考える慰謝料の相場は、日弁連交通事故相談センター「入・通院慰謝料表」に定められています。表によると、治療に要した通院期間が3か月(入院なし)の場合、慰謝料の相場は46〜84万円となります。
後遺障害に対する慰謝料
むち打ちで後遺障害が残ると、後遺障害等級認定で第12級13号もしくは14級9号などに認定されるケースがあります。より重い12級の認定は、神経症状があることを画像などから医学的に証明できるかどうかがポイントです。
強制(自賠責)保険の基準
強制保険の場合、慰謝料の相場は12級で93万円、14級で32万円となっています。むち打ちによる後遺障害のなかには、症状が重く9級に認定されるケースもまれにありますが、9級でも慰謝料相場は245万円です。
弁護士会の基準
日弁連交通事故相談センターの基準によると、慰謝料の相場は12級で250〜300万円、1級で90〜120万円となっています。 後遺障害に対する慰謝料の相場も、弁護士会基準のほうが高額となっています。つまりむち打ちでより多くの慰謝料が欲しい場合は、弁護士に相談するのことが一番なのです。
むち打ちの慰謝料・損害賠償金で損をしないためには
むち打ちで多くの慰謝料・損害賠償金で損をしないためには、いくつかのポイントがあります。「後遺症の程度が重いのに等級認定されなかった」「治療にかかった費用が思いがけず自己負担になってしまった」と後悔しないよう、しっかりチェックしておいてください。
後遺障害の慰謝料に関する注意点
むち打ちの後遺障害の慰謝料は、後遺障害による減収がなくても請求することが可能です。ただ、むち打ちの後遺症が残れば必ずしも等級認定されるわけではありません。事故直後から等級認定を意識して行動しておくのが一番です。
後遺障害の等級が認定されない場合がある
症状の面では、「慢性的な痛みはなくなったが天候や気圧の変化によって痛みだす」といった状態では後遺障害として認められません。また、症状が慢性的であっても違和感や張りといったレベルでは等級認定は難しいでしょう。さらに手続きの面では、後遺障害の認定では医師の診断書が必要になってくるのですが、整骨院・接骨院では診断書を書いてもらえません。整形外科などの医療機関を受診しておく必要があるのです。
後遺障害の等級認定を受けるためのポイント
等級認定を受けるためには、まず事故直後から症状固定まで医療機関を定期的に受診し、通院実績を作っておく必要があります。また認定には症状の一貫性・連続性が求められるので、痛みや体の動かしづらさは初回からすべて医師に伝えます。痛みがあるのに伝えなかった場合は、等級認定の際に一貫性・連続性が疑われてしまいます。
むち打ちの損害賠償金に関する注意点
むち打ちになった場合、加害者に払ってもらえるお金は慰謝料だけではありません。治療や療養にかかった費用なども損害賠償金として請求できます。しかし、一部の行為は支払いの対象とならないケースもあるので、事前に調べておくと確実です。
整骨院・接骨院の費用
整形外科などの医療機関で治療を受けた場合、実費を払ってもらえます。しかし整骨院・接骨院で治療(施術)を受けた場合は、請求しても払ってもらえない可能性があります。実際はそこまで厳しく対応しないケースが多いようですが、整骨院・接骨院の費用が損害賠償の対象となるのか不明確な場合は保険会社に確認しましょう。
温泉療養の費用
むち打ちの治療として温泉に湯治に行くケースは、原則として損害賠償の対象となりません。しかし医師から温泉療養を認める診断書をもらっておけば、一部費用を加害者側に負担してもらえるケースもあります。遊びやリラックスための旅行と間違えられないよう、湯治場の選び方にも気を付けましょう。
むち打ちの慰謝料の示談交渉は弁護士に相談
むち打ちの慰謝料は弁護士に示談交渉は、自分でやろうとすればできるかもしれません。しかし、お金が絡むことであり、相手も払いたくない気持ちを持っている以上、示談は難航しがちです。このような慰謝料の交渉は、弁護士などの法律の専門家に任せたほうが高額な請求が可能です。医療機関や接骨院・整骨院の利用方法などに迷っている方は、交通事故に強い弁護士に相談してみることをおすすめです。
無料相談を活用し、十分な慰謝料獲得を
- 保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
- 保険会社が治療打ち切りを通告してきた
- 適正な後遺障害認定を受けたい
- 交通事故の加害者が許せない