2020/6/10 287view

交通事故による休業損害とは?計算方法と請求の流れ、休業補償との違い

この記事で分かること
  1. 休業損害とは、交通事故の怪我により減収したことに対する損害賠償金
  2. 休業補償給付とは、業務災害で怪我や病気になり働けなかった労働者への補償金
  3. 交通事故により怪我を負い、減収した有職者や家事労働のできなかった家事従事者は、休業損害を請求すべき
  4. 有職者や家事従事者以外に休業損害を認めた裁判例もある
  5. 休業損害の計算は、弁護士のみが使える弁護士基準を用いるのが被害者に有利
  6. 休業損害の請求は、「休業損害証明書」を加害者側保険会社から取り付け、勤務先に記入してもらうのが流れ
  7. 交通事故専門の弁護士に相談すれば、休業損害で損をしない

交通事故の休業損害は、有職者や家事従事者などで認められていますが、計算の際には弁護士基準を用いるのが被害者に有利です。休業損害の請求の流れとしては、まず「休業損害証明書」を加害者側保険会社から取り付け、勤務先に記入してもらいます。休業損害の請求で損をしないよう、早期に弁護士に相談しましょう。

交通事故の休業損害とは?

「交通事故で怪我して仕事を休んだら収入が減った」…このような場合、加害者・保険会社に減ってしまった収入を賠償してもらうことはできるのでしょうか?

その答えはYESです。休業損害とは、交通事故の怪我によって仕事ができず、減収したことに対する損害賠償金で、これは加害者・保険会社に請求が可能です。

以下では、休業損害が、交通事故の損害の分類において、どのような位置付けをされているのかご説明します。

休業損害は、財産的損害の中の消極的損害に該当

交通事故の損害は精神的損害と財産的損害の2種類

交通事故の損害には、休業損害以外にも治療費や慰謝料などたくさんの損害があります。これらの損害を大別すると、精神的損害と財産的損害の2種類に分けられます。

精神的損害とは、交通事故により被害者が受けた精神的・肉体的苦痛のことで、これに対する損害賠償金は慰謝料と呼ばれます。一方の財産的損害は、交通事故により被害者が受けた経済的損害(不利益)のことです。

財産的損害は積極的損害と消極的損害に分けられる

財産的損害は、さらに積極的損害と消極的損害の2つに分けられます。

積極的損害とは、交通事故被害により直接的に支出した財産があった場合に発生する損害のことを意味します。具体的には、

  • 治療費
  • 入院雑費
  • 通院交通費
  • 付添看護料

などが挙げられます。

一方の消極的損害とは、交通事故の被害よって本来得られるはずだった財産を失った場合に発生する損害のことです。本記事のテーマである休業損害は、この消極的損害に該当します。またその他にも、

  • 後遺障害逸失利益
  • 死亡逸失利益

などが消極的損害に該当します。

休業損害と休業補償給付・休業給付・休業手当の違い

「休業損害」とよく似た言葉に「休業補償給付」「休業給付」「休業手当」があります。それぞれの違いは以下のとおりです。

休業損害

  • 交通事故の被害により怪我をしたことで働けず、減収した被害者に対し支払われるもの
  • 受給期間:治癒・症状固定までの休業日数
  • 請求元:加害者・保険会社(自賠責保険・任意保険)
  • 根拠法:自動車損害賠償保障法施行令、民法

休業補償給付

  • 「仕事で営業車を運転中に交通事故に遭い休業した」など、業務災害で怪我や病気になり働けなかった労働者に対し、平均賃金の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)を支払われるもの
  • 受給期間:休業4日目から休業が続く間
  • 請求元:労働者災害補償保険
  • 根拠法:労働基準法、労働者災害補償保険法
  • ※休業1〜3日目の3日間は事業主が平均賃金の60%の休業補償を行う

休業給付

  • 「通勤中に交通事故に遭い休業した」など、通勤災害で怪我や病気になり働けなかった労働者に対し、平均賃金の80%(休業補償給付60%+休業特別支給金20%)を支払われるもの
  • 受給期間:休業4日目から休業が続く間
  • 請求元:労働基準法、労働者災害補償保険
  • 根拠法:労働者災害補償保険法
  • (※休業補償給付と異なり休業1〜3日目の3日間の給付なし)

