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交通事故の休業損害|対象者と計算方法、請求の流れ

交通事故の休業損害|対象者と計算方法、請求の流れ

この記事で分かること

  • 休業損害とは何か・対象になる人
  • 休業損害と休業補償(労災)の違い
  • 休業損害の計算方法と休業日数の決まり方
  • 休業損害の請求の流れと必要書類
  • 休業損害でよくあるトラブルと対処

休業損害は、交通事故でケガをして働けなくなった分の収入を補償する制度で、会社員・自営業者・主婦(主夫)・役員など幅広い立場の人が請求できます。労災から支払われる休業補償とは別物です。本記事では計算方法・休業日数・請求の流れ・よくあるトラブルを弁護士目線で解説し、適正な補償の受け取り方を示します。

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休業損害とは何か

交通事故でケガをして、仕事を休んだ。その間の収入が減った分は、誰が負担するのでしょうか。相手の不注意で働けなくなったのですから、こちらがかぶるのは筋が通りません。この減った収入を賠償として請求できるのが、休業損害です。

慰謝料と混同されることがありますが、別のものです。慰謝料は精神的な苦痛に対する賠償、休業損害は現実に減った収入の穴埋めです。どちらも請求できますし、片方を受け取ったからもう片方が減る、という関係にもありません。

想像してみてください。追突されて首を痛め、仕事を二週間休んだ。有給を使い切り、その後は欠勤扱いで給与が減った。治療費は相手方の保険会社が病院へ払っているものの、減った給与については何の説明もない。こうした状態で放置されている方は、少なくありません。

放置されるのには理由があります。治療費は病院と保険会社の間で処理が進むため、被害者が何もしなくても動きます。ところが休業損害は、こちらが資料をそろえて請求しなければ、話題にすら上がりません。手を挙げた人にだけ支払われる費目だと考えてください。

金額としても、決して小さくありません。月に二十万円ほどの収入がある方が三か月休めば、それだけで相当な額になります。慰謝料の議論に意識が向きがちですが、休業が長引いた事案では、休業損害のほうが金額の大きい費目になることもあります。

それだけに、提示された金額をそのまま受け入れる前に、計算の中身を確かめる意味があります。この記事を読み終えるころには、何を確認すればよいかが分かるはずです。

この記事では、休業損害を請求できる人、計算のしくみ、休業日数の決まり方、そして手続きで必ず登場する休業損害証明書の扱いまでを順に説明します。立場によって計算の考え方が変わりますので、ご自身に当てはまる部分を重点的に読んでください。

なお、この記事は休業損害の全体像を扱います。家事に従事している方、自営業の方、パートやアルバイトの方、会社役員の方については、それぞれ固有の論点がありますので、該当する記事もあわせてご覧ください。

読み進めるにあたって、手元に給与明細と、勤務先から受け取った書類を用意しておくと確認が進みます。自営業の方であれば、確定申告の控えです。

まだ治療中で、休業が続いている段階の方も読んでおいてください。後から振り返って請求するより、進行中に整えておくほうが確実です。

休業補償との違いを押さえておく

似た言葉に「休業補償」があります。同じものだと思われがちですが、出どころが違います。

言葉が似ているせいで、「労災を使ったから休業損害はもらえない」と思い込んでしまう方がいます。そうではありません。二つは別の制度で、条件が合えば両方が関わります。ただし同じ損害について重ねて受け取ることはできない、という整理です。

どちらを先に使うかで、手元に残る額が変わることもあります。過失が争点になっている事案や、相手方の支払いが滞っている事案では、順序を考える意味が出てきます。

休業損害 休業補償
支払う主体 加害者側(その保険会社) 労災保険
対象 交通事故の被害者全般 業務中や通勤中の事故
過失の影響 こちらの過失分は差し引かれる 差し引かれない
支払われる範囲 減った収入の全額が原則 給付基礎日額の一定割合

