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交通事故のむち打ちに~後遺障害等級認定方法を解説

この記事で分かること

  • 後遺障害の等級認定を得ると、逸失利益や後遺障害の慰謝料も受け取れる
  • 後遺症の程度を正当に評価してほしいなら「被害者請求」を利用すべき
  • 「治療する場所」と「相手の保険会社の担当者」に要注意

交通事故でむち打ちになり後遺症が残った場合、後遺障害の等級が認定されれば逸失利益や後遺障害の慰謝料を受け取れます。より賠償額の高い12級の認定を受けるためには、神経学的検査の結果やレントゲン・MRIの画像による立証が重要となってきます。さらに、むち打ちの症状と事故の因果関係を明確にしたり、症状の継続性を客観的な証拠として残しておくと、認定の際に有利です。

むち打ちで後遺症が残ったら後遺障害等級認定を

自動車の追突事故でよくあるけがの一つが「むち打ち」です。自動車のシートベルトはドライバーや同乗者の命を守るのに役立ちますが、着用時に衝撃を受けると頭部がむちを打つように前後に揺さぶられることがあるのです。最悪の場合、治療しても痛みやしびれなどが完全には消えず後遺症が残ります。

後遺障害の等級認定を得た場合の慰謝料の相場

交通事故の被害者は、けがの治療費やけがで働けなくなった期間の減収分の補填、けがに対する慰謝料を加害者に請求できます。さらに後遺症が残って後遺障害の等級認定を得た場合は以下のような賠償も受け取ることが可能で、金額は等級により異なります。

逸失利益

交通事故の被害者は、後遺症が残って事故前と同じようには働けなくなると、収入が減ってしまいます。その場合は、後遺障害の等級が認定されれば、事故に遭う前の収入や、等級に応じた労働能力喪失率などを基準に逸失利益を請求できます。労働能力喪失率は、最も重篤な障害が残る1級は100%、障害の程度が最も軽い14級は5%です。

後遺障害の慰謝料

後遺障害の精神的・肉体的な苦痛に対する慰謝料は、障害等級に応じて金額の目安が定められています。実際の裁判事例を参考に作られている日弁連交通事故相談センターの慰謝料の基準によると、慰謝料の相場は1級で2,700〜3,100万円、14級で90〜120 万円となっています。

むち打ちの後遺障害等級認定

交通事故によるむち打ち患者の多くは、医学的には頚椎捻挫や頸部挫傷などと診断されています。首の筋肉や靭帯などが傷ついて、首や肩に痛みやしびれが出て自由に動かしづらいという状態です。

むち打ちの症状は首・肩だけではない

むち打ちの症状が現れるのは首・肩だけではありません。頚椎の歪みで神経が圧迫されると、腕・顔面・後頭部に痛みやしびれを感じるケースもあります。また、血流が悪化してめまい・頭痛などを引き起こしたり、脊髄や神経の損傷で歩行や排泄に影響が出る場合もあるのです。首は人間の体にとって重要な血管や神経などが集中している場所なので、むち打ちになると体の様々な場所に症状が出る可能性があるのです。

むち打ちの後遺障害の等級認定

むち打ちが後遺障害の等級認定を受ける際は、12級か14級に認定されるケースが多くなっています。12級9には「局部に頑固な神経症状を残すもの」、14級には「局部に神経症状を残すもの」という規定があり、医師の診断などをもとに規定に該当すれば後遺障害分の逸失利益や慰謝料を請求できるのです。ただし、むち打ちの後遺障害の逸失利益を算出する場合、過去の判例に基づく労働能力の喪失年数の目安が存在します。12級は10年程度、14級は5〜6年程度です。

ワンポイントアドバイス
むち打ちで後遺障害の認定を受けると、等級に応じて逸失利益や後遺障害の慰謝料を請求できます。逸失利益の算出には事故前の収入や労働能力喪失率が加味されます。むち打ちの後遺障害の等級認定は12級か14級となる場合多くなっています。

むち打ちの後遺障害の等級認定方法について

交通事故のけがは治療によって次第に回復していきますが、機能障害や傷痕が残ると後遺症となります。後遺障害の等級認定を受けて損害賠償を請求するには、まず、いつまでが「けが」でいつからが「後遺症」なのか、時期を明確に分ける必要があるのです。

後遺障害の等級認定の手続きの流れ

けがと後遺症を区分する時点のことを「症状固定」と呼びます。症状固定は医師の医学的な判断や患者本人の自覚症状などを総合的に判断して行われます。そして医師が書いた診断書をもとに後遺障害の等級認定の手続きに入っていきます。

事前認定と被害者請求

後遺障害の等級認定の手続きには2通りの方法があります。一つは加害者が加入している損害保険会社の担当者が等級認定の手続きを行う「事前認定」です。もう一つは被害者が自発的に必要書類を準備して保険会社に認定手続きを求める「被害者請求」です。いずれの方法も等級認定は損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」という第三者機関に依頼するのですが、後遺症の程度を過小評価されたくないなら被害者請求のほうが確実です。