休業手当

  • 「原材料の不足により工場を休業した」など、事業主の都合で働けなかった従業員に対し、平均賃金の60%以上を支払われるもの
  • 受給期間:休業期間中
  • 請求元:事業主
  • 根拠法:労働基準法
ワンポイントアドバイス
「休業損害」には、「休業補償給付」など似たような用語がありますが、厳密な定義ではまったくの別物です。しかしながら、休業したことによる損害の填補という意味では、いずれも同様であるため、「休業損害」と「休業補償給付」「休業給付」の二重取りはできません。この点をしっかり覚えておきましょう。

交通事故で休業損害を請求すべきケース

交通事故で休業損害を請求すべきケースとは、被害者が交通事故により怪我を負い、仕事を休んだために収入の減った有職者の場合です。具体的には、

  • 給与所得者(アルバイトを含む)
  • 個人事業主
  • 会社経営者、会社役員

などが挙げられます。

また、実際に収入はない専業主婦(主夫)といった家事従事者も、怪我により家事労働ができなければ休業損害を請求できますし、さらには「交通事故により怪我を負い退職した、解雇された方」や「無職者」などのケースでも、裁判により休業損害を認められたケースがあります。

逆に請求できないケースとは、被害者が子ども、学生、年金生活者、生活保護受給者、不動産経営などの不労所得者で、交通事故の怪我により収入が減らない方の場合です。

ワンポイントアドバイス
収入のない専業主婦(主夫)は、休業損害を請求できないと勘違いをしがちです。けれども家事は立派な労働であり、家事労働ができなければ家政婦に外注するなどのコストが発生するため、休業損害を請求する権利があります。また、有職者や家事従事者以外にも、休業損害を請求できるケースがありますので、自分が休業損害の対象者かどうか、弁護士などの専門家に確認することをお勧めします。

交通事故の休業損害の計算方法

では交通事故の休業損害は、どのような計算方法で請求すればよいのでしょうか?

実はこの計算方法には、「自賠責基準」「任意基準」「弁護士基準」の3つの基準があります。以下でそれぞれの計算方法をみてみましょう。

自賠責保険基準の場合

まず自賠責保険基準の場合ですが、

日額6,100円×休業日数(交通事故の怪我のために実際に欠勤した日数、有給休暇を取った日数)=休業損害

という計算をします。

これは被害者がどのような職業であっても一律の計算方法です。

ただし、1日あたりの基礎収入(=事故前3ヶ月の収入÷90日)が6,100円を超えることを、立証資料などにより明らかにできれば、日額19,000円を限度に実際の損害額を認められる場合があります。この場合の立証資料には、「休業損害証明書」などが必要です。

任意保険基準の場合

任意保険基準の場合は、任意保険会社ごとに独自の計算方法がありますが、その内容は公開されていません。もっとも、自賠責基準と同じか、それより少し多いぐらいの金額になる場合が大半で、後述する弁護士基準よりも少ない金額となっています。

弁護士基準の場合

弁護士基準の場合は、一般的な給与所得者(アルバイト含む)であれば
1日あたりの基礎収入(=事故前3ヶ月の収入÷90日)×休業日数=休業損害
という計算をします。

例えば、事故日が9月5日で、事故日から11月30日まで87日間ずっと休業し、

  • 6月の給与額 270,000円
  • 7月の給与額 255,000円
  • 8月の給与額 300,000円

だった場合であれば、

1日あたりの基礎収入=(270,000円+255,000円+300,000円)÷90日=9,166円(小数点以下切捨て)

となり、

休業損害=1日あたりの基礎収入9,166円×87日=797,442円

という計算式によって、797,442円を休業損害として請求できます。

なお

  • 個人事業主
  • 会社経営者、会社役員
  • 専業主婦(主夫)
  • 交通事故により怪我を負い退職した、解雇された方
  • 無職者

などの場合には別途計算方法・裁判例があります。

ワンポイントアドバイス
休業損害の計算方法には「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」3つの基準がありますが、被害者に最も有利な「弁護士基準」で計算できるのは弁護士だけです。より有利な金額で休業損害を請求したい場合には、交通事故に強い弁護士へ相談しましょう。

休業損害の請求の流れ

加害者側保険会社から「休業損害証明書」の定形書面を入手する

休業損害を請求する流れをご説明すると、まず初めに加害者側保険会社の担当者から「休業損害証明書」の定形書面を受け取ります。「休業損害証明書」とは、交通事故により本来得られるはずだった収入が減ったことを証明する書面です。もし定形書面を入手できない場合には、後述する記入項目が盛り込まれた書面であればそれを使っても構いません。