通勤中や仕事中の事故では両方が関わる

通勤の途中や業務中に事故に遭った場合、労災の給付と相手方への賠償請求が同時に成り立ちます。ただし、同じ損害について二重に受け取ることはできず、調整が行われます。

それでも、両方を視野に入れる意味はあります。労災には過失による減額がないという利点があり、こちらにも過失がある事故では、先に労災を使ったほうが手元に残る額が増えることがあります。相手方の対応が滞っている場合にも、生活を支える手段になります。なお、手続きで必ず登場する休業損害証明書の書き方については、次の記事で詳しく扱っています。

労災には、給付基礎日額の一定割合が支払われる休業補償のほかに、上乗せの給付も用意されています。相手方からの賠償で足りない部分を、こちらで補える場面があるということです。勤務先に労災の申請を渋られることがあるかもしれませんが、申請は労働者の権利であり、事業主の同意は要件ではありません。

通勤の途中かどうかは、経路や目的によって判断されます。寄り道をしていた場合の扱いなど、細かい線引きがありますので、該当しそうなら勤務先か労働基準監督署に確認してください。

休業損害を請求できるのは誰か

「会社員でなければ無理だろう」と思い込んでいる方が多い部分です。実際には、収入を得ていた人だけが対象ではありません。

  • 会社員、公務員などの給与所得者
  • パート、アルバイト、契約社員、派遣社員
  • 自営業者、個人事業主、フリーランス
  • 家事に従事している方(専業でも兼業でも)
  • 会社の役員(報酬のうち労務の対価にあたる部分)
  • 就職が内定していた方、休職から復帰予定だった方

対象にならないのは、事故の前から収入がなく、家事にも従事しておらず、働く予定もなかった場合です。逆にいえば、何らかの形で働いていた、あるいは働く予定が具体的にあったなら、検討の余地があります。

学生の方や高齢の方も、同じです。アルバイトで収入を得ていたなら対象になりますし、年金を受け取りながら家事に従事していた方も、その家事労働が評価されることがあります。年齢や肩書だけで線を引く話ではありません。

相手方の担当者も、悪意で言っているとは限りません。社内の基準に沿って処理しているだけのこともあります。だからこそ、こちらから根拠を示して求めることに意味があります。

「請求できますか」と尋ねるより、「この期間について、この根拠で請求します」と示すほうが話が早く進みます。尋ねる形だと、判断する権限が相手にあるように見えてしまうからです。

ワンポイントアドバイス
相手方から「その働き方では休業損害は出ません」と言われても、その場で納得しないでください。パート、学生のアルバイト、家事従事者、いずれも認められる余地があります。根拠を尋ねたうえで判断してください。

計算のしくみは二つの要素で決まる

休業損害の額は、次の掛け算で求めます。

一日あたりの基礎収入 × 休業した日数

単純な式に見えますが、争いになるのはこの二つの要素そのものです。基礎収入をいくらと見るか、休業日数を何日と数えるか。ここで開きが出ます。

金額が大きくなるのは、休業が長引いた場合です。数日の欠勤なら差はわずかですが、数か月に及べば、日額の違いが積み重なって相当な開きになります。長く休んでいる方ほど、計算の中身を確かめる価値があります。

提示を受けたら、日額と日数に分解してみてください。総額だけを見ていても、どこに問題があるのかは分かりません。分解すれば、争うべき場所が一目で見えます。

基礎収入の求め方

給与所得者の場合、事故の前の三か月間に支払われた給与の総額を、その期間の日数で割って求めるのが一般的です。これが相手方の保険会社が用いる考え方です。

たとえば三か月で九十日あったとすれば、その九十日で割ります。休みの日も分母に入りますから、一日あたりの額は小さめに出ます。

一方、裁判で用いられる基準では、三か月間の総額を実際の稼働日数で割る方法が採られることがあります。分母が小さくなる分、日額は大きくなります。どちらで計算するかによって、結果に差が生じます。

週休二日で働いていた方であれば、九十日ではなく六十日程度が分母になります。同じ給与総額でも、日額は一・五倍前後に変わる計算です。休業日数が多いほど、この差は効いてきます。