等級に納得できない場合は意義申し立ても

自賠責損害調査事務所は、保険会社から提出された医師の診断書や当該事故の発生状況などを精査して、どの等級に認定すべきか検討します。場合によっては加害者側・被害者側に調査を行うこともあります。等級がひとつ違えば損害賠償額が数十万円違ってくるため、構成・中立な立場から認定が行われていますが、「認定された等級に納得できない」「予想に反して等級認定が得られなかった」という場合は、異議申し立てが可能です。追加書類の提出で診断書の内容を補足するなどの対策を行います。

等級認定が得られるケース

むち打ちの後遺障害は14級か12級に該当する場合が多いのですが、日弁連交通事故相談センターの基準で慰謝料の相場を比較すると12級のほうが最大130万円も高額となります。14級と12級はそれぞれどのようなケースで等級認定が得られるのでしょうか。

14級の場合

後遺障害の等級認定の中で最も等級が低いのが14級です。14級の認定を得るには、まず「むち打ちと事故の因果関係」の証明が必要です。例えば、むち打ちになるほど大きな衝撃の事故だったことは、事故直後の車体の損傷を写真に撮っておくことで客観的に証明できます。また「いずれ完全に消える症状ではないこと」も示さなくてはなりません。症状固定までの期間が半年以下など比較的短期の場合は、今後も回復するとみなされ等級認定されない可能性が高くなるのです。

12級の場合

14級よりもハードルが高い12級は、14級の条件を満たすことに加えて「他覚的所見」も必要となります。他覚的所見とは、関節の可動域のテストや腱反射テストなどを行う神経学的検査や、レントゲン・MRIの画像による診断のことです。神経学的検査と画像の両者で所見があり、さらに画像で明確な所見が確認できるなど、証明の材料が多いほど12級認定の可能性が高まります。

ワンポイントアドバイス
むち打ちの後遺症の等級認定で過小評価されないようにするには、加害者の損害保険会社の担当者に任せず、被害者が自発的に行う「被害者請求」が適しています。慰謝料相場の高い14級の認定を得るには、事故との因果関係・後遺症の継続性・各種検査の結果など客観的な証拠をもとに主張できることが重要です。

むち打ちの後遺症で適切な等級認定方法

むち打ちで比較的重い後遺症が残っても、病院の受診時と、加害者の損害保険会社とのやりとりでミスがあれば、適切な認定が得られないことがあります。対応の注意点についてまとめました。

病院受診時のコツ

むち打ちの治療は、病院の整形外科だけでなく整骨院・接骨院でも行っています。しかし等級認定に必要な診断書は、医師しか書けません。後遺障害が残る可能性があるなら、治療の経過をしっかり見てもらうためには、まず基本として定期的に通院する必要があります。

事故直後、痛くなくても病院に行く

むち打ちは事故に遭った直後から症状が出るとは限りません。当日は興奮状態で痛みやしびれなどを自覚しないことがあるのです。もし事故直後に病院を受診していなければ、後遺障害の等級認定の場面で症状と事故の因果関係を疑われるかもしれません。事故直後は必ず整形外科などを受診しておきましょう。

症状は細かく伝える

適切な等級認定のためには医師に症状を伝える際の言葉の選び方も重要です。「天気の悪い日は痛むことがある」といった表現では、慢性的な症状ではなく後遺障害にあたらないと判定されかねません。たまたま受診日に調子が良くても安易に「痛みが消えた」などと言わないでおきましょう。

保険会社への対応のコツ

交通事故の示談交渉の相手は、加害者側の保険会社の担当者となることが大半です。「できるだけ賠償金は払いたくない」というのが保険会社の本音ですから、後遺障害の等級認定の場面でも加害者側に有利な主張をしてきます。

症状固定の時期を保険会社に任せない

保険会社は医師に問い合わせて治療の進捗状況などをチェックしており、ある程度治療が進むと被害者に「そろそろ症状固定してください」と言ってくることがあります。これは症状固定によって保険会社が負担する治療費を早めに打ち切りたいという意図が隠されています。しかし症状固定の時期は医師の診断と本人の自覚症状を総合的に判断して決めるべきです。特に等級認定を視野に入れている場合は症状固定が早すぎると認定に不利になる可能性があります。注意しましょう。

等級認定の手続きを保険会社に任せない

等級認定の手続き方法のうち、「事前認定」は保険会社が主導で行います。被害者にとってはむち打ちで体調が優れない時期に手続きをサポートしてもらえるのはありがたいことに思えます。しかし保険会社が被害者に有利になる(等級認定されやすい)書類を作成するとは考えにくいため、本来得られるはずの等級が得られない恐れもあるのです。等級認定には被害者自身が納得のいく書類を提出できる「被害者請求」を選びましょう。

ワンポイントアドバイス
正当な等級認定受けて妥当な賠償額を得るためには、接骨院・整骨院ではなく整形外科などの医療機関に通うことや、症状固定の時期を加害者側の保険会社に任せないことなど、事故直後から対策を講じておくことが重要です。

むち打ちで後遺障害認定を検討するなら弁護士に相談

むち打ちになって、なかなかよくならなかった場合、どのように後遺障害認定を受けたらよいのか分からない方は多いのではないでしょうか。むち打ちで後遺障害の等級認定を検討している方は、ぜひ早めに交通事故に強い弁護士に相談してみてください。医師や保険会社にどのように対応すれば等級認定に有利に働くのか、一人ひとりに最適なサポートが得られるでしょう。

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