勤務先に記入依頼をする

「休業損害証明書」の書面を用意したら、給与所得者(アルバイト含む)の場合、勤務先の人事・総務担当者に記入を依頼します。小規模の会社の場合には社長が記入するなどのケースもありますので、勤務先に担当者を確認しましょう。

参考までに「休業損害証明書」の記入項目をご紹介すると、

  • 休業期間
  • 休業した日(有給休暇含む)や遅刻・早退をした日
  • 休業期間の給与支給状況
  • 事故前3ヶ月の月給
  • 社会保険から休業補償の給付を受けたか否か
  • 記入日
  • 勤務先の連絡先と社印

などがあり、事故前年度の源泉徴収票の添付欄もあります。

加害者側保険会社に請求する

怪我が治癒したら、出来上がった「休業損害証明書」を加害者側保険会社に送付し、慰謝料などその他の損害と一緒に休業損害を請求します。これはつまり示談金の請求です。

示談金は、原則的として示談成立後に、加害者側保険会社から一括して支払われます。しかし、休業損害の場合には、収入が減った被害者の当面の生活費を確保するため、示談前に先払いしてもらうことも可能です。詳しくはのちほど説明します。

ワンポイントアドバイス
何らかのトラブルで勤務先が「休業損害証明書」を作成してくれない場合には、収入状況や休業期間などを証明できる別の資料で代替する方法もあります。ただし代替資料の場合、加害者側保険会社が承認してくれない場合も多いので、交渉が難航したときには弁護士から適切なアドバイスをもらうのがベストです。

休業損害を先払いしてもらうための請求の流れ

休業損害を先払いしてもらうためには、任意保険会社の内払金制度を利用します。

内払金制度とは、任意保険会社が独自に定めた制度で、治療費や休業損害などに限り示談前に金銭の先払いをする制度です。

内払金の請求の流れは、以下のとおりです。

必要書類をそろえる

まず

  • 交通事故証明書
  • 診断書
  • 診療報酬明細書
  • 休業損害証明書

などの必要書類をそろえます。

必要書類を任意保険会社に提出し交渉する

必要書類をそろえたら任意保険会社に提出し、内払いしてもらうための交渉をします。内払金は複数回の請求ができますので、休業損害証明書を毎月提出することで、月ごとに休業損害を受け取ることも可能です。このように、内払いの時期や方法などを任意保険会社と話し合いましょう。

交渉が難航するケースは弁護士に相談すべき

ただし、休業損害の内払い(先払い)は法令で定められた制度ではなく、任意保険会社が自分たちの裁量で任意に行なっているため、交渉が難航するケースもあります。

もし自分で交渉するのが難しかったり、任意保険会社が交渉に応じなかったりした場合には、交通事故に詳しい弁護士へ相談するとよいでしょう。

ワンポイントアドバイス
休業損害の先払いとは少し意味合いが異なりますが、交通事故被害により金銭面で苦しい場合には、自動車損害賠償保障法に基づく、自賠責保険の「仮渡金」制度を利用するのも一つです。内払金と異なり法律に基づく制度ですので、一定の条件さえ満たせば支払われます。なお、内払金・仮渡金ともに、示談後に支払われる示談金から既払いとして差し引かれることを覚えておきましょう。

後遺障害が残った場合の休業損害の扱い

症状固定後の減収は後遺障害逸失利益として請求する

残念ながら交通事故被害者の方の中には、適切な治療を受けても交通事故の怪我が完治せず症状固定となり、後遺障害が残る方もいます。

では後遺障害によって休業し収入が減少した場合、いつまで休業損害が請求できるのでしょうか?

後遺障害が残った場合の休業損害は症状固定前まで

症状固定以降の減収は後遺障害逸失利益として請求する

結論から言えば、後遺障害が残った場合の休業損害は症状固定前までの分を請求でき、症状固定以降の減収については、休業損害としてではなく後遺障害逸失利益として請求することとなります。

この後遺障害逸失利益を請求するためには、後遺障害等級認定を受けて後遺障害として認定されることが必要ですが、後遺障害等級によっては非常に高額になるケースもあります。ですから、交通事故被害により仕事ができず減収した場合には、休業損害だけではなく後遺障害逸失利益という損害項目についてもしっかり理解しておくべきです。

ワンポイントアドバイス
適正な後遺障害逸失利益を獲得するのに必要な後遺障害等級認定には、しっかりとした立証資料を提出する必要があります。交通事故に強い弁護士は、休業損害だけではなく後遺障害等級認定の制度や後遺障害逸失利益の請求にも詳しいので、一度相談してみるとよいでしょう。

交通事故の休業損害で損しないためには弁護士に相談を!