賞与への影響や、昇給が予定されていた場合の扱いも、検討の対象になります。基本給だけを見て終わりにしないでください。

逆に、通勤手当のように実費の性質を持つものは、基礎から外れるのが通常です。出勤していない期間は実際に交通費もかかっていないためです。何が入り、何が外れるのかを整理してから、提示額と突き合わせてください。

残業代や各種の手当は、継続的に支払われていたものであれば基礎に含まれるのが通常です。事故の前の数か月がたまたま残業の少ない時期だった場合には、より長い期間の実績を示す余地もあります。

立場によって考え方が変わる

基礎収入の求め方は、働き方によって異なります。それぞれ論点が違いますので、当てはまるものを確認してください。

どの立場でも共通して言えるのは、相手方の提示が最初から最大値で出てくることはない、という点です。基礎収入をどう見るかには幅があり、その幅のどこを取るかで金額が動きます。

だからこそ、自分がどの立場に当たるのか、その立場ではどこが論点になるのかを知っておく必要があります。知らないまま提示を受け取ると、妥当な水準なのかどうかを判断できません。

立場 基礎収入の考え方 主な争点
給与所得者 事故前三か月の給与 分母の取り方、賞与の扱い
家事従事者 賃金に関する統計を基礎にする 家事への支障の程度
自営業者 確定申告の所得+固定費 申告額の低さ、固定費の範囲
パート・アルバイト 事故前三か月の収入 シフトの確定状況
会社役員 報酬のうち労務の対価部分 労務対価と利益配当の区別

家事に従事している方については、収入という形で表れない労働をどう評価するかが問題になります。専業でも兼業でも、請求の対象になります。

兼業の場合は、実際の収入と統計上の額を比べ、高いほうを基礎とする考え方が採られることがあります。パート収入が少ないからといって、その額に引きずられるとは限りません。

自営業の方は、所得だけでなく、休業中も出ていく固定費をどう扱うかが焦点になります。店舗の家賃や従業員の給与が典型です。

申告している所得が実態より低い場合の扱いも、悩ましいところです。事業の実態を示す資料をどう組み立てるかが問われます。

パートやアルバイトの場合、シフトが確定していなかった期間をどう数えるかで争いになります。学生の方でも請求できます。

掛け持ちで働いていた場合は、すべての勤務先について証明書を用意する必要があります。一か所だけで済ませてしまうと、その分が漏れます。

短期間しか働いていなかった場合も、請求をあきらめる必要はありません。直近の実績が乏しくても、勤務の条件や予定されていた勤務時間から算定する余地があります。

会社役員の報酬には、働いた対価としての部分と、出資に対する分配としての部分が混じっているとされます。この切り分けが争点です。

役員報酬が事故後も満額支払われていたとしても、請求の余地がなくなるわけではありません。会社に損害が生じている場合の扱いも含めて、検討すべき点があります。

小規模な会社ほど、代表者が抜けた影響は大きくなります。誰も代わりを務められない状況であれば、その実態を示すことが主張の土台になります。

逆に、複数の役員がいて業務を分担できる体制であれば、労務の対価にあたる部分をどう見るかの判断は変わってきます。会社の規模や体制によって、結論が分かれる領域です。

休業日数はどう数えるのか

基礎収入と並んで争いになりやすいのが、休業日数です。

実際に休んだ日が出発点

原則は、事故によるケガのために実際に働けなかった日です。ただし、休んだという事実だけでは足りず、その休みがケガによるものだと示す必要があります。医師の指示、通院の記録、症状の経過が裏づけになります。

ここでも、業務の内容が効いてきます。同じ程度のケガでも、座って作業できる仕事と、重い物を持ち上げる仕事とでは、就労できるかどうかが変わります。自分の仕事がどういう動作を伴うのかを、医師に伝えておいてください。

通院した日だけが休業日になるわけでもありません。痛みで出勤できなかった日、就労が制限された日も含まれ得ます。半日勤務や軽作業への変更で減収が生じた場合も、その分を請求できます。

無理をして出勤し、結果として症状を悪化させてしまう方がいます。収入を守りたい気持ちは分かりますが、症状が長引けば、後の評価にも影響します。医師と相談しながら、休む判断も選択肢に入れてください。

勤務先の理解が得られない場合もあるでしょう。その場合でも、医師の診断書があれば説明の材料になります。診断書は治療のためだけでなく、こうした場面でも役に立ちます。

有給休暇を使った場合

有給を使って休んだなら、給与は減っていません。それでも、休業損害は請求できます。有給は本来、自由に使える権利として持っていたものであり、事故のために消費させられた以上、損害が生じていると考えられるからです。

この点は誤解されやすく、相手方から「給与が出ているので損害はありません」と言われることがあります。そのまま引き下がらないでください。

同じ理屈は、勤務先の好意で給与が支払われた場合にも当てはまることがあります。会社が立て替える形をとっているのか、純粋に支給しているのかによって扱いが変わりますので、勤務先に確認しておいてください。

欠勤扱いになったのか、有給を消化したのか、特別休暇が適用されたのか。この区別は証明書の記載にも関わりますので、自分の休みがどう処理されているのかを把握しておいてください。

打ち切りを打診される時期

治療が長引くと、相手方から休業損害の支払いを打ち切りたいという打診が入ります。これは医学的な判断ではなく、支払いを続けるかどうかの社内判断です。症状が残っていて就労に支障があるなら、医師の見解を確かめてから返事をしてください。

打ち切りを告げられても、その後の分を一切請求できなくなるわけではありません。支払いがいったん止まるだけで、必要性を示せれば、後からまとめて請求する道は残ります。ここで通院や休業をやめてしまうと、かえって立証が難しくなります。

支払いが止まると、生活への影響が出ます。その場合は、自分の保険に付いている補償や、相手方の自賠責への直接請求を検討してください。当面の費用を先に受け取る仕組みも用意されています。

休業損害証明書の書き方と注意点

手続きで必ず登場するのが、この書類です。相手方の保険会社から送られてきて、勤務先に記入してもらうよう案内されます。書き方ひとつで金額が変わりますので、丁寧に扱ってください。

誰が作成するのか

作成するのは勤務先です。本人が書くものではありません。総務や経理の担当者に依頼し、押印を受けて提出します。

依頼しづらいと感じる方もいますが、定型の書類ですので、事務手続きとして淡々と頼めば済みます。書式は相手方の保険会社が用意しますので、こちらで作る必要もありません。

依頼するときは、事故でケガをして休んだ期間の証明が必要である旨と、提出先を伝えれば足ります。事故の詳しい経緯まで説明する必要はありません。

小規模な職場で、担当者がこの書類に慣れていないこともあります。その場合は、保険会社に記入例を送ってもらうとよいでしょう。書式とあわせて用意されていることがほとんどです。

記載される内容

おおむね次の項目が並びます。

  • 事故前三か月間の支給額(本給と付加給の内訳)
  • 休んだ日付と、その内訳(欠勤・有給・遅刻早退)
  • 休んだ期間に給与が支払われたかどうか
  • 社会保険の加入状況
  • 勤務先の名称、所在地、担当者名、押印

あわせて、事故前年の源泉徴収票の写しを求められるのが通常です。手元にない場合は、勤務先に再発行を依頼してください。

これらの資料は、基礎収入を裏づけるためのものです。証明書だけでは、記載された金額が実際に支払われていたのかを確認できません。求められる前に用意しておくと、手続きが滞りません。

ここを確認してから提出する

記入された内容は、提出する前に自分でも確かめてください。よくあるのが、次のような取り違えです。

  1. 休んだ日付に漏れがないか。通院のための遅刻や早退も対象になる
  2. 有給を使った日が、欠勤として処理されていないか。逆に、有給だから記載不要とされていないか
  3. 支給額に、通勤手当など実費の性質を持つものが混ざっていないか
  4. 三か月の期間の取り方が、事故日を基準に正しく設定されているか
  5. 担当者の押印と連絡先が入っているか