まとめ:休業損害の計算は「休業損害証明書」を元に行う

本記事の主なポイントは以下のとおりです。

  • 休業損害とは、交通事故の怪我により減収したことに対する損害賠償金
  • 休業損害は、「財産的損害」の中の「消極的損害」に該当する
  • 休業損害と休業補償給付、休業給付、休業手当は別物
  • 休業損害と休業補償給付、休業給付の二重取りはできない
  • 交通事故により怪我を負い減収した有職者や、家事労働のできなかった家事従事者は、休業損害を請求すべき
  • 有職者・家事従事者以外に休業損害を認定した裁判例もある
  • 休業損害の計算は、弁護士のみが使える「弁護士基準」を用いるのが最も有利
  • 休業損害の請求は、「休業損害証明書」を加害者側保険会社から取り付け、勤務先に記入してもらうのが流れ
  • 休業損害は任意保険会社の内払金制度で先払いしてもらえるが、交渉が難航するケースは弁護士に相談を
  • 後遺障害が残った場合、休業損害は症状固定前まで請求でき、症状固定後の減収については後遺障害逸失利益として請求できる

休業損害は、有職者・家事従事者はもちろんのこと、交通事故の怪我により退職・解雇された人や無職者などでも認められた裁判例があります。自分では休業損害をもらえないと思っていても、本当はもらう権利があった、というケースも大いに考えられます。休業損害で請求漏れがないように、その仕組みや計算方法などをしっかりと覚えておきましょう。

休業損害は交通事故に強い弁護士に相談を

交通事故の休業損害でお悩みの場合には、交通事故に強い弁護士に相談するとスムーズな解決につながります。

交通事故に強い弁護士に相談するメリットは次のとおりです。

休業損害を請求できる事案か的確に判断

交通事故に強い弁護士は、被害者からじっくり話を聞き、休業損害を請求できる事案か的確に判断してくれます。

これまで述べたように、有職者・家事従事者以外の方でも、裁判例で休業損害が認められたケースもあります。交通事故に強い弁護士は裁判例やこれまでの示談例にも通じていますので、一般の方が自己判断するよりも正確な判断ができます。

休業損害を弁護士基準で計算できる

交通事故に強い弁護士は、被害者に最も有利な弁護士基準で休業損害を計算してくれます。

保険会社や裁判所が弁護士基準での計算を認めてくれるのは、交通事故の法律知識がある弁護士だけで、一般の方が弁護士基準を用いることはできません。

休業損害の内払い交渉ができる

交通事故に強い弁護士は、交通事故の怪我により減収し当座の生活費に困窮する被害者のために、任意保険会社に対し内払い交渉を行ってくれます。

内払いは任意保険会社が自主的に行っている制度のため、任意保険会社が内払いを渋るケースもありますが、交通事故に強い弁護士は、被害者の代理人としてタフな交渉をしてくれます。

休業損害打ち切りにも対応できる

休業損害は、怪我が治癒し業務に支障なくなるまで、あるいは症状固定前までしかもらえません。したがって保険会社の中には、「そろそろ怪我も治り仕事ができるのではないですか?」「もう症状はこれ以上悪化しませんし、症状固定のはずです」などと、休業損害打ち切りのための誘導をしてきます。

その点、交通事故に強い弁護士は、豊富な経験で休業損害の打ち切り交渉に対応してくれます。

いまは初回相談料無料の弁護士も!

いまの弁護士は、かつてイメージされたような近寄りがたい存在ではありません。被害者に親身になって話を聞いてくれるだけではなく、初回法律相談料を無料、着手金ゼロの完全成果報酬型など、費用面でも相談しやすい報酬体系にしてくれています。

休業損害でお悩みの場合には、ぜひ交通事故に強い弁護士にご相談ください。

交通事故に巻き込まれたら弁護士に相談を
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保険会社が提示した慰謝料・過失割合に納得が行かない
保険会社が治療打ち切りを通告してきた
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交通事故の加害者が許せない
上記に当てはまるなら弁護士に相談