提出後に訂正を求めるのは、勤務先にも手間をかけます。出す前の確認が、結局いちばん早道です。

提出する前に、写しを取っておいてください。後から内容を確認したくなったときや、金額の算定について説明を求めるときに、手元にあると話が早く進みます。

提出は、相手方の保険会社へ直接行うのが通常です。代理人を立てている場合は、弁護士がまとめて提出します。どちらに送るのかを確認してから動いてください。

注意
休んだ日をまとめて「欠勤」とだけ記載されると、有給を消費した分が損害として評価されないおそれがあります。内訳が分かる形で書いてもらってください。

転職・退職した場合

事故の後に退職した場合でも、在職していた期間については、以前の勤務先に作成を依頼できます。退職してしまうと頼みにくくなりますので、在職中に済ませておくのが得策です。

退職後に依頼する場合でも、在職していた期間の給与記録は勤務先に残っています。連絡を取りづらいと感じるかもしれませんが、事務的な依頼として頼めば、通常は対応してもらえます。

事故が原因で退職に至った場合は、退職後の収入減をどこまで請求できるかという別の問題が生じます。

請求の流れと受け取る時期

実際の手続きは、次のように進みます。

まず、治療を続けながら休業損害証明書を作成してもらいます。相手方の保険会社に提出すると、内容が確認され、認められた範囲で支払われます。

提出してから支払われるまでには、確認のための時間がかかります。書類に不備があれば、そこでさらに止まります。だからこそ、出す前の確認が効いてくるのです。

治療が続いている間は、一定の期間ごとに証明書を作り直すことになります。毎回勤務先に依頼するのは気が引けるかもしれませんが、まとめて後から作成するより、記憶が新しいうちに区切って出すほうが正確です。

支払いの時期は、事案によって分かれます。治療が長引く場合には、一か月ごとに区切って先に支払われることがあります。一方、示談がまとまるまでまとめて支払われないこともあります。生活に支障が出るようなら、先に支払ってもらえないか相談してみてください。

相手方が応じない場合でも、自分が加入している人身傷害保険や、相手方の自賠責への直接請求といった手段があります。相手の対応を待つだけが道ではありません。

よくあるトラブルと対処

相談の場でよく聞く三つを挙げます。

日額を低く算定される

分母を暦の日数で取るか稼働日数で取るかによって、日額は変わります。相手方の提示がどちらの考え方によるものかを確かめてください。賞与や手当が基礎から外れていないかも、あわせて見ておきましょう。

提示額の内訳を示してもらうことも大切です。日額がいくらで、何日分として計算したのか。この二つが分かれば、どこに開きがあるのかを特定できます。総額だけを示されて判断するのは避けてください。

内訳を出してもらえない場合は、その理由を尋ねてください。算定の根拠を示せないまま金額だけを提示するというのは、本来おかしな話です。

休業の必要性を否定される

「そのケガで休む必要はない」という主張です。これに対しては、医師の見解と、実際の業務内容を示すことになります。デスクワークか、立ち仕事か、重量物を扱うか。同じケガでも、業務によって就労できるかどうかは変わります。

医師に診断書を書いてもらう際、就労が制限される旨を具体的に記載してもらえると、説明がしやすくなります。「安静を要する」だけでなく、どの動作に支障が出るのかまで触れられていると、なお有効です。

家事従事者や自営業者の請求を退けられる

「収入がないので損害はない」「申告額が低いのでこの程度です」という説明がなされることがあります。いずれも、当然の前提としてよい話ではありません。家事労働の評価にも、申告額が実態を反映していない場合の扱いにも、積み上げられた考え方があります。

こうした説明を受けたときは、どういう根拠でそう判断したのかを尋ねてください。答えられないのであれば、その判断はこちらが受け入れなければならないものではありません。

納得できないまま示談に応じてしまうと、後からやり直すことはできません。金額に開きがあると感じたら、署名の前に検討する時間を取ってください。

示談書に署名する前であれば、まだ交渉の余地は残っています。急かされても、返答を数日待たせたことで不利になる場面はまずありません。

休業損害と逸失利益の境目

休業損害には終わりがあります。区切りになるのが、症状固定です。

症状固定とは、治療を続けてもこれ以上の改善が見込めない状態を指します。この日までに生じた収入の減少が休業損害、それ以降に生じる減少は逸失利益として扱われます。同じ「働けないことによる損害」でも、計算の枠組みがまったく変わります。

休業損害は、実際に休んだ日数に日額を掛けた実額の積み上げです。一方、逸失利益は、後遺障害の等級に応じて、将来にわたってどれくらい働く力が失われたかを見積もって算定します。等級が認定されなければ、原則として逸失利益は発生しません。

ここで起きやすいのが、症状固定の時期をめぐる争いです。早い時期に固定とされれば休業損害の期間は短くなり、かといって等級が認定されなければ逸失利益も発生しない。両方が抜け落ちる形になりかねません。

ですから、症状固定の判断は慎重に進めてください。決めるのは医師であって、相手方の保険会社ではありません。就労にどの程度の支障が残っているのかを具体的に伝え、そのうえで判断してもらうことが大切です。

弁護士に相談する意味があるのはどんな場合か

休業損害だけを取り出して依頼することは、通常ありません。賠償全体の一部として扱われます。そのうえで、次のような事情があるなら、相談する価値が高くなります。

  • 休業が長期に及び、金額が大きくなっている
  • 家事従事者や自営業者で、基礎収入の評価に開きがある
  • 役員報酬のうち、どこまでが労務の対価かが争われている
  • 休業の必要性そのものを否定されている
  • 事故が原因で退職や転職に至った

費用が気になる場合は、弁護士費用特約の有無を先に確認してください。自分の契約になくても、同居している家族の契約から使える商品が一般的です。

相談だけであれば、依頼せずに助言を持ち帰ることもできます。提示された日額と日数が妥当かどうかを見てもらうだけでも、その後の交渉の進め方が変わります。

相談の際は、給与明細、源泉徴収票、休業損害証明書の写し、通院の記録を持参してください。実物があれば、その場で具体的な話ができます。

よくある質問

有給休暇を使いました。それでも請求できますか

できます。有給は本来自由に使えたものですから、事故のために消費させられたこと自体が損害と考えられます。証明書には、有給を使った日が分かる形で記載してもらってください。

専業主婦ですが、収入がなくても対象になりますか

なります。家事労働には経済的な価値があるとされ、賃金に関する統計を基礎に算定されます。「収入がないから出ない」という説明は、そのまま受け入れる必要はありません。

休業損害証明書は誰に書いてもらうのですか

勤務先です。総務や経理の担当者に依頼してください。書式は相手方の保険会社から送られてきます。作成後は、記載内容に漏れや取り違えがないかを自分でも確認してから提出しましょう。

いつ受け取れますか

事案によります。治療が長引く場合は、一か月ごとに先に支払われることがあります。示談時にまとめて支払われる場合もありますので、生活に支障が出るようなら先払いを相談してください。

休業損害に税金はかかりますか

かかりません。損害の賠償として受け取るものであり、所得として課税される性質のものではないとされています。確定申告で収入として計上する必要もありません。

慰謝料とは別に請求できますか

できます。休業損害は減った収入の穴埋め、慰謝料は精神的な苦痛に対する賠償で、根拠が別です。提示書に両方が計上されているかを確かめてください。

打ち切ると言われました

その場で応じる必要はありません。就労に支障が残っているなら、医師に見解を確認したうえで継続を求めてください。打ち切られた後も、後から請求する余地は残ります。

事故の直後から働けていません。いつから請求できますか

事故の翌日からでも請求できます。入院していた期間はもちろん、退院後に自宅で療養していた期間も、就労できない状態であれば対象になります。開始日を後ろにずらされていないか、提示の内訳を確認してください。

後遺症が残ったら、休業損害はどうなりますか

症状固定の日までが休業損害の対象です。それ以降に生じる収入の減少は、逸失利益という別の費目で扱われます。区切りがどこになるかで、計算の枠組みが変わります。

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